この短編には様々な読者から、様々な感想が投稿されていた。
自分自身読んだこともない。
読者たちの感想は、山田風太郎っぽくない。異色の小説。みたいに評されていた。
読んでみた。
長年の風太郎読者の自分としては、風太郎らしさが満載の話だ。明治ものからしたら異色かもしれない。しかし、初期のミステリーの系譜そのものだ。他愛もない話に始まり、皮肉な結末で終わるという。
この皮肉な結末で終わるというのは、初期の風太郎小説に特徴的だ。ある時期の(これまた初期の)田中芳樹のSF小説と近似している。
要はどんでん返しが巧みなのだろう。
自分としては、
過去の因習、切腹というものが理不尽なものだということ。つまり、重大な過ちを犯した時の責任や、自分が恥ずかしいと思うことによって自死を選ぶということ。それに対して切腹することが山田風太郎には理解できないのだ。ここでは特定されていないが、自分で思うに三島由紀夫が割腹したことにも触れられていて、それは好ましくはないことだと言っている、場面が出てくる。ストーリーよりその山田風太郎と三島由紀夫の時代性を推測して、そこから様々な推測が膨らむ。
これは山田風太郎初期の作品の傾向であり、それをSFで表現した、初期の田中芳樹なのだ。