まだ続いているよ、諦めたくないから。
身体の動きを一つずつ教え込まなくては当たり前の人間に戻れない。
数十年生きてきて運動もして身体を鍛えた時期もあった。
たった一瞬の脳の神経がぷつんと切れただけでいままでの記憶がすべて消えてしまった。
真っ白になった記憶、運動神経、脳の働きすべて消え去った。
大きな模造紙を広げて端の方から少しずつ元の記憶を呼び覚まして埋めていく。
埋まらない、思い出そうとしても出てこない。
まるで子供が言葉を覚えていくのと同じ。
言葉からいま置かれている自分を確認する作業。
少しずつ書く練習もしていくうちに記憶がだんだん思い出していく。
脳が動き出すと身体も薄ぼんやりと目を覚ます。
動かない、どうしようもない焦り。
壊れてしまった私。
一年が過ぎてやっと回りを見ることが出来た。
仕事を休んで介護してくれる家族もいる。
ケアーマネージャーにも外にでて、どんな風景が見えるのか周りに目を凝らして見るのよ。
リハビリも自分から出て行かないと解決できないよ。
背中を押される。
リハビリは親切な人も、気難しい人も、これも社会に慣れる練習。
慣れてきたところでリハビリ施設もだんだん高度なほうに移っていく。
5箇所を経験。デイケアーはこりごり。 ここは自分のいる所ではない。
6年が過ぎると大分リハビリ施設の内容の良し悪しもわかってきた。
作業療法士の能力も見えてきた。
いまの2箇所を上手に使って足りないところを補完しあってのリハビリ。
マンネリに陥らないように休憩も無く100パーセントリハビリに特化した施設を一日取り入れた。
まだ4ヶ月しか利用していなくても効果が見えてきた。
リハビリと楽しい交流とで2箇所を使うことで気分転換も出来て、もうだめ、これ以上直せないと諦めることもない。
2箇所で指導してくれて一生懸命に汗を流してくれていることを思うと諦めるわけにはいかない。
新年に今年のうちに杖を外しますからと先生たちに宣言してしまった。
やるしかないですね。
(10-220)
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