カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

タデ くう ムシ 9

2020-01-20 | タニザキ ジュンイチロウ
 その 13

ハイフク
センジツ は シツレイ いたしそうろう。 あれ より ヨテイ の とおり アワ ノ ナルト トクシマ を へて キョゲツ 25 ニチ キラク、 29 ニチ オンサシタテ の キサツ サクヤ ヒケン いたしそうろう。 まことに まことに おもいのほか の ギ、 ミサ こと もとより ふつつか ながら ヒゴロ さよう なる フショゾンモノ の よう には ヨウイク いたさず そうろう ところ、 ぞくに マ が さした と もうす にや、 セツロウ この トシ に および かかる うき こと を ミミ に いたしそうろう は なんの インガ か と ヒタン やるかたなく そうろう。 だいいち オヤ の ミ と して ソコモト に たいして も オワビ の モウシヨウ も これ なく、 ふかく はじいりもうしそうろう。
すでに オンモウシコシ の ごとき ジタイ に さしせまりそうろうて は、 いまさら とかく の トリナシ は オンキキイレ も これ なかる べく、 じゅうじゅう ゴリップク の ダン さっしいりそうらえど も、 いささか ゾンジヨリ の ギ も これ あり、 キンジツ ミサコ ドウドウ ゴジュライ くだされまじく そうろう や、 しかる うえ は セツロウ より とくと ホンニン へ もうしきかせ なにとぞ して リョウケン を いれかえさせたく、 まんいち カイシュン いたさず そうらわば いかよう にも セイバイ つかまつる べく、 もし また ホンニン に おいて キョウコウ を きっと あいつつしみそうろう セツ は、 イクエ にも ゴカンベン ねがいあげそうろう。
じつは シュウシン の ニンギョウ ようよう テ に いりもうし、 キライ さっそく ゴアンナイ もうしあげたく と ぞんじながら カタ の コリ を やすめおりそうろう おりから、 ゴジョウ に せっし ボウゼン ジシツ、 とんと きょうざめもうしそうろう。 せっかく ジュンレイ の ゴリヤク も これ なく、 かえって ブツバチ を こうむりそうろう こと か と ロウジン の グチ のみ いでそうろう。
なおなお ミョウニチ にも ゴジュラク まちあげそうろう。 まず それまで は ゲンジョウ を イジ なされそうろうよう、 この ギ くれぐれも おねがい もうしあげそうろう。

「……… 『かかる うき こと を ミミ に いたしそうろう は なんの インガ か と ヒタン やるかたなく』 か、 こまった な どうも、………」
「なんと いって おやり に なった の?」
「できる だけ カンリャク には かいた ん だ けれど、 ジュウヨウ な テン は もらさなかった つもり だ。 この こと は ボク にも セキニン が あり、 ボク ジシン の キボウ でも ある、 つまり ゴブ ゴブ だ と いう テン に よくよく ネン を おした ん だ が、………」
「こう いって くる の は アタシ には わかって いた ん だ けれど、………」
 でも カナメ には イガイ で あった。 テガミ で リョウカイ を もとめる べき セイシツ の もの では ない し、 それ では ゴカイ が おこりやすい から、 ちょくせつ いって はなして くれたら と いう ミサコ の キボウ は もっとも で あり、 ジブン も それ に こした こと は なかった の だ が、 ひとまず アラマシ を いって やって、 ヒ を おいて から と いう キ に なった の は、 フイ に ロウジン を おどろかす こと の いかにも しのびがたい の と、 つい コノアイダ も イッショ に ノンキ な タビ を しながら オクビ にも ださず に いた こと を、 なんと して も メン と むかって きりだす カオ が ない から で あった。 ことに この ヘンジ にも ある よう に、 サキ は イチズ に ニンギョウ を み に きた と おもって、 すぐ その テガラバナシ に なる で あろう。 そう したら いよいよ デバナ を くじかれる。 それに カナメ は、 ロウジン の カコ の ケイレキ から みて じつは もうすこし わかって くれる よう に ヨソウ して いた。 クチ では キュウシキ な シソウ の モチヌシ の よう な こと ばかり いう ものの、 それ は ああいう ヒト に ありがち な イッシュ の キドリ、 シュミ なの で あって、 ホントウ は もっと ユウズウ も きく し、 チカゴロ の セソウ や フウチョウ にも フウバギュウ では ない はず で ある。 それ が こっち から いって やった こと を その とおり に よんで くれない のみ か、 「じゅうじゅう ゴリップク の ダン さっしいりそうらえど も」 とか 「オワビ の モウシヨウ も これ なく」 など と かいて くる と いう の は、 あんまり ケントウ が ちがいすぎる。 あの モンゴン を そのまま すなお に とって くれたら 「ふかく はじいる」 スジ は ない の だし、 なるたけ キノドク な オモイ を させまい と チュウイ して かいた つもり で ある のに、 やはり いちおう は キョウシュク した アイサツ を する の が レイギ と いう もの で あろう か。
「ボク は この テガミ には だいぶ カケネ が ある と おもう ね。 こういう ムカシフウ な ブンタイ を つかえば ナイヨウ だって キュウシキ に しなければ ウツリ が わるい から、 こいつ も シュミ で かいて いる んで、 オナカ の ナカ は これほど ヒタン やるかたない ん でも ない と おもう よ。 せっかく ニンギョウ を かざって うれしがろう と して いた ヤサキ を、 シャク に さわった ぐらい なん じゃ ない か」
 ミサコ は そんな こと は どうでも いい、 とうに チョウエツ して いる と いう ふう に、 やや あおざめた カオ を、 まったく ムヒョウジョウ に おちつかして いた。
「どう する、 オマエ は?」
「どう する と いって………」
「イッショ に いく か」
「アタシ いや だわ」
 その 「いや」 と いう コトバ を さも いや-らしく カノジョ は いった。
「アナタ が いって はなして きて ちょうだい よ」
「けども こう いって きてる ん だ から、 とにかく オマエ も いかない じゃ なるまい。 ボク は、 あって さえ しまえば あんずる より は うむ が やすい と おもって いる ん だ」
「ハナシ が わかって から いく わよ。 オヒサ なんぞ の いる ところ で オダンギ を きかされる の は まっぴら だ から」
 フタリ は めずらしく も メン と むかって タガイ の メ の ナカ を みつめながら はなして いる の で ある が、 その ギゴチナサ を かくそう と して ことさら つけつけ と モノ を いいながら ホソマキ の キンクチ を ワ に ふいて いる ツマ の ヨウス を、 オット は いささか モテアマシギミ に ながめて いた。 ツマ は ジブン では イシキ して いない よう だ けれども、 いつ とは なし に カオ や コトバ で する カンジョウ の アラワシカタ が ムカシ と かわって きて いる の は、 たしょう アソ との タイワ の クセ が でる の で あろう。 カナメ は それ を みせられる とき、 カノジョ が もはや ここ の カテイ の モノ で ない こと を ナニ より ツウセツ に かんじない わけ には ゆかなかった。 カノジョ の クチ に する ヒトツ の タンゴ、 ヒトツ の ゴビ にも 「シバ」 と いう イエ の モチアジ が こびりついて いない もの は ない のに、 それ が オット の メノマエ で あたらしい イイマワシ に とりかえられて ゆきつつ ある、 ―――カナメ は ベツリ の カナシミ が こういう ホウメン から おそって こよう とは おもいもうけて も いなかった ので、 もう すぐ アト に せまって きて いる サイゴ の バメン の クルシサ が イマ から ヨソウ される の で あった。 だが かんがえれば、 かつて ジブン の ツマ たりし オンナ は すでに コノヨ には いない の では ない か。 イマ サシムカイ に すわって いる 「ミサコ」 は まったく ベツ な ニンゲン に なって いる の では ない か。 ヒトリ の オンナ が いつしか カノジョ の カコ に まつわる インネン を リダツ して しまった こと、 ―――カレ には それ が かなしい ので、 その ココロモチ は ミレン と いう の とは ちがう かも しれない。 そう だ と すれば ク に やんで いた サイゴ の トウゲ は キ が つかない うち に とおりこして しまった の かも しれない。………
「タカナツ は なんと いって きた ん だ」
「ちかぢか に また オオサカ に ヨウ が ある ん だ けれど、 こっち が なんとか きまる まで は いきたく ない、 いって も オタク へは うかがわない で かえる って、………」
「べつに イケン は いって こない の か」
「ええ、 ………それから あの、………」
 ミサコ は エンガワ に ザブトン を しいて イッポウ の テ で アシ の コユビ の マタ を わりながら、 タバコ を もった ほう を のばして サツキ の さいて いる ニワ の オモテ へ ハイ を おとした。
「………アナタ には ナイショ に して おいて も よし、 いう なら いって も かまわない って かいて ある ん だ けれど、………」
「ふん?」
「じつは ジブン の ドクダン で、 ヒロシ には はなして しまった って いう の」
「タカナツ が かい?」
「ええ、………」
「いつ の こと なん だ」
「ハル の ヤスミ に イッショ に トウキョウ へ いった でしょう、 あの とき に」
「なんだって また ヨケイ な こと を しゃべった ん だろう」
 わざわざ キョウト の ロウジン に まで しらせて やった イマ に なって も、 まだ コドモ には いいそびれつつ すごして いた カナメ は、 さては そう だった の か と おもう と、 それ を キョウ まで ウノケ ほど も かんづかれない よう に して いた おさない モノ の ココロヅカイ が、 いじらしく も フビン でも ある イッポウ、 あまり の こと に こづらにくい ココチ さえ した。
「しゃべる つもり では なかった ん だ けれど、 ホテル へ とまった バン に ベッド を ならべて ねて いる と、 ヨナカ に しくしく ないて いる もん だ から、 どうした の か と おもって きいて みた の が ハジマリ なん ですって。………」
「そう したら?」
「テガミ だ から くわしい こと は かいて ない けれど、 オトウサン と オカアサン とは コト に よる と ベツベツ に すむ よう に なる、 そして オカアサン は アソ さん の ウチ に いく かも しれない と いったら 『そんなら ボク は どう なる ん です』 って きかれた んで、 『キミ は どうにも なり は しない、 いつでも オカアサン に あえる ん だ から、 ウチ が 2 ケン に なった つもり で いたら いい ん だ。 どうして そう する の か と いう ワケ は、 オトナ に なれば しぜん と わかる とき が くる』 って、 それ だけ いった だけ なん ですって」
「それで ヒロシ は ナットク した の か」
「なんにも いわない で なきながら ねて しまった んで、 あくる ヒ どう か と おもいながら ミツコシ へ つれて いって やる と、 マエ の バン の こと は わすれた よう に ナニ を かって くれ あれ を かって くれ と いう もん だ から、 コドモ と いう もの は じつに ムジャキ だ、 これ なら アンシン だ と おもった と いう ん です の」
「だが、 タカナツ が はなす の と ボク が はなす の とは ちがう から な。―――」
「そうそう、 それから、 ―――そんな に コドモ に はなす の が つらければ もう その ヒツヨウ は ない じゃ ない か、 ドクダン で すまなかった けれど、 キミラ の ため に ボク が その ナンカン を トッパ して おいて やった から って、―――」
「そう は いかん さ、 ボク は ズベラ じゃあ ある けれども、 そんな キマリ の つかない こと は きらい なん だ」
 しかし カナメ が その ナンカン を のりこえる シゴト を サイゴ の サイゴ まで のばして いる の は、 この バ に なって さすが に それ を クチ に だして は いえない けれども、 いまだに コト の ナリユキ が どう ヘンカ する か わからない と いう イチル の ノゾミ を イッスン サキ の ミライ に たくして いる の でも あった。 ツマ は ツヨキ で いる よう な ものの、 その ひたむき な カンジョウ の ウラ には ひとしお もろい ヨワキ が ココロ の ネ を くって いて、 ほんの ちょっと した モノ の ハズミ に なきくずおれて しまいそう に おもえる。 そう なる こと を どっち も おそれて いれば こそ、 そんな キカイ を つくらない よう に たがいに さけて いる の では ある が、 げんに こうして あいたいして いる イマ の バアイ でも、 ハナシ の もって ユキヨウ-シダイ で センリ の かなた に とびさった もの が イッシュン の うち に かえって こない もの でも ない。 カナメ は カノジョ が キョウ に なって ロウジン の サイダン に まかせる だろう とは ゆめにも ヨキ して いない ながら、 もし そう なったら ジブン も それ に したがう より ホカ に ない と いう よう な、 キボウ とも アキラメ とも つかない もの が どこ か ムネ の オク の ほう に ひそんで いる の を、 われから フシギ にも うとましく も かんじた。
「それでは アタシ、―――」
 ツマ は これ イジョウ むかいあって いる こと に フアン を おぼえた の で あろう、 イツモ の ジカン が きた こと を それ と さっして もらう ため に チャダンス の ウエ の トケイ に メ を やって、 おそわれた よう に たって キモノ を きかえはじめた。
「あれきり ゴブサタ して いる が、 ちかい うち に ボク も イッペン あって おく かな」
「ええ、 ―――キョウト へ いく マエ に なさる? アト に なさる?」
「ムコウ の ツゴウ は どう なん だ」
「ミョウニチ にも ゴジュラク まちあげそうろう と いう ん だ から、 キョウト を サキ に なすったら どう? こっち へ やって こられる と メンドウ だし、 それに その ほう が きまって から なら、 ジブン ばかり で なく ハハ にも あって いただく と いって いる ん です から」
「オマエ、 そこ に タカナツ の テガミ は ない の か」
 コイビト の モト へ いそぐ べく ミジタク を して いる 「ヒトリ の オンナ」 を、 むしろ カレン な メ を もって ながめて いた カナメ は、 ロウカ へ でて ゆく その ウシロカゲ を よびとめて いった。
「あれ を アナタ に みせる つもり で どこ か へ おきわすれて しまった のよ、 かえって きて から で よく は なくって? ―――もっとも さっき はなした よう な こと なん だ けれど」
「いや、 みつからなければ どうでも いい ん だ」
 ツマ が でかけて しまった アト、 カナメ は ビスケット を ヒトニギリ つかんで イヌゴヤ の ほう へ おりて いって、 2 トウ の イヌ に かわるがわる エサ を あたえたり、 ジイヤ と フタリ で ブラシ を かけて やったり した が、 しばらく する と チャノマ へ もどって ぼんやり タタミ に ねそべって いた。
「おい、 ダレ か いない か」
 と、 オチャ を いれさせよう と して ジョチュウ を よんで みた けれど、 ヘヤ に ひっこんで いる と みえて ヘンジ を しない。 ヒロシ も まだ ガッコウ から かえらない し、 イエ の ナカ は しんかん と して なんだか ヒトリ とりのこされた よう に しずか で ある。 シカタ が ない、 また ルイズ に でも あい に ゆこう か。 ―――カレ は そう おもって みて、 こういう とき に いつも きまって そんな キ に なる ジブン ジシン が、 なぜ だ か キョウ は あわれ な オトコ に かんぜられた。 たかが アイテ は ヒトリ の ショウフ に すぎない のに、 もう ニド と ゆかない の なんの と いう むずかしい ケッシン を して、 それ に とらわれる の も ばかばかしい と いう ふう に おもいなおして は、 けっきょく あい に ゆく こと に なる の が ツネ で あった が、 じつは そんな こと にも まして、 ツマ が でかけて いった アト の ヤシキ の ナカ の がらん と した カンジ、 ―――ショウジ や、 フスマ や、 トコノマ の カザリ や、 ニワ の タチキ や、 そういう もの が ある が まま に ありながら、 にわか に カテイ が クウキョ に されて しまった よう な ウラサビシサ、 ―――それ が ナニ より たえがたかった。 いったい この イエ は マエ の モチヌシ が たてて 1~2 ネン に しか ならない もの を、 カンサイ へ うつって きた トシ に かいとった ので、 この 8 ジョウ の ニホンマ は その とき たてました の で ある が、 マイニチ みなれて キ が つかない で いる うち に、 そう ネン を いれて ふきこみ も しなかった キタヤマ の スギ や トガ の ハシラ が トシソウオウ の ツヤ を もちだして、 これから そろそろ キョウト の ロウジン の キ に いりそう な ジダイ が ついて くる の で ある。 カナメ は ねころびながら いまさら の よう に それら の ハシラ の コウタク を み、 ヤエ ヤマブキ の ハナ が たれて いる トコノマ の カスガジョク を み、 シキイ の ムコウ に、 コガイ の アカリ を ミズ の よう に うつして いる エンガワ の イタ を みた。 ツマ が コノゴロ の アワタダシサ の ナカ に ありながら なお ときどき は シキ の フゼイ を ザシキ に そえる ココロヅカイ を わすれない の は、 いくらか ダセイ で くりかえして いる の だ と して も、 やがて この ヘヤ に あの ハナ まで が なくなって しまう ヒ を おもう と、 ナバカリ の フウフ と いう もの にも、 アサユウ メ に しみる ハシラ の イロ と おなじ よう な ナツカシサ が ある。………
「オサヨ、 タオル を あつく して しぼって きて くれ」
 と、 カナメ は たって ジョチュウベヤ の ほう へ きこえる よう に いった。 そして その バ で セル の ヒトエ の リョウハダ を ぬいで、 あせばんだ セナカ を きゅっきゅっ と こすって、 デシナ に ツマ が そろえて おいた セビロフク に きかえて から、 キモノ と イッショ に フトコロ から おちた キョウト の ロウジン から の テガミ を ひろって ウワギ の ウチカクシ へ おさめた。 が、 カミイレ の ナカ を みたがったり、 「これ は ゲイシャ から きた ん じゃ ない の」 など と ポッケット の もの を ひったくる ルイズ の クセ を おもいだして、 キョウダイ の ヒキダシ の、 ソコ に しいて ある シンブンガミ の シタ へ いれよう と する と、 ナニ か が がさがさ と テ に さわった。 ミサコ が そこ へ タカナツ の テガミ を さしこんで おいた の で ある。
「よんで も いい の かしらん?」
 テ には とった ものの、 フウトウ の ナカ を すぐに ひきぬく の は チュウチョ せられた。 こう ネンイリ に かくして ある の を ツマ が おきわすれる はず は ない。 コトバ に きゅうして ああ いった ので、 よまれる こと を このんで いない に ちがいない の だ。 よんだ ところ で ツマ への イイワケ は たつ の で ある が、 くだらぬ カクシダテ を した こと の ない カノジョ が それ を ジブン に よませまい と した こと に、 なにかしら ナカミ の フキツサ が ヨソウ された。―――

オテガミ ハイケン しました。
もう いいかげん キマリ が ついた ジブン だ と おもって いた のに、 せんだって アワジ から エハガキ を もらって まだ そんな こと か と おどろいた シダイ です。 だから コンド の アナタ の オテガミ では おどろきません。………

 そこ まで みる と カナメ は ヨウカン の 2 カイ へ あがって、 ゆっくり アト を よみつづけた。

………けれど アナタ の ケッシン が しんに サイゴ の もの で ある なら、 1 ニチ も はやい ほう が よく は ない です か。 じっさい ここ まで きて しまって は ホカ に ミチ は なさそう です。 ボク は つくづく、 シバ クン も ワガママ だ が アナタ も ワガママ だ、 コンニチ の こと は フタリ の ワガママ が とうぜん まねいた ムクイ だ と いう カン を ふかく して います。 アナタ が ボク に ナキゴト を いう の は いい、 しかし その ナキゴト を、 ―――アナタ ジシン は ナキゴト の つもり では ない かも しれない が、――― なぜ ボク に いう カワリ に オット に むかって いわない の か、 それ が アナタ に できない と いう の は、 よにも フコウ な ヒト が あれば ある もの だ と おもって アナタ の ため に イッキク の ナミダ なき を えません。 じじつ それなら フウフ では いられない。 「オット が あまり ジユウ を あたえて くれた の が うらめしい」 とか、 「アソ と いう ヒト を しらなければ よかった、 しった の を コウカイ して いる」 とか、 もし その ココロモチ の イクブン を でも アナタ が ちょくせつ シバ クン に ヒョウハク する こと が できたら、 ―――フウフ の アイダ に せめて それ だけ の スナオサ が あったら、 ―――と、 そう いった ところ で いまさら グチ に きこえます から、 もはや ナニゴト も もうしますまい。 オテガミ の こと は もちろん シバ クン には いいません から アンシン して いらっしゃい。 いたずらに カナシミ を ふやさせる に すぎない の なら しらせる の は ムダ なの だ から。 ボク こう みえて も かならずしも ボクセキカン に あらず、 ヨシコ の こと など おもいだして カンガイ ムリョウ なる もの あり、 ただ どこまでも そういう カンジョウ を アト に のこして シバ の イエ を さらなければ ならなく なった アナタ の フシアワセ を なげく のみ です。 なにとぞ コノウエ は あたらしい コイビト と コウフク な カテイ を もって カコ の カナシミ を わすれる よう に、 そして ふたたび おなじ アヤマチ を くりかえさぬ よう に して ください。 そう すれば シバ クン だって 「キ が ラク に なる」 では ない です か。
アナタ は ゴカイ して いる よう だ が ボク は けっして おこって いる の では ない の です。 ただ ボク の よう な アタマ の おおざっぱ な モノ が、 アナタガタ の フクザツ な フウフ カンケイ の カチュウ へ とびこむ の は その ニン に あらず と かんがえ、 アナタガタ ジシン で カタ を つける まで とおざかって いる の を ケンメイ だ と しんじた の です。 じつは オオサカ へ ゆく ヨウ も ある の だ が、 それで シュッパツ を さしひかえて います。 いって も コンド は よらない で かえる かも しれない から わるく おもわない で ください。
それから、 ボク は アナタガタ に かくして いた こと が あります。 と いう の は、 いつぞや トウキョウ へ いった とき ヒロシ くん に はなして しまった の です。 ………そういう ワケ で、 ケッカ は あんがい よかった と おもう の です が、 ソノゴ ヒロシ くん の ヨウス に かわった テン が ある か どう です か。 ボク の ところ へは ときどき テガミ を くれる けれども あの バン の こと には ヒトコト も ふれて ない。 なかなか リコウ な コドモ です。 など と ごまかす の では ない が、 ヨケイ な オセッカイ を して わるかったら あやまります。 しかし ひそか に おもう の に、 かえって ボク が そうした ほう が 「キ が ラク に なり」 は しない です か。 ………アナタ の イマ の オット の こと、 および ヒロシ くん の こと は、 ゴイライ が なく とも シンセキ の ヒトリ と して、 オヤコ の セイシツ を もっとも よく リカイ して いる ユウジン と して、 およばずながら できる だけ の こと は する つもり です から、 けっして シンパイ しない で ください。 たぶん フタリ とも ダゲキ に たえて やって ゆける と おもいます。 どうせ ジンセイ は ヘイタン な ミチ ばかり では ない。 オトコ の コ には クロウ が クスリ です。 シバ クン に したって イマ まで クロウ が なさすぎた ん だ から、 イッペン ぐらい あって も いい。 そう したら ワガママ が なおる かも しれない。
では さようなら。 とうぶん オメ に かかりません が、 いずれ アナタ が シン フジン と なられた アカツキ に あらためて ハイガン の キカイ の ある こと を のぞみます。
  5 ガツ 27 ニチ
                                タカナツ ヒデオ
 シバ ミサコ サマ
          ジジョ

 タカナツ と して は めずらしく ながい テガミ で あった。 カナメ は それ を よんで しまう と、 ヒトケ の ない ヘヤ で ココロ に ユダン が あった せい か、 しらずしらず ナミダ が ホオ を ぬらして いた。

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