「日本は地球の表面積の0,3%にすぎない。そこに全世界の地震の10%が起きている」、そこに50基もの原発が存在している。こうした事実は、原発の推進派であろうと、反対派であろうと共通認識にならねばなるまい。厳密に言うと、ここでの面積には排他的経済水域も含んでいるから、それを除いた場合はここでは考えない。
かつては、原発反対を主張する人たちは、変わり者の少数派と思われていたようだ。それが、昨今のニュースで報道される反対派の集会やデモの広がりという「想定外」の事態が起こっている。
ただし、その参加者が原発のことをどれほど理解して、感覚的でなく、冷静な理性的な自己の意思で集まってきたかは、いささか疑問を覚える。集会を告知するのにどれほどのエネルギーを使い、まさか、集会後に冷房の利いた喫茶店で冷たい飲み物を平然と飲んだとは思いたくない。エネルギーを消費するときは、反対派もそのエネルギーの使用について配慮しなくてはならないくらい、厳しい運動であることを自覚しなくてはなるまい。
本書は、脱原発のために書かれたビジュアル版のシリーズの1冊目である。大震災と原発事故というテーマで、原発に関する歴史、原発の仕組み等の基礎的なことを、図を多用しながらできるだけわかりやすく説明し、先の大震災の時の危険な状況と共に、今後の危険性にも触れている。
反対派に求められていることは、廃炉に向けた行程が、自分たちにとって、生活の質の低下も受け入れなくてはならない覚悟と、賛成派との感情的でない議論を通じての国民的な合理的な合意の形成を、現実的に展開する、将来を背負う子どもたちに対する義務を負っている。
本書を、子どもたちと一緒に読んでいくことができる大人であってほしい。