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「きょうだい児」の視点で『お兄ちゃんは自閉症―双子の妹から見たお兄ちゃんの世界』

2009-09-20 02:07:47 | 障害
お兄ちゃんは自閉症―双子の妹から見たお兄ちゃんの世界
牧 純麗
クリエイツかもがわ

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 障害者の兄弟がいる「きょうだい児」に、もっと注目した方が良いのではないかということが、最近になった指摘されるようになってきています。知的障害、病気を含めての身体障害を持つ兄弟の存在にどうしても両親の関心が集中してしまう結果、「きょうだい児」の抱える問題が今まで、あまり取り上げられることがありませんでした。兄弟の世話をする良い子を演じなくてはならない時もあったでしょうし、やきもちの感情を持ったとしても、それを両親に表出することは難しいことかもしれません。また、自分の時間が持てるかどうか、両親と過ごす時間が十分あるか、自分の友人に対して兄弟の事をどう話すべきか、また、成人してからも、結婚の時に相手に打ち明けること、両親の死後、自分が兄弟の面倒を見なくてはならないと悩む事があるかも知れません。「小さな大人」でいることの、周囲からの無意識や無言の圧力が存在するかもしれません。
 
 自閉症は、最近は、「自閉症スペクトラム障害」として考えられるようになりました。自閉症は、発達障害の一つで、脳の発達の仕方が通常と違うことが原因とされています。150人に1人が自閉症と診断される現在、自閉症児・者の「きょうだい児」のことも十分に考慮する必要が、専門家により指摘されるようになってきています。
 本書の後書きにあるように、「全国障害者とともに歩む兄弟姉妹の会」が平成9年に出した「障害者のきょうだいに関する(意識・実態)調査報告(概要)」では、「知的障害者に比べて、自閉症者や精神障害者のほうが困った行動をとることが多く、そのきょうだいはつらい思いをしている傾向がより強い」という結果が出ているそうです。

 「きょうだい児」の支援グループなどは、「きょうだい支援を広める会」のサイトに載っています。

きょうだい支援を広める会

 本書は、アメリカのマサチューセッツ州に住んでいる牧純麗(すみれ)ちゃんという女の子が書いた本です。現在12歳の純麗ちゃんには、双子のお兄ちゃんの隼人君がいますが、隼人君は自閉症という障害を持っています。
 純麗ちゃんが10歳の時に、お兄ちゃんと家族の事を書いたのがこの本です。「きょうだい児」として、双子の1人として、自閉症のお兄ちゃんをどう思っているのか、家族への思いが「きょうだい児」の視点から書かれています。彼女が、週一回通っている日本語学校で、3年生の時に書いた作文は、学友にお兄ちゃんの事を知ってもらいたいために書いたものです。その中に「自へいしょうの人は見た目はふつうでも、わたしたちとちがう所がたくさんあります。とてもふしぎな行動をして、あぶないこともあります。だからお父さんとお母さんは、いつもはやとをしっかり守っています。わたしはたまにみんながはやとにばかりせわをやいて、わたしにかまってくれない時にやきもちもやきます。でも、はやとのためなら我慢します。 ある日、わたしの手に赤のボールペンがついてしまいました。はやとにはそれがけがと思って、すぐにバンドエイドをはってくれました。でもはやとはけがをしても「いたい。」と言えないから、かわいそうと思いました。」と書かれれありました。
 純麗ちゃんは、理科が好きなので将来は科学に関係して仕事について、そのお給料で隼人君が好きな事ができる生活をさせてあげたいと思っています。また、両親が年をとった時の面倒も見ることも考えています。彼女の手記は、お兄ちゃんが発作を起こして暴力行為や自傷行為をするときの怖さや、お兄ちゃんの得意なことも書いています。「きょうだい児」の視点から書かれたこの手記は多くの事を教えてくれます。

 また、隼人君が学んでいるボストン東スクールに勤務している森由美子さんの解説も、親ができること、「きょうだい児本人」ができること、まわりの人ができること、必要な支援・制度について、詳しく具体的に書かれていて参考になります。
 森さんは言っています。「自閉症やそのほかの障害をもつ人が自分のまわりにいるなら、またいなくても少しでも興味があるなら、それについての正しい知識を身につけましょう。そのことによって、あなた自身も成長しますし、あなたのまわりにいる障害児・者、そしてその家族にとってもプラスになります。そういう人が、一人、二人、そして何百人、何千人と増えていくことが、よりよい社会を作っていきます。」