さがしています (単行本絵本) | |
アーサー ビナード,岡倉 禎志 | |
童心社 |
この国の国民は忘れやすいのだろうか?「水に流す」という言葉もまだ大きな影響力を持っている。人の命に関わるいじめの問題も、被害者の記憶は消えていき、加害者への避難も消えていき、残るのは加害者の明日への希望と、それを見ていて無関心を装った周囲のクラスメートたちの「普通の生活」。決して呼ばれることもなく、これから開かれる同窓会でも、名前す言及されぬ彼、彼女に対して、家庭を持った「同窓生」たちの寒暖の声だけが虚しく白々しく会場に満ちるのだろう。年をとったかつての担任も、加害者であったことなどとうに忘れているような態度で、彼、彼女の何倍かの命を生きている。
こんな国民になったのは、いつの頃からだろうか?
詩人のアーサー・ビナードが、広島の「ピカドン」で主人を失ったもの達に、語らせたこの絵本。命尽きた主人を「さがしてます」。どうか、岡倉禎志氏の写真とともに、被爆して残された者たちの声を聞いては欲しい。
アーサー・ビナードには、同じアメリカ人画家ベン・ジャーンのラッキードラドンの連作に詞をつけた絵本もある。決して幸福の龍ではなかった第五福竜丸のお話。この記憶もどれほど残っているのであろか?東京都の夢の島公園には、第五福竜丸自体が展示されているところがある。どうか、名前と意味をなくした遺物にしないでください。
大切な記憶は、次の世代に伝えてください。
ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸 | |
クリエーター情報なし | |
集英社 |