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酒の感想ばかり

「アルスラーン戦記」田中芳樹(2/4)

2020-10-10 20:28:15 | 読書
「征馬孤影5」
19890305に刊行。第4巻が19880825なので7か月ぶり。高校2年。旭屋書店で購入。19881231に「タイタニア」が開始。19881220に「灼熱の竜騎兵PART1」なんてのも刊行されている。
トゥラーンがパルス、シンドゥラの国境(ペシャワール城)に攻めてくる。城を守るルーシャンは武人ではないため、籠城して西進したアルスラーンの援軍を待つ作戦。パラザータという男を伝令に出す。無理をして走らせたため馬が死ぬ。歩くしかない。そこで旅人と出会う。クバードだった。事情を知らないクバードははじめ馬を貸さなかったが、名前を知ったパラザータは恐れ入り、事情を説明。そしてクバードは馬を貸し、自分はその場にとどまりアルスラーンが引き返してくるのを待とうとした。
王都奪還のため軍を進めたアルスラーン一行だが、トゥラーン制圧のためあっさりと引き返す。またもや回り道。初めて読んだ当時はさぞがっかりしただろう。
ナルサスは使者としてファランギースをペシャワールに遣いする。その途中で片目の旅人と出会う。パラザータは途中で馬を借りたその男(クバードという名前は出さないと約束していた)に馬を返してほしいと頼んでいたので、馬と砂金を礼として渡すと、その男はパルスで2番目に強いとメルレインの真似をして自己紹介し自分もついていくという。ペシャワールにつくとトゥラーンが待ち構えている。ここで一戦。クバードはトゥラーンのイルテリシュ親王と対戦する。イルテリシュはかつてダリューンによって父を殺されていた。なかなか好敵手だが、クバード達の役目はアルスラーンの伝言をルーシャンに伝えることなので軽く流す。ペシャワールに入城して片目の男が万騎長であるクバードであることを知るファランギース。
トゥラーンは半分をペシャワールに充て、半分を西から戻ってくるであろうアルスラーンに充てた。しかし予想に反してアルスラーンは東からやってきた。ペシャワールの南を通り、シンドゥラを経由してきたのだ。意表を突かれたトゥラーンは敗北(全滅ではない)。トゥラーンが再戦と、陣を構えた
時、巨大な地震が起きる。方角はデマヴァウント山の方角。
p56ナルサスの言「上に立つ者は、殿下のようにあるべきだ。悲観的なことは、おぬしやおれが考えればよい。闇のなかに光を見出だすような人物でなければ、あたらしい時代をきずくことなどできぬさ」自分の会社人生に当てはめてみる。高2の時ではわからないだろう。
ヒルメスはデマヴァント山で宝剣ルクナバードを掘り起こす。別行動を取っていたギーヴはそれを目撃する、ルクナバードが相応しいのはヒルメスでなくアルスラーンだと皮肉る。怒ったヒルメスは試し切りにギーヴを斬ろうとする。その時巨大な地震が発生。蛇王の封印を解いてしまったと皆が揶揄する。ヒルメスはルクナバードをザンデに預け、自分の剣でギーヴを斬ろうとした。その時ザンデは大地の割れ目にルクナバードを落とし入れた。すると地震が止まる。怒ったヒルメスはザンデを叱るが、ヒルメスが正式に王になったあかつきに改めて剣を手にすべきと諌める。多勢に無勢、ギーヴは逃げる。そこで見たのはトゥラーンの王トクトミシュの本軍が進発するところだった。
デマヴァント山にはもうひとつのグループがいた。ギスカールからヒルメスの監視を命じられていたルシタニア兵だった。地震で皆死に、2人だけ生き残った。1人はオラベリアでこれは逃げた。もう1人は大地の裂け目から転落したドン・リカルド。地下通路をさ迷ううち、蛇王らしき影に遭遇。凄まじい瘴気に死に物狂いで逃げる。地上に帰り自分の姿をみたとき、30歳になったばかりなのに髪と髭が真っ白になっていた。
魔導師の術によって気弱だったイノケンティスが狂暴になり、アンドラゴラスと一騎討ちをすると言い出す。この茶番がボロクソに描かれる。対決することはなく眠らされる。アンドラゴラスはギスカールを人質に、馬と馬車を用意させ、王都を脱出する。大軍を率いて王都を奪還しに来る、そこで正々堂々と対戦しようと宣言。途中でギスカールを解放する。
トゥラーンのトクトミシュ王陣とアルスラーン陣の対決。トクトミシュの卑劣な振る舞いにアルスラーンが珍しく怒りを表し、挑発的な鬨を上げたりする。アルスラーンがトゥラーンの一騎士の目に留まりピンチを迎える。そこへ助けに入ったのがギーヴであった。一旦退避する。つまりアルスラーンのストレスを開放するためにひととき対戦するというナルサスの作戦。ペシャワールに戻ったアルスラーンと、そしてギーヴ。これまでの流れからギーヴはパルス人の不興を買って脱退したことになっているので、大体のパルス人はギーヴに不信感を持っているだろう。ギーヴ本人や昔からの幹部はどうも思っていないだろうが。ギーヴは久々に会ったファランギースしか興味がない。ところがファランギースの横でなれなれしくしている片目の男が気になりつまりクバードと火花を散らす。これは単なるギャグなのだろうか?クバードとギーヴは今後しこりを残すのだろうか気になる。当のファランギースはどこ吹く風。ナルサスの作戦はトゥラーンの主要な将軍を捉えることにある。ダリューンたちはさらに戦場に出るがなかなか見つからない。そんななかジムザというイルテリシュと並んで最も若い将軍がいる。ジムザは毒を塗った吹き矢を扱う。ザラーヴァントはその毒矢を腕に受け戦闘不能になる。必死に城に帰って倒れる。
面白いがかなり風呂敷を広げている。初期の段階から14巻で完結と宣言していたが、ここまで広げると収まり切れないだろう。著者らしく、各登場人物のそれぞれ個性を持ち、一人ひとりの伝記も書けそうなくらいの作り込み。外伝でもつくって乗り切ろうと思ったのかもしれないが、こうなったら14巻では収まらない。後に批判の種になるが、14巻で納めるためにはやや強引に話を切り捨てるほかなかったのではないか?それがやっつけ仕事風に見えたのではないか?と良いように解釈する。だから素直に「14巻で完結」に縛られず、気の向くまま書き続ければよかったのだ。と、偉そうに思ってみる。
捕らえたジムザをトゥラーンに返す。パルス語を知らないフリでパルスの秘話を聞き覚えた。それをトクトミシュに伝える。しかしそれは罠。トゥラーンの2つの軍を互いに敵と思わせ相討ちにさせる作戦。それにはまる。気づいたトクトミシュは、ジムザは裏切り者と見なす。クバードはアルフリードを知り、兄のメルレインを知っていることを話す。二人は何となくいい感じになる。タルハーンとダリューンの一騎打ち。これは見所だ。戦いはパルス優位で終わる。後には矢を受けて倒れているジムザ。ナルサスはジムザをこちらに取り込もうとする。アルスラーンは武勲をたてたものでなく、今回裏方で罠を仕掛けて回ったトゥースを功労者とした。これには皆、驚きと賛辞。
ヒルメスとイリーナ一行はすれ違う。お互い気づくが、ヒルメスは他人の振りをする。イリーナに相応しい人物にまだなってないから。切ない場面。
負けたトゥラーンはルシタニアと手を結び共通の敵パルスを倒そうと企む。敗北後腑抜け状態のトクトミシュがイルテミシュにより殺害される。一方ルシタニアに占領されたエクバターナにエステルが到着。怪我人や幼い子供達を助けるよう同国人に頼むも無視される。そんな中助けてくれそうなのがイノケンティスであった。しかし、現在はほぼ幽閉されているためルシタニア兵に二度と近づかないよう釘を刺される。しかしエステルの中ではイノケンティスが救いの神のように感じられるのだった。
アンドラゴラスとタハミーネがぺシャワール城に自力で帰ってくる。アルスラーンが救い、恩を売ろうとしていたのに想定外。アンドラゴラスは無慈悲にふんぞり返る。やはり強大だ。アルスラーンに兵を王である自分に全て返せと命じる。そして、アルスラーンには南へむかい王都奪還のための兵を5万集めよと命じる。言ってみれば放逐されたわけだ。さらにダリューンとナルサスは城に残れといい、アルスラーンと離される。不条理だ。他の人物たちはどうするか判断を迫られる事になる。ギーヴ、ファランギース、ジャスワントは当然アルスラーンに付く。キシュワードは元々アンドラゴラスと確執がないため残る。アンドラゴラスの迫力がすごい。囚われの身であったことや、アルスラーンが善戦していたこと、多くの家臣たちがそれに従って戦ってきたこと。そんな感傷的なことは一切出さず、そんなことをブツブツ言ってるものには一喝する。無情にも思える。しかし、司馬遼太郎の「関ヶ原」「城塞」に出てくる徳川家康を読んだ今となっては、かつて読んだ時(高2?)の「なんだこいつは?」感を感じず全然受け入れられる。ところがナルサスはエラムとアルフリードに指示して小屋に火を放つようにしていた。その混乱に乗じてダリューンとナルサスは城を脱出する。クバードはそれを高みの見物で、残ってしばらく様子見することにする。1人南へ向かうアルスラーンに仲間が追い付く。この再開が感動的。一番の見せ場。
表紙はギーヴ。扉絵は地下でザッハークらしい影を目撃するドン・リカルド。
「風塵乱舞6」
19890925刊行。前作から6ヶ月と順調。高校3年ということは受験勉強の真っ只中。近所の東西書房で購入。
パルスの南の港町ギランへ赴く一行。アルスラーン、ナルサス、ダリューン、ギーヴ、ファランギース、エラム、アルフリード、ジャスワントの8名。パルス第2の都市。商人達が自治を行っている。言ってみれば堺のようなものだろう。総督はペラギウス。国のことより自分の蓄財のことばかり考えている。この巻は番外編のような様相だ。兵を集めようとするが金がない。財政が主題となる。グラーゼという商人を助け人心を買う作戦。またナルサスは奴隷廃止の布石として、かつての親友で志を同じくしていたシャガードと会うが、長年の優雅な生活から奴隷廃止反対の考えを持つに至っていた。対立する二人。ペラギウスに隠し財産を吐き出させる。サフディー島には海賊商人アハーバックが稼ぎだした財宝が隠されているという。
ペシャワールにおいては、トゥラーンの王となったイルテリシュが、王としての威厳のため再度攻めてくる。アンドラゴラスは司馬遼太郎の徳川家康張りに、キシュワードに任せる。武勇はあるが戦略的才能はそれほどではないキシュワードは任されプレッシャーとなるが、ナルサスが残したもしもの時の作戦を思い出し、それを実行する。そして見事に作戦成功し、トゥラーン軍を壊滅状態にした。クバードも目立とうとする裏心から活躍する。キシュワードはナルサスの策とは言えないまま、アンドラゴラスから王都奪還の暁にはそれなりの褒賞を与えると褒められる。
イルテリシュは敗れ去り一人馬を走らせる。その途中で魔導士に出会う。狂戦士と呼ばれるイルテリシュだが、魔術でいともたやすくとらえられる。魔導士たちはイルテリシュを蛇王ザッハークの憑依(よりしろ)としてつかおうとた眩んでいるのだった。そもそもはヒルメスを憑依にしようとしていたらしいが、暗灰色の衣の魔導士の思惑は弟子たちにはわからない。
エクバターナにはイノケンティスが幽閉されている。少し前に偶然窓から顔を出したイノケンティスと面したエステル。優しかったイノケンティスを助けようとする。マルヤムの内親王を偶然捕らえるルシタニア兵。ギスカールは内親王に故国の仇として厄介な兄イノケンティスを討たせようと謀る。メルレインは一旦逃げ、後でペシャワールに忍び込んで内親王を助けようとしていた。そんなメルレインとエステルが合流。内親王イリーナは策通りイノケンティスを刺す。しかし、致命傷とはできなかった。ヒルメスはイリーナが捕らえられたと知り、これをもってギスカールとの縁を切ろうと、兵を率いてギスカールの元に来る。イリーナを救出しサーブル城に立てこもるため向かうヒルメス。しかしそれは見せかけで、エクバターナの近辺に潜み、タイミングを見てアンドラゴラスVSギスカールの隙を見てエクバターナを獲ろうと考えているのだった。メルレインとエステルはアルフリードを知っているということでアルスラーンの元に共に向かうことになる。
シャガードが話した財宝を求めサフディー島に向かうアルスラーンたち。その嘘をついていたシャガールが不在の王太子府を乗っ取ろうと襲う。実は騙されて島に向かったふりをしたアルスラーン達が登場。シャガールは惨敗し、自分は奴隷として一年扱われる事になる。結局サフディー島の財宝伝説は嘘だったのか。ナルサスも知っていた。読者も騙された。
飲んでる間に読むと、読んだ内容があとになって思い出せない。というのはありがちだ。しかし、高3の時にはもちろん酒など飲んだこともないのに、この読んでなさは何なのだろうか?高校生当時の自分の政治知識(しかも皆無)では何も理解してなかった。今では楽しめそうだ。一旦田中芳樹の政治批判に背を向けかけていたが、今となってはちょっと理解できそうな気がする。田中芳樹とは20歳違い。読んでいたころは高3で17歳だった。作者は37歳だ。そんな高校生には理解できない政治的考えが、48歳の今ではわかる気がする。創竜伝も理解できるかもしれない。
ギーヴとファランギースが馬を走らせていると、盗賊に追われている2人に会う。メルレインとエステルだ。ギスカールの指示でヒルメスを追うゼリコ子爵。こちらもヒルメスに一気に斃される。
ペシャワールでとらえられていたトゥラーン兵の毒矢のジムザ。アルスラーンによって命を助けられたが、アンドラゴラスによって出陣の際の血祭りにささげられる運命となった。しかし、キシュワードが不憫に思い公然とは助けないが、脱走するよう勧められる。ザラーヴァントも病床にあったが、アルスラーンを追放したアンドラゴラスが許せず脱走した。かつて敵同士だった、ジムザとザラーヴァントは何の因果か行動を共にする。いずれアルスラーンと合流するようだ。キシュワードはヴァフリーズの密書を見つけたようだ。しかし開ける勇気がない。そんな時にタハミーネが現れ(全く唐突に?)キシュワードから密書を奪われる。そして横に来たアンドラゴラスによって密書は焼かれる。
アンドラゴラス軍、キシュワードとクバードを万騎長とした軍。ルシタニアはギスカールが持つ2枚の切り札の1人ボードワン将軍。パルスはトゥースを先発させルシタニアの陣形を崩す。アンドラゴラスは自ら陣頭に立ち、クバードも大いに暴れる。ボードワンを追い詰めたのはキシュワード。一騎打ちするがボードワンはキシュワードに倒される。ルシタニアの敗北。同じ頃アルスラーン2万5千とヒルメスの3万が王都に向かいつつあった。
表紙はキシュワード。扉絵は海賊と対決するダリューンとギーヴ。
「王都奪還7」
19900325刊行。今回も前巻から6か月で順調。高校3年だが、大学入学直前の時期。
ギスカールのところに魔導師の1人プーラードが現れ、見えない蛇で相手を締め付ける技を使う。その時夜襲隊としてイスファーンが潜入してくる。たまたま大将のギスカールと出くわしたのだが、プーラードの魔術に翻弄され早々に帰陣する。プーラードはギスカールを捕らえるつもりだったがイスファーンに倒される。
アンドラゴラスとギスカールの対決。キシュワードの策により実行するが、元はナルサスが残した作戦書による。
そのすきにヒルメスはエクバターナに侵入する。城を守るルシタニア兵は少ない。パルス人はここぞとばかりにルシタニア兵への恨みを晴らす。ルシタニア兵を制圧した後ヒルメスは自分の素顔と素性をパルス人の前にさらし、正統性を訴える。しかしパルス人は無関心だった。正統性よりもこれからどのような政治を行うかに関心がある。そこでヒルメスはよき政治を行わなければ三日天下で終わるという試練を与えられる。しかも、王宮の財宝が空っぽとなっていた。金がなければ何も始められない。
パルス軍は圧倒的な強さでルシタニアを攻めていく。兵の数では圧倒するが、様子がおかしい。ギスカールは一旦西へ引き上げて兵を立て直そうとしている。パルスの王宮から財宝をすべて奪っていたのでそれを資金として再起しようとしていた。そして兵の数も減らし少数精鋭にしようとした。簡単にルシタニアは敗走する。
ギスカールが陣を布いた頃、アルスラーンの軍とぶつかる。ここでナルサスの奇策。兵では圧倒的に数が劣る。これを多く見せる作戦。戦のシーンもこういった奇策がないと盛り上がりに欠ける。ルシタニアのもう一人の切り札モンフェラートはギーヴに打ち取られ、ギスカールは生け捕りにされる。処刑されるかと思いきや、生きてマルヤム王国に逃がされた。ナルサスの作戦は、ルシタニアの王であるイノケンティスと不戦条約を結ぶこと、そしてマルヤムにいるボダンをギスカールに倒させることだった。
アンドラゴラスとヒルメスの戦い。ヒルメスは戦を早期に済ますにはアンドラゴラスと一騎打ちをすることだと考える。またサームにより、侵入できないよう城は完璧に守備を固める。地下道からアンドラゴラス軍が侵入してくるが、網や綱で封じ、火を放って守っている。そこにキシュワード自ら乗り出してくる。あわやサームvsキシュワードの万騎長対決。そこへアンドラゴラスが登場し、万騎長同士の戦いがもったいないという。そしてヒルメスと対決ではなく対話するという。ヒルメスと対面するやアンドラゴラスは「わが弟よ」と予想外の呼称で呼ぶ。アンドラゴラスはヒルメスの出生の秘密を話し出す。大体これはアンドラゴラスが地下牢に捕らえられているときにサームに語った内容と同様だった。ゴタルゼスは良き王だったが、後半は迷信深くなる。兄のオスロエスに子ができない為、妃を差し出した。それで生まれたのがヒルメス。オスロエスは病床にありアンドラゴラスにヒルメスを殺すよう頼む。そんな秘密を明かす。そこへ魔導師が現れる。アンドラゴラスはその若さに驚く。代々王の前に現れてきたが、最後にみたときから計算しても魔導師の年齢が合わない。
アルスラーンもタハミーネから自分の出生の秘密を明かされる。タハミーネの本当の子ではない。名も知らない中程度の騎士の子供である。養父母はアルスラーンがアンドラゴラスに引き取られる際に口封じに殺害された。アンドラゴラスとタハミーネの間には女児が1人生まれたが、その後はタハミーネが子供を産めないからだとなった。女児の行方はわからない。つまりアルスラーンは王家の血を一滴も受け継いでいないのだった。アルスラーンは自分を王太子と信じて死んでいった者に申し訳ない気持ちと、王たるは血筋でないということを証明するためデマヴァント山へ向かい宝剣ルクナバードを手にしようとする。カイ・ホスローに告げる。自分が王にふさわしければエクバターナを手に、相応しくなければ雷を落とすように。そしてアルスラーンは無事ルクナバードを手にする。これをもってエクバターナで王であることを宣言しようとする。
ヒルメスのもとにアルスラーン一派、アンドラゴラスが集まる。
暗灰色の衣の魔導師は大蛇に変身しルクナバードを奪って逃走しようとする。サームが阻止しようとするが、蛇に巻き付かれ、一瞬のうちに生命力を吸いとられる。ほどかれたサームはほどなくして事切れる。イノケンティスはまさかの行動。アンドラゴラスを道連れに塔から身を投げる。あれほどの豪勇があっけなく死んでしまう。あのいい迷惑な扉絵のシーンだ。一度読んで内容をほぼ忘れていたが、それだけにあの扉絵をみたときその場面を思い出してしまっていた。一度も読んだことがなければ気づかなかったものを。さておき、一度読んだときあのむくつけきアンドラゴラスが史上最弱のイノケンティスに予想外の道連れにされる事に失望したような記憶がある。しかし、今はすんなりと受け入れられる。ヒルメスはイリーナを連れて二人で去る。この第7巻は第一部の完結編になるが、全ての伏線、謎が回収され急展開かつ濃密な巻だった。何だかこれで本当に完結してもいいのではないかと思うくらいだ。エステルはルシタニア人なのでここで退場するようだ。
解放王アルスラーンの十六翼将。ダリューン、ナルサス、ギーヴ、ファランギース、エラム、アルフリード、ジャスワント、キシュワード、クバード、メルレイン、グラーゼ、イスファーン、トゥース、ザラーヴァント、ジムザ。あと1人は誰だろうか?
表紙は誰だろう?銀仮面らしきものが左下にあるが素顔の右半分が見えないため不明。扉絵は塔から転落するイノケンティスとアンドラゴラス。
「仮面兵団8」
19911210刊行。1年9か月ぶり。大学2年になっている。第2部スタートと新たな物語が始まるのでそんなものか。
アルスラーンは国王に即位し3年経つ。つまり3年後の時代。アルスラーンは18歳となっている。ナルサスと同じくらいの身長。即位記念日を祝うことなく、ミスル王国がパルスの奴隷解放令に反抗し、ホサイン3世が侵攻してくる。側で侍るのがパルス人らしい右頬に傷のある男。この段階では正体は不明で、ミスル陣営ではヒルメスではないかという噂もある。この男はやたらパルスの人物に詳しい。ファランギースの事をよく知る。この戦いはナルサスの鏡反射作戦で相手の兵4分の1を減らして終結。ファランギースは右頬に傷のある男に何か記憶にあるようだが思い出せない。
狩りの大会が催される。賓客としてラジェンドラが招かれる。この場でアルスラーンは獅子を討ちシールギールの称号を得る。ここから色々事件が立て続けに起こる。奴隷廃止に不満を持つ貴族がアルスラーン暗殺を謀り複数現れる。また、ラジェンドラのもとにチュルク兵がシンドゥラの国境を侵したとの報告が入る。ラジェンドラはアルスラーンに協力を求め、直ちに制圧に向かう。これは小説の本筋でないのか、ナルサスは短期決戦で収めようとする。つまり言いたいのは西側のミスルと東のチュルクが同じ時期に兵を出したのは偶然なのかということだった。
マルヤム王国におけるボダンとギスカールの戦い。ギスカールがたった1人マルヤムに入国し、1から兵を集めてボダンと戦う。この章だけで1巻書けそうなくらいの濃密な話。ギスカールは勝利し、ボダンは逃亡し、マルヤム王国は二分される。やがてボダンはミスルに自分に協力するよう使者を出す。気に入らないミスルのホサイン王は、使者を捕らえ、ギスカールと手を組むためその使者を土産として送る。
ミスルではシンドゥラに右頬に傷のある男を使者として送り、西から東からパルスを挟撃しようと提案する。納得できなかったラジェンドラは使者を殺害しようとしたが逃げられる。パルスへ行きミスルと組んでパルスに攻め込もうとしていると嘘をつきシンドゥラに攻め込めと提言すると言ってるが果たしてどうなるか?
チュルクのカラハナ王の元には、顔の右半分を隠した男がいる。無論ヒルメスだ。妻であるイリーナが子を宿したまま死去した。その葬儀が終わったところ。カラハナ王はヒルメスに再起を図るよう進める。周辺国がそれぞれ手を組み、複雑な状況となってきた。右頬に傷のある男はヒルメスではないことがわかったが、まだ正体は不明。
アルスラーンの正義とは?に関する議論と、妃候補の話(18歳で早いような気もするが)アルスラーンは実は心の底ではエステルが気になっているのではないかとナルサスたちは推測する。また、タハミーネの産んだ消息不明の女児も出てくる。この二人が婚姻を結ぶことで両王家がめでたくつながる。
右の顔面に傷がある点で共通点のあるヒルメスと右の頬に傷のある男、早くも正体がわかる。いやヒルメスはチュルクにいることが読者にはわかる。しかしナルサス、ダリューンたちはわからない。ただここでナルサスは推理を働かせ、ミスルにいる右の頬に傷のある男の正体は、自分の親友で、ギラン滞在中に自分を裏切り、逃げる際にアズライールの爪によって顔を傷つけられたシャガードではないかと。チュルクとの戦いで捕虜にしたゴラーブ将軍からヒルメスらしき人物であることを聞いている。ナルサスはゴラーブ将軍をチュルクへ還そうと考える。ギーヴを使者とする。従者としてジャスワントとエラム。ジャスワントはシンドゥラとパルスは昵懇であることを匂わせるため。エラムは海外の知見を広げるため。
湖での一騒動。精霊の声を聞き湖に向かうファランギースとクバード。魔術を使うような者との応酬。ファランギースはその者(グルガーン)の兄を知っているようだ。
ラジェンドラを落とすことに失敗した右頬に傷のある男がミスルに帰ってくる。ホサイン王はこの男をヒルメスに仕立てあげ、パルスの王とし、奴隷解放制度を廃止させ、自分の王室の女と婚姻を結ばせることでパルスとミスルに血の繋がりを作ろうと考える。面白くなってきた。一回読んだと思うが全く記憶にない。当時は謎解きばかりに興味があって、こういった駆け引き的なところに関心がなかったのだろうか?はっきり言ってこの第二部はそこがミソだから。当時の記憶から消えていても仕方ない。
ギーヴたちはチュルクへ来る。ゴラーブ将軍を返還に来たがカラハナ王は敗残の将ということで非情に処刑する。客将となったヒルメスはカラハナ王にトゥラーンから兵を雇い、自分がそれを指揮する事を提案し、了承を得る。ヒルメスと集めた兵は全員銀仮面をかぶりヒルメスにカモフラージュする。手始めにギーヴたちパルス兵の帰還時に襲撃する。ピンチを救ったのはゾット族だった。パルスが助けるとチュルクが不信感を抱くのではじめからゾット族で守護する計画であった。パルス兵は難を逃れる。ミスルではヒルメスがここにいるということをつかんだ(実際は勘違いになるが)ザンデが訪れる。ヒルメスは事故で声を失ったということにし、シャガードであることがバレないようにザンデを騙し、利用することになる。
アンドラゴラスの墓荒らしがあった。魔導師たちの生き残りの仕業。逃げる際ファランギースに顔をみられ、兄を知っていると思い出させた。つまり魔導師グルガーン、その兄はミスラの神官でファランギースと顔見知りなのだった。魔導師たちはザッハーク復活に先立ち尊師を冥界から呼び戻さなければならない。そこへ運ばれてきたのは生死の判別しがたいイルテリシュだった。
表紙はエラム(?)。扉絵はチュルクに遣いしたギーヴを襲おうと崖の反対側を行進する仮面兵団達。
 
征馬孤影
20200902読み始め
20200903読了
風塵乱舞
20200904読み始め
20200906読了
王都奪還
20200906読み始め
20200907読了
仮面兵団
20200907読み始め
20200908

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