元ゴールドマン・サックス金融調査室長にして現在は京都の町家に住む小西美術工藝社(創業300年の国宝・重要文化財の保守を手掛ける会社です)社長デービッド・アトキンソンの日本論です。
日本人は国際比較を好み海外と比較しての優劣をつけたがる。最近はテレビ番組に多く見られるのですが「やはりすごい日本」というような論調で自画自賛していることが多いのですが、文化、価値観が異なる中での比較というのは難しいものです。
また時代により、経済の状況によって強み、弱みというのは変わり、ある時点では強みであったものが時がたつと弱みになることもあり表裏一体ともいえます。
この本では「強み」とは日本が大きく成長するためにぜひとも伸ばしていきたい点であり「弱み」とは大きなポテンシャルを秘めているにもかかわらず活用されていない点として論じています。
日本は経済大国ですが人口規模も大きい。人口が一億以上で先進国なのは日本とアメリカだけです。そして国民の教育がしっかりなされていて人間としての基礎ができている。これが復興需要と相まって戦後の高度成長をもたらしたのですが、戦前からの比較でみるとある意味当然だったとも言え、労働者の技術力と勤勉さが奇跡をもたらしたものではないのです。
ところで日本の一人当たりの生産性は世界で28位。この効率性の悪さはどうしてでしょう。きわめてレベルの高い日本の「よく働く」労働者はGDPから見ると賢くは働いていない?日本社会における仕事の進め方の効率が良くないみたいです。
その原因はというと日本の経営者にある!著者のアナリスト時代の経験では日本の経営者はあまりにも経営者にとって固執すべき「数字」におおらかというか興味がなくてプロセスを重視しすぎている。もっと「数字」に基づいた科学的な経営ができる人が必要!そうすればまだ様々な力を引き出して成長することが可能なのです。
う~ん、これにはいろいろな反論が予想されますけど国全体として生産性が低いという結果をどう判断するかです。
ところで日本の「効率が良くない」という問題をたどっていくと、かなりの部分「面倒くさい」という言葉に帰結するとか。面倒を解決するのが仕事のはずなのに「面倒」を事前に避けるために自分の意見を殺し正論を潰している。戦後右肩上がりの成長を続けていく中では「面倒くさい文化」というものは日本の「強み」だったのですが、高度成長のベースになっていた人口という強みを失った今は「面倒くさい」では済まなくなっている。
日本は外から入ってきたものを自己流にアレンジするのがうまいと言われていますが、これはどこの国でもやっていること。日本の文化的な強みは様々な文化を取り入れるだけでなく古い文化も残していくこと。文化をアレンジするのではなく「足し算」することが得意なのです。そう言えば神道も仏教もキリスト教も共存しています。よく言われるようにクリスマスを祝い成人式は振袖で結婚式は神道、葬式は仏教で初詣に神社へ行くことに何の違和感も感じていません。料理もレストランだけでなく家庭でも世界各国料理を食べています。これは世界的に見ても非常に珍しい現象であり、こうした古いものを残していることは世界の中で観光需要が大きな伸びしろを持っていることから非常に大きな強みになりうるのです。
最近に本を訪れる旅行者が大きく伸びて今年は年間2千万人を超えそうと言われていますがタイ、マレーシアで2千5百万人以上の観光客が来ています。お金でみれば外国人観光収入は先進国で比べても対GDPではいまだ微々たるもの。今の状況は観光発展途上国なのです。日本を訪れる観光客は中国、台湾、韓国からが多いのですが、世界の中で一人当たり観光支出額が多いのは、オーストラリア、ドイツ、カナダ、イギリス、フランスとか。爆買いの中国は第10位。韓国、台湾はトップ10に入っていません。もっとお金を落とす観光客を呼び込まなければいけません。どうするか?「古いものが残っている」という世界にもまれな強みを生かすのです。「文化財観光」や「文化体験」をできるようにしていくのです。
ところで日本人は単一民族で協調性があり自己表現が乏しいと言われていますが、著者によれば欧米に比べて個人主義が強い印象。それは街並みを見ればよく分かります。街並みをきれいにするよりも自分の土地を守るほうが重要で、自分の庭はきれいにしますが同じ街の周りの家との調和はあまり気にしません。そう言われればそうかもしれませんね。みんな自分の好みである人は和風、ある人は西洋風と勝手に家を建てています。建築協定という手法はあってもなかなか実効性がある規制にはなっていません。
日本はこれから人口は減っていきますがまだまだ成長できるポテンシャルは持っていて、潜在能力に比べると「もったいない」状態みたいです。
同じ著者で以前レビューした「新・観光立国論」という本も出ています。内容はかぶっていることも多いのですが、どちらか1冊と言われたら「新・観光立国」かな。
日本人は国際比較を好み海外と比較しての優劣をつけたがる。最近はテレビ番組に多く見られるのですが「やはりすごい日本」というような論調で自画自賛していることが多いのですが、文化、価値観が異なる中での比較というのは難しいものです。
また時代により、経済の状況によって強み、弱みというのは変わり、ある時点では強みであったものが時がたつと弱みになることもあり表裏一体ともいえます。
この本では「強み」とは日本が大きく成長するためにぜひとも伸ばしていきたい点であり「弱み」とは大きなポテンシャルを秘めているにもかかわらず活用されていない点として論じています。
日本は経済大国ですが人口規模も大きい。人口が一億以上で先進国なのは日本とアメリカだけです。そして国民の教育がしっかりなされていて人間としての基礎ができている。これが復興需要と相まって戦後の高度成長をもたらしたのですが、戦前からの比較でみるとある意味当然だったとも言え、労働者の技術力と勤勉さが奇跡をもたらしたものではないのです。
ところで日本の一人当たりの生産性は世界で28位。この効率性の悪さはどうしてでしょう。きわめてレベルの高い日本の「よく働く」労働者はGDPから見ると賢くは働いていない?日本社会における仕事の進め方の効率が良くないみたいです。
その原因はというと日本の経営者にある!著者のアナリスト時代の経験では日本の経営者はあまりにも経営者にとって固執すべき「数字」におおらかというか興味がなくてプロセスを重視しすぎている。もっと「数字」に基づいた科学的な経営ができる人が必要!そうすればまだ様々な力を引き出して成長することが可能なのです。
う~ん、これにはいろいろな反論が予想されますけど国全体として生産性が低いという結果をどう判断するかです。
ところで日本の「効率が良くない」という問題をたどっていくと、かなりの部分「面倒くさい」という言葉に帰結するとか。面倒を解決するのが仕事のはずなのに「面倒」を事前に避けるために自分の意見を殺し正論を潰している。戦後右肩上がりの成長を続けていく中では「面倒くさい文化」というものは日本の「強み」だったのですが、高度成長のベースになっていた人口という強みを失った今は「面倒くさい」では済まなくなっている。
日本は外から入ってきたものを自己流にアレンジするのがうまいと言われていますが、これはどこの国でもやっていること。日本の文化的な強みは様々な文化を取り入れるだけでなく古い文化も残していくこと。文化をアレンジするのではなく「足し算」することが得意なのです。そう言えば神道も仏教もキリスト教も共存しています。よく言われるようにクリスマスを祝い成人式は振袖で結婚式は神道、葬式は仏教で初詣に神社へ行くことに何の違和感も感じていません。料理もレストランだけでなく家庭でも世界各国料理を食べています。これは世界的に見ても非常に珍しい現象であり、こうした古いものを残していることは世界の中で観光需要が大きな伸びしろを持っていることから非常に大きな強みになりうるのです。
最近に本を訪れる旅行者が大きく伸びて今年は年間2千万人を超えそうと言われていますがタイ、マレーシアで2千5百万人以上の観光客が来ています。お金でみれば外国人観光収入は先進国で比べても対GDPではいまだ微々たるもの。今の状況は観光発展途上国なのです。日本を訪れる観光客は中国、台湾、韓国からが多いのですが、世界の中で一人当たり観光支出額が多いのは、オーストラリア、ドイツ、カナダ、イギリス、フランスとか。爆買いの中国は第10位。韓国、台湾はトップ10に入っていません。もっとお金を落とす観光客を呼び込まなければいけません。どうするか?「古いものが残っている」という世界にもまれな強みを生かすのです。「文化財観光」や「文化体験」をできるようにしていくのです。
ところで日本人は単一民族で協調性があり自己表現が乏しいと言われていますが、著者によれば欧米に比べて個人主義が強い印象。それは街並みを見ればよく分かります。街並みをきれいにするよりも自分の土地を守るほうが重要で、自分の庭はきれいにしますが同じ街の周りの家との調和はあまり気にしません。そう言われればそうかもしれませんね。みんな自分の好みである人は和風、ある人は西洋風と勝手に家を建てています。建築協定という手法はあってもなかなか実効性がある規制にはなっていません。
日本はこれから人口は減っていきますがまだまだ成長できるポテンシャルは持っていて、潜在能力に比べると「もったいない」状態みたいです。
同じ著者で以前レビューした「新・観光立国論」という本も出ています。内容はかぶっていることも多いのですが、どちらか1冊と言われたら「新・観光立国」かな。
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