カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

タデ くう ムシ 3

2020-04-19 | タニザキ ジュンイチロウ
 その 5

「とにかく ヒロシ くん の イッケン は どう する キ なん だ。 はなした ほう が いい には いい が、 はなしにくい と いう の だったら、 ボク が はなして やって も いい ぜ」
 セッカチ と いう ほど でも ない が、 てきぱき ジム を はこんで ゆく シュウカン の ついて いる タカナツ は、 ミツワ の ザシキ に アシ を のばす と スキヤキ の ナベ の にえる アイダ も ムダ に ほうって は おけない の で あった。
「それ は いかん、 やっぱり ボク から はなす ほう が ホントウ じゃ ない かな」
「そりゃあ そう に ちがいない さ、 ただ その ホントウ の こと を キミ が なかなか ジッコウ しそう も ない から さ」
「まあ いい、 そう いわん で コドモ の こと は ボク の カッテ に させて くれたまえ。 なんと いって も アイツ の セイシツ は ボク が いちばん よく しって いる ん だ から。 ―――キョウ だって キミ は キ が つくまい が、 ヒロシ の タイド は よほど イツモ と ちがってる ん だよ」
「どういう ふう に?」
「フダン は あんな ふう に ヒト の マエ で オオサカ ベン を つかって みせたり、 アゲアシ を とったり する よう な こと は めった に ない ん だ。 いくら キミ と したしい から って、 あんな に はしゃぐ はず は ない ん だ」
「ボク も すこうし ゲンキ-すぎる とは おもった ん だ が、 ………じゃ、 わざと はしゃいで いた の かね」
「そう だよ、 きっと」
「どうして だろう? ムリ にも はしゃいで みせなければ ボク に わるい と いう ふう に おもった の かしら?」
「それ も タショウ は ある かも しれない、 が、 ヒロシ は じつは キミ を おそれて いる ん だよ。 キミ が すき では ある ん だ が、 ドウジ に いくらか おそろしく も ある ん だ」
「なぜ?」
「コドモ は ボクラ の フウフ カンケイ が どこ まで セッパク して いる の か は しる ヨシ も ない が、 キミ が きた と いう こと は なにかしら ケイセイ に ヘンカ が おこる ゼンチョウ だ と おもって いる ん だ。 キミ が こなければ ヨウイ に ワレワレ は カタ が つかない、 そこ へ キミ が カタ を つけ に きた と、 そう おもって いる ん だよ」
「なるほど、 じゃあ ボク が くる の は あまり ありがたく ない わけ なん だな」
「そりゃあ いろいろ ミヤゲモノ を もらう の は うれしい し、 キミ に あいたい には あいたい ん だ。 つまり キミ は すき なん だ が、 キミ の くる と いう こと が おそろしい ん だよ。 そういう ところ は ボク も ヒロシ も まったく おなじ キモチ なんで、 サッキ の はなす はなさない の イッケン なんぞ も、 ボク が はなす の を いやがる よう に コドモ の ほう でも きかされる の を いやがって いる の は、 あれ の ヨウス に みえて いる ん だ。 ヒロシ に して みる と、 キミ と いう ヒト は ナニ を いいだす か わからない、 オトウサン が いわない で いる こと を、 いまに キミ から センコク され や しない か と、 そんな ところ まで かんぐって いる ん じゃ ない か と おもう」
「そう か、 それで その オソロシサ を ごまかす ため に はしゃいで いた の か」
「ようするに、 ボク も、 ミサコ も、 ヒロシ も、 3 ニン ながら おなじ よう に キ が よわい ん だ。 そうして イマ では 3 ニン ともに おなじ ジョウタイ に とどまって いる ん だ。 ―――ショウジキ を いう と、 ボク に したって キミ の くる の が おそろしく ない こと は ない ん だ から」
「じゃ、 ほうって おいたら どう なる ん だ」
「ほうって おかれたら なお こまる ん だ。 おそろしい こと は おそろしい が、 なんとか カタ が ついた ほう が いい には ちがいない ん だ から」
「よわった な、 どうも。 ―――アソ と いう オトコ は なんと いって いる ん だ。 キミラ が ダメ なら、 その オトコ に セッキョクテキ に でて もらったら、 かえって カイケツ が はやく は ない かな」
「ところが その オトコ も やっぱり おなじ らしい ん だよ。 ミサコ の ほう から きめて くれなければ、 ジブン は どうとも する わけ に いかない と いう ん だ そう だ」
「まあ、 オトコ の タチバ と して は そう いう の が トウゼン では ある。 で なけりゃ ジブン が ヒト の カテイ を ハカイ する こと に なる ん だ から」
「それに もともと この ハナシ は どこまでも 3 ニン が ゴウイ の うえ の こと に しよう、 アソ にも、 ミサコ にも、 ボク にも、 ミンナ に ツゴウ の いい とき を まとう と、 そういう ヤクソク なん だ から ね」
「けれども ツゴウ の いい とき なんて、 いったい いつ に なったら くる ん だ。 ダレ か ヒトリ が けつぜん たる ショチ を とらなかったら、 そんな とき は エイキュウ に くる もん じゃ ない」
「いや、 そう で ない よ、 ―――たとえば この 3 ガツ の ガッコウ の ヤスミ なんか も、 じつは ヒトツ の キカイ では あった。 と いう の は、 ボク は コドモ が ムネイッパイ に かなしい オモイ を つつみながら、 ガッコウ の キョウシツ なんぞ で フイ に はらはら と ナミダ を こぼしたり する こと を おもう と、 そいつ が とても たまらない ん だ。 だから ガッコウ が ヤスミ で さえ あれば、 リョコウ に でも つれて いって やる とか、 カツドウ シャシン でも み に いく とか、 なんと でも して まぎらして やる こと が できる だろう し、 その うち には すこし ずつ わすれて いく よう に なる と おもう ん だ」
「じゃあ、 なぜ そう しない ん だ」
「コンゲツ は アソ が こまる と いう ん だ。 アソ の アニ が ライゲツ ショジュン に ヨウコウ する んで、 デサキ に ゴタゴタ を おこす の も いや だし、 アニ が ニホン に いない ほう が コショウ が すくない と いう わけ なん だ」
「すると コンド は ナツ の ヤスミ まで キカイ が ない ん だね」
「うん、 ナツ だ と ずっと ヤスミ の キカン も ながい し する から、………」
「そういう こと を いって いる ん じゃ、 じっさい サイゲン が ない ん だ がなあ。 ナツ に なったら また どんな ジジョウ が わく かも しれん し、………」
 ニク は ない けれども ホネブト の うえ に ジョウミャク の ぐりぐり して いる、 ダンセイテキ に やせた タカナツ の テ が、 サケ の せい か おもい もの を じっと もちこたえて いる とき の よう に ふるえて いた。 カレ は その テ を ナベ の シタ へ のばして、 ハボタン の よう に かさなった ハマキ の ハイ の ソウ を どさり と コンロ の ミズ に おとした。
 こうして たまに、 フタツキ に イチド か ミツキ に イチド ずつ かえって くる イトコ を むかえる たび に、 つねに かんじる こと と いう の は、 カナメ は クチ で こそ 「いつ わかれる」 を モンダイ に して いる よう な ものの、 まだ ホントウ は 「わかれる か わかれない か」 さえ しっかり ケツダン が ついて いる の では ない の で ある。 それ を イトコ が わかれる こと に きめて しまって、 ひたすら ジキ ばかり を コウリョ の ウチ に いれて いる の は、 イトコ ジシン が 「わかれて しまえ」 と いう キョウコウ な イケン だ から では なく、 わかれる こと は もはや うごかす べからざる ケッテイ で ある と して、 ただ その シュダン に ついて のみ ソウダン を うける から なの で ある。 カナメ は けっして ココロ にも ない ツヨガリ を いう の では ない の だ が、 いつも イトコ の カオ を みる と その おとこらしい カカン な キフウ に かぶれる せい か、 しぜん と ジブン にも ユウキ が でて きて、 すでに カクゴ が ついて いる よう な ハナシブリ に なる の で あった。 それ ばかり で なく、 カレ が イトコ の くる の を むかえる キモチ の ナカ には ジブン で ジブン の ウンメイ を もてあそぶ こと を たのしむ ココロ も てつだって いた。 もっと うちあけて いえば、 ジッコウ する には あまり に イシ の よわい カレ は、 わかれた バアイ の クウソウ に ばかり ふけって いる ので、 その クウソウ が イトコ に あう と ヒジョウ に カッパツ に、 ジッカン を おびて くる こと が ユカイ なの で ある。 が、 そう か と いって、 ぜんぜん イトコ を クウソウ の ドウグ に つかう つもり では なく、 あわよくば その クウソウ から しだいに ゲンジツ を ユウドウ したく も ある の で あった。
 ダレ しも リベツ は かなしい もの に きまって いる。 それ は アイテ が ナニモノ で あろう とも、 リベツ と いう こと ジシン の ウチ に カナシミ が ある の で ある。 わかれる の に ツゴウ の いい とき を、 テ を こまぬいて まって いた とて そんな とき が くる もの で ない と いう タカナツ の コトバ は、 その とおり に チガイ あるまい。 さすが に タカナツ は かつて カレ ジシン が マエ の ツマ を リベツ した とき は、 カナメ の よう に ぐずぐず して は いなかった。 わかれる こと に ケッシン する と、 ある アサ カレ は ツマ を ヒトマ の ウチ へ よんで、 バン まで かかって ことこまか に リユウ を のべた。 そうして リエン を いいわたして おいて から、 サイゴ の ワカレ を おしむ ため に その バンジュウ ツマ と あいだいて ないた。 「ニョウボウ も ないた し、 ボク も おいおい コエ を はなって ないた よ」 と、 カレ は その アト で カナメ に かたった。 コンド の ジケン で カナメ が カレ を タヨリ に する の は、 ヒトツ には カレ に そういう ケイケン が あり、 その とき の カレ の ヤリカタ を ソバ で みて いて うらやましく おもった から では ある が、 ―――なるほど、 タカナツ の よう に ヒゲキ に チョクメン する こと が でき、 なきたい とき には おもうさま なける セイシツ だったら、 さだめし アト が さっぱり する だろう、 あれ で なければ リベツ は できない と つくづく おもった から では ある が、 しかし カナメ に その マネ は やれない の で ある。 トウキョウジン の ミエ や ガイブン を キ に する クセ が そういう ところ へ まで ついて まわって、 ギダユウ カタリ の タイド を みにくい と かんずる カレ は、 カオ を ゆがめて なきわめく セワバ の ナカ へ ジブン を おく こと に おなじ ミニクサ を かんずる の で ある。 カレ は どこまでも ナミダ で カオ を よごさず に、 きれい に コト を はこびたかった。 ツマ の シンショ と ジブン の シンショ と が ヒトツ の ノウズイ の サヨウ の よう に リカイ しあって わかれたかった。 それ が かならずしも フカノウ な こと で なく おもえる の は、 カレ の バアイ は タカナツ の バアイ と ちがう から で ある。 カレ は さって ゆく ツマ に たいして なんの わるい カンジョウ も もたない。 フタリ は たがいに セイテキ には あいしあう こと が できない けれども、 その ホカ の テン では、 シュミ も、 シソウ も、 あわない ところ は ない の で ある。 オット には ツマ が 「オンナ」 で なく、 ツマ には オット が 「オトコ」 で ない と いう カンケイ、 ―――フウフ で ない モノ が フウフ に なって いる と いう イシキ が キヅマリ な オモイ を させる の で あって、 もし フタリ が トモダチ で あったら かえって なかよく いった かも しれない。 それゆえ カナメ は さって から でも ツキアイ を しない と いう の では ない。 ソウトウ の ネンショ を さえ へた なら、 カコ の キオク に ワズライ される ところ なく、 アソ の ツマ と して、 ヒロシ の ハハ なる ヒト と して、 ずいぶん こころやすく オウフク されそう にも かんずる の で ある。 もっとも その とき に なって みる と アソ の テマエ や セケン の メ も あって そう は できにくい に して から が、 すくなくとも フタリ が そういう ミトオシ を もって わかれられたら、 「わかれる」 と いう カナシミ を どんな に かるく する か しれない。 「ヒロシ が おもい ビョウキ に でも なったら、 きっと しらして くださる でしょう ね。 そんな とき には ミマイ に いって も いい こと に して くださらない じゃ こまる わ。 アソ も ショウチ なん です から」 と ミサコ が いう の は、 ヒロシ の チチ の ビョウキ の バアイ をも ふくめて いる に ちがいない し、 カナメ の ほう でも カノジョ の ミ に ついて のぞむ ところ は おなじ で あった。 フウフ と して は フシアワセ な オタガイ で あった にも せよ、 とにも かくにも 10 ネン に あまる サイゲツ の アイダ オキフシ を ともに し、 コ を まで もうけた フタリ では ない か。 それ が いったん わかれた から と いって、 ロボウ の ヒト を みる よう に しなければ ならない とは、 ―――オタガイ の ミ に マンイチ の こと が あった バアイ に リンジュウ に さえ あって ならない とは、 ―――そんな リユウ は どこ に あろう。 カナメ も ミサコ も、 わかれる とき は その ココロモチ で ありたかった。 やがて メイメイ が あたらしい ハイグウシャ を もち、 あたらしい コ を もうける と したら、 その ココロモチ が いつまで つづく か わからない に して も、 さしあたって は それ が いちばん キ を ラク に させる ホウホウ だ と おもった。
「じつは ナン だよ、 こんな こと を いう と わらわれる かも しれない が、 この 3 ガツ に しよう か と いった の は コドモ の ため ばかり では なかった ん だよ」
「ふむ?」
 と いって タカナツ は、 ナベ の ナカ へ メ を おとして きまりわるそう に クチビル で ビショウ して いる カナメ を みつめた。
「ツゴウ の いい とき と いう ナカ には キコウ の こと も コウリョ して いる ん だよ。 つまり その とき の キコウ の グアイ で カナシミ の テイド が よほど ちがう。 なんと いって も アキ に わかれる の は いちばん いけない、 いちばん カナシミ の ド が つよい。 いよいよ わかれる と いう とき に、 『これから だんだん さむく も なります し………』 と、 なきながら ニョウボウ が そう いった んで キュウ に わかれる の を やめて しまった オトコ が ある ん だ が、 じっさい そんな こと は ありうる と おもう」
「ダレ だい、 その オトコ は?」
「いや、 そんな ハナシ も ある と いう こと を きいた だけ なん だ が」
「は、 は、 キミ は いろいろ そういう レイ を ホウボウ で きいて くる と みえる ね」
「こういう とき に ヒト は どう する か と おもう もん だ から、 きく つもり は なくって も ミミ に はいる よう に なる ん だよ。 もっとも ボクラ の よう な バアイ は あまり セケン に レイ が ない んで、 サンコウ に なる の は すくない ん だ けれど」
「で、 わかれる の には イマゴロ の あたたかい ヨウキ が いちばん いい と いう の かい?」
「うん、 まあ そう なん だ。 まだ コノゴロ は うすらさむい こと は さむい けれども、 しかし だんだん あたたかく なる イッポウ だし、 その うち には サクラ が さきはじめる し、 じきに シンリョク の キセツ にも なる し、 ………そういう コンディション が あったら、 ヒカクテキ カナシミ が かるい だろう と おもう ん だ」
「と いう の は、 キミ の イケン なの か?」
「ミサコ も ボク と ドウイケン なん だよ、 『わかれる の なら ハル が いい わね』 って、―――」
「そりゃ タイヘン だ、 すると ライネン の ハル まで またなきゃ ならない の か」
「ナツ だって そりゃあ わるく は ない がね、 ………ただ ボク の ハハオヤ が なくなった の が、 あれ が 7 ガツ だったろう? ボク は あの とき に オボエ が ある ん だ が、 ナツ の ケシキ と いう もの は スベテ が あかるく いきいき と して いて、 メ に ふれる もの が みんな はれやか な はず なん だ けれど、 あの トシ ぐらい ナツ を かなしい と おもった こと は なかった。 ボク は アオバ の むしむし と しげって いる の を ながめた だけ でも なみだぐまれて シカタ が なかった。………」
「それ みたまえ。 だから ハル だって おなじ こと なん だ。 かなしい とき には サクラ の ハナ の さく の を みたって ナミダ が でる ん だ」
「おそらく ボク も そう なん だろう とは おもってる ん だ が、 そう かんがえる と いよいよ ジキ が なくなって しまって、 ミウゴキ が できなく なる もん だ から、………」
「けっきょく こいつ は、 わかれない で すむ こと に なる ん じゃ ない かな」
「キミ は そういう キ が する かね?」
「ボク より キミ は どう なん だ?」
「ボク には どう なる か まったく わからない。 わかって いる の は、 わかれなければ ならない リユウ は あまり に あきらか に そなわって いる、 これまで で さえ うまく いかなかった もの が、 アソ との カンケイ が できて しまった イマ と なって、 ―――それ も ボク から むしろ すすめて それ を ゆるした イマ と なって、 ―――フウフ で いられる わけ は ない し、 すでに フウフ では なくなって いる、 と いう ジジツ だ。 ボク も ミサコ も この ジジツ を マエ に おいて、 イットキ の カナシミ を しのぶ か エイキュウ の クツウ に たえる か、 どっち とも ケツダン が つかず に いる、 ―――ケツダン は ついて いる ん だ が、 それ を ジッコウ する ユウキ が ない ので まよって いる ん だ」
「キミ、 こういう ふう に かんがえる こと は できない かしらん? ―――すでに フウフ で ない もの なら、 わかれる わかれない と いう こと は、 いいかえる と イッショ の イエ に すむ か すまない か と いう だけ の こと だ、 ―――そう かんがえたら よっぽど ラク に なり は しない か」
「もちろん ボク は できる だけ そう かんがえて いる ん だよ、 そう かんがえて いて やっぱり なかなか ラク で ない ん だよ」
「もっとも コドモ と いう もの も ある から なん だ が、 コドモ に したって チチ と ハハ と が ベツベツ に すむ よう に なる だけ で、 ハハ を ハハ と よべなく なる と いう ん じゃ ない ん だ から、………」
「そりゃあ ね、 いくらも セケン には ある こと なんで、 ガイコウカン や チホウ チョウカン なら オット だけ が ガイコク へ いって いたり、 コドモ を トウキョウ の シンセキ へ あずけたり する の が ざら に ある ん だし、 そう で なくったって チュウガッコウ も ない よう な イナカ の コドモ は ミンナ オヤ の ソバ を はなれてる ん だ から、 それ を かんがえたら なんでも ない、 ………と、 そう おもう こと は おもう ん だ けれど、………」
「つまり キミ の は ただ キミ ジシン の ココロモチ が かなしい ん だよ。 ジジツ は キミ が かんじる ほど に かなしく は ない ん だ」
「だって、 カナシミ と いう もの は けっきょく みんな そう なん じゃ ない か、 どうせ シュカンテキ な もの なん だ から。 ………ボクラ の は おたがいに にくみあう こと の できない の が いけない ん だね。 にくみあえたら ラク なん だろう が、 リョウホウ が リョウホウ を もっとも だ と おもってる ん だ から シマツ に わるい」
「なまじ キミ に ソウダン しない で、 フタリ が カケオチ しちまう と いちばん メンドウ が なかった ん だな」
「まだ こう ならない マエ の こと だ が、 いっそ そう しよう か って アソ が いった こと が ある そう だよ。 しかし ミサコ は、 アタシ に そんな マネ は とても できない、 ナニ か マスイザイ でも かがして もらって ねて いる アイダ に かつぎだして でも くれなかったら ダメ だ と いって わらった そう だ が、………」
「わざと ケンカ を ふっかけて みたら どんな もん だ」
「そいつ も ダメ だね。 おたがいに シバイ を してる の が わかってる ん じゃ、 『でて いけ』 『でて いきます』 と いう よう な こと を クチサキ で ばかり いいあったって、 いざ と いう とき キュウ に なきだしちまう だろう ね」
「なにしろ テスウ の かかる フウフ だよ、 わかれる の に まで いろいろ ゼイタク を いう ん だ から。………」
「ナニ か こう、 シンリテキ に マスイザイ の ヤク を する もの が あれば いい ん だ が、 ………キミ は あの ジブン に ヨシコ さん を ココロ から にくむ こと が できた ん だろう ね」
「にくく も あった が あわれ でも あった さ。 テッテイテキ に にくみとおす と いう よう な こと は オトコ ドウシ の アイダ で なけりゃ ない こと だ から な」
「しかし、 こう いう と ヘン だ が、 クロウト の オンナ は わかれる の に わかれやすく は ない かな。 ああいう ぱっぱっ と した セイシツ の ヒト だし、 カコ にも キミ イガイ に イクニン か の オトコ を しって いる ん だし、 ヒトリ に なれば キラク に マエ の ショウバイ に かえって いける ん だし、………」
「やっぱり わかれる ミ に なって みる と そう も いかん ね」
 マユ の アイダ を かすか に くもらせた タカナツ は、 すぐ また モト の チョウシ で いった。
「それ も キコウ と おんなじ こと だよ、 わかれる の に ツゴウ の いい オンナ だの わるい オンナ だの って ある もん じゃ ない よ」
「そう かしらん? ボク には どうも ショウフ-ガタ の オンナ は わかれやすくって、 ボフ-ガタ の オンナ は わかれにくい よう な キ が する ん だ が、 そう おもう の は ミガッテ かしらん?」
「ショウフ-ガタ は あんがい ホンニン が ヘイキ な だけ に、 いっそう あわれ な ところ も ある。 リッパ な ところ へ えんづいて でも くれる ん なら いい が、 また のこのこ と カリュウカイ へ もどって いかれちゃ、 それだけ こっち も セケン が せまく なる から な。 ボク は そんな こと は チョウエツ してる が、 そういう ふう に かんがえたら テイジョ も インプ も かなしく ない なんて オンナ は ない さ」
 ひとしきり どっち も だまりこんで ナベ の もの を つっついて いた。 サケ は フタリ で 2 ホン と のんで は いなかった が、 その あさい ヨイ が かえって いつまでも カオ に ほてって、 へんに ハル-らしい ドンジュウ な キブン だった。
「そろそろ メシ に しよう じゃ ない か」
「うむ」
 カナメ は むっつり して ベル を おした。
「いったい しかし、―――」
 と、 タカナツ が いった。
「―――キンダイ の オンナ は ミンナ いくらか ずつ ショウフ-ガタ に なりつつ ある ん じゃ ない の かな。 ミサコ さん なんぞ も ぜんぜん ボフ-ガタ とは いいにくい な」
「あれ は ガンライ は ボフ-ガタ なん だよ、 ボフ-ガタ の タマシイ を ショウフ-ガタ の ケショウ で つつんで いる ん だ」
「そう かも しれない。 ―――ヒトツ には たしか に ケショウ の せい だ。 コノゴロ の オンナ の カオ の ツクリ は タショウ とも アメリカ の エイガ ジョユウ の エイキョウ を うけて いる ん だ から、 どうしたって ショウフ-ガタ に なる。 シャンハイ なんぞ でも やっぱり そう だ が」
「それに ミサコ の は、 ボク が なるべく ショウフ-ガタ に させる よう に しむけた カタムキ も ない こと は ない ん だ」
「そりゃあ キミ が フェミニスト の せい なん だろう、 フェミニスト と いう モノ は ボフ-ガタ より も ショウフ-ガタ を よろこぶ ん だ から」
「いいや、 そう じゃ ない ん だよ。 つまり ナン なん だ、 ―――また モンダイ が マエ に もどる が、 ショウフ-ガタ に させた ほう が わかれる の に ラク だ と おもった ん だ。 しかし そいつ が オオチガイ で、 ハラ から なりきれちまえば いい ん だ が、 ツケヤキバ だ から カンジン な とき に ボフ の ジガネ が でて くる んで、 なお フシゼン な いや な キ が する ん だ」
「ミサコ さん ジシン は どう おもって いる だろう?」
「ジブン は たしか に わるく なった、 ムカシ の よう に ジュンスイ で なくなった と いって いる。 ―――それ は そう に ちがいない ん だ が、 イッパン の セキニン は ボク に ある ん だ」
 なんの こと は ない、 カノジョ と ケッコン して から の この サイゲツ と いう もの を、 ジブン は いかに して リエン す べき か と いう こと ばかり かんがえつづけて くらして きた の だ、 わかれよう わかれよう の イチネン しか ない オット だった の だ。 ―――ふと そう おもう と、 カナメ は ジブン の レイコク な スガタ が ありあり と ジブン に みえる の で あった。 ジブン は ツマ を あいしえない カワリ には、 けっして ブジョク を あたえない よう に こころがけて いた つもり だ けれど、 オンナ に とって これ が もっとも おおいなる ブジョク で なくて ナン で あろう。 こういう オット を もたされた ツマ の サビシサ は、 ショウフ にも ボフ にも、 カチキ な モノ にも ウチキ な モノ にも、 なんと して たえる こと が できよう。………
「じっさい あれ が ホントウ の ショウフ-ガタ だったら、 ボク には モンク は ない ん だ がな」
「どう だ か、 それ も アテ には ならん な。 ヨシコ の よう な マネ を されたら キミ だって ガマン が でき や しない ぜ」
「そりゃあ、 そう いっちゃあ わるい が、 ホントウ に ショウバイ を した こと の ある オンナ は いかん な。 それに ボク は ゲイシャ タイプ は すかない ん だ。 ハイカラ な、 チテキ な ショウフ-ガタ が いい ん だ」
「それ に したって、 ニョウボウ に なって から ショウフ-テキ コウイ を ジッコウ されたら こまる じゃ ない か」
「チテキ な ヤツ なら、 そこ は ジセイリョク を もってる だろう」
「キミ の いう こと は どこまでも カッテ だよ。 そんな ムシ の いい チュウモン に はまる よう な オンナ が ある もん か。 ―――フェミニスト と いう モノ は けっきょく ドクシン で とおす より ほか シカタ が ない ん だ、 どんな オンナ を もった ところ で キ に いる はず は ない ん だ から」
「ボク も じっさい ケッコン には こりた よ。 コンド わかれたら まあ トウブン は、 ―――あるいは イッショウ もらわない で しまう かも しれない」
「そう いいながら、 また もらって は シッパイ する の が フェミニスト でも ある ん だ がね」
 フタリ の カイワ は、 ナカイ が キュウジ に はいって きた ので それきり とぎれた。

 その 6

 アサ も 10 ジ ちかく に なって フトン の ナカ で メ を ひらいた ミサコ は、 ニワ の ほう で コドモ と イヌ と が たわむれて いる コエ を、 いつ に なく のんびり と した ココロモチ で きいて いた。 「リンディー! リンディー!」 「ピオニー! ピオニー!」 と、 コドモ は しきり に イヌ を よんで いる。 ピオニー と いう の は マエ から かって いる コリー-シュ の メス で、 キョネン の 5 ガツ に コウベ の イヌヤ から かった とき に ちょうど カダン に さいて いた ボタン に ちなんで ナ を つけた の だ が、 ヒロシ は さっそく ミヤゲ の グレイハウンド を ひきだして、 その ピオニー と トモダチ に させよう と して いる らしい。
「いかん、 いかん、 そう キミ の よう に キュウ に なかよく させよう ったって ダメ だ。 ほうって おけば シゼン に よく なる よ」
 そう いって いる の は タカナツ で ある。
「だって オジサン、 メスオス ならば ケンカ しない って いう じゃ ありません か」
「それ に したって まだ キノウ きた ばかり だ から ダメ だ」
「ケンカ したら どっち が つよい かしら?」
「そう だな、 ホント に。 ―――ちょうど リョウホウ おなじ くらい な オオキサ なんで いけない ん だな。 どっち か ちいさい と おおきい ほう が アイテ に しない んで すぐに なかよく なる ん だ がな」
 その アイダ も 2 トウ の イヌ は かわるがわる ほえて いた。 ユウベ カエリ が おそかった ミサコ は、 タビ の ツカレ で ねむそう に して いた タカナツ と 20~30 プン しゃべった ばかり で、 ミヤゲ の イヌ は まだ みて いない の だ が、 あの ひいひい と カザゴエ の よう な かすれた コエ で ないて いる ほう が ピオニー で あろう。 カノジョ は オット や ヒロシ ほど に イヌズキ では ない の だ けれど、 この ピオニー は いつも カエリ が 10 ジ-スギ に なる とき には、 ジイヤ と イッショ に テイリュウジョ まで むかえ に でて いて くれる の で ある。 そして カノジョ が カイサツグチ から あらわれる と、 クサリ の オト を ちゃりん! と いわして、 いきなり とびつこう と する の で ある。 カノジョ は そんな とき、 ジイヤ を しかって キモノ に ついた ドロアシ の アト を はらいながら も、 だんだん イヌ が マエ ほど は きらい で なく、 コノゴロ では キ が むく と なでて やったり、 ミルク を あたえたり なぞ して いた。 ユウベ デンシャ を おりた とき にも、 「ピオニー や、 キョウ は オマエ の オトモダチ が きた ん じゃ ない の」 と、 そう いって とびついて くる アタマ を さすった。 どうか する と、 ダレ より サキ に ジブン の カエリ を よろこんで むかえる この ピオニー が、 オット の イエ の ダイヒョウシャ の よう に おもえ も した。
 アマド は キ を きかして しめて ある の だ が、 ランマ の ショウジ に ぎらぎら して いる ヒザシ の ヨウス では、 ソト は モモ の ハナ の さきそう な うららか な テンキ に なって いる らしい。 そう いえば コトシ の オセック には ヒナニンギョウ を かざった もの か どう で あろう。 カノジョ は ハツゼック の イワイ に ニンギョウズキ の チチオヤ が トクベツ に キョウト の マルヘイ で こしらえて くれた コフウ な ヒナ を、 ケッコン の とき ドウグ と イッショ に シバ-ケ へ もって きて いる の で ある。 そして カンサイ へ うつって から は トチ の フウシュウ に したがって ヒトツキ オクレ の 4 ガツ の ミッカ を セック に して いた。 オンナ の コ の ない カテイ では あり、 カノジョ ジシン は そんな もの に イマ では たいした アイチャク も ない の で ある から、 そう ムカシフウ な シキタリ を コシュ する まで も ない の だ けれど、 ジツ を いう と、 キョウト が ちかく なった ため に マイトシ チチオヤ が セック に なる と その ニンギョウ を なつかしがって、 わざわざ み に やって くる の で ある。 げんに キョネン も オトトシ も そう で あった から、 コトシ も たぶん わすれて は いない で あろう。 それ を おもう と、 モノオキ の オク から 1 ネン-カン の ホコリ の たまった イクツ も の ハコ を ひきずりだす メンドウ は しのぶ と して も、 また コノアイダ の ベンテンザ の とき の よう な キュウクツ な バメン が ソウゾウ せられて キ が おもく なって くる の で あった。 どうか して コトシ は かざらない で すませる ホウ は ない かしらん? オット に ソウダン して みよう かしらん? いったい あの ヒナ を ジブン は この イエ を でる とき に ふたたび もって いった もの か どう で あろう? のこして おかれたら オット は メイワク する の では なかろう か?………
 イマ に なって キュウ に そんな こと が キ に かかりだした と いう の は、 たぶん コトシ の モモ の セック には もう この イエ に いない で あろう と ぼんやり おもって いた から なの だ が、 それ が こうして シンシツ の ナカ に こもって いて さえ そぞろ に ハル が かんぜられる あたたかい ヨウキ に なって しまった。 ミサコ は アオムキ に マクラ へ ツムリ を のせた まま、 しばらく ランマ に うつって いる あかるい ヒカゲ へ メ を やって いた。 ヒサシブリ に ジュウブン な ネムリ を むさぼった ので ネムケ は のこって いない の だ けれど、 テアシ を のびのび と させて いる の が いつまでも いい ココロモチ で、 ちょっと は シトネ の ヌクモリ を すてる こと が できない。 カノジョ の トナリ には ヒロシ の シトネ が、 もう ヒトツ トナリ の トコノマ-ヨリ には オット の シトネ が しいて ありながら、 その フタツ とも とうに カラッポ に なって いて、 ルリイロ の コイマリ の ツボ に ツバキ の ハナ が いけて ある の が、 オット の マクラ の ムコウ に みえる。 キョウ は タカナツ と いう キャク も ある の だし、 もう おきなければ わるい の で ある が、 しかし カノジョ が こんな に ゆっくり アサネボウ を して いられる こと は めった に ない の で ある。 なぜなら フウフ は ヒロシ を ナカ に はさんで ねむる シュウカン を、 その コ が うまれた ジブン から キョウ まで ずるずる に あらためず に いて、 コドモ が おきる と かならず どっち か が おきない では いなかった。 そして タイガイ の バアイ には、 オット を ねかして おく ため に カノジョ が サキ に おきる から だった。 ニチヨウ の アサ なぞ すこし は ゆっくり ねかして おいて もらいたい のに、 ガッコウ が なくて も やはり ヒロシ は 7 ジ に おきて しまう ので、 カノジョ も イッタン は おきなければ ならない。 もっとも 2~3 ネン コノカタ、 だんだん カラダ が こえて くる カタムキ が ある ので、 スイミン ジカン を へらした ほう が いい と おもって いる の だし、 メ に カリ の できる の は そう まで クツウ に かんじて いない よう な ものの、 アサネ の カイカン は また おのずから ベツ で ある。 あまり ネムリ が たりなすぎる の も フアン に なって、 たまに は スイミンザイ の チカラ で ヒルネ を しよう と する こと も ある けれども、 かえって アタマ が さえて しまって おちおち と ねむれない。 1 シュウ に イチド オオサカ の ジムショ へ カオ を だす ヒ に、 オット が わざと キ を きかして コドモ と イッショ に でかけて くれる よう な こと は、 ツキ に 2~3 ド ある か ない か で ある。 とにかく ねて も ねられない でも、 こうして ヒトリ シンシツ を センリョウ して いられる の は、 チカゴロ めずらしい の で ある。
 イヌ の ナキゴエ は まだ きこえて いる。 「リンディー」 「ピオニー」 と、 ヒロシ は あいかわらず よんで いる。 その そうぞうしい の が、 いかにも ハル-らしく のどか に ひびいて、 この 5~6 ニチ コウセイ を つづけて いる ソラ の イロ が おもいやられた。 いずれ キョウ の うち には タカナツ を アイテ に はなさなければ ならない の だ が、 それ さえ イマ の カノジョ には ヒナニンギョウ の テイド イジョウ には キグロウ の タネ に ならなかった。 シンパイ を すれば サイゲン が ない から、 スベテ の こと を ヒナニンギョウ を あつかう よう に あつかって、 いつでも キョウ の オテンキ の よう に うららか な キブン で ありたい。 カノジョ は ふと、 リンディー と いう の は どんな イヌ かしら と、 コドモ の よう な コウキシン を かんじた。 そして ようよう、 その コウキシン に めんじて おきよう と いう キ に なった。
「おはよう!」
 と、 ヒジカケマド の アマド を 1 マイ だけ あけて、 カノジョ は コドモ に まけない ほど の コエ で さけんだ。
「おはよう、 ―――いつまで ねてる ん です?」
「ナンジ、 もう?」
「12 ジ」
「ウソ よ、 そんな じゃあ ない こと よ、 まだ やっと 10 ジ-ゴロ よ」
「おどろいた なあ、 この オテンキ に よく イマジブン まで ねて いられる なあ」
「ふ、 ふ、 ―――ネボウ を する の にも いい オテンキ よ」
「だいいち オキャクサマ に たいして シツレイ じゃ ない です か」
「オキャクサマ だ と おもって いない から だいじょうぶ だわ」
「いい から はやく カオ を あらって おりて いらっしゃい。 アナタ にも オミヤゲ が ある ん だ から」
 マド を みあげて いる タカナツ の カオ は、 ウメ の エダ に さえぎられて いた。
「その イヌ?」
「うん、 コイツ が モッカ シャンハイ で ダイリュウコウ の ヤツ なん だ」
「すてき でしょ、 オカアサン、 この イヌ は ホントウ は オカアサン が つれて あるく と いい ん ですって」
「どうして?」
「グレイハウンド と いう ヤツ は、 セイヨウ では フジン の ソウショクケン に なって いる ん だ。 つまり コイツ を ひっぱって あるく と いっそう ビジン に みえる ん だな」
「アタシ でも ビジン に みえて?」
「もちろん みえます、 うけあいます」
「だけど ずいぶん きゃしゃ な イヌ ねえ。 そんな の を つれて あるいたら、 なおさら こっち が フトッチョ に みえちまう わ」
「イヌ の ほう で そう いう だろう、 この オクサマ は ワガハイ の ソウショク に なる って」
「おぼえて らっしゃい」
「あはははは」
 と、 ヒロシ も イッショ に なって わらった。
 ニワ には ウメ の キ が 5~6 カブ あった。 イゼン この ヘン が ヒャクショウヤ の ニワ で あった コロ から の もの で、 はやい の は 2 ガツ の ハジメ から じゅんじゅん に ハナ を もちつづけて 3 ガツ-ジュウ は ツギ から ツギ へ さいて いた の が、 イマ では あらかた ちりはてた ナカ に まだ 2~3 リン は マッシロ な ツブ を ひからして いた。 2 トウ の イヌ は カミアイ を しない テイド の ヘダタリ を おいて、 その ウメ の ミキ へ それぞれ つながれて いる の で ある。 ピオニー の ほう も リンディー の ほう も ほえつかれた と いう カタチ で、 スフィンクス の よう な シセイ で シタバラ を ぺったり ツチ へ つけた まま、 むかいあって ニラメクラ を して いた。 ウメ の エダ が イクツ も コウサク して いる ので はっきり みさだめにくい けれど、 オット は ヨウカン の ヴェランダ に いる らしい。 コウチャ の チャワン を マエ に して トウイス に よりながら オオガタ の ヨウショ の ページ を めくって いる の が わかる。 ネマキ の ウエ に オオシマ の ハオリ を まとって、 メリヤス の パッチ の ハシ を ブカッコウ に スアシ の カカト まで ひっぱって いる タカナツ は、 ニワサキ へ イス を もちだして いた。
「そこ に つないで おいて ちょうだい、 イマ すぐ シタ へ み に いきます から」
 カノジョ は ざっと アサ の フロ に つかって から ヴェランダ へ でた。
「どう なすった の、 もう ゴハン は おすみ に なった の?」
「すんじまった よ。 まってた ん だ が なかなか おきそう も ない もん だ から」
 オット は カタテ で チャワン を クウ に ささげながら、 ヒザ の ウエ に ある ホン を みいみい チャ を すすった。
「オクサマ、 オフロ が わいて います ぜ」
 と、 タカナツ が いった。
「ここ の ウチ じゃあ、 オクサマ は いっこう アイソ が ない が、 ジョチュウ の ほう は カンシン だ、 ワガハイ の ため に アサ はやく から フロ を たきつけて くれる ん だ から。 ボク の はいった アト でも よけりゃあ はいって らっしゃい」
「はいって きた のよ、 イマ、 ―――アナタ の アト だ と しらなかった もん だ から」
「へえ、 それにしちゃあ はやかった な」
「だいじょうぶ? タカナツ さん?―――」
「ナニ が?」
「アナタ の アト でも シナ の ビョウキ が うつらない こと?」
「ジョウダン でしょう、 そりゃあ ボク より か シバ クン の ほう だ」
「ボク の は ナイチ-ジコミ だ から な、 キミ の やつ ほど キケン じゃあ ない よ」
「オカアサン、 オカアサン」
 と、 ニワ で ヒロシ の よぶ コエ が した。
「リンディー を み に いらっしゃい よ」
「みる の は いい けど、 ケサ は オマエ と イヌ の おかげ で メ が さめちゃった のよ、 オカアサン は。 ―――アサッパラ から、 タカナツ さん まで イッショ に なって おおきな コエ で どなる ん だ もの」
「ボク は こう みえて も ビジネスマン だ から ね。 シャンハイ に いる と アサ は 5 ジ に おきて、 オフィス へ でる まで に キタ シセンロ から キャンワン の ほう まで ギャロップ して くる ん だよ」
「イマ でも ウマ を やって いる の かい?」
「うん、 どんな さむい ヒ でも イッペン ぐるっと まわって こない と キモチ が わるい ね」
「イヌ を こっち へ つれて こさせたら いい じゃ ない か」
 カナメ は ヴェランダ の ヒダマリ を うごく の が いや だ と いう カタチ で、 ウメ の キ の ほう へ たって ゆく フタリ に いった。
「ヒロシ や、 オトウサン が リンディー を つれて いらっしゃい って」
「リンディー!」
 シゲミ の ムコウ の ウメ の エダ が ざわざわ と ゆらいで、 ピオニー の ほう が とつぜん ひいひい シャガレゴエ を たてた。
「これ! ピオニー、 これ! ―――オジサン、 オジサン、 ピオニー が ジャマ を して シヨウ が ない から、 つれ に きて ください よ」
「いや だよ、 ピオニー! ま、 そう とびついちゃ……… いや だったら!」
 ホオ を なめられそう に なった ミサコ は、 ニワゲタ の まま あわてて ヴェランダ へ かけあがりながら いった。
「オマエ は しつっこい から いや さ、 ホント に。 ―――ピオニー なんか つれて こない でも よかった のに」
「だって オカアサン、 さわいで シヨウ が ない ん です よ」
「イヌ と いう ヤツ は ひどく ヤキモチヤキ だ から ね。―――」
 カイダン の シタ に たって いる リンディー の ソバ に しゃがんで、 タカナツ は ヒラテ で しきり に イヌ の ノドクビ を なでて いた。
「ナニ を してる ん だ。 ダニ でも いる の か?」
「いや、 ここ を こうして さすって みたまえ、 じつに ミョウ だよ」
「ナニ が ミョウ なん だ」
「こうして いる と ね、 この ノドクビ の ところ の テザワリ が、 ぜんぜん ニンゲン の ここ と おなじ なん だよ」
 タカナツ は ジブン の ノド を なでて みて は、 また イヌ の ノド を なでた。
「ミサコ さん、 ちょいと さわって ごらんなさい よ、 ウソ じゃ ない から」
「ボク さわって みよう」
 と、 ハハオヤ より サキ に ヒロシ が しゃがんだ。
「やあ、 ホントウ だあ、 ―――ちょいと オカアサン の ノド に さわらして、―――」
「ナン だよ、 ヒロシ、 イヌ と オカアサン と イッショ に する ヒト が あります か」
「あります か って、 キミ の オカアサン の ハダ なんぞ とても こんな に すべすべ しちゃ いない ぜ。 この イヌ に にてたら たいした もん だぜ」
「じゃあ タカナツ さん、 ワタシ の ノド に さわって みて ちょうだい」
「まあ、 まあ、 イッペン この イヌ を ためして ごらんなさい。 ―――どう です? ほら? フシギ でしょう?」
「ふーん、 フシギ ね、 まったく。 ウソ じゃ ない こと ね。 ―――アナタ さわって ゴラン に ならない?」
「どれ、 どれ」
 と いって カナメ も おりて きた。
「なるほど、 こりゃあ ミョウ だな、 ニンゲン に そっくり で ヘン な キ が する な」
「ね、 シンハッケン だろう?」
「ケ が みじかくって シュス の よう だ もん だ から、 ほとんど ケ の カンジ が しない ん だね」
「それに クビ の フトサ が ちょうど ニンゲン ぐらい なの ね。 アタシ の クビ と どっち かしら?」
 ミサコ は リョウホウ の テ で ワ を つくって、 イヌ の クビ と ジブン の クビ と を はかりくらべた。
「でも アタシ より ふとい ん だわ。 ながくって きゃしゃ だ もん だ から、 ほそい よう に みえる けれど」
「や、 ボク と おなじ だ」
 と、 タカナツ が いった。
「カラー だったら、 14 ハン だな」
「じゃ、 タカナツ さん に あいたく なったら この イヌ の ノド を なでたら いい のね」
「オジサン、 オジサン」
 ヒロシ が わざと そう よびながら、 もう イチド イヌ の ソバ に しゃがんだ。
「あはははは、 『リンディー』 を やめて 『オジサン』 に する か。 なあ、 ヒロシ」
「そう しましょう よ、 オトウサン。 ―――オジサン オジサン!」
「タカナツ さん、 この イヌ は アタシ の ところ より、 どこ か ホカ へ もって いったら よろこぶ ヒト が ありそう だ わね」
「なぜ?」
「おわかり に ならない? アタシ ちゃあんと しって いる のよ。 きっと この ノド を なでて ばっかり いる ヒト が あり は しなくって?」
「おい、 おい、 マチガイ じゃあ ない の かい、 ボク の ところ へ もって きた の は?」
「どうも キミタチ は けしからん。 コドモ の マエ で そういう こと を いう もん じゃ ない よ。 だから コドモ が ナマイキ に なって シヨウ が ない」
「あ、 そう いえば オトウサン、 キノウ コウベ から つれて くる とき に、 この イヌ を みて おかしな こと を いった ヒト が ある ん です よ」
 と、 ヒロシ が ハナシ の カザムキ を かえた。
「へえ、 なんだって?」
「ジイヤ と フタリ で カイガンドオリ を あるいて いたら、 ヨッパライ の よう な ヒト が めずらしそう に ついて きて、 ナン や、 けったい な イヌ やなあ、 ハモ みたい な イヌ やなあ って、―――」
「あはははは」
「あはははは」
「かんがえた ねえ、 ハモ とは。 ―――なるほど ハモ の カンジ だよ。 リンディー、 オマエ は ハモ だ とよ」
「ハモ の おかげ で オジサン の ほう は たすかった らしい ね」
 カナメ が コゴエ で まぜっかえした。
「だけど、 カオ の ながい ところ は ピオニー も リンディー も よく にて いる のね」
「コリー と グレイハウンド とは カオ も カラダツキ も だいたい おなじ もの なん だ。 ただ コリー の ほう は バラゲ で グレイハウンド の ほう は タンモウ なん だ。 イヌ の チシキ の ない ヒト に ちょっと セツメイ して おきます がね」
「ノド は どう なの?」
「ノド の ハナシ は もう やめます、 あまり ユカイ な ハッケン で なかった から」
「こうして 2 ヒキ が イシダン の シタ に ならんで いる ところ は ミツコシ の よう ね」
「ミツコシ に こんな もの が ある ん です か、 オカアサン」
「こまる なあ、 キミ は。 エドッコ の くせ に トウキョウ の ミツコシ を しらない なんて。 それだから オオサカ ベン が うまい わけ だよ」
「だって オジサン、 トウキョウ に いた の は ボク が ムッツ の とき です もの」
「へえ、 もう そう なる かねえ、 はやい もん だね。 それきり キミ は トウキョウ へ いかない の か」
「ええ。 いきたい ん だ けれど、 いつも オトウサン ヒトリ だけ で、 オカアサン と ボク は オイテキボリ なん です」
「オジサン と イッショ に いかない か、 ちょうど ガッコウ は オヤスミ だし、 ………ミツコシ を みせて やる ぜ」
「いつ?」
「アシタ か アサッテ アタリ」
「さあ、 どう しよう かなあ」
 それまで ユカイ に しゃべって いた コドモ の カオ に、 ひょいと フアン の カゲ が さした。
「いったら いい じゃ ない か、 ヒロシ」
「いきたい こと は いきたい ん だ けれど、 まだ シュクダイ が やって ない し なあ。………」
「だから シュクダイ を はやく すまして おしまいなさい って、 コノアイダ から オカアサン が いってる じゃ ない の。 1 ニチ かかったら できる だろう から キョウジュウ に せっせと やって おしまい。 そして オジサン に つれて いって おいただき。 よ、 そう おし、 そう おし」
「なあに、 シュクダイ なんか キシャ の ナカ だって やれる、 オジサン が てつだって やる よ」
「イクニチ ムコウ に いる ん です? オジサン」
「キミ の ガッコウ が はじまる まで に かえる」
「どこ へ とまる の?」
「テイコク ホテル」
「でも オジサン は いろいろ ヨウ が おあり に なる ん じゃ ない ん です か」
「まあ、 いや だ、 この コ は。 ―――せっかく つれて いって くださる って いう のに、 なんの かんの って モンク を いう こと は ない じゃ ない か。 ホント に、 タカナツ さん、 ゴメイワク でも つれて いって やって ください よ。 2~3 ニチ いない で くれた ほう が うるさく なくって いい ん です よ」
 そう いう ハハ の メ の ウチ を みながら、 ヒロシ は すこし あおざめた カオ で にやにや して いた。 トウキョウ へ つれて ゆく と いう ハナシ は、 ぐうぜん ここ で もちあがった に すぎない の で ある が、 それ を ヒロシ は そう とらない で、 あらかじめ しめしあわせて おかれた よう に かんじて いる の に ちがいなかった。 ホントウ に ジブン を よろこばして くれる ため なら、 むろん ゆきたく ない こと は ない。 が、 トウキョウ から かえる キシャ の ナカ で この オジサン が ナニ を いいだす かも しれない。 「ヒロシ くん、 キョウ かえって も もう オカアサン は ウチ に いない の だよ。 オジサン は キミ に その こと を はなす よう に オトウサン から たのまれて きた の だ。………」 と、 そう いわれる の じゃ ない かしらん? ―――なんだか それ が おそろしく も あり、 と いって あまり こどもらしい ばかげた ソウゾウ の よう でも あり、 オトナ の ココロ を はかりかねて ミョウ に うじうじ して いる の で あった。
「オジサン は どうしても トウキョウ へ いらっしゃる ヨウ が ある ん です か?」
「なぜ?」
「ヨウ が なかったら、 ウチ に いつまでも とまって いらっしゃる と いい ん だ がなあ。 その ほう が ミンナ が おもしろい じゃ ありません か、 オトウサン だって オカアサン だって」
「ウチ の ほう には リンディー が いる から いい じゃ ない か。 オトウサン と オカアサン は マイニチ ノド を なでて いる とさ」
「リンディー じゃあ クチ を きかない から ダメ だあ。 ねえ、 リンディー、 リンディー! オマエ には オジサン の カワリ は できない ねえ」
 ヒロシ は テレカクシ に また イヌ の マエ に しゃがんで、 ノド を さすって やりながら その ヨコバラ へ カオ を あてて ホオズリ を した。 コエ の チョウシ と その ヨウス と が すこし ヘン だった。 ないて いる の かも しれない と オトナ たち は おもった。
 カテイ の ナカ に どういう ジケン が さしせまって いる にも せよ、 タカナツ が いる と ミンナ が ノンキ に ジョウダン を いえる ココロモチ に なる の は ジジツ で あった。 それ は タカナツ が そういう ふう に しむけて くれる せい も ある の だ が、 ヒトツ には タカナツ だけ が スベテ の ジジョウ を しって いて くれる、 この ヒト の マエ では シバイ を する には およばない と いう こと が、 フウフ の ムネ を かるく して くれる せい でも あった。 ミサコ は ホントウ に イクツキ-ぶり で オット の タカワライ を きく の で あろう。 ミナミ を うけた ヴェランダ に サシムカイ の イス に よりかかり、 コドモ と イヌ との たわむれる の を ながめながら ヒ を あびて いる この ヘイワサ、 ―――オット が かたり、 ツマ が おうじて、 エンライ の キャク を むかえつつ ある この マドカサ は、 セケン を あざむく と いう ヒツヨウ が のぞかれた ため に、 かえって シゼン の フウフ-ラシサ が まだ いくらか は のこって いる こと を しめして いた。 そして フウフ は、 これ が いつまで つづく もの では ない に して も、 こういう バメン に しばらく ジブン たち を やすらわせて、 ほっと ヒトイキ いれたい の で あった。
「おもしろい の かい、 その ホン は? だいぶ ネッシン じゃ ない か」
「おもしろい よ、 なかなか、………」
 カナメ は いったん テーブル の ウエ に ふせた ヨウショ を とりだして、 それ を ジブン に だけ みえる よう に カオ の マエ へ たてて いた。 ひらいた ところ の イッポウ の ページ に ラタイ の ジョグン が あそんで いる ハレム か ナニ か の ドウバン の サシエ が ある の で ある。
「なにしろ そいつ を テ に いれる にゃあ ケリー ウォルシュ へ ナンド カケアイ に いった か しれん ぜ。 ようよう イギリス から とりよせた と いう んで でかけて いく と、 サキ は アシモト を みやがった の か 200 ドル が ビタイチモン も まからない、 この ホン は モッカ ロンドン に だって 2 ブ とは ない、 それ を まけろ なんて オマエ が ムリ だ と ぬかす ん だ。 こっち は ホン の ソウバ なんて もの は いっこう しらん の だし、 まあまあ それ も そう だろう が と いう わけ で、 さんざ オシモンドウ を した アゲク、 やっと 1 ワリ ひかした ん だ が、 カネ は そのかわり キャッシュ で ソクザ に はらえ と いう ん だ」
「まあ、 そんな に たかい ホン なの?」
「だって オマエ、 これ 1 サツ じゃあ ない ん だぜ、 ゼンブ で 17 サツ ある ん だぜ」
「その 17 サツ も ある やつ を、 もって くる の が また ヒトクロウ だった ん だよ。 オブシーン ブック だ と いう ハナシ だし、 イラストレーション も ある と いう んで、 ゼイカン に みつかったら ヤッカイ だ と おもって、 トランク の ナカ へ おしこんで きた の は いい ん だ が、 そいつ が バカ に おもい もん だ から モチハコビ が タイヘン で、 どの くらい ホネ を おった か しれん ね。 よっぽど ダチン を もらわなけりゃあ あわん シゴト だよ」
「オトナ の よむ アラビアン ナイト って、 コドモ の と まるきり ちがう ん です か、 オトウサン」
 タカナツ の コトバ に おぼろげ ながら コウキシン を かんじた らしい ヒロシ は、 サッキ から チチ の テ の カゲ に なった サシエ の ほう へ さぐる よう な メ を ひからして いた。
「ちがう ところ も ある し、 おなじ ところ も ある。 ―――アラビアン ナイト と いう もの は ぜんたい オトナ の よむ ホン なん だよ。 その ナカ から コドモ が よんで も いい よう な ハナシ だけ を あつめた の が、 オマエタチ の もって いる やつ さ」
「じゃあ、 アリババ の ハナシ は ある?」
「ある」
「アラディン と フシギ な ランプ は?」
「ある」
「『ひらけ、 ゴマ』 は?」
「ある。 ―――オマエ の しって いる ハナシ は みんな ある」
「エイゴ だ と むずかしく は ない? オトウサン は それ を およみ に なる の に イクニチ ぐらい かかる ん です」
「オトウサン だって こいつ を みんな よみ は しない よ。 おもしろそう な ところ だけ を さがして よむ ん だ」
「しかし よむ から カンシン だよ。 ボク なんか とんと わすれちまった ね。 エイゴ なんて もの は ショウバイ の ホカ には つかう とき が ない ん だ から」
「それ が キミ、 こういう ホン だ と ダレ でも よむ キ に なる から キミョウ だよ、 こつこつ ジビキ を ひきながら でも。………」
「いずれ キミ の よう な ヒマジン の やる こと だな。 ボク みたい な ビンボウニン には とても そんな ジカン は ない よ」
「だって、 タカナツ さん は ナリキン だ って いう ハナシ じゃ ない の?」
「ところが せっかく もうけた と おもったら、 また ソン を しちゃった」
「どうして?」
「ドル の ソウバ で」
「そう、 そう、 180 ドル は いくら に なる ん だい? わすれない うち に はらって おこう か」
「いい ん でしょう? これ は オミヤゲ なん でしょう?」
「バカ いっちゃ いけない! そんな たかい オミヤゲ が ある もん か。 これ は そもそも たのまれて かって きた ん です よ」
「じゃあ、 アタシ の オミヤゲ は? タカナツ さん」
「や、 そいつ を すっかり わすれて いたっけ。 ちょっと あっち へ み に きません か。 どれ でも あの ナカ で いい の を あげます」
 フタリ は タカナツ の ヘヤ に あてられた ヨウカン の 2 カイ へ あがった。

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