続いては中屋敷さんの「生命のからくり」
知的興奮を誘う本ですが、なかなか難しい。ブログにまとめるのにもちょっと苦戦して、読み返したりしているので時間がかかっています。
この地球に生命が誕生して以来三十数億年。
最初はどろどろの無機物しかなかったなかで、ある条件下で有機物が生成される。
おそらく海底の熱水鉱床の周辺で最初の生物が誕生したのでしょう。このことを考えていくと当然ながら「生物とは何か」という問題に行き当たるんですが、生物と無生物の境界というのはなかなかクリアーに引きにくい。
最初の1章では、まさに境界域に生息している生物を例示しています。
「ブフネラ」と言っても初めて聞く名前ですが、アブラムシの「脂肪体」組織の中のバクテリオサイトという特殊な細胞に生息しているグラム陰性菌。アブラムシの中でしか生きられずゲノム遺伝子の多くを宿主遺伝子に頼っている。ミトコンドリアや葉緑体と同じように、これは細胞の小器官ではないのか?
ウイルスは遺伝物質は保有しているが細胞膜構造を持たない。タンパク質合成やエネルギーを作るための代謝はおこなわずにすべて宿主細胞に依存している。その為論争はあるのですが、ウイルスは一応非生物とされている。ところがミミウイルスはゲノムサイズが大きくタンパク質合成に関する遺伝子を持っていた。これはウイルスでも生物たる最近との境界をオーバーラップしている。
生物と無生物の間は明確な線があるのではなくて、本質的には連続した現象かも…
ここまでは言わば前振りで、この本のテーマは、この地球に生命が生まれて、ここまで進化してきたのは、生命が「情報の保存システム」と「情報の改変システム」という相矛盾したシステムを内包していたからということ。
情報の保存については、ご存知「DNP」の複製機構があるのですが、この複製に際しては何故か作業効率が悪くステップも複雑になる様式(どういう様式か気になる人は本書第3章を読んでください。これを見つけたのは名古屋大学の岡崎教授で早世しなければノーベル賞は確実だったとか)が採用されている。この非対称で複雑な様式が採用されたのはなぜかと考えるとこれが遺伝子の突然変異率を高め、「情報の保存」と「情報の変革」をスマートに共存させているのです。
生命は前提となる記録情報を蓄積しながら、複製過程でエラーや偶発的な損傷による変異を持ったDNP分子の中で何らかの形で評価されるような変異があれば、それが「淘汰」されて生き残っていくことによって、より複雑な環境変化に対応できるように進化していく。生物に特徴的なことは情報の流れが発信側から受信側に一方向に流れるのではなくて発信側も受信側となり新たに生成される際に他から影響を受けて変化する仕組みが成立していることで、自己複製を容易にし(情報の保存)、動的な性質も付与(情報の変革)していることとか。
う~ん、生命の進化の秘密はこんなところにあったのか。
情報をコピーするだけなら多様性は生まれようがなく、生命誕生以来三十数億年の間に地球上で起きた何回かの環境の激変を潜り抜けてくることができなかったはずなのです。
単純に数を増やしていくだけならば、無性生殖の方が効率的なのですが、有性生殖は全ゲノムのシャッフリングを行うことによって組み合わせによる多様性を創出し、環境の変化に対応してきた。
無性生殖と比べると、有性生殖は1つの個体を作るのに2つの個体が必要であり、配偶子と呼ばれる特殊な細胞を作る必要があり、相手を見つけるコストがかかる。様々なレベルで時間と手間のかかる大きなコストが必要なのでが、それだけコストをかけても安定して変異を作り出せる有性生殖の方がメリットがあったということ。
ところで生物の歴史の中では、DNAに代表される核酸による情報の保存と変革のシステムの誕生は地球の歴史上の第一の情報革命。二度目の情報革命は文字情報を基本とした人間による文明。文字の成立によって脳の情報保存媒体としての能力を「外部メモリー」によって大きく拡張している。そこでは「情報の保存」と「情報の変革」を両輪として有用な情報を蓄積していくシステムを作り上げている。
文字を持つことによって、肉体的限界を大きく超えた膨大な量の情報を蓄積することができ、文明が進歩していったのが分かります。
その中にも「過ち」を犯す遺伝子や「非調和性」の遺伝子は保存されており、それが時として文明に進歩や豊かさを与える原動力になってきていた。文明の進歩は既定路線を歩むだけの凡人ではなくて空気を読まない変な人が主役だったと言われると凡人である私はそうかなと思うしかないですね。
ぐちゃぐちゃ書いてみましたが、内容が濃いのでどうも簡単にはまとめられません。
いささか力不足でしたが、少しでも興味がわいたらぜひ一度読んでください。
知的興奮を誘う本ですが、なかなか難しい。ブログにまとめるのにもちょっと苦戦して、読み返したりしているので時間がかかっています。
この地球に生命が誕生して以来三十数億年。
最初はどろどろの無機物しかなかったなかで、ある条件下で有機物が生成される。
おそらく海底の熱水鉱床の周辺で最初の生物が誕生したのでしょう。このことを考えていくと当然ながら「生物とは何か」という問題に行き当たるんですが、生物と無生物の境界というのはなかなかクリアーに引きにくい。
最初の1章では、まさに境界域に生息している生物を例示しています。
「ブフネラ」と言っても初めて聞く名前ですが、アブラムシの「脂肪体」組織の中のバクテリオサイトという特殊な細胞に生息しているグラム陰性菌。アブラムシの中でしか生きられずゲノム遺伝子の多くを宿主遺伝子に頼っている。ミトコンドリアや葉緑体と同じように、これは細胞の小器官ではないのか?
ウイルスは遺伝物質は保有しているが細胞膜構造を持たない。タンパク質合成やエネルギーを作るための代謝はおこなわずにすべて宿主細胞に依存している。その為論争はあるのですが、ウイルスは一応非生物とされている。ところがミミウイルスはゲノムサイズが大きくタンパク質合成に関する遺伝子を持っていた。これはウイルスでも生物たる最近との境界をオーバーラップしている。
生物と無生物の間は明確な線があるのではなくて、本質的には連続した現象かも…
ここまでは言わば前振りで、この本のテーマは、この地球に生命が生まれて、ここまで進化してきたのは、生命が「情報の保存システム」と「情報の改変システム」という相矛盾したシステムを内包していたからということ。
情報の保存については、ご存知「DNP」の複製機構があるのですが、この複製に際しては何故か作業効率が悪くステップも複雑になる様式(どういう様式か気になる人は本書第3章を読んでください。これを見つけたのは名古屋大学の岡崎教授で早世しなければノーベル賞は確実だったとか)が採用されている。この非対称で複雑な様式が採用されたのはなぜかと考えるとこれが遺伝子の突然変異率を高め、「情報の保存」と「情報の変革」をスマートに共存させているのです。
生命は前提となる記録情報を蓄積しながら、複製過程でエラーや偶発的な損傷による変異を持ったDNP分子の中で何らかの形で評価されるような変異があれば、それが「淘汰」されて生き残っていくことによって、より複雑な環境変化に対応できるように進化していく。生物に特徴的なことは情報の流れが発信側から受信側に一方向に流れるのではなくて発信側も受信側となり新たに生成される際に他から影響を受けて変化する仕組みが成立していることで、自己複製を容易にし(情報の保存)、動的な性質も付与(情報の変革)していることとか。
う~ん、生命の進化の秘密はこんなところにあったのか。
情報をコピーするだけなら多様性は生まれようがなく、生命誕生以来三十数億年の間に地球上で起きた何回かの環境の激変を潜り抜けてくることができなかったはずなのです。
単純に数を増やしていくだけならば、無性生殖の方が効率的なのですが、有性生殖は全ゲノムのシャッフリングを行うことによって組み合わせによる多様性を創出し、環境の変化に対応してきた。
無性生殖と比べると、有性生殖は1つの個体を作るのに2つの個体が必要であり、配偶子と呼ばれる特殊な細胞を作る必要があり、相手を見つけるコストがかかる。様々なレベルで時間と手間のかかる大きなコストが必要なのでが、それだけコストをかけても安定して変異を作り出せる有性生殖の方がメリットがあったということ。
ところで生物の歴史の中では、DNAに代表される核酸による情報の保存と変革のシステムの誕生は地球の歴史上の第一の情報革命。二度目の情報革命は文字情報を基本とした人間による文明。文字の成立によって脳の情報保存媒体としての能力を「外部メモリー」によって大きく拡張している。そこでは「情報の保存」と「情報の変革」を両輪として有用な情報を蓄積していくシステムを作り上げている。
文字を持つことによって、肉体的限界を大きく超えた膨大な量の情報を蓄積することができ、文明が進歩していったのが分かります。
その中にも「過ち」を犯す遺伝子や「非調和性」の遺伝子は保存されており、それが時として文明に進歩や豊かさを与える原動力になってきていた。文明の進歩は既定路線を歩むだけの凡人ではなくて空気を読まない変な人が主役だったと言われると凡人である私はそうかなと思うしかないですね。
ぐちゃぐちゃ書いてみましたが、内容が濃いのでどうも簡単にはまとめられません。
いささか力不足でしたが、少しでも興味がわいたらぜひ一度読んでください。