前回の続きです。
出来たらMちゃんに会いたい。
そう強く願って、精いっぱいのおめかしをして家を出ました。
外は、今冬一番と言ってもいいような厳しい寒さ。
雨がそのうち雪に変わるのでは、と思えるほどの冷たさでした。
最寄り駅ビルの中に眼科医院があります。
エスカレーターに乗り、二階で降りてすぐの奥。
恐らく強い北風と雨で、湿気に弱い私の髪はもさもさになっているはず。
そう思い、まず化粧室の鏡で、髪にひと櫛入れようと思いました。
私が愛用している櫛です。
チタンで出来ています。
とても軽く,バッグに入れても場所を取りません。
ところが鏡を見て、一気に落ち込みました。
まるで別人のような情けない容貌になっていたからです。
きれいにセットしたつもりでしたのに。
洗髪して間もない髪は、湿気に益々弱く、心配した以上に乱れ、収拾がつかないほどに。
瞼はますます腫れ、右目は真っ赤。
ミラーに映った自分を見た瞬間、Mちゃんに会うことは諦めざるを得ませんでした。
これでは、電車に乗って、おしゃれな街に赴くのは、余りに恥ずかしい。
孫にもこんなみじめなおばあちゃんを見せたくない、と。
女性にとって、見かけは心にも強い影響を与えますよね。
体調が悪くても、いつもの笑顔と変わらなければ、それだけで少し元気が湧いてくる。
その逆だと、益々体調が悪くなりかねない。
この日はまさにそんな日。
出かける時は、みじめな顔ながら、髪はきれいにセットし、おめかしもして、前向きの気持ちを維持していたつもりでしたが・・・。
化粧室で、ただ事ではない自分の形相を見て、長女に会うことは断念。
その場で断りの電話を入れました。
精神的だけでなく物理的要因で、その後の気分の落ち込み様は凄くて・・・。
何はともあれ、眼科の診察を受けなくてはなりません。
私は劇薬のような洗浄液を目に差したことが原因ではと、先生に伝えましたが、
診断結果は、角膜に傷がついているといったものでした。
目薬三本の処方箋をいただき薬局に。
妹には後で、
「眼帯をはめればよかったのに」
と言われましたが、その時は、全く思い付かないことでした。
私が愛用している携帯用の鏡。
母の遺品です。
そのまま直行で家に帰ればいいのに、気分の転換を図らなければ、その落ち込みから抜け出せそうになくて。
みじめな姿だけれど、お昼はレストランで外食しよう。
多少豪華にしたい。
もう節約なんてどうでもいい。
でも交差点を渡って、駅前の商業ビルのレストラン街まで行く元気はありませんでした。
近場には、私が大好きな神戸屋キッチンがあります。
Mちゃんが独身の頃、このお店の美味しいケーキを退社後、お土産によく買ってきてくれたものです。
そこに決め、千数百円のビーフシチューランチをいただきました。
多少気分転換が図れたのか、元気が出てきたようにも。
更に駅構内にあるお花屋さんで、小さなお花のブーケまで買いました。
もう節約はいや!の気持ちが、ストレスの反動でいっぱいに。
夫が亡くなってから、タクシーを利用することはめったにありませんでしたが、この日は違いました。
バスはいや!タクシーで楽しよう、と。
そして、タクシー乗り場に向かいました。
夫が居る時は、当たり前の行動でしたのにね。
ところが悪天候で、タクシー乗り場は長蛇の列。
寒い中、並ぶよりバスで帰る方がましと思い、気を取り直してバス停へと。
帰宅してからも落ち込みから抜け出せなくて、しばらく床に就いたのは覚えているのだけれど、その後何をしたか、今となっては忘れてしまいました。
落ち込んだときは、私は寝るに限ります。
数十分休むだけでも、心をある程度入れ替えられます。
その後は、ひたすら整理整頓を多分したのでしょう。
朝のどさくさで、ほとんど何も手を付けないで出かけましたから。
各部屋がすっかりきれいになる頃には、心も落ち着いたはずです。
それにしても随分落ち込んだものでした。
笑顔になれないみじめな顔と、Mちゃんに会えなかったのが、明白な理由であることは言うまでもありません。
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