明治断頭台―山田風太郎明治小説全集〈7〉 (ちくま文庫) 価格:¥ 998(税込) 発売日:1997-08 |
明治が舞台ではあるが推理小説である。歴史上の実在の人物が多数登場するのはいつも通り。章ごとに1つの事件を解決していく連作形式です。
ストーリーですが、トリックや展開がちょっと強引な印象がします。トリックはともかく展開は、導入部分→事件勃発→そしていきなり種明かしして解決。しかも解決方法は巫女に死者の魂を乗り移らせ真相をしゃべらせるという強引な解決法。本格推理ファンの読者からすれば邪道も邪道と思われかねない。
しかし、これは推理小説 のようであり、歴史小説でもある。そう考えれば何の問題もない。 ある意味山田風太郎はこの頃になると、いい意味で力が抜け、非常にリラックスして歴史小説を書いている。抱腹絶倒、大胆である、そこが面白いのではないかと思います。
しかし、特に「遠眼鏡足切絵図」の章がいい。登場人物が多い、複雑な事件。どういうトリックか全く想像できなかったのが最後に解決された時の爽快感。
そしてそれ以後の章は一つの話としてクライマックスに向かい一気になだれ込みます。但し全体として連作でありながら最後には全ての辻褄が合うというさらに大がかりなトリックが。
ネタバレになるので書けませんが、最終章は「これはまさに風太郎節だ」と思いました。風来忍法帖などを彷彿とさせます。
この最終章においては、理不尽さ、そして一体何が正義なのか?正しいのか?それを考えさせられます。
ラスプーチンが来た 山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫 価格:¥ 998(税込) 発売日:1997-10 |
山田風太郎「ラスプーチンが来た」を読みました。
現実逃避したかったのか、よほど面白かったのか、読むのが遅い自分にとっては比較的早く読了しました。
確かに面白い。中学生か高校生の頃に文春文庫で出ていたのを買ったのですが、結局読まずじまいもままでした。てっきり単行本で買っていたと勘違いし、だったらこの際、文庫版で買って良いかと思ってちくま文庫版を買ったのですが、昔買ったのは文庫版だった。ということで2冊所有することになってしまったわけです。
昔は何となく明治物は読みにくいと思ってたんですね。忍法物は比較的時代的にも入ってきやすかった。しかし明治物となると今ひとつ時代の空気が掴みづらかったり、興味有る歴史上の人物もそれほどいなかった、というのもあり当時明治物としては「地の果ての獄」しか読むことが出来ませんでした。
今は幕末から明治維新、そして明治時代と時代背景、人物なども分かるようになり、読めるようになったと言うことです。
前半は明石元二郎を主人公として、様々な実在の著名人と創作人が飛び出し、奇想天外な事件とその解決という連作形式で進んでいきます。後半はタイトルのラスプーチンがやっと登場し中編として話が進みます。前半は緻密な構成、後半は大らかで大胆なストーリー、といった感じでしょうか。
実在の人物を登場させ、あたかも実際に起きた出来事のような事件と、それに全く違和感を感じさせない展開はさすが山田風太郎、と感嘆せずには居られません。
歴史の勉強にもなりますよ。
因みに文春文庫版
風太郎の表紙ではおなじみの村上豊のデザインがいい味です。
因みにこの文春文庫版は500円だったので、実に2倍の値段になってしまったのです。
ちくま文庫はそもそも高級な部類ですが。