月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

アイ ラブ モンゴメリ

2018-04-02 | 仕事
相変わらず週に1、2回のペースで祇園に出勤している。
桜の季節だけあって、とにかく京都は人が多い。外国人もたくさんいる。

最近、うちの店にも1日1組くらい、外国人が訪れるようになった。
観光客なので日本語はほぼしゃべれない。そして、まだうちには英語メニューがない。なので、頑張って自分で英語で話すしかないのだ。

最初はまさか来るとは思っていなかったから、とにかくびびってしまって、ちゃんと対応できずに終わった。
1杯ずつ飲んでくれたけど、ニコニコしていたけれど・・・。でも反省しかなかった。

せっかくこんなわかりにくいバーに来て、日本酒を飲もうとしてくれているのに、ちゃんと説明もできないなんて・・・
自分が情けなくて恥ずかしかった。

帰って自分なりにやりとりを想定して、英会話集を作った。
翻訳アプリもダウンロードした。
できるだけ自分でしゃべるけど、どうしても困った時にはアプリを使おうと思った。
最近のアプリはすごくよくできているので、かなり正確に翻訳してくれる。

翻訳を見ていて思った。
あれ・・・?中学英語やん、と。
お店で必要な会話なんて、中学英語の文法と単語でほぼできるんだとわかって安心した。
アドリブはきかないけど、必要最低限の英会話ならなんとかなりそうだ。

そう思って待ち構えていたら・・・、来た!!
30歳前後くらいのカップル。
ちょうど店にはほかにお客もいなかったのと、二人ともすごく感じがよかったのとで、私もリラックスして対応できた。

最初に、「日本酒しかないけどいいか?」「英語のメニューないけどいいか?」を尋ねて、OKと言われたので座ってもらった。
おすすめを頼まれたので、好みを聞いて、ホットがいいと言うから、福井県の「花垣」を42度のぬる燗にして出した。
1杯の注文につき、1回サイコロを振る祇園遊びをしてもらうのだけど、それも説明してトライしてもらった。
お酒の感想も聞いて、どこを観光したか、どこから来たかも聞いた。
女性はスーザン、男性はマットだった。

二人がカナダのバンクーバーから来たと聞いて、一気に興奮した。
20年前(正確には25年前だけど)、私もカナダに行ったと言うと、2人ともすごくうれしそうで、バンクーバーから東へ旅をして、プリンスエドワード島へ行ったと言うと「P.E.I!」と目を丸くして驚き、めちゃくちゃ笑顔で喜んでくれた。

バカみたいな英語だけど、アイラブ“アン オブ グリーンゲイブルス”、アイラブ ルーシー・モード・モンゴメリ!と興奮して伝えると、情熱だけは伝わったようで、スーザンが「今もグリーンゲイブルスを訪れる人はたくさんいるのよ」と教えてくれ、あー、なんか私、生まれて初めて外国人とまともに「会話」を楽しんでるなぁと思った。
お店で買い物をするとか注文するとかではなくて、大好きなモンゴメリの話をできたことが嬉しくて仕方がなかった。

2人ともお酒を1杯ずつ楽しんで、帰っていった。喜んでくれたのが伝わってきた。
この1杯の日本酒と、英語の下手なモンゴメリ好きの日本人のことが、彼らの旅のちょっとした楽しい思い出の1つになっているといいなと思った。

私は英語が苦手なので、これまでずっと避けて生きてきたけれど、店に出勤するようになってから、初めて心から英語を話せるようになりたいと思うようになった。
わざわざ日本酒を飲むために、わかりにくい店のドアを勇気を持って開いてくれる外国人のために、ほんの少しでも楽しい時間を提供したいと思うのだ。
だから、いろいろシミュレーションして、必要そうな会話をアプリで翻訳して、書きためている。
店にお客がいない時間はそれを見ながら、発音を練習している。(アプリは音声と文字の両方が出るので)

接客もそろそろ飽きてきたなぁと思っていたのだけど(早っ!)、外国人が来るようになって、急にまた面白くなってきた。
いくつになっても、刺激って必要だ。
脳が急激に活動しだした。