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「アルスラーン戦記」田中芳樹(3/4)

2020-10-10 20:33:48 | 読書
2012年4月に光文社文庫版の第一巻がスタートし、半年に1回順調に続編が刊行され2020年8月に完結する。考えてみたらそれでも第1巻から8年経っている。光文社文庫から読み始めた人は半年に1回コツコツと読み続けそれを8年間続けるのも大したものだ。今、まとめて読めるのは幸せだ。
「旌旗流転9」
19920720刊行。大学3年。8か月ぶり。今思えば大した期間ではない。ただ、前回の内容は覚えていなかっただろう。
ラジェンドラからチュルクが攻めてくるから助けてほしいと、厚かましい依頼がある。人のいいアルスラーンは加勢に向かう。
先巻でチュルクのカルハナ王はヒルメスにシンドゥラで暴れろと指示している。アルスラーンはトゥラーンを通りチュルクを通りシンドゥラに助けに行く。つまりチュルクに逆方向から侵入して意表を突く作戦。これをアルスラーンの半月形。チュルクの将軍たちは予想外の方面からの攻撃にパルスに翻弄される。硫黄を使った刺激性の爆弾で太刀打ちできない。カルハナの歳の離れた従兄弟のカドフィセス(30歳くらい)、この人物はチュルク版ギーヴとのことだが、カドフィセスにシンドゥラに向かいパルス兵を殲滅しろという。ただし、今から兵を集めるのでなく負けたシングたちの兵を再組織して戦えということ。
チュルク兵はシンドゥラのコートカプラ城を攻め占領する。籠城しようとするが逆に補給路を閉ざされれば飢死だ。チュルク本国からはヒルメスにコートカプラへ行き合流せよと指示が来るが、カルハナ王の指示ではないと一蹴。ここはヒルメスにスカッとする。
カドフィセスが一人でフラフラしている。真相はわからない。カルハナと袂を分かったのか、逆にカルハナの策略か?いとも簡単にエラムとアルフリードに捕らえられる。拷問を受ける。といってもくすぐりの刑。そしてチュルク王への手紙と称して何通もの手紙を書かせる。それはカドフィセスの筆跡を盗む作戦であった。筆跡を盗めばいかようにも親書を捏造できるのだ。カドフィセスは、無慈悲なカルハナを倒しチュルクの王位を望む。そのあかつきにはパルスと不戦協定を結ぶ。win-winの関係を提案するが、その本心は果たして。
ヒルメスはトゥラーンの残兵を集めて、自分の配下とするが、ブルハーンという若い将は、実はジムサの弟だ。(兄はアルスラーンのパルスの将となっているが)。ヒルメスにはカルハナから軍監をつけられている。軍監とはつまり監視役だ。ことあるごとに対立している。軍監とトゥラーンのブルハーン、ドルグ、クトルミシュが遂にいさかいが起きる。ブルハーンは軍監のイパムを斬ってしまう。こうなっては引き下がれない。カルハナは大義名分を得てヒルメス達を始末しようとするだろう。そこでヒルメスは軍監とその配下のチュルク人を全て抹殺し証拠隠滅のため深い穴を掘って皆埋める。この辺り凄絶で震える。ヒルメスはこれで(そもそもブルハーンがカルハナの部下を殺したことで信用をなくすだろう)カルハナを敵に回してしまった。チュルクに帰ることはできない。3年前アルスラーンに負けて、イリーナだけをつれて流浪の旅に出た。イリーナは死んだ自分はチュルクでなく、本来はイリーナの故郷のマルヤムに王国に行くべきではなかったか?この辺り悲壮感があって共感したくなる。
コートカプラ城で籠城するチュルクのシング将軍。これに対する作戦は、ヒルメスの銀仮面を装った兵士をシンドゥラが追いたてる。銀仮面の集団がチュルクのシングの仲間と思わせて城に入れたところを一網打尽にする。ヒルメスはもちろん全く関係ない。作戦は成功しシングを生け捕りに。シングをカドフィセスの親書と称してカルハナに密書を託す。果たしてその密書の内容は?
ミスルではヒルメス風を仕立ててザンデを拘束する。次の章では意外な展開で、ザンデはパリザードという女を嫁にしている。しかも尻に敷かれている。パリザードはヒルメスに不信感を持っている。ミスルにいるヒルメスと称する人物をだ。ザンデに、ヒルメスと称する人物にかまをかけてみろと助言する。ルクナバードを手にしようとしたときの一件を尋ねると、やはり正確な答えをしなかったため偽者と気付く。監視役にそれを悟られたため始末されそうになる。一度は逃走するが、ホサイン3世は有能な人材と見込み生け捕りにするよう指示を出す。しかし結局対決の場で殺されてしまう。パリザードはザンデに逃がされ河に飛び込み逃げる。だが生きている保証はない。長く活躍してきたザンデだが寂しい最期となった。
マルヤム王国からミスルのホサイン3世のところに使者が来る。オラベリアだ。つまりボダンではなくギスカール側の使い。友好関係を結ぼうと言う。オラベリアが宿舎にいると川から女が流れてきたと言うパリザードだった。
ヒルメスはコートカプラ城に向かう。しかし内部はチュルクでなくパルスに占拠されていた。逃げては逆に全滅と判断したヒルメスは奥へ突き進みアルスラーン達を皆殺しにしようとする。ダリューンとの一騎打ち。両者互角でなかなか決着がつかない、ただほんの僅かダリューンの方が上だということを悟ったヒルメス。長い決闘に耐えられなくなった現在の重臣であるクトルミシュが間に割ってはいる。プライドを傷つけられたヒルメスはクトルミシュを斬ってしまう。それこそがしてはならない恥ずべき行為であることに苦悩する。ここで死ぬわけにはいかないということで逃走する。ヒルメスのもとにはブルハーンというトゥラーン人が従っていた。これがなんとジムサの弟だ。この戦場で兄弟が出くわす。アルスラーンに仕えるよう諭すジムサだが、ヒルメスに心酔しているブルハーンは断り喧嘩となる。そこに矢が軽く飛んできてブルハーンの冑に当たる。牽制するようアルスラーンから指示され、ギーヴが弓矢を飛ばしたのだった。ブルハーンは逃走。命からがらヒルメスの隊は100騎程となり壊滅状態。全てナルサスの策なのだった。
ダリューン対ヒルメスが見られたわけだが、どう決着つけるのかこれは見ものだった。どちらかが倒されるしかない対決で、作者も考えただろう。意外な結末となったが、これでしばらくヒルメスの活躍が見れる。
チュルクの王弟カドフィセスだが、捕らえられ、そのままラジェンドラ預りとなる。上等な捕虜である。
ヒルメス達は再起をかけ、シンドゥラの武装商船を拉致し西へと向かう。
パルスでは王宮に有翼猿鬼が出没する。退治したあとアルスラーンはファランギースから過去の話を聞く。同門のイグリーラスと恋仲であったが、イグリーラスは事故死する。イグリーラスの弟であったグルガーンは神に失望し魔道の道へ身を落とす。
魔導師たちは尊師を復活させつつある。
よい返事は得られなかったオラベリアはマルヤムへ帰る。パリザードを伴い。パリザードは何か腕輪を大切にしている。ホサイン3世の悪事を知っているパリザードは何か役に立つだろう。それと入れ違いにヒルメスの乗った船がミスルに向かっている。
表紙はジャスワント。扉絵は有翼猿鬼を襲う告死天使アズライール。
「妖雲群行10」
19991201刊行。第9巻から7年経っている。この間に大学院を出て社会人になり4年目となっている。第1巻当時のダリューンの歳になってしまった。この歳になったらある程度読んだ記憶が残ってそうだが、もしかしたら買ったまま読まなかったのかもしれない。まあ7年ブランクがあるとストーリーがわからなくなっていただろう。あと、天野喜孝のイラストがカバーと扉だけでなく、挿画も組み込まれていたので、それを見たさに流し読みしていたかもしれない。
メルレインとトゥースがぺシャワールに向かう。クバードが近くまで迎える。空から有翼猿鬼が10匹ほど襲ってくる。有翼猿鬼が増えてきているではないか。数匹退治すると残りは飛んで逃げていった。トゥースは3人の女性を妻にした話があり、本題はクバードにデマヴァント山に兵を送るよう指令が出たことを伝える。エクバターナでは鳥面人妖が現れた。王都の役人に扮していて挑発してきたのだ。それを受けてのクバードへの出兵命令だった。これまで人力での戦いであったが、魔物の登場が増えてきて、人力で戦えるのかと心配になる。あと国内の政治や、文化や教育といった話(これが俄話ではなくしっかり構築されている)や、余談が増えてきて回りくどい。そしてジョークがくどくなってきた感がある。7年のブランクで作風が若干変化したかもしれない。
クバード、トゥース、メルレイン、イスファーン、ジャスワントが終結してデマヴァント山に向かう。アルスラーンは旧臣達と会議。ナルサスはザッハークと言う架空の存在より近隣諸国の侵攻に備えるべきと言う考え。ミスルには偽のヒルメスがいる。そこへ本物のヒルメスが船でやって来たと言う噂がホサイン3世に来る。これをどう扱うかが思案のしどころ。いまなお他国とのかけひきで引っ張る。ザッハークは先送りだ。シンドゥラは協力関係。トゥラーンはほぼ絶滅、チュルクは牽制して抑えた。次はミスルというわけだ。
ミスルにたどり着いたヒルメスだが、兵を集めるために画策する。なかなか合理的でいい。パルス人商人を味方に引き入れミスルの情報を得る。そしてミスルを乗っ取ろうと決心する。実は作者はヒルメスに思い入れがあるのではないか?アルスラーンは文化的、人道的に王になった。ヒルメスは戦国時代真っ只中の人物で、その時代にあって一般人を自分に従わせることにかけては絶妙な手腕を発揮する。まあ、多分後の巻ではナルサスによってヒルメスはやり方が間違っていたと、ひっくり返すことになるに違いないが、この時点においてはヒルメスの行動はアルスラーン以上だと思われる。いや作者はそれもわかっていて、読者にヒルメスに共感を持たせておいて、後で簡単にポイ捨てするのではないか?作者お得意の手法だ。かなり重要な人物として育てながら、死ぬときはあっけない。ともかくミスルでの名前をクシャーフルと称することにした。ザンデの代わりとしてミスルにおけるパルス人の指導者としてホサイン3世に取り入る。うまく潜入に成功し、初仕事として盗賊討伐に出兵する。これも大きな成果を出す。完全にホサイン3世の信頼を勝ち取る。ヒルメスがかなり活躍する章で、主軸のアルスラーンと両立できる展開。
ファランギースとアルフリードがオクサスに向かう。オクサスの領主はムンズィルという。ザラーヴァントの父親である。領内にあるアシ神の神殿で3人の女性神官の失踪事件があり、その調査に来てほしいという。この章はちょっとミステリー風の展開となる。ナーマルドが村人に狼藉を働いている。レイラという女性が立ち向かう。それをファランギースたちが加勢しナーマルドは逃げる。ムンズィルの邸宅に着くと祝宴が催される。そこで息子として紹介されたのがナーマルドだった。ナーマルドは身分を第一と考えるため反アルスラーンを公言する。調査が始まった。神殿に潜入捜査することになる2人。そこで見習いとしてつとめてるのがあのれいらだった。レイラは捨て子で神殿の門の前に捨てられていた。高級そうな腕輪と共に。歳はアルスラーンと同じくらいだし、腕輪のデザインは王家に由緒あるものだと言うファランギース。タハミーネが産んだなぞの本当の子は女児だったという。もしかしたらレイラはその子ではないかと。さて、神官誘拐事件の真相。邸宅と神殿は通路でつながっており、誘拐犯はナーマルドだった。そしてムンズィルと称する人物はムンズィルの兄であるケルマインだった。ケルマインを疎むムンズィルはケルマインを狩りに誘い、事故死したとして地下通路に20年も監禁していた。そして助けられた後は逆にムンズィルを地下に閉じ込めたのであった。ケルマインとナーマルドは蛇王ザッハークに身を売ったのであった。ファランギースたちはムンズィルを助け出し逃げようとしたが、ムンズィルは途中でナーマルドの矢によって殺される。その上通路に油を流し火をつけられたのだった。死んでしまったムンズィルの髪の束を切り落とし、火に巻き込まれないよう逃げるファランギースとアルフリード。その先に何とギーヴが現れる。ここで終わる。続巻に続くわけだが、今は続きはこの手にある。しかし当時続巻はいつ発売するとも知れず、当時の読者はさぞイライラさせられたであろう。因みに誘拐された3人の神官は生け贄として殺されたらしい。
デマヴァント山に向かうクバード達5人。大雨が降りそうになり、一時鍾乳洞で雨宿りをする。途中でとらえた鳥面人妖2匹。イスファーンは嘴を切ったはずだが、いつの間にか修復され驚く。その時鍾乳洞の入り口を巨大な岩でふさがれ、閉じ込められてしまう。
表紙はアルフリード(だろうか?)扉絵はイスファーンが鳥面人妖2匹と対決する場面。
「魔軍襲来11」
角川文庫版は前巻「妖雲群行」第10巻でストップしている。カッパノベルズで20050922に刊行。5年9ヶ月ぶり。このカッパノベルズ版は恐らくこの第11巻から再開するのに合わせて20030221に「王都炎上」「王子二人」合本として再刊された。以降2作品を1冊にまとめて10巻、つまり5冊刊行された。
今回はマルヤム王国から始まる。つまりボダン対ギスカールであるが、途中の経緯は省略されており、ボダンが始末されようとする場面。聖職者の名をかたった狂信者であるとしてギスカールに密かに処刑される。公開処刑にしないのは、大義名分があるとはいえ反感を持つものも出てくるだろうということだ。ギスカールはここまでに自分を助けたマルヤム人のコリエンテ候とトライカラ候を重心としている。オラベリアも重用されている。ある時歳の割には白髪の男と女騎士が盗賊に襲われている。男女盗賊はそれを退治する。オラベリアは近づくとその白鬼と呼ばれる白髪の男はなんと、かつて同僚だったドン・リカルドだった。オラベリアは気づいたがドン・リカルドは記憶がない。女騎士の方はエステルだ。ルシタニアからギスカールに会いに来たという。オラベリアは二人を家に迎える。そこで給仕しているのはパリザードだ。いずれギスカールに捧げようと家に置いているのであった。オラベリアは公用で不在だったが、ドン・リカルドは留守番しエステルギスカールに会いにいく。ルシタニアに帰ってきて国をまとめてほしいというため。ギスカールはルシタニアに戻っても敗残の将ということで厚遇されないだろうということで断る。エステルは過去に数度会ったことがある。が、ここはエステルには悪いがボダン殺害の汚名をかぶってもらおうと考える。エステルが王宮から帰ってきた夜、盗賊が復讐に来る。葡萄酒の瓶で頭を殴られたドン・リカルドは記憶を取り戻す。ザッハークを目撃したことを思い出した。パルス人のパリザードはそれはザッハークと知り恐怖を覚える。続いてギスカールの手のものがやってきて、エステルをボダン殺しの罪で連行しようとする。罠にはめられたと悟った3人は追手を斬る。数人は逃げたがいずれ大人数を連れて戻ってくるに違いない。ということでマルヤムから脱出しようと考える。パルスを通ってルシタニアへ行こうと決める。ギスカールも深追いはせずボダン殺しの汚名だけ被って国外へ逃亡してくれたらそれでいい。しかし果たして禍根は残らないだろうか気になる。ギスカールはマルヤムで国造りを計画する。アルスラーンはパルスを。ヒルメスはミスルを。ギスカールはマルヤムを。これでうまく収まりそうなものだが果たして。
オクサス領の領主ムンズィルを騙ったケルマインの続きがやっと始まる。つまりナーマルドが地下通路に火を放ちファランギースとアルフリードが逃げてるところにギーヴが現れた場面の続き。5年待たず、続けて読むことができてよかった。ケルマインは完全にザッハークに魂を売っていた。ファンタジー色が強くなっていくのだが、レイラは武闘会で優勝したときに出された葡萄酒に、ザッハークの血が混ぜられていた。それを飲んだものは大抵死ぬがレイラは受容できた。それが何を意味するかはまだ分からないが、尋常ではない強さを発揮するようになり、ケルマインをかばおうとする。ギーヴに手を出さぬよう指示し、ファランギースはレイラ、アルフリードはケルマインと対決する。どちらも取りつかれた相手に苦戦するが、アルフリードはケルマインを倒す。ケルマインの死体は灰となり崩れ去る。つまりケルマインはすでに死んでいて復活されたのだった。ファランギースはからくもレイラに逃げられる。ナーマルドは有翼猿鬼に変化していた。こちらも退治。領主のいなくなったオクサスだが、本来ならザラーヴァントが後継となるべきだが、それまでパラザータという千騎長が治めることになる。
アルスラーンはお忍びで城の外に出ることが好きだ。エラムをつれて街を散策する。暗闇に入ったとたん、グールに襲われる。ピンチを迎えるが、そこにダリューンが現れ、5匹とも退治する。
ナルサスの邸宅に避難する。そこでも有翼猿鬼が現れる。ダリューンは背中に乗って退治しようとする。高所で殺すと自分の身も危ないが、池に墜落することで免れた。キシュワードとジムサが現れ加勢する。ジムサは少女を連れている。キシュワードの家で会合。少女はトゥラーンに近い草原の村が魔物に全滅させられていた所の唯一の生存者。ザンデはそこで魔物と戦闘する。そこでかつてのトゥラーンの親王イルテリシュを目撃する。しかしかつてのイルテリシュのような覇気がなく虚ろだ。ジムサとイルテリシュは対決。ジムサが優勢だが魔導師ガズダハムが現れる。ジムサを仲間に引き入れようとするがジムサは従わない。ジムサの吹矢によって右目を刺され恨みの言葉を残し消え去る。イルテリシュは有翼猿鬼4匹が吊り下げた円盤に乗って飛び去る。イルテリシュはトゥラーンとパルスの地を統一し、選ばれた女との間に子を産み、その子が地上におけるザッハークの代理人として汝らを統治すると言い残す。何だか山田風太郎的な展開だ。
ヒルメスのパート。街を歩いていると一人の女が助けてほしいと接触してくる。ナバタイ東王国からホサイン3世の後宮に捧げられるフィトナであった。フィトナは野心家で自分の相手にふさわしい男は王出なければならないと考えている。さらには王になろうとしている男。ヒルメスは目をつけられたのだ。ミスラの客将軍となった自分の身分を明かす。フィトナはホサイン3世に取り入り、まず第一歩としてミスルで最も実力者が担うとされる、南方軍都督の地位をヒルメスに与えるよう話をつけるとした。フィトナは身に付けていた腕輪(パルスの王族か貴族しか持つことができない)を半分に切り、ヒルメスとそれぞれ持つ。事実、マシニッサの讒言という邪魔が入ったものの、ヒルメスは見事に南方軍都督に任命される。このころのヒルメスはパルスの王などではなく。ミスルを乗っ取り、国造りをしていきたいというというほうに熱意を持っていて好感が持てる。
クバード達、デマヴァント山に向かった兵士たち。鍾乳洞に閉じ込められたところの続きから。まず捕えていた2匹の鳥面人妖をだまし、(1匹は仲間割れで死ぬが)巣に帰らせる。自分たちはそれと反対の方向に洞窟の奥へと進む。芸香(ヘンルーダ)という魔よけの香をあらゆるものに塗り付け急いで奥へと進む。しかし、早くも魔物たちが仲間を連れて襲ってくる。ヘンルーダは効果があるらしく。魔物を近づけない効果があるし、それを塗った武器を使うと敵の復活力が低下する。魔物は鳥面人妖と有翼猿鬼に加え新たに犬のような四眼犬(シムエル)という上2つが赤い目、下2つが黄色い目の魔物が登場する。斬っても斬っても次々と現れる魔物たち。3日半かけてやっと反対の出口から脱出に成功。急いでペシャワール城に戻り態勢を整える。この魔物の数の多さに、この先の展開に気が遠くなりそうだ。
表紙は鉄鎖を持っていることからトゥースとわかる。3人の女性は誰だろう?そうトゥースの3人の妻たち、パトナ、クーラ、ユーリン。扉絵はレイラと戦うファランギース。
「暗黒神殿12」
20061207刊行。前巻から1年2ヶ月ぶり。長いといえば長いが比較的早い刊行だったろうか。読んではいないが刊行当時は社会人11年目。
ぺシャワールに戻ったクバード達。息つく間もなく数万数千の魔軍が襲来する。ヘンルーダを仕込む間さえない。果てしのない戦いが続く。その中、千騎長ムフタセブを失う。魔軍を操るのは魔将軍と化したイルテリシュだ。イスファーンは対決するがピンチ。ピンチを助けたのはクバード。イルテリシュは消え去る。次に現れたのはトゥースの前だ。一進一退。そこにクバード、メルレイン、ジャスワント、イスファーンが集合。司令塔であるイルテミシュを総力戦で仕留めようという。しかしイルテリシュは逃げおおせる。魔軍の攻勢は収まらず、諦めかけたとき。河の方からグラーゼの援軍がやって来る。シンドゥラから買い占めた芸香の原料の柑橘を塗り大弓を打ち、次々と魔物を打ち落とす。イルテリシュは例の円盤で逃げていく。一時休戦。地下では魔導師がイルテリシュに脅迫されている。魔導師はイルテリシュの子供を作る女を紹介することで事なきを得る。その女の名はレイラ。
ヒルメスは南への赴任を準備していた。南で、ナバタイ人を含めて兵を集めて、ミスルを乗っ取る一歩を踏み出す。ところが急展開。ホサイン3世が黄金仮面に面会する。すると隠し持っていた、食事に出た羊肉の骨で作った刃物でホサイン3世を拉致する。黄金仮面は護衛兵から奪った剣で王の小指を落とし脅迫。しかしなんの計画性もない。手当てと称して後宮に入ったフィトナが手当てをする。ヒルメスはパルス人とトゥラーン人による国王救出隊を組織する。負けてはいられないマシニッサもミスル兵を組織してそれに加わる。そして王が人質になっている部屋にはいる。入るや否やヒルメス陣はミスル人を斬る。ヒルメスもマシニッサを討ち取る。自分の名を騙る黄金仮面つまりシャガードに王へとどめをさすよう指示する。その結果は。マシニッサは黄金仮面と結託してホサイン3世を殺した。ヒルメスはその犯人を討ち取ったということになる。その後サーリフという8歳の幼い王子を王にたて。ヒルメスは事実上ミスルの権力を握る。爽快な話だった。ザンデの敵であるマシニッサへ恨みを晴らすこともできた。
ギーヴはバダフシャーンに向かう。タハミーネを探るため。侍女として侍っているのがレイラだった。つい先日ケルマインの邸宅から逃げ出したのに、もうこんなところに(ギーヴより先に)潜り込んでいた。タハミーネはレイラが自分の生き別れになった娘と信じている。レイラは裏ではイルテリシュと密会して何かたくらんでいる。ぺシャワールの魔軍襲来後、エクバターナに向かうイスファーンとジャスワントだが、思うところあってイスファーンは単騎バダフシャーンに向かう。ギーヴがイルテリシュと対峙している。イスファーンは加勢する。2人はタハミーネに悟られずどのようにレイラを引き離せるか思案する。イルテリシュがレイラを連れ去れば一番無難と考える。結果オーライでレイラとイルテリシュは空を飛んで去っていく。じきに王座を奪いに戻ってくると言い残して。ギーヴとイスファーン、そしてタハミーネの不興をかって追い出された侍女アイーシャはエクバターナに向かう。
久々に将達が集まる。お互いの経験したことを情報共有する。カリヤーンの石切場で地割れがあり、そこから怪しいものが現れ誘拐事件がある。ザラーヴァントとキシュワードが地割れの地下通路を探索する。そこには巨大な暗黒神殿。そのとき地上の貯水池が魔導師によって破壊され地下に水が押し寄せる。辛くもザラーヴァントやキシュワード達は地上に逃げ出せた。グルガーンは行方不明。グンディーは生きて捕らえられた。
ナルサスがアルスラーンに王としての風格が具わったことに喜ぶと共に、恐ろしい予感に悪寒を覚え、エラムにお前は自分達より長く生きてアルスラーンを守るよう誓わせた。その理由が気になる。
パリザード、ドン・リカルド、エステルはパルスに入国していた。ルシタニアではなく一瞬パルスで住んでもいいとも考える。僧院の廃墟で有翼猿鬼に出くわす。そいつに自分達が手にいれた馬を殺されてしまう。魔物がわかるのはパルス人であるパリザードだけ。同じときにチュルクのシング将軍の集団も有翼猿鬼を目撃していた。シング将軍の集団は問答無用でドン・リカルド達を襲う。ドン・リカルドはなかなか強い。チュルク人の大半を一人で倒す。そしてシングも倒す。そこへ領主のカーセムが現れ、領内の牢屋に捕まっているルシタニア人から正体を聞いてくれと頼まれる。その牢人はパルス語を一切しゃべらない。その牢人はルシタニアの貴族ルトルド侯爵だった。悪の塊でしかないルトルドだがエステルは同情心から釈放してやってほしいとカーセムに頼む。ルシタニアに帰るまで手を拘束すること、パルスに攻めてこないことを条件に牢から出そうとするが、狂気をまとったルトルドは牢格子に体当たりし一本格子を吹き飛ばす。それを足に受けたエステルは動けなくなる。抜け出したルトルドがパリザードを襲ったためドン・リカルドはルトルドを殺す。エステルは足を複雑骨折し二度と杖なしでは歩けない体となってしまった。その夜高熱を出したエステルはエクバターナに行ってアルスラーンに会いたいと言う。そして、エステルは車に載せ、カーセムの手引きで一行はエクバターナに向かう。
表紙はタハミーネだろうか。なぜ今ごろ、そして他に表紙にするキャラがいるだろうと思っていたが、この巻で久々にタハミーネが登場したからかもしれない。扉絵はイルテリシュ
 
「旌旗流転」
20200911読み始め
20200912読了
「妖雲群行」
20200913読み始め
20200914読了
「魔軍襲来」
20200914読み始め
20200916読了
「暗黒神殿」
20200916読み始め
20200917読了

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