ソマリアというとどれだけ知っているのだろうか。
アフリカの角。
内戦が続き、ゲリラが跋扈し、無差別攻撃と虐殺が横行。
アメリカが介入したのだけど、現地の実情を無視して失敗してあえなく撤退。「ブラックホークダウン」という映画があったと思いますが、モデルはソマリア。ヘリを撃墜されて乗組員は殺され、その死体を市中引き回しされ映像で世界に配信された事件。
海賊が横行して、日本も海上自衛隊を派遣。
国家の態をなしておらず、暴力の支配する無政府状態。
こんなところでしょうか。
ところでソマリアの北部は独立宣言してソマリランドという独立国家となっている。そしてそこでは独自に内戦を終結させて、複数政党制による民主化に移行。普通選挙により大統領選挙を実施、あろうことか平和裏に政権交代まで行っている。すでに十数年も平和を維持して独立国家として成り立っている。
そんなことが信じれるだろうか。ほとんどの国が民主主義とは名ばかりの独裁国家で軍によるクーデター騒ぎがしょっちゅうというアフリカにそんな国家があるのだろうか。
それがあるのです。
この本はそんな国があるのか確かめてみようとソマリランドへ飛び込んでいった著者のルポ。著者は早稲田の探検部時代から世界各国を放浪滞在している。危険でほとんど情報がない中で、飛び込んでいった貴重な記録です。

ソマリアというと実は連邦国家で、元はイギリス領とイタリア領の植民地が合わさったもの。ソマリランドは北部のイギリス領ソマリアが独立したもの。イギリスの植民地統治は現地の氏族社会を利用してというか温存して統治していた。それが氏族社会をベースにした民主主義をがうまく機能する理由になっているみたいです。
ソマリランドは貧しい北部を領土としているので産業もなく、主な国家の歳入は貿易港の関税と海外移住者の送金。したがって金がないので国家機能の中で氏族に丸投げしている部分が多い。貧しいからこそ利権の争いも少なく平和が成り立っている部分もあるみたい。相対的に豊かな南部はその面では激しい内部抗争が起こりやすい。でも貧しくても治安が良くて平和があるということは何物にも代えられない。現に著者はソマリランドを歩いているときは外国人といえども夜でも街へ出ることができたのに、海賊国家プントランドや抗争激しい南部ソマリアへ行くときには、車二台にボディガードを引き連れ、ホテルを出ることもままならないという状態でした。
比べてみると、すぐ隣のソマリランドは奇跡のようです。
どうしてこんな状態になってしまったのか、ソマリアの複雑に入り組んだ氏族社会の在り方とかから話さないと理解できないのですが、とにかく氏族の名前は日本人にはなじみがなくて頭の中がこんがらがってしまいます。著者は氏族の名前に日本の源氏、平氏、藤原氏とかに勝手に愛称?を付けて理解しやすくしていますが、それでも頭の中はこんがらがる。軽いノリの独特の文体もあって読みやすいのですが、ソマリアの実態を理解するためには日本の常識にとらわれているとダメみたいです。
それにしても欧米は自分たちの民主主義を機械的に適用しようとして余計紛争をこじらせているのかもしれません。アメリカの介入時も長老会議を急襲して長老たちを虐殺。かえって交渉当事者をなくして泥沼にしています。ブラックホークダウンの時もアメリカ兵は13名死んでいるのですが、ソマリア側はその戦闘で千人ぐらい死んでいるとか。一人の人間の命の価値の格差に愕然とするとともに13名の死者が耐えられず撤退するアメリカという国のある面の脆弱さを見せています。
難民に対する国際援助にしても、国家が機能していなくて流通も途切れているところでは、援助物資を陸揚げして輸送して分配するまでには何重もの関門がある。結果、実際に難民に届くのは何分の一になってしまうし、援助物資が様々なグループの利権となる。利権目当ての魑魅魍魎の跋扈が内戦を助長している面もあるかもしれない。
ソマリアだけでなくアフリカの多くの国では似たようなことが行われているのでしょうが、だからこそ平和で民主的な「ソマリランド」は奇跡に見えます。それを支えているのは氏族社会を基盤にした民主主義。でもこれから平和の果実としてソマリランドが成長していくとその氏族社会も徐々に解体していくのでは。その時にも平和に民主主義を守ることができるのでしょうか。
そんなソマリランド人が日本にも十数人滞在しているそうですが、とにかく世界は広い。いろいろな国があるということを実感させられる本です。
アフリカの角。
内戦が続き、ゲリラが跋扈し、無差別攻撃と虐殺が横行。
アメリカが介入したのだけど、現地の実情を無視して失敗してあえなく撤退。「ブラックホークダウン」という映画があったと思いますが、モデルはソマリア。ヘリを撃墜されて乗組員は殺され、その死体を市中引き回しされ映像で世界に配信された事件。
海賊が横行して、日本も海上自衛隊を派遣。
国家の態をなしておらず、暴力の支配する無政府状態。
こんなところでしょうか。
ところでソマリアの北部は独立宣言してソマリランドという独立国家となっている。そしてそこでは独自に内戦を終結させて、複数政党制による民主化に移行。普通選挙により大統領選挙を実施、あろうことか平和裏に政権交代まで行っている。すでに十数年も平和を維持して独立国家として成り立っている。
そんなことが信じれるだろうか。ほとんどの国が民主主義とは名ばかりの独裁国家で軍によるクーデター騒ぎがしょっちゅうというアフリカにそんな国家があるのだろうか。
それがあるのです。
この本はそんな国があるのか確かめてみようとソマリランドへ飛び込んでいった著者のルポ。著者は早稲田の探検部時代から世界各国を放浪滞在している。危険でほとんど情報がない中で、飛び込んでいった貴重な記録です。

ソマリアというと実は連邦国家で、元はイギリス領とイタリア領の植民地が合わさったもの。ソマリランドは北部のイギリス領ソマリアが独立したもの。イギリスの植民地統治は現地の氏族社会を利用してというか温存して統治していた。それが氏族社会をベースにした民主主義をがうまく機能する理由になっているみたいです。
ソマリランドは貧しい北部を領土としているので産業もなく、主な国家の歳入は貿易港の関税と海外移住者の送金。したがって金がないので国家機能の中で氏族に丸投げしている部分が多い。貧しいからこそ利権の争いも少なく平和が成り立っている部分もあるみたい。相対的に豊かな南部はその面では激しい内部抗争が起こりやすい。でも貧しくても治安が良くて平和があるということは何物にも代えられない。現に著者はソマリランドを歩いているときは外国人といえども夜でも街へ出ることができたのに、海賊国家プントランドや抗争激しい南部ソマリアへ行くときには、車二台にボディガードを引き連れ、ホテルを出ることもままならないという状態でした。
比べてみると、すぐ隣のソマリランドは奇跡のようです。
どうしてこんな状態になってしまったのか、ソマリアの複雑に入り組んだ氏族社会の在り方とかから話さないと理解できないのですが、とにかく氏族の名前は日本人にはなじみがなくて頭の中がこんがらがってしまいます。著者は氏族の名前に日本の源氏、平氏、藤原氏とかに勝手に愛称?を付けて理解しやすくしていますが、それでも頭の中はこんがらがる。軽いノリの独特の文体もあって読みやすいのですが、ソマリアの実態を理解するためには日本の常識にとらわれているとダメみたいです。
それにしても欧米は自分たちの民主主義を機械的に適用しようとして余計紛争をこじらせているのかもしれません。アメリカの介入時も長老会議を急襲して長老たちを虐殺。かえって交渉当事者をなくして泥沼にしています。ブラックホークダウンの時もアメリカ兵は13名死んでいるのですが、ソマリア側はその戦闘で千人ぐらい死んでいるとか。一人の人間の命の価値の格差に愕然とするとともに13名の死者が耐えられず撤退するアメリカという国のある面の脆弱さを見せています。
難民に対する国際援助にしても、国家が機能していなくて流通も途切れているところでは、援助物資を陸揚げして輸送して分配するまでには何重もの関門がある。結果、実際に難民に届くのは何分の一になってしまうし、援助物資が様々なグループの利権となる。利権目当ての魑魅魍魎の跋扈が内戦を助長している面もあるかもしれない。
ソマリアだけでなくアフリカの多くの国では似たようなことが行われているのでしょうが、だからこそ平和で民主的な「ソマリランド」は奇跡に見えます。それを支えているのは氏族社会を基盤にした民主主義。でもこれから平和の果実としてソマリランドが成長していくとその氏族社会も徐々に解体していくのでは。その時にも平和に民主主義を守ることができるのでしょうか。
そんなソマリランド人が日本にも十数人滞在しているそうですが、とにかく世界は広い。いろいろな国があるということを実感させられる本です。