
【兵庫・小野市】現浄土寺の西約2kmの場所にあった奈良時代の僧・行基菩薩創建の広渡寺が浄土寺の前身寺院とされる。 鎌倉初期の建久三年(1192)、鎌倉初期の浄土宗の僧・重源上人が荒廃していた広渡寺を現在地に移転して復興、寺号を浄土寺に改めて開山した。 重源上人は鎌倉初期の浄土宗の僧で、平安末期の平氏の南都焼討の兵火で焼け落ちた東大寺大仏・大仏殿の再興のため、大勧進職として尽力した。 宗旨は高野山真言宗で、本尊は薬師如来像と阿弥陀如来三尊像。新西国三十三箇所客番札所。
◆バス停から浄土堂の屋根を望みながら参道を進む。 塔頭の歓喜院がある南側の石階の下に「加東準四國六十一番霊場」と彫られた標石が立つ。 石階を上ると直ぐ左脇に手水舎、正面奥に鐘楼そして左側に国宝の浄土堂が東面で建つ。 鎌倉時代に大仏様(天竺様)で建てられた浄土堂は、鮮やかな丹塗りで典雅な趣があり、簡素だか風格が漂う。 禅宗様(唐様)とは異なり、柱から突き出た挿肘木などに目を奪われる。
北側の小さな入り口から堂内に入ると、鮮やかな朱塗りの化粧屋根裏天井、そして雲形の台座に鎮座する放射光を背負う巨大な阿弥陀三尊立像(国宝)に圧倒される。 仕掛けがあり、西側の蔀戸を通して西日が差し込むと、阿弥陀如来の背面が照らされて浮かび上がることで来迎の姿を表現するそうだ。 完全な形で現存する2つの大仏様建築の一つである浄土堂、そして快慶作の阿弥陀三尊像を拝観できて大いに感動した。

△一般道から延びる参道から眺めた石燈籠と浄土堂の本瓦葺屋根....右は塔頭・歓喜院側の境内入口に、左には塔頭・宝持院側の境内入口がある


△正面に立つ一対の石燈籠....手前は宝暦四年(1754)、奥は天明四年(1784)の造立

△塔頭・歓喜院側の浄土寺境内への石階....石階上に鐘楼堂と手水舎が見え、石階下に「加東準四國六十一番霊場」と彫られた標石が立つ


△石階の直ぐ上に建つ切妻造桟瓦葺の手水舎....手水鉢と古井戸がある/寺社型手水鉢

△露盤宝珠を乗せた宝形造本瓦葺の浄土堂(阿弥陀堂)(国宝).... 本尊阿弥陀如三尊像(快慶作)を祀る....鎌倉時代建久八年(1197)の建立で、大仏様(天竺様)の建築様式の貴重な遺構

△方三間で柱間が約6メートルある....照り屋根の反りが緩やかで、ほぼ直線的

△身舎周囲に榑縁を設け、正面三間にはそれぞれ観音開きの桟唐戸と両側に横羽目板の小脇羽目

△浄土堂の右側面(北面)....榑縁がある前二間は横羽目板と両脇に小脇羽目がある桟唐戸....正面側に小さな板戸の入口、後一間は縁の幅だけ突き出た連子窓付き部屋(と思う)

△背面(西面)の榑縁がある三間全てが蔀戸....西日が蔀戸を通して堂内に差し込んで阿弥陀如来の背面を照らす

△浄土堂の左側面(南面)は前二間に榑縁、一間は蔀戸、中一間は両脇に小脇羽目がある桟唐戸、後一間は縁の幅だけ突き出た横羽目板壁の部屋(と思う)

△組物は三手先だが、肘木は斗からではなく柱に挿し込んだ挿肘木


△軒廻りは一軒繁垂木で、垂木途中の丸桁を三手目と身舎壁から突き出た尾垂木のような腕木で支えている

△浄土堂に安置されている阿弥陀三尊像(パンフより拝借)....鎌倉初期の仏師快慶の作で、阿弥陀如来像の高さは5.3メートル....堂内は貫や梁などの構造材がそのまま見え、天井を張らない化粧屋根裏
◆浄土堂の南側に小さな庭園があり、隅飾突起が大きく反りかえりひらいている宝篋印塔が佇んでいる。 また、玉取りの阿形の狛犬が植栽に隠れるようにして、ジッと浄土堂を見つめている。 ユニークな勇ましい像容の狛犬は現代のものだが、何故か吽形が見当たらない。
浄土堂の東側で少し離れたところの小さな庭には、幾つかの石造物が浄土堂に向かって鎮座している。 円光を背負い前垂れをした地蔵尊像、塔身に宝篋印陀羅尼経の梵字が彫られた宝篋印塔、それに3基の板状の石仏だ。 板状石仏は摩滅や破損が激しいが、地蔵尊像、阿弥陀三尊像、そして残りの1基はかなり摩滅しているが天蓋下に曼荼羅が薄肉彫りされているのがなんとか確認できる。

△南側に建つ宝篋印塔....隅飾突起が大きく反りかえりひいているので江戸時代造立と推....塔身に虚空蔵の梵字(タラーク)が彫られ、基礎と塔身の石色が異なる

△南側の庭園の植栽に隠れるようにして浄土堂を見つめる狛犬


△昭和六十三年(1988)の造立で、勇ましい姿の阿形狛犬と思うが、確か一体しかなかったと思う/ユニークな姿の玉取り阿形狛犬....通常の狛犬と大きく異なる像容

△浄土堂に向かって前庭に鎮座する石造物....左から地蔵尊像、宝篋印塔、3基の石仏

△梵字(地蔵)が彫られた台座上の蓮華座に鎮座する円光を背負う地蔵尊坐像、右の宝篋印塔は隅飾突起の形から江戸期造立とみられ、塔身に宝篋印陀羅尼経の梵字(シチリヤ)が彫られている

△3基の板状石仏....面に薄肉彫りされているのは右から地蔵尊像、中は阿弥陀三尊像、そして左は天蓋下に曼荼羅


△上部が失われているが阿弥陀三尊の「来迎」の姿が彫られているようだ/幅約60cm、高さ約130cmの起舟後光型地蔵尊像石仏....円光を背負う大きな地蔵尊像が薄肉彫りされている

△八幡神社の境内参道から池(放生池と思う)越しに眺めた浄土堂