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障害者死亡、逆転で労災認定=「判断基準、健常者とは別」-名古屋高裁/気になるニュース

2010-04-16 23:17:33 | 法律・裁判
障害者死亡、逆転で労災認定=「判断基準、健常者とは別」-名古屋高裁(時事通信) - goo ニュース

 過労死による労災認定における判断基準については、法令や通達等で一定の基準が決められています。死亡前1カ月の時間外労働の規制ラインが45時間ということになっています。しかし、これは健常者の基準であって、障害者の場合の、同様に適用していいのかは問題となる所です。今回、過労死した夫に対する労災認定を求めた名古屋高裁の控訴審判決が16日にありましたが、その判決の中で、健常者と障害者とでは、判断基準が別であるというのが合理的であるという、注目すべき判断がなされました。1審判決とは反対の判断でした。

 『心臓に障害のある小池勝則さん=当時(37)=が家電販売会社に就職後約1カ月半で死亡したのは過重労働が原因として、妻の友子さん(40)が国を相手に労災認定を求めた訴訟の控訴審判決が16日、名古屋高裁であった。高田健一裁判長は「障害者の労災判断は健常者と同一の基準ではなく、その障害者の事情を考慮するべきだ」とした上で、業務と死亡との因果関係を認め、訴えを退けた一審判決を取り消し、労災と認定した。

 一審名古屋地裁は2008年3月、「死亡前の1カ月の時間外労働は33時間で、健常者の規制ラインの45時間を下回る」として、業務との因果関係を認めなかった。

 高田裁判長は「33時間の時間外労働は心臓に障害のある人にとっては過重な労働で、同じ仕事でも障害のない人とでは疲労度が異なる」と述べ、労災と認定した。』 

盲導犬事故死、294万円賠償命令「価値、白杖と違う」/気になるニュース

2010-03-05 23:35:57 | 法律・裁判
盲導犬事故死、294万円賠償命令「価値、白杖と違う」(朝日新聞) - goo ニュース

盲導犬事故死で賠償命令=育成費用290万円認める-名古屋地裁(時事通信) - goo ニュース

 盲導犬の交通事故をめぐって、盲導犬の価値が争点となった全国で初めての判決(原告弁護団談)が出された。

☆事件の概要
 2005年9月26日午前10時頃、静岡県吉田町の交差点で、近くに住む視覚障害の熊沢尚(たかし)さん(74)と、ラブラドルレトリバーの盲導犬「サフィー」(当時6歳)が右折してきた大型トラックにはねられた。熊沢さんは頭などに重傷、サフィーは即死した。

☆原告側の主張
 盲導犬を育成し、無償で貸与していた財団法人「中部盲導犬協会」(名古屋市港区)は、高知県内のトラック運転手と勤務先の運送会社(高知市)に計607万円の損害賠償を求めた。訴訟では、同協会は盲導犬の特殊性と希少性を主張した。
 また、被害者の男性も、盲導犬を失い精神的苦痛を被ったとして、慰謝料として計220万円を請求した。

☆被告側の主張
「盲導犬は歩行器具にすぎない」、つまり、視覚障害者が持つ白杖と同じ性質のものである。運転手側は同犬種の子犬の価格(10万円)など計20万円が損害と反論した。

☆3月5日、名古屋地裁(松田敦子裁判官)における判決
 同協会の訴えに対しては、「盲導犬は視覚障害者の目の代わりとなり、精神的な支えともなっている。その価値は白杖とは明らかに異なり、育成に要した費用をもとに考えるべきだ」判断。松田裁判官は、協会がこの盲導犬の育成費用として453万円を支出したと認定。平均的な盲導犬の活動期間は約10年で、約5年の活動期間が残っていたとした。事故時には盲導犬としての技能が向上していたことも考慮し、価値を260万円と算定。これに弁護士費用なども含めて賠償額を294万円と認定、被告側に支払いを命じた。
 賠償額算定にあたっては、同協会がこの盲導犬の育成費用として約450万円を支出したと認定。一般的な盲導犬の活動期間は約10年で、約5年の活動期間が残っていたとした。原告側の訴えを一部認め、約290万円の支払いを命じた。弁護士費用なども含め賠償額を約290万円と認めた。
 なお、原告側は被害者男性の盲導犬を失ったことに対する慰謝料も求めていたが、同裁判官は「男性と被告側で示談が成立している」として請求を棄却した。

元校長の処分取り消し確定=養護学校訴訟-最高裁/気になるニュース

2010-02-26 00:22:30 | 法律・裁判
元校長の処分取り消し確定=養護学校訴訟-最高裁(時事通信) - goo ニュース

 石原都政に変わってから、教育現場に自由は消え、管理体制が着々と進められていった。国家の教育統制に代わって、都の教育委員会は、学校教育を統制していく役割を担っていった。戦前に逆戻りする感すら感じられ、そのうちに、各学校に訓導が置かれるようになるというのも、あながち空想の域に留まらなくなった。

 都立七生養護学校(日野市、現七生特別支援学校)に対する、2003年7月に、都議及び教育委員会、そして、報道機関の産経新聞の記者が、同校を訪れ、同校で長い時間をかけて試行錯誤で取り組まれていた性教育に対する不当な攻撃が行われた。この件に関しては、2005年5月に、保護者2名を含む31名が原告となり、「こころとからだの学習」を破壊していった3都議、東京都、東京都教育委員会、産経新聞社を相手に、憲法教育裁判を起こした。2009年3月12日東京地裁は、3都議らの養護教諭への非難などの行動は政治的介入であり、「不当な介入」にあたる等の判決を出した。この件に関しては、次の岩波ブックレットを参考にしていただきたい。

性教育裁判―七生養護学校事件が残したもの (岩波ブックレット)
児玉 勇二
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 国家主義を目指す人々は、極端に性教育を嫌い、純潔教育を主張する。戦時中の銃後の守りの女性という立場が頭に焼きついているのである。兵士が、国家のために命を投げ出すためには、女性だけは貞節であれというのである。安心して戦うために。

 さて、この裁判とは別に、七生養護学校に関する裁判が続いていた。
同校元校長金崎満氏に対する東京都教育委員会の不当な処分に対するものである。金崎氏の情緒障害の重い子どもたちへの柔軟な学級運営を「不適当な学級編成」とし、教職員の超過勤務を解消するための勤務調整を服務違反などと理由づけて、懲戒処分(停職1カ月)や降格処分(校長解任の分限処分)が2003年9月に行われた。その処分の根底には、性教育の実施への報復の意味が隠されていると考えられた。

 金崎氏のそうした不当な処分の取り消しを求めていた訴訟で、最高裁第3小法廷(堀龍幸男裁判長)は23日付で、都側の上告を退ける決定を行い、都側の処分を取り消した1、2審の判決が確定した。

 原告側は「都教育委員会は養護学校での性教育を不適切と決めつけ、実質的に性教育を理由に処分を行った」と主張したが、1審の東京地裁は、性教育に関する判断を回避し、処分は根拠のない事実に基づいたもので、裁量権の乱用と判断(2008年3月)、2審東京高裁も1審の判断を支持した。(2009年4月)。

 裁判所が、教育現場での、生徒の障害の程度に合わせた学級編成をはじめ、教育現場での柔軟な対応を認め、管理者としての都教育委員会の裁量権の乱用を認めなかった点は評価できる。しかし、事件の根本となった性教育への不当な攻撃に対する判断を示さなかったことは残念である。

 なお、本来の性教育裁判は、現在、東京高裁で進行中である。

中日、私設応援団を入場禁止 名古屋地裁「無効」判決/気になるニュース

2010-01-29 10:51:45 | 法律・裁判
中日、私設応援団を入場禁止 名古屋地裁「無効」判決(朝日新聞) - goo ニュース

 裁判の記事でも、プロ野球の私設応援団に関するもので、変わった訴訟だなと思って記事を読んでみました。
 私設応援団の主張は、プロ野球を応援する権利を侵害されたというもので、主な論点は2つあるようです。
 1つ目は、ラッパなどを使った「鳴り物応援」の禁止の適否の判断で、今回の原告側の私設応援団は、鳴り物応援の許可を求めていました。
 2つ目は、球場への入場拒否は認められるかという問題です。私設応援団の中のメンバーに問題行動があった場合は、入場券の販売拒否対象者を指定するケースは、社会常識的にみても妥当だと思われます。また、私設応援団のメンバーの中に、暴力団との深い関係が認められた場合の、かかるメンバーへの入場券販売拒否対象者指定処分は、当然妥当だと思われます。

 さて、今回の訴訟では、原告が、私設応援団「名古屋白龍会」、「全国竜心連合」と、その会員ら約100人で、被告は、12球団のほか、日本シリーズを主催する日本野球機構(NPB)と日本プロ野球組織でした。

 プロ野球12球団と警察庁などでつくるプロ野球暴力団等排除対策協議会が、中日ドラゴンズの二つの私設応援団の応援を許可せず、応援団の一部会員の全球場への入場を禁じた措置について、会員らが措置の無効の確認を求めたというのが、訴訟の内容でした。この判決が28日に、名古屋地裁(増田稔裁判長)でありました。
 なお、同協議会については、記事の中で『03年に発足。04年に私設応援団に暴力団関係者が関与しているとして、巨人、阪神の私設応援団4団体に対して全球場への出入りを禁止した。06年シーズンからは、鳴り物を使った応援を原則禁止にし、私設応援団を許可制にした。』と紹介しています。


 判決では、鳴り物を使用した組織的な応援については、「応援方法によっては、他の観客に迷惑をかけ、球場の秩序を乱す恐れがある」として、「観客席の雰囲気をどうするかは(主催者である)球団の裁量である」として、訴えを棄却しました。なお、球団側が「応援団の一部会員が暴力団関係者と密接な付き合いがある」などとして不許可措置としたことには、「明らかな事実誤認はなく、著しく妥当性を欠くものではない」としていることにも注目する必要があるようです。この判断については、妥当だと思われます。

 次に、場の禁止措置(入場券の販売拒否)については、増田裁判長はまず「応援団による応援を認めるかどうかの場合と異なり、観戦自体を制限するから、その制限は慎重にすべきだ」として検討をして、その上で、応援団のメンバー22人が問題行動をした事実は認められず、入場券の販売拒否対象者に指定した球団側の措置は「権利乱用(裁量権の逸脱)として違法であり、無効である」との判断をしています。その上で、入場を禁止された会員22人について、「球場での野球観戦を希望してもできないことによる、精神的苦痛を受けた」と認め、1人当たり1万1千円の支払いを命じました。

 なお、事実関係については、判決によれば『応援団側は2007年12月、「特別応援許可規程」に基づき、08年シーズンの応援団方式での応援許可の更新を申請したところ、不許可とする通知を受けた。白龍会の一部会員が全球場への入場を禁止された。』とされています。

 同協議会は『03年に発足。04年に私設応援団に暴力団関係者が関与しているとして、巨人、阪神の私設応援団4団体に対して全球場への出入りを禁止した。06年シーズンからは、鳴り物を使った応援を原則禁止にし、私設応援団を許可制にした。』と記事で紹介されています。

 『判決について、原告の一人は「控訴する方向で検討したい。入場禁止が解かれたのはうれしいが、全員そろって鳴り物で応援したいとの思いが今もあるので、その点は残念だ」と話した。

 一方、NPB側は「コメントは差し控えるが、控訴の方向で検討すると思う」としている。』(朝日新聞)

 最近は、色々な分野の事件で、裁判所に判断を求めるケースが多くなっています。今回の、プロ野球と応援団、観客を巡る訴訟の判決も興味深いものでした。原告、被告共に控訴の方向にあるということなので、まだまだ、この争いは続きます。控訴審の判決がどうなるかも興味のある所です。

明石歩道橋事故 元副署長を初の強制起訴へ 検察審議決/気になるニュース

2010-01-28 01:40:51 | 法律・裁判
明石歩道橋事故で元副署長を初の強制起訴へ(10/01/27)


明石歩道橋事故 元副署長を初の強制起訴へ 検察審議決(朝日新聞) - goo ニュース

 昨年の5月に裁判員制度が始まりましたが、同時に検察審査会法の改正も行われています。こちらの方の改正による「起訴議決制度」は、国民にとっても大事なものでしたが、裁判員制度の報道に隠れて、あまり社会に対する認識は深まりませんでした。

 本来は、刑事事件において、犯罪の嫌疑を受けている者(被疑者)を、裁判所に起訴するかどうかは、原則的には、検察官の専権事項でした。(検察官の起訴独占主義)。しかし、被疑者が警察関係者のような「身内」や、政治家の場合に政治的な思惑が、この判断に働く可能性も否定できません。民主主義は、元々、権力に対する懐疑主義に基づくものです。その様な、検察官の判断に対して、国民としての意見を反映する場が検察審査会です。
 有権者から無作為に選ばれた11人で構成された検察審査会は、検察官の行った「不起訴処分」に対して、不服申し立てがあった場合、その妥当性について判断をすることができます。議事に関しては、過半数(6人以上)で決定することになりますが、「起訴を相当」とする議決をするには、8人以上(3分の2以上)の多数によらなければならないと規定されています。改正前は、起訴相当という判断も、検察官を拘束する効力はありませんでしたが、昨年5月21日の改正後は、検察審査会が2度「起訴すべき」と判断すれば、強制的に起訴できるようになりました。
 つまりは、検察審査会が行った最初に行った起訴相当の議決に対し,検察官が不起訴処分をした場合又は法定の期間内に処分を行わなかった場合《3ヶ月以内(検察官が延長を要するとして期間を延長した場合は指定した期間)に検察官からの対応の通知がない場合》に、検察審査会は再度審査を行い,その結果,起訴すべき旨の議決(起訴議決)が行われた場合には,裁判所が指定した弁護士が被疑者を起訴します。弁護士が検察官の役目を行うことになる訳です。
 検察審査会制度も、上手く機能することができれば、国民のチェック機能が働くことができる訳です。法改正後、始めてのケースとなる裁判の行方に注目したいものです。

 『兵庫県明石市で2001年7月に11人が死亡、247人が負傷した歩道橋事故で、神戸第二検察審査会は27日、業務上過失致死傷容疑で書類送検され、神戸地検が4度にわたって不起訴処分とした明石署の榊和晄(さかき・かずあき)・元副署長(62)を起訴すべきだと議決したと公表した。同様の議決は、昨年5月に施行された改正検察審査会法のもとでは2度目。同法の規定に基づき、検察官ではなく裁判所が指定した弁護士が強制的に起訴する初めてのケースとなる。

 これまで起訴の権限は、公務員の職権乱用罪などについて裁判所が審判に付す決定(付審判決定)を除き検察官が独占してきた。市民から選ばれた審査員が検察官の不起訴処分を覆して容疑者を強制起訴する「起訴議決」と判断したことで、司法界は大きな転換点を迎えた。今回の起訴議決を受け、神戸地裁は兵庫県弁護士会の推薦を受け、指定弁護士を決める。』(朝日新聞)

マンション非居住者に「協力金」最高裁認める/気になるニュース

2010-01-27 00:15:50 | 法律・裁判
マンション非居住者に「協力金」最高裁認める(読売新聞) - goo ニュース

最高裁、不在所有者への課金適法 マンション紛争で(共同通信) - goo ニュース

 マンションを購入した場合、区分所有法により、区分所有者は自動的にそのマンションの管理組合員となる。自分達の生活の場であり、財産的価値を維持するためにも、管理組合員としての役割を果たすことが要求されている。
 当然、組合役員(理事)も引き受ける必要が出てくる。この点を、はっきり自覚していない組合員も少なくないようだ。結局は、自分達のための活動なのである。
 組合役員も、同じメンバーが留任を繰り返すことは望ましくなく、全員が理事を経験する必要がある。そのためには、管理組合では、何年かおきに輪番制で役員を引き受けるようなルールを設けている所が少なくない。

 しかし、様々な理由から、区分所有者でありながら、実際には、そのマンションに住んでいない組合員が増加する傾向があり、管理組合の運営に支障をきたすことが出てきていた。転勤等で、マンションの所有権を残したまま引っ越したり、賃貸に出したりするケースで、この場合は、管理組合の役員に就くこともないのが普通であった。そのために、管理組合の中には、不在組合員に対して、組合活動をしないこと(役員業務を免れていること)に対する代価の意味で「協力金」を徴収するケースがあった。
 この「協力金」徴収の是非に関する裁判の判決が出た。それも、最高裁によるものである。


 大阪市北区にある分譲マンション「中津リバーサイドコーポ」(計868戸)の管理組合が不在組合員5人に、管理組合の運営を負担するための「協力金」を求めた3件の訴訟の上告審で、26日に、最高裁第3小法廷(堀籠幸男裁判長)は課金を適法と判断し、不在所有者5人に計99万円の支払いを命じた。

 『堀籠幸男裁判長は、「マンションの保守管理などには組合員の協力が不可欠だが、不在組合員は貢献をしていない。一定の金銭的負担を求め、居住組合員との不公平を是正しようとしたことは合理性が認められる」と述べ、支払いを拒んでいた5人に対し、月額2500円の支払いを命じた。

 判決によると、マンションは1960年代に建築、分譲されたが、次第に賃貸される部屋が増え、2004年には総戸数868戸のうち、約2割が不在組合員の所有になっていた。

 不在組合員は管理組合の役員に就かないため、管理組合は04年、不在組合員に対して、全員が負担する一般管理費などとは別に、月5000円の協力金を負担させることを決定。07年に2500円に減額した。

 3件の訴訟の1、2審判決は、「不在組合員の不利益が大きい」として管理組合の請求を棄却したり、「月額1000円程度なら合理性がある」として請求を一部認めたりするなど、判断が分かれていた。』(読売新聞)

 今後は、同様のケースで、不在組合員に対して「協力金」の負担を求める管理組合が増加するだろう。ただし、妥当な額については、両者の話し合いの余地があるだろう。

手話通訳準備せず裁判員不選任 高知地裁、要望見落とす/気になるニュース

2010-01-20 19:07:34 | 法律・裁判
手話通訳準備せず裁判員不選任 高知地裁、要望見落とす(朝日新聞) - goo ニュース

聴覚障害の裁判員候補者に手話通訳準備せず(読売新聞) - goo ニュース

 国民による刑事裁判への関与として始まった裁判員制度も、今年で2年目を迎えることになった。
 裁判員には、障害者が選任されることも当然想定され、導入開始にあたっては、聴覚障害者の木村晴美さんが参加して、手話通訳を配した模擬裁判が行われている。その際には、木村さんから、模擬裁判時の感想及び要望が述べられている。

 今回、聴覚障害者が裁判員候補者となるものの、手話通訳が裁判所側のミスにより準備されずに、結局、裁判員に選任されることがないという事態が起こっていたことが判明した。
 
 ニュースでは、次のように、事実関係などが紹介されている。

 『高知地裁で19日に始まった強制わいせつ致傷事件の裁判員裁判で、裁判員の選任手続きに出席した耳の不自由な女性候補者が手話通訳を求めていたにもかかわらず、地裁が準備していなかったことが分かった。事前に送った質問票の回答を地裁側が見落としていたためで、女性は結局、裁判員に選ばれなかった。地裁は女性に陳謝した。

 高知地裁によると、地裁は昨年11月30日、裁判員候補者100人の中から辞退者らを除く65人に「呼出状」を発送し、辞退希望や介助の有無などを尋ねる「質問票」を同封した。この女性の回答は同年12月9日に地裁に届いた。

 女性は質問票の中の「必要なお手伝いについて」という項の「手話通訳」という欄に丸をつけていたが、地裁職員が見落としていたという。

 19日の選任手続きに出席した女性は、ペンで白いボードをなぞる磁石式の筆談器を使ってやりとりした。「手話通訳を用意してくれないのですか」と申し出たが、地裁側は質問票の記載を見落とし、手話通訳者を準備せず筆談器を使って対応した。女性は地裁を出る際「事前に要望していたのに。裁判所を嫌いになりました」と書いたメモを地裁職員に見せたという。

 最高裁によると、障害のある裁判員候補者から事前に配慮を求められた場合、各地裁で障害に応じた措置を取ることが制度の前提。ただ、そうした配慮は義務づけまではされておらず、最終的には各地裁の判断に委ねられている。

 裁判員制度に詳しい園田寿・甲南大学法科大学院教授(刑法)は「ハンディキャップのある人たちへの配慮が各地裁の裁量任せになっている制度の欠陥が表に出たケースだ。全国民が参加する裁判員制度の趣旨に立ち返り、制度を見直すべきだ」と話した。 』(朝日新聞)

『高知地裁で19日に始まった裁判員裁判で、同地裁が聴覚障害のある女性に裁判員候補者として出席させながら、手話通訳者を手配していなかったことが分かった。

 女性が事前に通訳が要ると書類で求めていたが、同地裁が見落としていたという。

 女性は裁判員に選ばれず、同地裁は女性が帰った後、ファクスで謝罪文を送った。

 同地裁によると、女性は19日、裁判員の選任手続きに呼び出され、出席した候補者31人のうちの1人。呼び出し状に同封されていた事前の質問票に、女性は「手話通訳が要る」という欄に印を付けて返送していた。同地裁の複数の職員が質問票をチェックしていたが、見落としたという。女性は補充を含む9人の裁判員には選ばれなかった。

 女性が帰り際、職員に「事前に要望していたのに手配をしてくれなかった。私は裁判所が嫌いになりました」と書いたメモを見せたことから、チェック漏れが判明した。

 同地裁の近藤英彰総務課長は「候補者に大変迷惑をかけた。二度とこういうことがないようにしたい」と話している。

 最高裁広報課によると、裁判員候補者の聴覚障害者が手話通訳を希望した場合、裁判所は通訳者などを手配することが制度の前提になっている。同課は「実情について詳しく話を聞いたうえで、再発防止に向け、チェック体制を強化するよう全国の裁判所に周知徹底したい」としている。

 高知県聴覚障害者協会は「聴覚障害者が制度に参加できるよう適切な対応をお願いしたい」として、近く地裁に文書で要望する。』(読売新聞)

 今回の出来事で分かったことは、事前に要求した聴覚障害者に対する手話通訳者を配することが、義務規定がなく、各地裁の裁量に任されているということであった。他の障害者が、裁判員候補者になった場合の裁判所の配慮も同様の扱いとなっている。
 また、質問票のチェックが複数の職員により行われていたのにも関わらず、見落としてしまったシステム上の不備も反省の上、改善の必要がある。

 政権交代をきっかけに、障害者基本法の廃止が政府から表明され、この法律に変わる障害者基本法の制定が、障害当事者も参加することで進められる方針となった。
 この基本法とは別に、聴覚障害者や高齢者のためのコミュニケーション保障のための「情報保障法」の制定も、当事者から求められている。※手話通訳、要約筆記、筆談等の障害者に合わせた情報保障。
 今回の、裁判員制度でみられた不手際のニュースを聴いて、「情報保障法」の一日も早い成立の必要性を強く認識した。
 また、この「情報保障法」が成立する時は、その中に、「手話はろう者の母語であり、公用語とする」という条文を入れてもらいたい。

重度障害児の逸失利益認定=最低賃金基準に算出、判決は初-青森地裁/気になるニュース

2009-12-27 00:05:52 | 法律・裁判
重度障害者の逸失利益認める 施設内での死亡事故(朝日新聞) - goo ニュース

重度障害児の逸失利益認定=最低賃金基準に算出、判決は初-青森地裁(時事通信) - goo ニュース

 12月4日に、重度自閉症のたっちゃん(当時16歳)が交通事故で亡くなった事件に対して、ご両親の起こした損害賠償請求の民事裁判で、和解により、たっちゃんの逸失利益が認められたことに関するニュースをブログで投稿した。
 たっちゃんのお母さんの、生きている存在ということが認められたという気持ちには、共感させられた。

重度自閉症者の死亡事故で和解 逸失利益支払いで、札幌地裁/気になるニュース

 今回、重度障害者の事故をめぐる裁判で、和解ではなく、初めて判決で逸失利益が認められた。

 北海道北斗市にある知的障害児施設で2004年、入浴中に死亡した重度の自閉症の少年=当時(16)=の両親が、施設側の安全配慮義務が足りなかったなどとして、施設を運営する北海道の社会福祉法人「侑愛(ゆうあい)会」と女性職員に計約7340万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、青森地裁(貝原信之裁判長)は25日、少年の逸失利益を認定し、慰謝料の支払いと合計約3200万円の支払いを命じた。

 原告側の児玉勇二弁護士によると、重度障害者の死亡事故をめぐる逸失利益の訴訟で、最低賃金を基準に支払金が算出された和解例はあるが(先のたっちゃんのケース)、判決は全国で初めてという。

 貝原裁判長は少年の逸失利益について、「一定程度の就労可能性はあった」と認定した。青森県の最低賃金に基づき、一般的に就労が可能とされる67歳まで働いて得られたはずの収入について生活費などを差し引き、約600万円と判断した。このほか、慰謝料の支払いも認めた。

 判決によると、少年は04年6月、同法人が運営する知的障害児施設の寮で入浴中、てんかんの発作で意識を失ったとみられる事故で水死した。 

 和解のケースと共に、その地域の最低賃金をもとに計算される動きが出てきた。注目すべき裁判であった。

重度自閉症者の死亡事故で和解 逸失利益支払いで、札幌地裁/命の価値をめぐる裁判のニュース

2009-12-21 00:09:19 | 法律・裁判
重度自閉症者の死亡事故で和解 逸失利益支払いで、札幌地裁(共同通信) - goo ニュース

 不幸にも、愛する人を交通事故などで失った場合、故意・過失のある加害者に対して刑事裁判とは別に民事裁判で、損害賠償を求める事になるケースがある。

 その際に、逸失利益という考え方で損害賠償額を計算することになる。もし、交通事故などがなければ、将来、被害者が得られるはずだった利益のことで、労働できたであろう期間の収入から、生活費等の必要経費を引く。また、前払いという性質であることから、その間の金利も控除する。死亡や後遺障害によって、得られなくなった収入を、その就いている職業や年齢を考慮して計算される額である。学生等、未だ、就職していない者も、一定の基準に沿って計算される。
 しかし、この逸失利益の考え方は、本来は、健常者を前提としたものである。
障害者の場合は、軽度と中度の知的障害者については、判決や和解で逸失利益が認められたケースがあるが、重度障害者については、ニュースで紹介されている4日の札幌地裁での和解以前は、認められていなかった。

 2005年8月、原告の両親の重度自閉症の長男(当時17)のたっちゃんは、ヘルパーとともに路線バスを利用して札幌市内の公園へ出かけた際、バスから降りたところを乗用車にはねられ死亡した。たっちゃんにとっては、初体験の路線バスを利用した外出であった。たっちゃんが家を出たのが、午前10時で、自己の連絡を受けたのは、午前11時20分であった。母親が病院に向かう途中、タクシーの中でたっちゃんの死亡の報を知らされた。
 
 加害者である運転手側の損害保険会社は、重度障害を理由に、たっちゃんは将来に渡って収入の見込みはなく、逸失利益はゼロ円と算定した。
 両親にとって、生きている価値がゼロだと判断されたことや、誰も責任をとることのない結果に対して、加害者の運転手らを相手取り、逸失利益約4千万円を含む約7300万円の損害賠償を求め、提訴した。
 この訴訟は、12月4日に、札幌地裁(中山幾次郎裁判長)で和解が成立した。約1563万円を逸失利益とみなし、加害者側が計約4013万円を支払う内容であった。

 弁護団によると、重度障害者で逸失利益が事実上認められたのは全国でも初めてであり、札幌地裁は、和解案の算定根拠として、当時の北海道の最低賃金(時給641円)を基に、週休2日で1日8時間労働できたものと見込み、生活費等を控除した約1131万円を提示した。また、障害年金を基に、さらに20歳から65歳までの障害年金計約431万円を加え、逸失利益とみなした。これに両親に対する慰謝料などを合計して約4013万円とした。

 なお、和解金の支払いについては、すでに原告は自賠責保険で3000万円を受け取り済みのため、加害者と事故当時付き添っていたヘルパーが計約1000万円を支払う事になった。

 さらに和解には、事故が再度起こりうる停留所周辺の構造を、バス会社が障害者に配慮する改善を行うという内容も含まれた。障害者も、健常者に対しても、生活する上で、安全が配慮された街づくりに対する要望に関する内容も盛り込まれたことになる。全ての人が生きやすい世の中をつくることを考える上でも、意義のある裁判であった。

 今後、逸失利益の算定において、今回の裁判所の考え方が定着するかどうかは分からないが、損害賠償を算定する上で、「生きている」事の意味を問題提起したケースであった。

具体的な死刑執行の方法

2009-11-08 01:01:21 | 法律・裁判
 死刑存続論にしろ、廃止論にしろ、まずは、日本でどのように死刑が執行されているかを具体的に理解している人は少ないらしい。論議の出発点には、この理解は不可欠であろう。かつて、最高裁で、死刑が憲法が規定する残虐な刑罰に該当するかどうか争われたことがあったが、絞首後は苦しまずに死ねるということで、死刑制度が合憲とされた。
 動画の中に、去年のものであったが、絞首刑の方法に触れられているものがあったので、アップしてみた。

死刑台の仕組みと様子



愛犬が死亡、手術した病院に賠償命令「説明が不十分」/気になる裁判

2009-10-28 15:14:49 | 法律・裁判
愛犬が死亡、手術した病院に賠償命令「説明が不十分」(朝日新聞) - goo ニュース

 今や、ペットが人生のパートナーとなる時代、ペットをめぐる裁判にも、賠償金額の上昇など、変化の兆しが見えてきた。ペットの地位が高く評価される傾向にあるのかも知れない。

 損害賠償請求訴訟の理由として、愛犬のミニチュアダックスフント「ラブ」(メス、生後1年)が死んだのは、避妊手術で過失があった事をあげ、愛知県津島市の飼い主の夫婦が、執刀した同市の獣医師に計約461万円の損害賠償を求めた訴えに対して、名古屋地裁は27日、獣医師に計約54万円の支払いを命じる判決を言い渡した。

 54万円の内訳は、「愛して飼育していたため、死亡により大きな精神的苦痛を被った」として慰謝料計40万円、治療費3万2392円、葬儀費用1500円などの合計で、犬の財産的価値については、親犬の交配にかかった費用から6万円と評価された。

 判決の内容に関しては、ニュースは次のように伝えている。

 『永野圧彦裁判官は、術後管理を怠った獣医師の過失を認め、「術後の状態から、入院の意向を確認するべきで、説明義務違反の過失も認められる」と述べた。犬はもともと重度の高血糖だった。手術によるストレスでさらに血糖値が上昇し、低カリウム血症による呼吸停止か心不全が原因で死んだ可能性が高いと判断した。

 獣医師側は「手術の翌日、飼い主が体調の変化に気付いたが、病院に運ばなかった過失がある」と主張したが、永野裁判官は「飼い主は症状によっては緊急対応が必要という説明を受けていない」として退けた。』

 獣医についても、治療に関しては、ペットの飼い主に対する十分なインフォームド・コンセントが必要であり、過失認定判断に大きな影響を与えることになる。また、今後も、ペットの人間との関係の評価が高くなり、損害賠償額が高額化する可能性が高い。
 法律の世界では、動物が刑法上器物損壊罪の対象となるように、ペットがものとしてあつかわれてきているが、やはり、物とは違った扱いを受ける方が自然な事なのであろう。
 迷い犬も遺失物として取り扱われる等の事実は、法律上は仕方ないことなのかもしれないが。

読書『罪と罰と精神鑑定―「心の闇」をどう裁くか』/裁判員制度に関連して

2009-06-24 13:55:23 | 法律・裁判
罪と罰と精神鑑定―「心の闇」をどう裁くか
影山 任佐
集英社インターナショナル

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 新訳が出て、ドストエフスキーの作品が多くの読者を獲得している。てんかんという精神疾患を持ったドストエフスキーが描いた犯罪の世界も、現代の読者の心をとらえている。『罪と罰』は、本書の著者にとっても、精神鑑定に深く関わる作品であった。人間にとって、罪とは何か?又、ばつの意味は? 人間の「心の闇」にどれだけ迫ることができるか、ドストエフスキーは、作品を通して、自己の精神疾患も深く影響しながら、著者に多くの示唆を与え続けている。

 精神鑑定に関しては、鑑定する医師により、鑑定内容が真っ向から対立するような判断がなされることもあり、「科学」「医学」としての信頼性は、国民には十分な理解を得ていないというのが現実化も知れない。しかし、犯罪を犯したとされる者の「心の闇」に迫る一つの有効な手段であることは事実であろう。信頼性の獲得には必ずしも成功していなくても。

 精神鑑定は、治療行為ではない。また、この結果に関しては、裁判官は拘束されることはない。あくまでも裁判官の自由裁量の範囲に置かれていた。しかし、2003年に成立した「医療観察法」と、今年から始まった裁判員制度のもと、最高裁では、精神鑑定の結果を尊重すべきとの判決が2008年4月25日に出ている。2005年に施行された「医療観察法」によれば、殺人などの重罪犯罪者が、裁判所で心神喪失・耗弱と判断されても、裁判所の審判を経て、特定の精神科病院で強制的な治療を受けなければならない。そうした事情からも、今後は精神鑑定の重要性が増すというのが著者の考えである。

 また、裁判員制度では、「素人」としての裁判員の前に提示される精神鑑定に関しても今後は問題となるであろう点が指摘されている。今後は、精神鑑定は、非公開の「公判前整理手続き」の中でなされることの問題点等である。簡素化される裁判という視点からの問題点である。

 本書では、最近起こった犯罪を例に、精神鑑定についての方法が示されている。最近は、動機なき犯罪といわれるケースがマスコミを中心に喧伝されているが、著者の立場は、「動機不明な犯罪なほとんどない」である。

 国による教育予算の減額により、精神医学においても、基礎研究の衰退が懸念されていることも付け加えておく。

 女性の子殺し、時代により変遷する犯罪の性格等、本書には、多くの興味ある論点が展開されている。裁判員制度においては、裁判員向けに精神鑑定の姿も変わる、あるいは変えていかなくてはならないのであろう。その意味でも、本書は、裁判員になりうる国民が読むのにふさわしい精神鑑定に関する本なのかも知れない。

 精神鑑定書が、社会に出まわるということは、その性質上ほとんどない。
今、本棚にある『日本の精神鑑定』(みすず書房)は、16件の歴史上有名な事件における精神鑑定書を収めた珍しい書物である。大学生の時に求めた蔵書である。戦時下の大本教事件、阿部定事件、東京裁判のA級戦犯大川周明、金閣寺放火事件などが取り上げられている。大方、記憶の彼方に消えてしまったが、その時は、今一つ、精神鑑定に対する不信感を覚えた事は印象に残っている。他に、ろうあ者の大量殺人事件、杉並の「通り魔」事件に関する鑑定書も見られる。もう一度、再読して、感想をブログに投稿したいと思っている。

日本の精神鑑定
内村 祐之,吉益 脩夫
みすず書房

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新しい検察審査会制度に期待する/二階経産相側の献金疑惑について

2009-06-07 11:23:25 | 法律・裁判
 国民が刑事裁判に関与する裁判員制度が施行されたのと同じ平成21年5月から、改正検察審査会法も施行されたが、こちらの方は、まだ、裁判員制度のように国民の間にその意義が浸透していない。新制度では、新たに検察官の不起訴処分に対する有効な手だてが用意された。今までは、検察審査会が市民感覚で、検察官が行った不起訴処分を起訴相当と判断しても、その判断には強制力がなく、ただ、検察で意見をおうかがいしましたということだけで終わることがほとんどであった。つまりは、不起訴処分の効果は維持され、検察審査会の意見は刑事制度のガス抜きの役割しか果たしていなかったのである。今回の改正は、検察審査会の議決に法的拘束力を持たせるようになった民主主義にとって大切な制度変更である。

 今回の改正は、国民の「常識」が裁判所への起訴へつながる道を用意した。検察官の起訴・不起訴決定の独占権の例外を作ったもので、運用の仕方では、民主主義の精神が司法の場にも生かされることになる。その意味で、新制度について、国民の間にその意義についての認識が深まることを期待するものである。
 
 以下、検察審査会制度について、最高裁のHPを参考にまとめてみた。

 検察審査会を構成するメンバーである検察審査員は、それぞれの地域ごとに選挙権を有する国民の中からくじで選ばれる。任期は6カ月である。この時に、補欠ともいうべき補充員も同様に選ばれる。検察審査員は11名で構成される。
 検察審査員や補充員(補欠・臨時の検察審査員)に選ばれると,検察審査会事務局から,選定された旨と会議期日への出席を依頼する旨の書面が届く。なお,視覚,聴覚,言語などに障がいのある方や介護が必要な方が検察審査員又は補充員として選ばれた場合,検察審査会に参加しやすいよう検察審査会事務局が準備をするということなので,事前に検察審査会事務局に問い合わせることになる。
 次が今回の大切な改正点である。
 検察審査会が行った起訴相当の議決に対し,検察官が不起訴処分をした場合又は法定の期間内(原則は通知を受け取ってから3カ月以内)に処分を行わなかった場合,検察審査会は再度審査を行い,その結果,起訴すべき旨の議決(起訴議決)が行われた場合には,裁判所が指定した弁護士が被疑者を起訴して公判が開かれることになる。つまりは、検察審査会が事件を起訴に持ち込むまでには、2回の判断が必要となるのである。また、起訴議決を行った時は、検察官の代わりに、裁判所が指定した弁護士が本来の検察官の役割を担うのは、公平という観点からは妥当なことである。検察官に対する懐疑主義のもたらす結果である。
 ※、検察審査会での議事は過半数(6人以上)で決するが「起訴を相当」とする議決をするには、8人以上(3分の2以上)の多数が必要となる。また、「起訴相当」より幾分弱い判断である「不起訴不当」は、6人か7人の議決が必要となる。
 起訴議決に関しては、8人以上の多数が必要となる。

 今回、検察審査会の存在意義が問われるケースが起こった。二階経済産業省側への西松建設からの違法献金疑惑についてである。民主党の小沢氏の秘書に関しては、すでに同様のケースで起訴されているが、自民党側の議員に対しては検察の捜査は進展しなかった。なお、小沢氏に関しても、未だ、本人からの明確な疑惑解明に関する弁はなされていない。またもや、日本特有の「人の噂も75日」「水に流す」の精神で真実はうやむやのままで終わってしまうのかもしれない。
 さて、本題に戻って、先の二階堂氏をめぐる関係者への東京地検特捜部が6月1日の不起訴処分に対して、政治資金規正法違反で告発していた政治資金オンブズマン(大阪市)の坂口徳雄弁護士ら36人が、4日に「起訴相当」の議決を求めて東京の検察審査会に不服申し立てをしている。
 最初に、動かない東京地検に告発した内容は、自民党二階派の政治団体「新しい波」の会計責任者である泉信也参院議員らが、「新政治問題研究会」及び「未来産業研究会」が西松建設のダミー会社であることを知りながらパーティー券や政治献金を受け、政治資金報告書に嘘の記載をしたというものであった。
 この件に関して、東京の検察審査会が新制度の下で「市民感覚」からどのような判断をするかが、日本の民主主義のレベルを測る上でも重要な問題であろう。
 なお、二階氏をめぐっては、告発された疑惑の他にも、多くの説明がなされていなし疑惑が存在していることも忘れてはなるまい。もし、検察が政治的判断で動くようなことがあったら、それは、民主主義での下での司法制度を破壊する行為といえよう。