関ヶ原近くの架空の地「田名部」を治めている旗本の蒔坂左京太夫。うつけ者と言われているけど実際はどうなのか・
どうも殿様というのは迂闊に意思表示するといろいろなところが迷惑を被るみたい。よって言いたいことがあってもグッと自分を殺して「大儀であった」「よきに計らえ」とか差しさわりのないことしか言えない。家臣の神輿に乗って「うつけ者」のふりをしているのが一番丸く収まる…
そんな旗本の蒔坂家はなぜか季節外れの師走に参勤交代をする。参勤交代を仕切るのは供頭なのだが、主人公の小野寺一路は父が失火で急死するという不幸に見舞われ、何も引継ぎにないまま急きょ供頭を務める羽目になる。それまでは江戸住まいで剣道と学問に打ち込んでいたのだが、こんな事態になると助言してくれる人もおらず、まったく暗中模索。
旗本といっても7500石で格は大名並なのですが偶然残っていたご先祖の書き残した心得を頼りに、それなりの供揃えをここは調子よく何とかしつらえて兎にも角にも江戸に向けての参勤交代に出発する。
この小説一言でいえば田名部から江戸への参勤交代のドタバタ劇。手練れた浅田次郎の筆は笑いあり涙ありハラハラドキドキしながらで合わせて600ページを超える分厚い上下巻を一気に読ませます。
この参勤交代の裏には後見役である叔父の蒔坂将監による政権奪取計画があるのですが、うつけ者と思われていたお殿様が意外にもしっかりした方で供頭を助けます。家臣にはうつけ者の姿しか見せていないのですが、大名の間ではいつも一緒にいるだけにちゃんと評価されていたのです。
でも、うつけ者の年若いお殿様に苛立ち取って代ろうとする有能な叔父、これって金正恩の後見役ながら粛清されてしまった張成沢の関係とよく似ていますよね。そう思うとどちらが悪役かわからなくなるのですが、これは作者も意図せざること。
結局戦国の世から太平の世に移って永くなると武士の世界などというのは登城してもやることがない。みんなでどうしてこうなっているのかわからないようなしきたりを守り、昔の武具を後生大事にお守りするぐらいで、少ない仕事を分かち合うばかり。こうなると誰が優秀かという明確な価値基準もなくなり、気の合うもので派閥を作って抗争に明け暮れるばかり。中には勘定役のように実務を必要とする部署もありその役についていると実力でものが言えるのでしょうが、それは例外。結果お殿様は派閥抗争に巻き込まれないようにうつけ者が一番?
ドタバタ劇の裏まで想像すると奥が深いかも。
ところで参勤交代は田名部から中山道を通って江戸に行くのですが、名古屋人としては途中の宿場はなじみの深いところばかり。宿泊した地名の「鵜沼」「妻籠」「上松」「奈良井」などは一度ならず行ったことがある。木曾の難所の描写も、今回の南木曽の土砂崩れを見るとさもありなんと思う。親しみをもって読むことができます。苦境にあってもうまく克服して如何にもできすぎなのですが、お約束の展開なのでしょう。それでも加賀のお姫様の部分はいらないと思うのですがこれも賑やかし…
最後はすべてうまくいって大団円となるのですが、これは如何にも如何にもという感じ。調子よすぎるのでは。
時代設定が幕末(皇女和宮の降嫁は少し前の設定です)なのですが、こんな時に参勤交代に血道をあげているようでは幕府の将来も知れています。
深く考えるとまずいのでエンターティメントとして楽しんでください。
どうも殿様というのは迂闊に意思表示するといろいろなところが迷惑を被るみたい。よって言いたいことがあってもグッと自分を殺して「大儀であった」「よきに計らえ」とか差しさわりのないことしか言えない。家臣の神輿に乗って「うつけ者」のふりをしているのが一番丸く収まる…
そんな旗本の蒔坂家はなぜか季節外れの師走に参勤交代をする。参勤交代を仕切るのは供頭なのだが、主人公の小野寺一路は父が失火で急死するという不幸に見舞われ、何も引継ぎにないまま急きょ供頭を務める羽目になる。それまでは江戸住まいで剣道と学問に打ち込んでいたのだが、こんな事態になると助言してくれる人もおらず、まったく暗中模索。
旗本といっても7500石で格は大名並なのですが偶然残っていたご先祖の書き残した心得を頼りに、それなりの供揃えをここは調子よく何とかしつらえて兎にも角にも江戸に向けての参勤交代に出発する。
この小説一言でいえば田名部から江戸への参勤交代のドタバタ劇。手練れた浅田次郎の筆は笑いあり涙ありハラハラドキドキしながらで合わせて600ページを超える分厚い上下巻を一気に読ませます。
この参勤交代の裏には後見役である叔父の蒔坂将監による政権奪取計画があるのですが、うつけ者と思われていたお殿様が意外にもしっかりした方で供頭を助けます。家臣にはうつけ者の姿しか見せていないのですが、大名の間ではいつも一緒にいるだけにちゃんと評価されていたのです。
でも、うつけ者の年若いお殿様に苛立ち取って代ろうとする有能な叔父、これって金正恩の後見役ながら粛清されてしまった張成沢の関係とよく似ていますよね。そう思うとどちらが悪役かわからなくなるのですが、これは作者も意図せざること。
結局戦国の世から太平の世に移って永くなると武士の世界などというのは登城してもやることがない。みんなでどうしてこうなっているのかわからないようなしきたりを守り、昔の武具を後生大事にお守りするぐらいで、少ない仕事を分かち合うばかり。こうなると誰が優秀かという明確な価値基準もなくなり、気の合うもので派閥を作って抗争に明け暮れるばかり。中には勘定役のように実務を必要とする部署もありその役についていると実力でものが言えるのでしょうが、それは例外。結果お殿様は派閥抗争に巻き込まれないようにうつけ者が一番?
ドタバタ劇の裏まで想像すると奥が深いかも。
ところで参勤交代は田名部から中山道を通って江戸に行くのですが、名古屋人としては途中の宿場はなじみの深いところばかり。宿泊した地名の「鵜沼」「妻籠」「上松」「奈良井」などは一度ならず行ったことがある。木曾の難所の描写も、今回の南木曽の土砂崩れを見るとさもありなんと思う。親しみをもって読むことができます。苦境にあってもうまく克服して如何にもできすぎなのですが、お約束の展開なのでしょう。それでも加賀のお姫様の部分はいらないと思うのですがこれも賑やかし…
最後はすべてうまくいって大団円となるのですが、これは如何にも如何にもという感じ。調子よすぎるのでは。
時代設定が幕末(皇女和宮の降嫁は少し前の設定です)なのですが、こんな時に参勤交代に血道をあげているようでは幕府の将来も知れています。
深く考えるとまずいのでエンターティメントとして楽しんでください。
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