goo blog サービス終了のお知らせ 

怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

東野圭吾「天空の蜂」

2012-05-12 18:30:03 | 
新書版2段組で459ページ。読み応えがあります。
量だけでなく内容も引き込まれます。

新型へリコプターが引渡しの日に盗まれ、コンピューターによる遠隔操作で福井県の高速増殖炉の上でホバリング。
日本の全原子炉を止めないと爆発物を積んだヘリを高速増殖炉に落とすとの脅迫が。
1995年の作品なのですが、福島原発の事故があった今読むと多分発表当時よりも真に迫っていると思います。
理科系の著者らしく原子炉に関する知識、ヘリコプターに関する知識は半端ないのですが、原発については福島以後マスコミにさかんに解説が出ていたので、かえって基礎知識がついてよく分かるようになったと思います。
原子力発電所を扱った小説では高村薫の「神の火」もありますが日本の原発はあまりにも安全神話に包まれていて、非常事態に対応できるかというと心細いばかりです。現実に想定外!の津波によって大惨事をもたらしたのですが、想定外のテロに対しては対応できるのでしょうか。この本にも書いてありますが使用済燃料プールは原子炉のように堅牢ではなく、そこを狙ってテロがあれば関西、東海に大きな被害をもたらすのではないでしょうか。現実に福島では使用済燃料プールを低温維持するために大変な苦労をしています。外部電源をテロされたらどうなってしまうのでしょう。ストレステストとか言っていますが、テロ対策についてはちゃんとテストしているのでしょうか。銃を持たないガードマンでは、暴力団から入手した拳銃を持った武装集団が来たら対抗できるのでしょうか。
それとは別に犯人を少しづつ絞り込んでいく過程、犯人に振り回されながら必死に対応策を考えていく技術者、犯人の暗い情熱、読み出すと引き込まれてまさに手に汗握る展開です。
福島を経験した今こそ読まれるべき小説と思いますし、作家の想像力にやっと時代が追いついてきたと言っていいのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする