怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

山田昌弘「少子社会日本」

2007-09-14 13:29:31 | 
このところ少子化についての本を続けて読んでいる。今回は岩波新書で「少子社会日本」。著者はパラサイトシングルという概念を明らかにして有名な山田昌弘です。この本は大変だ大変だ、共同参画が必要だといっているのではなく少子社会になった原因を統計を駆使して明確にして最後に処方箋(これについては有効性というか実現可能性に疑問はあるのですが)を出している。
少子化の一番の原因は晩婚化、未婚化なのですがその主因は
①若年男性の収入の不安定化
②パラサイトシングル(学卒後も親に基本的生活を依存する独身者)現象
ちなみに18~34歳の独身者のうち男女とも9割はいずれ結婚するつもりです。しかし未婚率は時系列に見るとぐんぐん伸び平成17年では30~34歳で男性47.1%、女性32.0%(これは国勢調査の結果です)となっています。このまま行くと2007年22歳の人は一生結婚しない女性は23.5%子どもを生まない人は37%となります。男性は一生結婚しない人が3割程度、子どもを持たない男性は45%程度になるという。結婚問題にメスを入れないと少子化は停まらないと分る。だがこれは解決が難しいこともあって多くの論はこのところはパスして夫婦の子どもを増やすことだけを論じてきたきらいがある。
では主因としての①ですが、男性の学歴別未婚率(これも国勢調査からです)というデータがあって高学歴の方が有意に低いのです。同じく年収別未婚率(これは「人口問題に関する意識調査」から)でも男性は年収が高いほど未婚率は低いのです。バブル経済の崩壊と共に若者の雇用は不安定化し収入も伸びないことによって、結婚しても今までの生活を維持できるような収入が得られなくなっている。一方で②パラサイトシングルとして親と同居する未婚者はどんどん増え(2005年で45.3%)、当面の生活は困らず結婚すると生活水準を下げなくてはならない人はどうしても結婚を選り好みする。結果、未婚率がどんどん上昇することになる。
北欧とか米英は成人すると親から独立するので若年層の生活も苦しくいわゆる一人口より二人口ということで結婚して共稼ぎする。だからこそ共同参画施策が有効となる。日本の場合その前の段階に問題があるので共同参画施策をいくらやっても晩婚化未婚化はなかなか停まらない。
著者は最後にこうした中での少子化対策を4点あげていますが、若者が希望を持て将来も安定収入が得られるようにすることが第一としている。それはそうだろうがそうなると日本経済のあり方とか話はどんどん大きくなって、それができるなら苦労はないのでは。そうすると少子化はやっぱりどうしようもないのでそれに応じた仕組を考えるということになるのでしょうか。
ですが将来日本人の何割かが子どももいなくて高齢者になるとき、その介護とか後見とかは一体誰が見るのでしょうか。座視していていい問題ではないのです。
家族のあり方とか日本の文化、恋愛感、結婚観とかいろいろ考えさせられます。是非一読してください。
これは余談ですが日本は本当にいろいろの統計が揃っているもんだと感心しました。
コメント (1)
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