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「アルスラーン戦記」田中芳樹(1/4)

2020-10-10 20:24:21 | 読書
文庫版において20200820に16巻をもって完結したので、これを機に読み返す。
アルスラーン戦記に関しては思うところも多く、それを交えながら感想を書いていく。
そもそも読み始めたのは、角川文庫でファンタジーフェアというフェアがなされていて、19860825に出版されている。同時期にフェアのラインナップとして、井沢元彦「反逆王ユニカ」、斎藤英一朗「怪盗戦士T.T」、永井泰宇「バイオレンス・ジャック1」などがあった(実際には出版日が複数月に渡るので、ある程度の幅の期間でフェアを実施していたのだろう)。当時松原市にあったダイエーの中に松原書店があり、そこにフェアの製品群が並んでいた記憶がある。多分そこで買ったと思われるがそこは確かではない。そのフェアの製品の帯についている応募券を集めて送ると、フェアの製品のカバーイラストのテレフォンカードがもらえるとあって、5冊買った記憶がある。天野喜孝ファンであった私は、この田中芳樹「王都炎上」のイラストのテレフォンカードを希望した。はじめは天野喜孝のテレフォンカード目当てで読んだアルスラーン戦記だが、これが一番面白く、運命の出会いだった。当時は銀河英雄伝説も完結間際だったが、そちらの方は知る由もなく。この後に銀河英雄伝説を知ることになった。実際銀河英雄伝説を読み始めたの19870420辺りからのようだ。完結の10巻は19871115に出版なので、丁度完結のタイミングで読み始めることができたのだろうと思う。
さてアルスラーン戦記に戻る。田中芳樹という作家を知らなかったが、何としゃれた文章を書くのかと感動した。登場人物たちの会話のやり取りが、毒舌の応酬で、小気味よい。
 
「王都炎上1」
アンドラゴラス44歳。アルスラーン14歳。ダリューン27歳。クバード31歳。ナルサスはダリューンの一つ下なので26歳。
田中芳樹の手法として、若いけれども才能があるという設定。初めて読んだ当時、アンドラゴラスはものすごく巨大な存在に思えたが、44歳だったのだ。今の自分は48歳で、この時のアンドラゴラスより年上になっている。当然、作者本人も書いている当時より年を取っている。そこに作者は何か感じているのではないか?
「王都炎上」の章。ここでギーヴが登場する。捕らえられて人質となった万騎長であるシャプール。どうせ殺されるであろうから味方の手で死にたいと宣言する。そこに豪弓で息の根を止めたのが、旅の吟遊詩人ギーヴだ。ふてぶてしい男だ。タハミーネ王妃から金貨200枚を褒美に与えられる。さらに地下の隠し水路から安全な場所へ連れ出すという依頼を受ける。しかしそれは替え玉。地下水路でルシタニア兵に出くわす。銀仮面の男、そしてギーヴは知らないがパルスの万騎長カーラーンだ。訳あってルシタニアに寝返ったようだ。城を守るのは二人の万騎長、ガルシャースフとサーム。はじめは籠城で対抗していたが、奴隷の暴動により内部から崩れていく。ガルシャースフは討たれ、サームも重大な傷を負う。しかし命は助かったようだ。銀仮面の男はアンドラゴラスとタハミーネを両方捕らえたらしい。ルシタニアの王、イノケンティス7世の前に連れ出されるタハミーネ。狂信的な王であるので恐らく異教徒であるタハミーネは死罪を受けるであろう。しかしタハミーネを見た王は様子が違う。ギスカールはイノケンティスの弟。ルシタニアの中にあってはまともそうだ。善悪は別として。そしてカーラーンよりは立場が上のようだ。
その後ギーヴとファランギースの出会いがある。これも記憶にある。ファランギースが襲われるのを打算的な作戦でギーヴが助けようとするが、ファランギースが単独で制圧しかけたため 、慌てて登場する。
ファランギースはふてぶてしいが、アルスラーンには神の思し召しか、全幅の尊敬を置く雰囲気だ。その後合流した際、ファランギースから、アルスラーン側は何人かと問われ、ナルサスは5人と答えた。アルスラーン(かエラム) ダリューン、ナルサス、そしてファランギースを入れ、洒脱にも後ろに控えるギーヴもカウントして、5人と答えたのだ。
カーラーンとアルスラーン側の戦い。アルスラーンは危なげながら対戦する。カーラーンが登場するとそこに相手は自分とダリューンが登場する。勝負はダリューンが勝つ。というか、折れた自分の槍が自分自身の首を貫いてしまったのだ。今の自分の歳となってはカーラーンの気持ちも汲める。カーラーンは絶命の直前、アンドラゴラスは生きている。そして、アルスラーンは正統でないというような謎めいたセリフを吐き死ぬ。
その後ファランギースがアルスラーン仕えるよう指示を受けているため仲間に加わるギーヴは打算的にアルスラーンにつかえると宣言する。わずか数人の同志。しかし数十年前読んだときワクワクしたもだ。
銀仮面の男が暗灰色の衣の老人の元を訪ねる。この老人がアトロパテネで霧を発生させたり、未来を予言したりする。蛇王ザッハークを復活させるためパルスの大地に無数の人の血を吸わせなければならない。
アンドラゴラスの消息の手がかりを探しに変装して町へ出るナルサスとダリューン。ここでいきなり銀仮面の男と出くわす。ダリューンが名を名乗るとヴァフリーズの甥であることを知っているようだ。ダリューンは剣で仮面を叩き割る。早くも仮面の下の素顔が露になる。顔の右半分が火傷に覆われている。ナルサスが加勢に来たので男は逃げる。
獄舎にアンドラゴラスが囚われている。そこへ銀仮面の男。そして早くも自分の正体を明かす。パルスの先代王であるオスロエスの嫡子ヒルメスである。城を焼かれて始末されたと思われていたが、からくも脱出することができ復習を胸に今まで生きてきた。そして目的はアルスラーンの首を見せつけつつアンドラゴラスを殺すと宣言。ヒルメスが去ったあとのアンドラゴラスの謎の笑い。
巻末にパルス王家の系図が掲載。
まだ1巻なのにここまで展開が早かったのかと再確認。
表紙はアルスラーン。扉絵はルシタニア兵に襲われるアルスラーン。
「王子二人2」
1巻が19860825に出版で2巻が19870325なので7か月ぶり。半年に2冊とか始め言っていて、2月に発売予定と出ていて、1か月遅れたのだったか?早くも第2巻から遅れ始めていたのか?作者はいつも予定と宣伝にありながら遅れるので、何巻のことだったかわからないが。
巻頭にパルスとその周辺の地図が示される。これは便利と思いきや、他国との位置関係が分かるが、2巻を読み始めてパルスの細かい地名が多く出てきて、いきなり意味がなくなる。
暗灰色の衣の魔導師のもとに弟子が7人。これらは不思議な術を使う。この辺りの非現実さはファンタジーならでは。魔導師はいかに大地に多くの人の血を吸わせるかをたくらんでいる。アルザングという弟子は地行の術を使う。この術でルシタニアの将軍を1人殺すよう命じられる。
アルスラーン一行は諸侯の1人ホディールの城に向かう。しかし欲望にまみれたホディールはアルスラーンを敵に売ろうとしたため、討たれる。主がいなくなったのでアルスラーンは奴隷を解放しようとしたが、主殺しと見なされ逆恨みされる。一筋縄ではいかないことを学ぶ。ナルサスも過去に同じような経験をしている。
第1巻の末尾にあったパルス王家の系図の意味が分かる。代々オスロエスのあとにアンドラゴラスが王となっている。3度続いている。これは偶然か意図的か?
東方国境を守るぺシャワールの城塞にはキシュワードとバフマンの万騎長がいる。キシュワード29歳、バフマン62歳である。キシュワードは双刀将軍(ターヒール)と呼ばれ告死天使(アズライール)と呼ばれる伝書鷹を飼っている。
ルシタニア王はイノケンティス7世。王は弱く大司教であるボダンの影響力が大きい。王の弟はギスカールで、一番まともな考えを持っている。そのギスカールを上官としているのがルシタニアに間借りしているヒルメスである。
ヒルメスは傷の手当てを受けているサームの元に現れ、自分の正体を明かす。正当な継承者と主張。サームはにわかに信じられない。そして、これからは誰に仕えればいいのか迷う。
ヒルメスの元にカーラーンの息子ザンデ(19、20歳くらい)が志願してくる。カーラーンを失った今、そしてカーラーンの家族は取り立てると誓ったこともあり。部下とする。あとサームをなんとかこちらに引き入れたい。
ぺシャワールに向かうが3つの道を3つのグループ分けて別々に向かう。ダリューン、ファランギース組はザンデに阻まれる。いきなりザンデは退場かと思ったが逃げる。アルスラーン、エラム、ギーヴの組も多くの敵に狙われるがギーヴの手腕で抜け出すことができた。軽薄そうなギーヴみ見えたが、なかなかいい奴だ。ナルサスは単独。ヒルメスが待ち伏せしていたが、ゾット族という盗賊とひと悶着があり直接対決を避けることができた。ここでアルフリードという娘を助け、以降同行する。アルフリード16歳。ヒルメスは27歳、ダリューンと同い年だ。
ザンデがまたもダリューン、ファランギース組の前に現れる。しかし今度は一撃。ザンデは谷へ落ちていく。その後ギーヴ、アルスラーン、エラム組と合流。ぺシャワール手前の唯一の橋が生きていたザンデによって破壊される。アルスラーン達を助けようとするキシュワード。逆にバフマンは虚ろ状態(アトロパテネの戦いの直前、ヴァフリーズから謎の手紙を受け取り、その内容がそうさせた。恐らくパルス正統の王が誰かという内容だったのだろう)。そんな時に様子見でシンドゥラが攻めてくる。こちらにもキシュワードが乗りだし早々と制圧する。
何とかキシュワードと合流する一行。今後の戦の打ち合わせをするもバフマンだけ上の空。
バフマンが場内で馬を走らせていると銀仮面の男が現れる。何と、忍び込んだのだった。そして自分の正体がヒルメスであることを明かす。そして正統の王になるべきものであることを説く。正統を重んじるバフマンは心揺らぐ。ヒルメスはバフマンは味方につけると思ったのだろう。しかし、そのときキシュワードが現れ、銀仮面の男を追おうとするが、バフマンはそれを止め、銀仮面の男は逃げ去る。
今度はアルスラーンが外気にあたろうと一人で外に出たところまたもや銀仮面の男が現れる。アルスラーンに敵愾心を持つ銀仮面は一度で殺さず、会うたび手足首を一つずつ切り落としていくと宣言し、まず右手首を切ろうと剣を走らせるが、かわされる。しかし城壁に追い詰めた銀仮面であったが、アルスラーンに松明の火を向けられ、過去のトラウマをよみがえらせてしまう。そしてダリューン、ナルサス、ファランギース、キシュワードが現れ、1対4(キシュワードは双刀なので剣の数では1対5)となる、4人が銀仮面に襲い掛かるが、バフマンの「その方を殺せば、パルス正統の血が絶えてしまうぞ」という声に、銀仮面を逃してしまう。いきなり、ヒルメスの正体がアルスラーンたちにわかってしまったのだ。なかなか展開が早い。バフマンはアルスラーンたちに告白するかというとき、シンドゥラが攻めてきたとの報を受け、それどころではなくなる。ここで第2巻終了。
表紙はダリューン。扉絵はアルスラーンの前に現れる銀仮面の男。
「落日悲歌3」
第2巻から6ヶ月後の19870925に出版されたので今回は順調と言える。因みにこの前月19970805に「創竜伝」が開始されている。
シンドゥラには王子が二人いて対立している。カーデーヴィとラジェンドラだ。どちらかを王にたてて、反対側を倒す作戦をたてる。今回攻めてきたのはラジェンドラ。これを捕らえ、シンドゥラ本国にはラジェンドラはパルスと組み国都に(カーデーヴィを倒しに)進軍したと流言した。アルスラーンと組まざるを得ないラジェンドラ。その間、ファランギースはバフマンと対話している。バフマンの真意を探るためだが、堅苦しそうなファランギースがバフマンと1対1でやり取りしていたとは、昔読んだときの記憶がない。その対話においてファランギースは、バフマンは苦悩故に死にたがっているのではないかと推測する。ナルサスは、バフマンには死に場所を与えるしか、もはややりようがないと考える。ラジェンドラは本心はわからないが、単純で陽気そうな男だ。捕らえられたものの饗宴で盛り上がる。ファランギースに目をつけ隣に座る。心配したギーヴが反対側に座る。その後。ラジェンドラは酔いつぶれ、ギーヴは謀って、自分が1杯飲む間にファランギースに3杯飲ませたつもりが、かなり二日酔いとなった。それに対してファランギースはほぼ素面。これを読んだ当時は高校1年で、酒など飲んだこともなく、酔うとはどういう事かも知らなかったので、当時どう読んだのだろうか?
アルスラーンのもとにラジェンドラがやって来て、シンドゥラのカーデーヴィ倒す競争しようともちかける。この提案を逆手に取り、シンドゥラがしばらくおとなしくするよう策略を巡らす。ラジェンドラから道案内としてジャスワントが送られてくる。ジャスワントの名前は記憶にあるが、どういう人物かは思い出せない。今のところ、カーデーヴィ側の回し者のようである。
シンドゥラのカリカーラ王の容態が回復する。後継者を指名すればいいのだが決めきれない。そこでシンドゥラ伝統の両者の決闘で決めようという。ただ、本人同志と言うのは差し支えがあるので、代理人を使って対決することとなった。ラジェンドラはダリューンに頼む。アルスラーンはダリューンの強さを信じているので了承する。カーデーヴィはバハードゥルという野獣とも言える巨人の罪人を使う。対決の場面。しかしアルスラーンも他国のために、最悪死もありえる決闘に自分の大切な部下を貸し与えるとは、人が良すぎるのも甚だしい。対決だが、こんな重要なシーンがあったのは記憶にない。人間とは言いがたいバハードゥルは痛覚を持たない。死ぬまで襲い続ける。それが戦斧を持って襲ってくるのだからダリューンに勝ち目があるのか。肉体戦ではなく、どちらかというと知力を使って、勝利した。それはラジェンドラが王になるということである。カーデーヴィは受け入れることができず抵抗する。一時両陣営の争いとなる。その混乱のうちにバフマンが槍で討たれる。アルスラーン出生の秘密を明かすことなく死んでしまう。カーデーヴィは身を隠すが、ラジェンドラに捕らえられ殺される。そもそもはカーデーヴィの側の人物だったジャスワントだが、アルスラーンにまたもや救われ、アルスラーンの元で仕える事になった。ただしシンドゥラがまともになったら帰るという条件付きで。アルスラーンはぺシャワールに帰る。その際ラジェンドラから、ルシタニア掃討のための三千の兵を貸し与えられる。しかしそれは獅子身中の虫であり、アルスラーンたちを挟み撃ちにするためのものだった。とっくに見抜いていたナルサス。ラジェンドラを生け捕りにし、3年は国境を侵さぬ約束をさせた。
失脚したボダンは聖堂騎士団を引き連れ王都の西北にあるザーブル城に立てこもった。ヒルメスはそれを攻めるようギスカールから指示を受ける。ギスカールは共倒れを狙うが、ヒルメスはサームに助言を求め、独自に兵士を徴募することで了承した。
地下牢に囚われているアンドラゴラスのところにサームがやって来て王家の真相を尋ねる。アンドラゴラスとオスロエスの父であるゴタルゼスは良い王だが迷信を信じすぎる欠点があった。予言者の話によってオスロエスの妻に自分の子供を産ませたそれがヒルメスであると。つまりアンドラゴラスの弟になるのだ。アルスラーンのことも聞き出そうとしたが時間切れで謎のままになる。
ボダンと聖堂騎士団の討伐のためザーブル城に向かうヒルメス一行。サームは途中でアトロパテネ会戦以来行方不明になっていたクバードを仲間に誘う。誰かにつかえることを堅苦しいと考えるクバードで、今は一匹狼として自由人として楽しんでいるが、試しで参加したのだった。ザーブル城は堅固で攻めるのが難しいため、イアルダボート教の聖旗を燃やし怒った騎士団たちをおびき寄せた。そこでまず一戦。クバードも大いに暴れまわる。しかし休戦の後ヒルメスと対面したクバードは、相性が合わないと判断し離脱する。アルスラーンにはダリューンやナルサスがついている。ヒルメスには自分がついていないと不公平だと考えるサームだが。果たしてクバードは誰につくのだろうか。
表紙はナルサス。口絵はバハードゥルと対決するダリューン。
「汗血公路4」
19880825に刊行なので11ヶ月ぶり。遅れがちになってきたか?高校2年。2月前19880625に「マヴァール年代記」の第1巻が刊行。遅れながらいくつかの長編をスタートさせていたのだな。
ナルサスはアルスラーンの名でぺシャワールに集まるようふれを出す。そして続々と諸侯達が集まってくる。例えば、レイの城主ルーシャン50歳代、オクサス領主のムンズィルの息子ザラーヴァント20代前半、万騎長だったシャプールの弟イスファーンも20代前半、南方のザラで守備隊長をしていたトゥース20代後半。兵が集まり、一方で王太子の暫定政府の組織作りも着々と進めるナルサス。こういった戦闘の描写ばかりでなく、政治の駆け引きなども細かく設定されるところが作者らしい。ジャスワントはアルスラーンの護衛。ルーシャンは中書令という宰相の役につく。
ギスカールは36歳。ボダンが逃亡する際に用水路を破壊したため修復工事に兵を割かなければならない。いっそエクバターナを放棄しようかとも考える。一方ザーブル城に籠城したボダンを早く落としたいヒルメス。サームの策を採用し、城の用水路に油を流し、火攻めにし場外にあぶり出したところを一斉に掃討した。これで聖堂騎士団を制圧したが、ボダンはマルヤム王国へ逃亡する。
ダルバンド内海に面するダイラム領にマルヤム国のイリーナ内親王の一団が内海を船でやってくる。ダイラムの住民に共通の敵であるルシタニアと戦おうと交渉する。ダイラムには現在有力者はいない。そんなときにルシタニアの兵士が略奪のためダイラムに侵入した。抵抗することもできないダイラム民とマルヤム民。そこへ大剣を抱えた将がやってくる。勿論クバードだ。アルスラーンのもとへ向かう途中であった。クバードともう1人メルレインという18、9歳の若者が加わり危機を救う。メルレインはアルフリードの兄で、妹を探している途中だという。残りのルシタニア兵は夜にまた襲ってくるだろうということで、マルヤムの内親王とクバードは、ルシタニア兵を一掃することを契約する。クバードの策により300人近くのルシタニア兵は全滅する。
イリーナ内親王に個別に呼ばれるクバードとメルレイン。そこでヒルメスという王子の消息を訪ねられる。イリーナはヒルメスの事を知っており、ヒルメスは盲目のイリーナには優しかったようだ。そして自分の正体を明かしている。クバードはザーブル城で聖堂騎士団と戦っているヒルメスの居場所を知っているが、メルレインに場所を教えそちらに任せる。クバードはなかなかの快男児だ。
アルスラーン一行はエクバターナに向かい進発する。その前にヒルメスの事をアルスラーンに打ち明ける。そして魔導師の1人が場内に放火する。追い詰めるギーヴだったが間一髪で逃げられる。しかし翌日濠の底から遺体となって発見され、正体を知ることはできなかった。
ギーヴとイスファーンはいさかいを起こし、ギーヴは去ってしまう。早くも退場かと思いきや実はナルサスの作戦で別の任務を与えられていたのだった。
第一陣はトゥース4千、ザラーヴァント3千、イスファーン3千である。手柄に逸るが、ルシタニアの狡猾な策略で劣性となる。善戦したのはトゥースで鉄鎖術で1人威力を見せた。ダリューンによってクレマンス将軍は討たれ、カステリオという騎士が生け捕られ、エクバターナに帰りルシタニアに宣戦布告する役を与えられた。こうしてぺシャワールからもっとも近いチャスーム城塞を制圧。
シャフリスターンの野に布陣。儀式として狩猟大会を催す。そこでアルスラーンはルシタニア兵と出くわす。小競り合いが起き、その勢いにのって、ルシタニアが乗っ取った、聖マヌエル城に攻め込む。パルスは圧倒的な武力で制圧する。そこで14歳の騎士見習いの少女と出会う。殺すのに忍びないと地下牢に捕らえる。アルスラーンは自ら食事と飲み物を運び、話を聞く。少女の名前は男性名でエトワール、本名はエステル。翌日ルシタニア兵達を埋葬するので、ルシタニア語で祈りの言葉を捧げてほしいと頼む。この聖マヌエル城での戦闘描写辺りからクドさが見え始めてきた感がある。今まではスマートな描写であったが、人が変わったかのような文体となる。あとは、アルスラーンと同年代15歳位の登場人物がよく出てくる。よく考えたら1巻を読み始めたのが、自分自身が14歳の時だったのが、再読するときにはアンドラゴラスより年上になりむしろルーシャンに近い。
ヒルメスはギスカールに自分の素性を(今頃)明かす。アルスラーンが王を宣言してからでは遅いから、先に言っておこうと言うこと。ヒルメスは魔導師に会い助言を求めると宝剣ルクナバードをてに入れろという。パルス王の象徴であるから。しかし本意は蛇王ザッハークの封印を解くためであった。
クライマックスは、地下牢に囚われていたアンドラゴラスを、ヒルメスがデマヴァント山に出掛けている間に会っておこうとギスカールが訪れる場面。半年拷問攻めにあっていたアンドラゴラスではあるが、その威圧感に圧されるギスカール。そしてアンドラゴラスが鎖を断ち切り復活を遂げる。鎖に半年間汗と尿と食事である塩汁をかけ、腐食させていたのだった。一気にギスカールは捕らえられ、反対の立場になる。圧倒的な強さだ。この場面だけは記憶にある。タハミーネと再会するアンドラゴラスだが、互いに冷めている。アンドラゴラスは兄から奪ってから一度も気持ちを通じたことがないと皮肉る。しかし時間はたっぷりあるし自分も今までがそうであったように待ち続けると。
その時トゥラーンが進出してきそうな様子。で、第4巻は終わる。単騎のクバードはアルスラーン一行とからくも入れ違い、まだ接触はなし。
光文社文庫の解説は山田風太郎でおなじみの日下三蔵。日下らしく、内容の解説というより刊行の歴史なのが、それらしい。
表紙はファランギース。扉絵はクバード。
 
王都炎上
20200823読み始め
20200827読了
王子二人
20200827読み始め
20200829読了
落日悲歌
20200829読み始め
20200830読了
汗血公路
20200831読み始め
20200901読了

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