事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

伏とは怪異

2012-09-10 11:23:13 | ファンタジー
伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 (文春文庫) 伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 (文春文庫)
価格:¥ 700(税込)
発売日:2012-09-04

これはアイディア、件が怪異なら伏もありだけど言われるまで気がつかんかった、「八犬伝」モノと来れば読まずんばあるべからず(それも作者が桜庭と来れば)だが、ハードカバーを買うのはちょっともったいないかなと模様ながめしてたらめでたく文庫化されたので即ゲト

舞台は曲亭馬琴作の「八犬伝」完成前夜の江戸だが設定かなり改変されてる、馬琴はすでに失明してるし奥さんも亡くなってるけど、神田に住んでるし(ホントは四谷)、息子は死んでないが(号は冥土、何だそれは?!)独身で瓦版なんか作ってるし、だから口述筆記してるのは嫁さんではなく養女(実の娘はどうもいないやうな)、そも時代はいつなのか、歌舞伎芝居は存在してるが小屋はえらくお粗末だし、振袖火事(1657年)で消失したハズの江戸城天守閣がバッチシ存在してるし・・・

また作品は「南総里見八犬伝」ではない五文字の「里見八犬伝」でストーリー展開やら登場人物やらもかなり違うんじゃあるまいか?ヒロインの浜路は江戸へ出て来て早速滝沢冥土に会うんだが、こいつ浜路の異母兄が道節だと聞いても全然驚かないもんね、もし「八犬伝」が現存する通りなら「え、そんな、小説のマネしちゃいけませんよ」と言いそうなもんだ
この道節、見た目は石川五右衛門風で(やることも絶対意識してる)腕も立つが忍者ではない、元は武士だったらしいがなぜ浪人してるのかわからない、山で猟師をやってた(勘平か、オマエは)浜路に「兄ちゃん」と呼ばれる、おいおいこいつらの両親、何者だったんだよ?

さて私の見るところこの作者は「忍法八犬伝」を絶対意識してる、原作の犬士たちはここでは本物の犬人間(つまりヒトとイヌのハーフ=伏)で危険なものとして狩られる立場、事実始まった時点ですでに一人死んでるし(毛野)、開幕早々吉原で三人まとめて道節・浜路コンビに倒される(小文吾、角太郎、荘助に当たる女性)、現八は後半でムチャして死ぬ、残った信乃と親兵衛(小文吾の息子、変なとこで凝ってるな)は別々に逃げたがさてその運命やいかに(続く・・・らしい)

おわかり?風太郎先輩がほとんど見せ場なしに殺しちゃった道節と諸般の事情で登場できなかった浜路(道節の異母妹にして信乃の許婚)を主役にして先輩が最終決戦で活躍させた角太郎と荘助を使い捨て
さらに雛衣(角太郎の奥さん)も毛野の恋人として登場し(これまた死んじゃったけど)、信乃の回想によればちょっと前に八人そろって安房まで旅したという・・・

別にこれで完結でもよいじゃないかと思ったが、いろんなことが未解決のまま放り出されてることも確か、犬人間が男二人(ベジータとナッパか、オマエらは)になっちゃったわけでもないようだし、道節・浜路の正体が全く不明なのもわざと隠してるんじゃないかと疑えば疑える、原作者の滝沢親子だって何やら事情がありそうな気もしないではない
というわけで続きがあればうれしいけどなければ勝手に想像するからなくてもかまわないよ

追記-アニメ公開だってさ(こちら)、何か悪い予感、でも行くかもな・・・・

もう一つ追記-今さらだけど「八犬伝」のスピンオフはゴマンとあって、そんな映画化の一つがこちら、今は亡き川村二郎氏も高く評価しておられたと思う、私はTVでチラ見しただけなので薬師丸(お姫様)、真田(親兵衛)、志穂美(毛野)の印象しかないけど、何かスンゴイ豪華キャスト、特に悪役=目黒祐樹には驚いた、そっか、そういうことだったのか、風太郎御大の忍法帖は「甲賀」も実写化されたのに「八犬伝」がなぜないのかねえ、こっちの方がそのマガイモノよりずっと先輩だし(たぶん)ずっとイケてるじゃん

9/11追記-アニメのサイトを見てたら将軍の名前が家定って、おいおいいくら何でもそらねーだろ、馬琴の時代だって家斉のハズだ、むしろ家光が正しくないか?(信乃がやってるの若衆歌舞伎らしい、これはホントに初期の形)、江戸が架空の町って設定なら将軍にも実在しない名前つけた方がよいんじゃないの、昔のマンガに「綱匹」とか「タコ康」てのがあったけど、これじゃジョークが過ぎるのなら義光とか家成なんてだう?