漂流物デイヴィッド ウィーズナーBL出版このアイテムの詳細を見る |
漂流物(flotsam)とは「海上や水上に浮かんでいて流れのままにただようもの」。それが浜辺に打ち上げられた時に漂着物となる。どこか遠くの世界からのメッセージ。海岸を歩いて、そうした漂着物を採集してコレクションしている人たちもいる。きっと、その漂着物に対する様々なイメージを膨らませて、空想の世界に浸っているのであろう。
さて、この絵本には、全く言葉がない。絵だけでストーリーが展開していく。
浜辺で遊ぶアメリカ人の少年。彼は、流れ着いた箱型の水中カメラを拾う。波が運んできたものである。中をのぞくと、現像されていないフィルムが入っていた。
少年がカメラ店で現像してもらった写真に写っていたものは!
見たこともない海の異界の風景であった。
本当のそんな世界が実在するのであろうか。
最後の1枚の写真には、日本人かも知れない東洋人の少女の写真が写っていた。良く見ると、少女は写真を持っていた。その写真には、ラップランドかどこか北の方に住む少年の写真が写っていた。その少年も写真を持っている。ブロンドの髪の少女の写真。その彼女も……。
少年は、肉眼では良く見えない写真をルーペを使ってみる。そこにも同じような写真を持つ子どもの写真。際限なく続く予感がする。ついには、顕微鏡で観てみることにする。倍率を挙げるにつれて、見える写真は年代が古くなっていくようだ。カラー写真から白黒写真への変化。そして70倍で一人の少年の写真にたどり着く。昔の服装を着た浜辺に立つ少年の姿。
不思議な写真を見てしまった少年が思いついたことは……。
不思議なカメラをめぐるお話は、素敵な絵によって表現されている。カメラの旅は今も続いているのであろう。