対話とモノローグ

        弁証法のゆくえ

蜜蜂とノヴム・オルガヌム

2018-09-21 | アブダクション
ノヴム・オルガヌム(Novum Organum)は、新しい道具のことである。道具(オルガノン)はアリストテレスでは論理(学)のことであった。フランシス・ベーコンは、これまでの演繹に対して、新しい論理として帰納法を提起する。この帰納法はアリストテレスの単純枚挙の帰納法ではなく、演繹とは逆の推論(個々の経験的事実から一般的規則へ)である。
この帰納的な推論をベーコンは「蜜蜂」の比喩で説明している。地にいるのは蟻、空にいるのは蜘蛛、蜜蜂は地(経験)と空(合理)を繋ぐ。
(引用はじめ)(『ノヴム・オルガヌム』(桂寿一訳、岩波文庫、1978)
学を扱ってきた人々は、経験派の人か合理派の人かの何れかであった。経験派は蟻の流儀でただ集めては使用する。合理派は蜘蛛のやり方で、自らのうちから出して網を作る。しかるに蜜蜂のやり方は中間的で、庭や野の花から材料を吸い集めるが、それを自分の力で変形し消化する。哲学の真の仕事も、これと違っているわけではない。それはすなわち精神の力だけにとか、主としてそれに基づくものでもなく、また自然誌および機械的実験から提供された材料を、そのまま記憶のうちに貯えるのでもなく、変えられ加工されたものを、知性のうちに貯えるのである。それゆえにこれら(すなわち経験的と理性的の)能力の、密でゆるぎない結合(未だ今までに作られていないような)から、明るい希望が持たるべきなのである。
(引用おわり)
この蜜蜂は地(経験)と空(合理)を繋ぐだけでなく、時空をわたる。17世紀のイギリスから19世紀のアメリカへ。パースのノヴム・オルガヌムとしてのアブダクションへ。

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