トッペイのみんなちがってみんないい

透析しながら考えた事、感じた事。内部障害者として、色々な障害者,マイノリティの人とお互いに情報発信したい。

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未だ女性史という視点で観ることの意義/『絵本 日本女性史1』

2010-06-30 14:00:34 | 絵本・児童文学
絵本 日本女性史〈1〉原始・古代・中世
野村 育世
大月書店

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 一昨年か、昨年か、「男性学」というカテゴリーが学問上に立てられた。それまでは、「女性学」という分野が選考しており、何故今となって「男性学」という思いを持たれたかもしれない。それほど、歴史学にしろ、社会学にしろ、男性中心に描かれることが当然視されており、敢えて「男性学」というカテゴリーを立てる必要性がないと考えられてきたからだろう。
 しかし、人間社会も「性」の問題から無関係ではありえず、女性の地位の向上、それは、歴史上も必然的であったが、に伴い、過渡的に立てられた「女性学」の研究成果の充実が、新たに「男性学」の研究の必要性を求めたものなのであろう。

 歴史の分野で、身近な存在である「郷土史、地域史」を学んでいても、今までは、女性の姿がほとんど見えてこなかった。たとえば、三多摩の自由民権運動の歴史において、五日市憲法、武州困民党事件などの動きでも、なかなか、女性の関与を知ることが出来なかったのである。なお、最近は、郷土史の分野でも、今まで隠されていた女性の姿を掘り起こす試みがなされているという。

 この絵本のシリーズは、日本の歴史を、女性の視点から分かりやすく描いたもので、現代では当たり前の制度と考えられている家族制度や、結婚制度などについても、歴史的変遷を重ねたものであることを書き込むことで、われわれが持っている「既視感的常識」を覆してくれる。

 シリーズの1巻は、「原始・古代・中世」を当たっている。縄文時代の項から、いきなり、あのユニークな縄文土器の作り手が女性であったという指摘に驚いた。恐ろしきは、先入観である。

 女性の社会的地位の肯定も、歴史の流れの中で変遷を遂げていることの、理解しやすい解説もありがたかった。
 また、「買春」や「売春」の始まりについても、従来は、教科書的な本ではあまり取り上げられていなかったことが、「性」という重要なキーワードで解き明かされているのも、大いに興味を持ったものである。

 「新しい歴史教科書」のような、国家主義的復古主義の教科書が、ある一定の意図の下に歴史観をゆがめようとする動きがある現代、こうした「女性史」を描いた絵本からも、我々の国の歴史を捉える上で、多くのことを学び取ることができる。シリーズの2以降も、期待して読みたいと思う。

あなたにふさわしい楽器は?/『くまの楽器店』

2010-06-29 02:15:31 | 絵本・児童文学
くまの楽器店
安房 直子
小学館

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 お客さんの本当に欲しいものが何か、最初からわかっていて、それを売ってくれる不思議なお店の話は、児童書の中で、一つの分野を形成していますね。

 この絵本に出てくるベレー帽をかぶった熊が、森の中でやっている楽器店も、お客さんの希望に応える不思議なお店でした。

 季節に合わせてやってくるお客さんは、最初は、熊の勧めてくれる楽器に対して疑問を持っていましたが、使ってみると本当に素敵な楽器の買い物をしたことに気付かされるのです。

 4つの、心があったかくなるような話を楽しんでくださいね。

 そう、お店の名前は、「ふしぎや」というんです。

北欧の妖精のお話/『おひさまのたまご』

2010-06-29 02:05:03 | 絵本・児童文学
おひさまのたまご
エルサ ベスコフ
徳間書店

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 ヨーロッパは、キリスト教の国ですが、根底に昔からの伝承が根強く残っています。妖精や小人の存在もそうですね。あのムーミンも、妖精のような存在でした。

 この絵本に出てくるのは、北欧の森の中に住んでいる妖精の女の子です。妖精の仕事なんて、何なのでしょうね。彼女は、季節ごとにダンスを踊るのが大好きでした。時々、巣から落ちた鳥の卵を、元の場所に戻してやったりしていました。

 ある日、森の中に、橙色の丸いものを見つけます。妖精は、きっと太陽が産み落とした太陽の卵だと思ってしまいます。

 その後、この太陽の卵をめぐって、森の中に住む様々な仲間たちとのやり取りが楽しめます。

 でも、それが実は、オレンジという南の国の果物だってツグミが教えたくれます。仲間と一緒に、草のストローを指して、おいしいジュースを飲みました。でも、カラスがそれを奪い去ってしまいますが。

 妖精は、冬の間、ツグミの背に乗り、オレンジのなる南の国へと旅立ちます。

 さて、春が来て、妖精は森に帰ってくるのでしょうか。

体の大きさに関する2冊の絵本②/『リックとリック』

2010-06-26 01:30:41 | 絵本・児童文学
リックとリック
エリック・バトゥー
ほるぷ出版

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 次の絵本のキーワードは、「和解」かもしれない。世界中で今でも紛争が絶えない現実。内戦が終わったアフリカのルワンダは、今、ツチ族とフツ族の間でかつての憎しみを乗り越えて国の再建をしようとしている。今、サッカーで盛り上がっている南アフリカ共和国も、かつてのアパルトヘイト政策を乗り越えようと、和解委員会を作っている。

 でも、アフガニスタン、イラクをはじめ、未だ、戦争や紛争状態の国が少なくない。わが国も、今年日韓併合100年の年に、和解ということの重要性は変わらない。

 物語は、大男の国と小人の国をめぐるお話である。広大な土地に二つの種族は、にらみ合って生活していた。お互いを理解しようともしないで、悪口を言い合っていた。
 運命のいたずらなのだろうか。大男の国に、とても体の小さなリックが生まれた。リックが、大男の国で暮らすのはとても困難な事であった。
 小人の国にも、大きな子どもが生まれた。やはり、リックという名前だった。大きな体のリックが小人の国で暮らすのも困難な事であった。

 ある秋の日のこと、生きづらい思いをして一人ぼっちの二人のリックが、それぞれの国から、国境に向かって歩いていた。無意識の自分探しの旅だったのかもしれない。雨が降り出した国境で、二人は出会った。そこで、帽子を好感して、自分の国とは逆の国にそれぞれ目指した。

 たどり着いた国は、二人のリックにとっては、ある意味で住みやすい国であった。そこの国の人々も、新しいリックを受け入れてくれた。
 でも、二人のリックは、生まれた国のように振る舞うことがあった。それは、新しい国の人々には、とても変わった振る舞いに思えた。でも、決して深いなものではなく、好意すら覚えることができるものであった。
 やがて、二人のリックには、恋人ができた。その時、彼女を伴ったそれぞれのリックは、国境目指して歩きだした……。

 さて、この後のお話の展開のカギも「和解」という言葉かも知れません。