怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「史上最大のメガ景気がやってくる」武者陵司

2019-06-07 07:35:41 | 
日本株について常に超強気の発言の武者さんの新刊です。

表題を見れば一目瞭然ですが、この本でも超強気。
日本株のフェアバリューは株式と債券のインカムゲインが同等となる「配当利回り=十年国債利回り」水準をもとに日経平均株価の水準を考えるとおよそ4万円が適正価格。2020年前後には4万円にトライして2030年には10万円まで値上がりしていくだろう。
株を持っている人には至って気分のいい予言です。
もっとも第1章で2019年の新天皇即位の時には日経平均株価三万円ののせるところまで上昇と書いてあるのですが、早くもこの予言ははずれ!
この日本の強さの理由は、一つには国際分業上の優位性。IOT時代に向けたインフラ整備が進む中で、新たなイノベーションに必要な周辺技術、基盤技術のほぼすべてを握っていて、希少性が高く、価格支配力が維持できる、オンリーワンの分野を確保している。今や米中冷戦時代に入っているが、日本は米国とも中国にも競合は少なく、日本の設備や部品や材料は必要不可欠。日本企業の収益と日本経済は、為替や貿易摩擦に影響を受けにくい構造となっている。
優位性の二つ目は、日本の地政学的立場。世界覇権をめぐって米中対決が本格化している中で、中国に対抗できる強い日本経済は米国の国益に直結、それ故ジャパン・バッシングによる円高や貿易摩擦は起きようがない。
振り返ると、日本の失われた20年は、産業分野での日本の優位性がアメリカの覇権を揺るがせたことによる危機感を抱いたアメリカによるジャパン・バッシングの結果と考えるとよく分かる。アメリカの圧力によって経済、金融、政治は右往左往して、今やジャパン・アズ・ナンバー1なんて言う言葉は死語となってしまった。
今の安倍政権はトランプにべったりで絶好調のアメリカについて行きさえすれば大丈夫。アメリカ経済はバブルなどという説もあるけど、トランプ大統領の下で戦後最長の景気拡大を目指している。トランプ経済政策は合理的で中国の覇権挑戦を許さない。
でも中間選挙は乗り切れると書いてあるけど、結果は微妙なんですけど。
トランプについて書いた「炎と怒り」を読んでいる身としては、どう贔屓目に観てもトランプに大統領としての人格識見があるとは思えないのですが、トランプ流のサプライズを捨象すれば基礎としての底流の政策としては新しい時代に即しているということなのでしょうか。
戦後の日本はアメリカの属国で、その手の平の中で動かさられているだけとすれば、とにかく大統領が誰であれ、すり寄っていきヨイショに努めるのが首相の大切な資質。しっかりついて行けば日経平均10万円も大丈夫という見立て。
その観点から言えば今回のトランプ訪日のおもてなしは「よくやった!」というしかない。トランプが行く国では大規模な反トランプデモが街にあふれるのですが、日本では大歓迎。忍び難きを忍んでも幇間に徹しなければならないのが属国たる日本の務め!
案外忍んでなどはいなくて嬉々としてやっていたとするとなんだかな~ですが、安倍首相の自慢げな顔を見るとそんなところかも。
株価第一主義であれば、格差拡大とか財政赤字などは大した問題ではなく、楽観的に見れば未来は明るい。
武者さんは講演も聞いたこともあり、その真摯な語り口には好感が持てるし、万年強気の楽観論には元気が出ますが、経済学的にも政治的にもあまりにも現体制べったり論にはちょっと辟易。株価至上主義ということでしょうけど総資本の露骨な狙いとはこんなもんでしょうか。



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