何気ない風景とひとり言

寺社&石仏巡り、小さな旅、散策...ふと目に留まった何気ない風景...切り取って大切な想い出に!

安楽寺 (上田)

2018年06月01日 | 寺社巡り-長野

【長野・上田市】鎌倉時代以前の歴史は判然とせず、伝承では奈良時代の天平年間(729~749)に行基による建立とも、平安時代の天長年間(824~834)に叡山延暦寺座主慈覚大師円仁により創建されたともいわれる。 安楽寺は同時期に建立された別所三楽寺(他は長楽寺、常楽寺で、長楽寺は廃寺)の一つ。
歴史的に明確なのは、鎌倉時代に実質的な開山である信濃出身の臨済宗の僧・樵谷惟仙が臨済宗の寺院として中興した以降。 鎌倉時代中期には鎌倉北条氏の外護によって禅寺として栄えたが、室町時代以降は衰退し、古い建物は八角三重塔を残すのみ。 室町時代の天正八年(1580)頃、曹洞宗の僧・高山順京に再興されたことで曹洞宗寺院となり、真田一族が古くから信仰した信州最古の禅寺。
鎌倉末期(1290年代)建立の国宝・八角三重塔は日本に残る唯一の八角形であり、わが国最古とされる禅宗様建築。 宗旨は曹洞宗で、本尊は釈迦如来像。

戒壇石が立つ高麗門形式の黒門をくぐって参道を暫く進むと、杉の樹林の中に消えるように狭い参道が続く。 鬱蒼と繁る杉林の奥に山門が僅かに見える。 石段の上に袖塀を設けた古びた山門が建つが、茅葺風の銅板葺屋根は近年葺き替えられたようで新しく、少しアンバランスな感じがする。
山門から切石敷の参道を進んで、日差しを燦々と浴びている本堂に向かう。 参道の左右に、千社札がべたべた貼られた十六羅漢堂、屋根や廻縁を支える組物が見事な袴腰鐘楼、そして入口に「選佛場」の扁額が掲げられた起り屋根の座禅堂が建つ。
本堂は寄棟造銅板葺の小棟造りで、先代の茅葺の起り屋根の姿をそのまま残していて風情が感じられる。 大棟に寺紋の「三つ鱗」が付いた箱棟を乗せ、正面は障子窓と白い小壁だけの極めて簡素な造りで入口が中心からずれている。 本堂に連なって右に独特な造りの庫裏が建つ。 大棟の箱棟の中央に煙出し櫓を設け、平側屋根を兜造りのように大胆に切り落として二階の窓を設けた造りで印象に残る。
本堂の脇から杉林の参道を進み、本堂裏の山腹に建つ八角三重塔に向かうと、杉木立の間から少しずつ八角三重塔が見えてくる。 厳かな空気に包まれた山腹の墓所に、古色蒼然とした佇まいで荘厳な八角三重塔がひっそりと聳える。 八角三重塔には金剛界大日如来像が安置されていて、周囲に眠る人々の霊を静かに見守っている。
 
黒門前の戒壇石....「入許葷酒入山門」の刻/参道入口に建つ切妻造桟瓦葺の黒門(高麗門)....寛政四年(1792)建立
 
参道奥の杉の樹林の中の石段の上に山門が見える

切妻造茅葺風銅板葺の山門は薬医門....両側にL字状に土壁の袖塀が設けている
 
茅葺屋根風に葺き替えられた屋根と古そうな梁や柱や扉とのアンバランスを感じる/堂宇側から眺めた山門

山門から眺めた樹林の中に広がる境内

堂宇参道の左手に十六羅漢堂、右手に袴腰鐘楼が建つ
 
寄棟造桟瓦葺で妻入の十六羅漢堂/ガラス格子の中に寛政年間造立の十六羅漢像の他、8体の諸仏(如来3体。菩薩4体、不動明王)を安置

入母屋造桟瓦葺の袴腰鐘楼....明和六年(1769)の建立で、折衷様式の建築
 
軒下は二軒扇垂木、組物は尾垂木が伸びた二手先、中備は詰組/頭貫木鼻は唐獅子と獏の彫刻...擬宝珠高欄付縁を支える組物は三手先

小棟造りで寄棟造茅葺風銅板葺の本堂....起り屋根で大棟に寺紋「三つ鱗」入り箱棟を乗せている

正面九間で向拝なしの平入....入口を左にずらした簡素な造り
 
正面は全面が障子窓と白い小壁、柱上に舟肘木....入口に「安楽禅寺」の扁額/本堂に直交して連なる寄棟造銅板葺の庫裏....大棟の箱棟の中央に煙出し櫓がある

独特な造りの庫裏..まるで平側屋根を半分切り落とした兜造りのような姿
  
庫裏の入り口に「禅悦堂」の額が掛かる/本堂と庫裡の繫部に唐破風の玄関が設けられている....軒下に精緻な鳳凰の懸魚彫刻....虹梁上に龍と波頭の透かし彫り/玄関の中に置かれた浮き彫り彫刻が施された衝立....襖の上に「正法眼蔵」の書の額

箱棟を乗せた寄棟造茅葺風堂板葺の座禅堂....本堂のような起り屋根で、庫裏と向かい合って建つ
 
「遷仏場」の扁額が掲げられている/入口を含めて正面は全面が腰高格子ガラス窓

国宝八角三重塔への入口....直ぐの後方に経蔵が建つ
 
露盤宝珠を乗せた宝形造銅板葺の経蔵....寛政十六年(1784)建立/経蔵には宇治の黄檗山萬福寺から購入した鉄眼の一切経を保管
 
八角三重塔への参道に佇む六地蔵尊像と延命地蔵尊像/本堂と八角三重塔への参道との間にある池は放生池か
 
傳芳堂の左にある「寂光尊」の額が掲げられた簡素な地蔵堂....鎮座するのは水子地蔵尊像..左上に八角三重塔が見える/「傳芳」の扁額が掲げられた傳芳堂....安楽寺開山樵谷惟仙和尚と二世幼牛恵仁和尚の像を安置

山腹の墓所内に立つ八角三重塔

鎌倉時代末期(1290年代)建立の杮葺の八角三重塔(国宝)....わが国最古の禅宗様建築

構造形式は八角三重塔婆....木造の八角搭としてはわが国に残された唯一のもの
 
塔高(礎石上端~頂上)は18.75m、各重は二軒扇垂木、組物は三手先....二重目と三重目の全面に連子窓だけが設けられている
 
初重の裳腰の軒下は二軒扇垂木、組物は出組、中備は詰組、桟唐戸の上に弓欄間
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 北向観音 (上田) | トップ | 別所神社 (上田) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

寺社巡り-長野」カテゴリの最新記事