月と歩いた。

月の満ち欠けのように、毎日ぼちぼちと歩く私。
明日はもう少し、先へ。

夏休み最後のビアガーデンで

2012-08-20 | 生活
夏休みが終わった。
8月後半は少し忙しい。
明日からいつもの仕事で東京出張。
別に単発でキャッチコピーの仕事も来た。
仕事が忙しいということは、私にとっては一番精神的に安定して幸せなことだ。
しばらくはこの感じが続くのかと思うと、それだけでホッとする。

昨日は、夫と一緒に京都にお墓参りに行った。
私の父方の祖父・祖母・叔母が分骨されて眠っている。
清水寺の近くの、とてもいい場所だ。

不思議なもので、結婚するまではたまにしか足を向けなかったのに、結婚してからは毎年必ずお墓参りに行くようになった。
それまでは深く感じていなかった「家族」のありがたみのようなものを実感したからかもしれない。
ありがたみ、というか、「自分も家族の一員なんだ」という確認みたいなものかな。
また、亡くなった人たちにいつも守られていることを感謝する機会でもある。

二年坂あたりから祇園までをうろうろして、夕方は「レストラン菊水」の屋上ビアガーデンに行った。
100年近く続く老舗で何度も前は通ってきたけれど、入ったのは初めて。
夏休みの終わりに、夏らしいことをしようと、あえてビアガーデンにした。

17時に入ったので、一番乗り。



まだ空は明るく、風が気持ちいい。
いつも見ている四条通りを上から眺めるのもなかなかよかった。

料理11品+飲み放題(2時間)で一人3000円程度。なかなかお得だ。
これは料理の一部。


やっぱり外で飲むビールは美味しい。
夫と夏休み最後の日に乾杯した。


途中で、予約のキャンセルが入ったのでもっといい席に案内してもらえた。
鴨川の上で眺めがさらにいい。


夫は堺の人間なので、京都なんてほとんど来たことがなかったのだが、今ではすっかり京都に馴染んでいる。
「三条をちょっと上がったところの・・・」とか、「寺町通りを・・・」なんて会話も普通に通じる。
私も遊びに行くのは京都が好きだ。
梅田に出るより断然近いし、勝手知ったるというか、美味しいお店もたくさんあるし。

菊水のビアガーデンもよかった。
お料理もビアガーデンにしては美味しかったし、店員の感じもいい。
とてもリラックスして楽しめた。

飲んでいる最中、夫が私に聞いた。
「かおり、最近なんか悩んでるやろ?わかってるねん。話してみー」

びくっとした。
なんでこの人にはわかってしまうんだろうな・・・

ポツポツ話していくうちに、涙が出た。
自分が一体何を書きたいのか。
これから何を書いて生きていきたいのか。
最近はずっとそのことばかり考えていた。

この間、仕事で悩んでいた日、2人から同時にメールが来たのだ。
一人はライターとしての大先輩。
「あなたが本当に書きたいものを見極めれば、自然に道はできていくと思います」といったことが書かれてあった。
もう一人は親友。
あなたが死んだ後も大事にしてもらえる文章を書かないと、あなたが死んだらそれでひっそり終了だよ、というようなこと。
両方ともとても嬉しく、心に迫るメールだった。
「ひっそり終了か・・・。イヤだなぁ」と、何度も思った。
そんな話を夫にした。

「もう一度小説を書いてみたら?でも、何かが降りてくるのを待ってたらあかん。そろそろ苦しんで書かないとあかん」
と夫は言った。

苦しんで書く、か・・・
ずっと私は「苦しんで書くもの」はウソだと思っていた。
取材記事でもそう。本当にいいものは取材している最中からドキドキして既に「生まれている」。
キーボードを思考の速さで打つだけでよかった。
そういうものが自分が書くものでは「本物」だと思っていた。
「さあ、書きましょう」とパソコンに向かってから考えてひねり出すようなものは「ウソ」だと思っていたし、自分が書きたいものでもなかった。
でも、「1日1行でも原稿用紙1枚でもいい。苦しんで苦しんで毎日書いていけば、必ず書き上がるから」と夫は言った。

自分はもうとっくに空っぽになってしまったと思っていた。
井戸は涸れ果てた、と。
それなのに、夫は井戸を掘れと言うのか?
苦しんで苦しんで掘り続けたら、また水が滾々と溢れるとでも?

今、私は昔よりずいぶんと精神が安定した。
だからもう書く必要などなくなったと思っていた。
なぜなら、書くという作業は、私自身を恢復させる唯一の手段だったからだ。
恢復したくて、自分の心の奥に向き合って書き続けた。
でも、それは10代終わりから20代前半のこと。
あれから15年近く経って、もう一度苦しみながら書く意味があるんだろうか・・・
でも、1作でいいから、40代の自分が何を書けるのか、試してみたい気持ちもある。
あの頃の私とは違うものが生まれるのか・・・。

まだ答えは出ないけど、とても有意義な時間だった。

90分で生ビールを4杯飲んだら酔っ払った。
私は40度のウイスキーをずーっと飲んでいられるけど、早いスピードでビールを飲むと必ず酔っ払う。
アルコールの分解速度が遅いので、ちびちびと長く飲むほうが向いているのだ。

帰りはなんだかもう苦しくて。
久しぶりに急性アルコール中毒みたいになった。
山崎の駅でタクシーに乗った。
はぁはぁ言いながら涙流して、ぼんやりする頭の中で、懐かしいな、学生のときみたいやな、と思った。
アルコールに弱い友達が、大学生の時に無理に飲まされて、帰ってから「死ぬ、死ぬ・・・」と悶えていたという話をふいに思い出した。
こんな感じなんだろうなぁと。