もう、手話講習会も終わりの時期に差し掛かっているのでしょう。今年は、テレビで「ラブレター」の放送中なので、新年度の手話講習会の受講希望者が増えるかも知れません。以前も、「星の金貨」や「愛してくれと言ってくれ」の放送が、聴者の手話学習者の急激な増加をもたらしてくれました。この間は、妻夫木・柴咲コンビの「オレンジデイズ」が、話の展開が不自然にもかかわらず、やはり手話の普及に貢献しました。
昨日は、一日中雨が降っていました。午後からサークルに傘をさして行きました。会場のセンターは台町にありますが、町名が示すように高台にあるので、行きは坂が多くて、歩いて行くにはかなりの負荷がかかります。まあ、帰りは下りなので早く帰宅できますが。
当日の学習の内容は、地元の手話講座の指導責任者の方の講演会でした。大きなテーマは、日本に存在する3種類の手話と手話指導の話でした。ろう者が母語として使っている「日本手話」と、日本語の文に手話をあてはめただけの「日本語対応手話」、それにこの両者の中間型の手話の3種類が存在しています。日本手話以外は、シスコムと呼ばれています。当然、「日本手話」がろう者が実際に使っている「本物」の手話です。独自の文法を持った独立した言語として存在しています。
講習会で多く学習しているのは、日本語対応手話か中間型のものが多いようです。今では、講演会や選挙の演説会などで手話通訳を見ることは珍しくはなくなりました。でも、手話通訳士が全員「日本手話」を使うことはありません。ろう者には、シスコムの場合は、読み取るのに疲れが生じるということです。日本手話を使う通訳士の場合は、楽に、つまりは自然に読み取れるようです。
講習会では、ろう者が手話を教えることが普通になってきていますが、指導法については、当初は戸惑いがありました。テキストが日本語対応手話になっていたからでした。つい5年位前から、日本手話を指導しようという動きが出てきましたが、ろう者にとっても、自分たちがいつも普通に使っている手話を、聴者に教えるとなると、まだ、指導法が確立していない等の問題がありました。ですから、講習会で習う手話は、中間型になる傾向にありました。今は、少しずつ、日本手話だけの講習を目指して変わりつつある段階だそうです。
伝統的な手話にも、地方により方言に当たるものがあります。また、地域のろう学校独自の手話も存在します。「水」という表現も、大阪では手ですくって飲むしぐさから、北海道は水車の回るイメージから、東京でも以前は水道をひねる動作からの手話が使われていました。
ろう者独自の手話も、たとえば「得意」と習っている形で、口形や表情が加わることで何通りもの意味を持ちます。こうした表現は、実際にろう者からいい意味で盗み取る必要があるようです。
講習会の初級で、挨拶をまず習いますが、例えばおはようを「朝+挨拶(両手の人差し指を向かい合わせて曲げる)」と表現しますが、ろう者にとってはこれが不可解な表現に映るということです。こんにちは、こんばんはも同様です。実際に、ろう者がする挨拶は、そうした表現をすることはなく、親しい者に対しては、手を挙げて「やあ」という感じで、目上の人には会釈すればいい訳です。長年、手話講座で指導にあたっている人にも、誰がこうした表現を始めたのかは不明だそうです。
当日は、教授法も「ナチュラルアプローチ」法を、ASLを使って実演しましたが、今回は時間の関係でお話はここまでにします。以上のような話を講演でしてもらいました。実際にろう者と交流をしながら、日本手話を身に付けて上達してほしいとの希望が出されました。