こまつ「かえりみち (Live version in こまつの自己紹介)」
かげぼうし安野 光雅冨山房このアイテムの詳細を見る |
著者の安野光雅さんが想像した「影の国」。光によるできる影も、光が当たらない時は、影の国に住んでいるという設定です。そこは、人口問題も人種問題もない国だそうです。影だから、白人も黄色人種も黒人も関係ないですね。それに、ものには全て影があるわけですから、差別のない世界なのでしょう。
私たちの世界が光の中にあるときには、影達は、我々の世界に影の国からやってきているわけです。そのためには、この世界が光に照らされているかを調べるための見張りがいます。この見張り、何故だか、たった一人の私たちと同じ人間です。どうしてその仕事についているかも説明はありませんが。しばし、著者の描く世界を楽しもうではありませんか。
この絵本をめくると、左のページが私たちの世界、右のページが影の世界が描かれています。影の世界では、見張りが望遠鏡で私たちの世界をのぞいています。
左のページにアンデルセンの童話に登場するマッチ売りの少女が登場します。雪の中、このままでは彼女が凍死してしまうのは、読者には既に分かっていることです。
すると、影の国の見張りが彼女の前に現れます。そして、彼女からマッチを買いました。マッチをすると……。幻が現れたかって?いいえ、真夏にできるような、はっきりしたきれいな影ができました。それを見た街の人々が次々とマッチを買っていきます。
さて、影の国のほうはといえば、大切な見張りがいなくなって大慌てです。私たちの世界に来るタイミングが分からなくなってしまうからです。影の国の住民、全てで見張りを探しますが、違う世界に行ってしまっているので見つけることができません。
人間って、救い難い性格を持っている人もいます。マッチ売りの売るマッチの作る影を、魔法使いの仕業だと言いだす者が出てきたのです。今度は、街の人間たちが、少女と見張りの男を捕まえようとします。さあ、大変。二人は懸命に逃げるのでした。街を離れ、森を抜け……。
そして、影の国に逃げ延びます。影の国の王様が言いました。見張り番がお嫁さんを連れてかえってきた。さあ、結婚式の準備だって。
王様の勘違いでしょうか。まあ、後の成り行きは読者の心の中に。