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遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

野間文藝賞

2011-11-21 18:57:44 | 本と雑誌
雪の練習生 雪の練習生
価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2011-01

講談社が出す賞だが、本作は「新潮」2010年10-12月号に連載されて2011年1月に同社から単行本化された、選考委員が誰かもわかってる、講談社を贔屓してはいない、ただ選評(とか他の候補作とかの情報)ってどっかへ載ってるのかな?

あ、そう言えば今気がついた、「谷崎賞」を出してるのは「中央公論」、同誌11月号にはちゃんと選考委員(面倒だし著作権に触れるかもわからんから書かない)による「半島へ」の選評が載ってる、問題は他の候補作が何だったのか、それらに比べて本作がいかに優れてるかという情報が全くないこと、ここが「応募型新人賞」と違うのだ(注-この選評について知りたい方はメールをいただければコピーを差し上げます、このままでは「半島へ」がラジー賞文学賞部門を受賞する可能性かなり高そうだし・・・ま、それはそれでしかたないか)

とは言え多和田さんのこの作品、私は文句なしに面白かった、ホッキョクグマが語り手なんてユニーク過ぎではないか、彼女はモスクワ大サーカスで訓練されて芸をしていたが引退後は作家になって西ベルリンへ亡命し、さらにカナダへ東ベルリンへと移り住んだのだった(第一部)、彼女の娘トスカは東ベルリンでサーカスに入ってウルスラという猛獣使いと競演し、ドイツ統一後にベルリン動物園へ売られて男の子を生んだ、その名はクヌート(第二部)、クヌートこと「わたし」は母が育児放棄したので人間の手で飼育され「地球温暖化防止キャンペーン」のスターとして売り出された、ここはベルリン動物園だが、生きているハズの母トスカはどうしたのか・・・(第三部)

第一部のモスクワからドイツへ亡命した作家についてはもしやソルジェニツィンかなあ、ちょっと古過ぎ?ぐらいしか思いつけないが(ご存知の方ありましたら教えて)、猛獣使いのウルスラさんは実在の人物で10頭のホッキョクグマを自在に扱っていた(こちら、この動画に対するコメントってほとんどが「動物をいじめちゃダメ」だよね、ああ時代は変わったのだ)、因みにモスクワ大サーカスで使われてたのはヒグマだったと思う(近縁種だけど白くなかった)、クヌートのことは知らないヒトないよね、ほとんど事実そのままにして事実は小説より奇、それをきっかり小説として書いちゃうこの作者はやっぱたいした方なのである、以上報告オワリ

追記-クヌートは本作出版の2ヵ月後に急死した、死因は確定したのかもしれないが、当時の日本が地震の直後だったせいか報道がみつからない、ドイツ在住の多和田さんはご存知のハズなので、文庫化の時にはボーナストラックの後書きをつけられると思う