カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ミツ の アワレ 1

2020-07-22 | ムロウ サイセイ
 ミツ の アワレ

 ムロウ サイセイ

 1、 アタイ は ころされない

「オジサマ、 おはよう ございます」
「あ、 おはよう、 いい ゴキゲン らしい ね」
「こんな よい オテンキ なのに、 ダレ だって キゲン よく して いなきゃ わるい わ、 オジサマ も、 さばさば した オカオ で いらっしゃる」
「こんな に アサ はやく やって きて、 また オネダリ かね。 どうも、 あやしい な」
「ううん、 いや、 ちがう」
「じゃ ナン だ。 いって ごらん」
「あのね、 このあいだ ね。 あの、」
「うん」
「このあいだ ね、 ショウセツ の ザッシ カントウ に アタイ の エ を おかき に なった でしょう」
「あ、 かいた よ、 1 ピキ いる キンギョ の エ を かいた。 それ が どうした の」
「あれ ね、 とても オジョウズ だった わ、 メ なんか ぴちぴち して いて、 とても ね。 ホンモノ に そっくり だった わ」
「たのまれて うまれて はじめて エ と いう もの を かいて みた ん だよ。 ホントウ は エ だ か なんだか わからない がね」
「アタイ にも、 そのうち 1 マイ かいて いただきたい わ」
「エ は かこう と したって なかなか、 かける もの では ない よ。 キミ から みる と にて いる か どう かね」
「よく にて いた わ、 それで ね、 あれ から アト に、 1 シュウカン ほど して から、 ザッシシャ から オレイ の オカネ が カキトメ で ついた でしょう」
「これ も うまれて はじめて ガリョウ と いう もの を もらった の だ が、 それ が どうか した かね」
「どれだけ いただき に なった の」
「ブンショウ が 1 マイ ハン ついて いて ね、 あわせて 1 マン エン もらった」
「オジサマ は それ を ワタクシ に ね、 ショウジキ に おっしゃらなかった わね。 いくら きた って こと も ね」
「キンギョ に オカネ の ハナシ を したって、 どうにも ならない じゃ ない の」
「だって、 あれ、 ホントウ は、 アタイ の オカネ じゃ ない こと、 アタイ を おかき に なった ん だ もん、 アタイ に くださる と ばかり、 そう おもって いた わ」
「なんだか ボク も そんな キ が しない でも、 なかった ん だ けど、」
「で ね、 オジサマ、 それ に ついて ね」
「あ、」
「もう オカネ、 だいぶ、 おつかい に なった?」
「ハンブン つかった けれど、 まだ ある」
「ナニ に ハンブン、 おつかい に なった の」
「1500 エン の ギョクロ を 100 メ かった し、 キジバネ の ハタキ を 1 ポン と、 アカダマ チーズ を 1 コ かった、……」
「アタイ には、 とうとう、 なにも かって くださらなかった わね」
「キミ なんか の こと は、 まるで、 わすれて いた」
「オジサマ は ずるい わね。 あれ、 ホントウ を いえば アタイ の オカネ じゃ ない の」
「そういう こと に なる かね。 キミ を みて かいた だけ で、 それ が キミ の オカネ に なる もの かな」
「アタイ、 いつ くださる か と、 マド の ほう を マイニチ のぞいて いた のよ、 で、 ね、 あと ハンブン の オカネ、 いただきたい わ」
「いったい キミ は ナニ を かう つもり なの、」
「オトモダチ の キンギョ を たくさん かって ほしい のよ」
「あ、 そう か、 アソビ トモダチ が いる ん だね、 それ は キ が つかなかった」
「それから キンギョエ と いう ハコイリ の エサ が ほしい わ、 カガミ の ついて いる、 うつくしい ハコ なの よ」
「カガミ って いう の は スズ の カミ の こと だろう、 あれ は カガミ に なります かね」
「ミズ に ぬれる と ぴかぴか して、 カガミ みたい に なる わよ、 それから ね、 メダカ を たくさん かう の」
「そんな メダカ どう する ん だ」
「メダカ の オ が とても おいしい ん です もの。 マイニチ すこし ずつ かじって やる の」
「オ を かじって は、 メダカ が かわいそう じゃ ない か」
「かじって も かじって も、 メダカ の オ と いう もの は、 すぐ、 はえて くる もの よ、 だから、 かわいそう な こと ない わ」
「メダカ の オ は たとえば、 どんな アジ が する」
「ぬめっと して クチ の ナカ でも いきて いて、 ひりひり うごいて いる わ、 とても、 おいしい のよ」
「ザンコク だね」
「オジサマ、 はやく オカネ だして よ、 アタイ の オカネ なのに、 だししぶらないで よ。 はやく さ」
「じゃ、 1000 エン サツ で 5 マイ、 それに あまった こまかい の が、 100 エン サツ と ギンカ を あわせて ソウケイ 5900 エン に なる」
「ええ、 これ で ケッサンズミ よ、 それから ついでに、 ホカ に もっと こまかい の も いただきたい わ」
「ドウカ で おもくて いい か、」
「かまいません、 それから オジサマ、 アタイ、 ハ の オイシャ サマ に いきたい ん です から、 ベツ に その ほう の オカネ も ちょうだい」
「キンギョ が ハイシャ に かかる なんて きいた こと も ない が、 ハ が どう いたい の」
「このあいだ ね、 あわてて、 イシ を かんじゃった、 がりがり って」
「あわてる から だよ、 タベモノ は イッペン そっと クチ に さわって みて から、 たべる よう に する ん だね、 ハ は いたむ の」
「いたい わ、 ホネ に ひびく わ」
「ホネ に ひびく って、 ホネ に って セボネ の ホネ の こと か」
「オセナカ の ホネ なの よ、 オジサマ、 イマ ホネ の ハナシ を して から オジサマ の カオイロ が、 へんに かわって きた わね、 それ、 どうした のよ」
「ボク は まだ キンギョ の ホネ と いう もの を みた こと が ない ん だ、 キンギョ に セボネ が ある か ない か も ムカシ から わすれて いた。 ニンゲン で キンギョ の ホネ を みた ヒト が ナンニン いる かしら、 まったく タイヘン な こと を わすれて いた もの だ」
「どうして そんな、 アタイタチ の ホネ が みたい の」
「みたい よう な みたく ない よう な、 また、 こわい よう な キ も する ん だ。 よく かんがえる と ニンゲン は ダレ でも、 イロイロ な ホネ は みて きた けれど、 まだ キンギョ の ホネ だけ は みた ニンゲン は めった に いない、 たとえば キミ の やさしい カラダ に ホネ が ある とは、 どうにも かんがえられない こと だ」
「ぐにゃぐにゃ だ と おっしゃる の」
「あんな ハリ みたい な ホネ が ある なんて、 キミ の カオ を みて いたって、 ソウゾウ も つかない こと だ から ね」
「しんだら、 カイボウ すれば、 いい じゃ ない の」
「ニンゲン は キンギョ の ホネ だけ は みたく ない って、 ミナサン が そう いって いる ん だよ。 かわいそう だ から」
「アタイ も まだ みた こと ない わ、 じゃ、 アタイ、 そろそろ オトモダチ を かい に いって くる わよ、 くろい の や ブチ なの や、 それから、 メダカ も」
「いって きたまえ、 ジドウシャ に キ を つけて ね」
「ええ、 オカネモチ に なれて、 とても キョウ は うれしい わ」
「ハンドバッグ を すられない よう に キ を つけて おいで」
「はい、 いって まいります。 あ、 いい オテンキ だなあ」
「スイドウ の ミズ は のむな よ、 ゲエ に なる から なあ」
「はい、 すぐ かえる から、 オジサマ、 おとなしく して まって いらっしゃい」
「よしよし、……」
「オジサマ の すき な、 イシゴロモ、 かって きて あげる わ」
「それから コンペイトウ も ね、 ちいちゃい の は ほおばる の に メンドウ だ から、 オニ みたい な オオツブ の やつ が いい よ」
「あかい の や あおい の が まじって いる、 あれ で いい ん でしょう。 どの くらい いります」
「そう ね、 300 エン くらい いる な、 コドモ に わけて やる こと も ある から ね」
「その オカネ、 さっき いただいた ブン とは、 ベツ に いただかなきゃ」
「そう か、 ほら、 これ で いい ね。 なかなか ぬからない ね、 キミ は」
「だって アタイ、 いろいろ かんがえて つかう から、 オジサマ の コンペイトウ の オカネ は だせない わ。 イシゴロモ の ブン は、 アタイ の オミヤゲ に する けど」
「ありがとう、 たすかった」
「ふふ、 では いって まいります」
「ミチクサ を しない で、 ちゃんと、 オヤツ まで に かえって くる ん だよ」
「はい、」
「ウナギ や サバ を ミセサキ で みて いる と、 サカナヤ さん に つかまって、 うられて しまう ぜ」
「はい、 はい」

「ただいま、 ――あ、 こわかった、 も、 ちょっと で ユウカイ される ところ だった」
「どうした、 マッサオ な カオ を して いる じゃ ない か。 ふるえて さ、 キミ-らしく も ない ね」
「オジサマ、 オミズ を 1 パイ ちょうだい、 こんな こわい こと は はじめて よ、 イキ も つけない わ」
「ほら、 ミズ だ、 ぐっと のんで キ を おちつけて、 ナニ が こわかった か と いう こと を はなす ん だよ」
「あ、 おいしい、 もすこし ちょうだい。 サッキ の クロロフィル の はいった ミズ より か、 よっぽど、 おいしい」
「ナン だ クロロフィル なんて」
「アタイ ね、 オジサマ、 トチュウ で おもいだして マルビル まで キュウ に いって みた のよ、 オテンキ は ジョウジョウ だし ね」
「マルビル まで か、 おどろいた ヤツ だな、 そんな ハデ な カッコウ を して」
「コノアイダ から アタイ、 ハ が いたい いたい って いって いた でしょう、 だから アメ が ふる と こまる と おもって、 7 カイ の バトラー シカ イイン まで おもいきって いっちゃった」
「あそこ は キミタチ の いく シカ では ない よ、 キミタチ は カニ-カ に いけば タクサン なん だ、」
「シツレイ な オジサマ ね、 カニ-カ は バッシ ばかり で、 ハ の ギジュツ は てんで ダメ なの よ、 オジサマ は いつも ハ が おわるい くせ に、 なにも ゴゾンジ ない ん だ」
「どうりで ながい オツカイ だ と おもって いた ん だ。 だって バトラー さん は ジカンギメ だ から、 フイ に いって も リョウジ して もらえない はず じゃ ない か、 イクニチ の ナンジ と いう ジカン を もらわなければ ならない ん だ が、」
「そこ が アタイ の ウデ の ある ところ なの よ、 ちゃんと リョウジ して いただいて、 ウズキ も とうに なおっちゃった」
「どうして そんな うまい こと を した ん だ」
「クロ の メガネ を かけた、 エイゴ の ぺらぺら の オバチャン が いらっしゃる でしょう」
「あ、 いる いる、 キョウ も いた かい」
「だから アタイ、 オバチャン に ハ が いたくて しにそう だ と、 たのんじゃった の、 ハンブン ナキガオ して みせて やった の」
「そしたら、」
「そしたら センセイ の ところ に アタイ を つれて いって、 この コ の ハ の ナカ に カニ の コ が いる そう です から、 つまみだして ください と たのんで くださいました。 センセイ は ピンセット の サキ に、 とうとう 12 ヒキ の カニ の タマゴ を さがして、 つまみだして くだすった わよ」
「12 ヒキ とは たいへん いた もの だな」
「そして いちおう バッシ して から、 ハ は イレバ しなければ ならない ん ですって」
「キンギョ の くせ に イレバ する なんて ヘン じゃ ない か」
「アタイ の ハ は 2000 エン くらい だ けど、 コンド の オジサマ の ハ は キン と ハッキン と を まぜて つくる ん ですって、 で なきゃ、 どんな に テイネイ に つくって も、 オジサマ の カンシャクダマ は、 いつも イレバ まで かみくだいて おしまい に なります と、 センセイ が おわらい に なって おっしゃって いらっした わ」
「かかる だろう なあ」
「そっと きいたら 8 マン 6000 エン も かかる そう だわ、 だから、 アタイ、 ベソ を かいた よう な カオ を して みせて、 ついた ばかり の ゲンコウリョウ の コギッテ を おいて きた わ、 これ ウチキン で ございます、 なんしろ オジサマ は ビンボウ です から と もうしあげといた わ」
「ヨケイ な こと は いわない もの だ」
「それから アタイ、 チリョウ の イス に こしかけて いる と、 ウガイキ に どんな シカケ に なって いる の でしょう か、 ヒョウハク ガラスキ に ミズ が クルクルマイ を して、 しじゅう セイケツ な オミズ が はしって ながれて いる ん です、 それ を みて いる と サッキ から ずっと、 ノド が かわいて オ も アタマ も からから に なって いる こと に きづいた の、 ガマン が ならなく なって、 ジョシュ さん の スキ を みて ね、 コップ の ミズ を のんで しまった。 のんで から キ が ついて あおく なっちゃった、 あれ みな スイドウ の ミズ なん です もの、 だから あわてて クチ を もがもが した けれど、 もう おそかった わ、 ゲエ に なりそう に なっちゃった ん です」
「だから デシナ に あんな に、 スイドウ の ミズ は のむな と、 いって おいた じゃ ない か」
「アタイ、 すぐ ジョシュ さん を よんだ わ、 そして この コップ の ミズ を のんだ ん です けれど、 これ、 ドク でしょう かしら と きく と、 いいえ、 めしあがって も かまい は しません と おっしゃった から、 でも、 キンギョ には スイドウ の ミズ は ドク でしょう と ききなおす と、 そう ね、 キンギョ にも オドク と いう こと は ない でしょう、 どうして キンギョ の こと なぞ イマドキ おっしゃる ん です か と いわれた ので、 アタイ、 すっかり あかく なって ウチ に たくさん キンギョ を かって いる もの です から、 ここ に あがって も、 イマゴロ どうして いる か と シンパイ で ならない ん で ございます と いう と、 ジョシュ さん は なんて おやさしい オジョウサマ でしょう と いう の、 オジサマ、 アタイ も ソト に でる と たいした オジョウサマ に なって みえる らしい わね、 おどろいちゃった でしょう」
「ちっとも おどろかない よ、 キミ が レイジョウ で なかったら、 レイジョウ-らしい モノ なんて セカイ に ヒトリ も いない よ」
「オジサマ も そう おもって くれる かな、 うれしい な、 ところで ジョシュ さん は この オミズ に クロロフィル と いう オクスリ が はいって いる から、 キンギョ の ウロコ にも きく バアイ が あります と おっしゃった ので、 アタイ、 もうすこし いただいた わ、 クロロフィル って あおい モ みたい に、 うつくしい イロ を して いる オクスリ なん です」
「ボク の イチョウヤク なんか にも、 クロロフィル が はいって いて、 サンヤク だ けれど、 まるで ミドリイロ の クスリ なん だ」
「オジサマ、 コンド その オクスリ すこし いただかして ね」
「ナン に する の」
「オナカ が あまり おおきく ふくれて いる から、 のむ と なおらない か と おもう の」
「そのうち わけて あげる よ、 しかし キンギョ に きく か どう か、 キンギョヤ さん に よく きいて から に する と いい よ。 イマドキ の クスリ の こと だ から、 まちがう と タイヘン な シッパイ に なる から ね」
「それ は よく きいて いただかない と こまる わね。 キンギョヤ さん て キンギョ の オイシャ サマ みたい だ から、 なんでも きく と しって いらっしゃる わ」
「うっかり クスリ なぞ のまない ほう が いい よ」
「それから リョウジ を して ヒカエシツ に もどる と、 おおきな セイヨウジン が フタリ まちあわせて いて、 フタリ とも ねむって いた わ、 アタイ みたい に あかい カオ を して いらっしった もの です から、 アタイ まで ねむく なっちゃった。 アタイ、 コノゴロ ね、 あかい ザッシ の ヒョウシ の イロ を みた だけ でも、 すぐ ネムケ が して くる のよ」
「キンギョ と いう もの は およぎながら、 ミンナ いつでも ねむって いる ん だ、 クチ を とじた まま で ね」
「それから タクシー に のったら、 マッチ ヒトツ もらいました。 オツリセン を もらおう と したら、 テ を にぎられちゃった。 イイブン が キザ じゃ ない の、 オジョウサマ の オテテ は なんて おつめたい ん です と きた、 アタイ こわく なって、 さよなら と いって おりた わ」
「さよなら なんて いわなく とも いい ん だよ、 テ を にぎられた くせ に」
「それから が タイヘン な こと が はじまった のよ」
「どう、 タイヘン な こと って いう の は」
「シンバシ で ショウセン に のった でしょう、 のる と すぐ アタイ の カタ に テ を かけて、 どこ に いって きた ん だ と、 あおっぽい フク を きた わかい オトコ の ヒト が いう の、 アタイ、 こんな に チンピラ でしょう、 カタ に ラク に テ を おける ん です もの、 マルビル の ハイシャ さん まで いった ん だ と こたえたら、 どちら に かえる ん だ と いった から、 オオモリ まで と いう と、 ボク も オオモリ に いく ん だ から ゲシャ したら 5 フン-カン つきあって くれ と いう の、 アタイ、 キュウ に こわく なっちゃって、 その ヒト の ソバ を はなれて ウシロガワ の ツリカワ に かわっちゃった の、 その とき、 つい シツレイ します と いっちゃった」
「バカ だなあ、 そんな とき に シツレイ します なんて いう ヤツ が ある かね。 それから どうした の」
「そしたら ツギ の エキ に つく と、 すぐ アタイ の ソバ に また よって きて、 たくさん ヒト の いる ナカ でも ヘイキ で いう ん です。 ハイシャ に かかって いる なら たびたび かよわなければ ならない から、 この ツギ は いつ いく ん だ、 その ヒ を いって くれれば、 マルビル で まちあわそう じゃ ない か と いう ん です。 アタイ、 もう その ヒト が とても キュウ に こわく なって しまった。 こんな ヒト の こと を グレンタイ と いう ん だな と おもい、 がたがた ハンドバッグ を さげて いる テ が ふるえて きた わ」
「いっさい クチ を きかなかった ほう が よかった の だ、 キミ は いちいち ヘンジ を した こと が オボコ に みえた ん だよ、 どこまでも キミ は こどもくさい から ね」
「それで ね、 オオモリ に おりたら、 シロキヤ の イリグチ で まって いろ と いう の、 アタイ、 もう だまって ヘンジ を しなかった わ。 そしたら、 まつ か またない か ヘンジ を しろ と せまる の、 アタイ、 もう ダレ か に たすけて もらおう か と おもった けど、 レイ の カタ の テ が はなれない ん です もの、 だから、 コンド は デグチ の ほう に いって みる と、 すぐ ついて きた わ、 その ついて キカタ が あんまり はやい もん だ から、 ジョウキャク は ダレ も フシギ そう に みる モノ は ヒトリ も いない ん です。 ガラスド に カオ を くっつけて いる と、 ガラス が くもっちゃって、 アタイ の ココロ と おなじ イロ に なっちゃった」
「それから オトコ は どうしたい」
「オオモリ に つく マエ に もう イッペン ネン を おして いった わ、 シロキヤ の マエ に こなかったら、 タダ じゃ おかない と、 ショウセン に はりこんで いる から そう おもえ と いった わ、 アタイ、 ゲシャ する と バス の テイリュウジョウ まで はしった わ、 ウシロ むく と つかまえられる と おもって がたがた はしった」
「ヒト も あろう に ボク の ウチ の モノ にも、 そんな オトコ の テ が のびる なんて、 あきれた もん だ。 まだ こわい かね」
「オジサマ に おはなし したら、 ぶるぶる が とれちゃった、 アタイ、 そんな に うきうき して みえる かしら、 それ が キ に なる のよ」
「キミ の ショウジョ-くさい ところ を ねらった の だろう が、 この ネライ は、 ネライソコネ なん だね、 キミ なんか の よう に ショウジョ-くさい の は なかなか テ に のりそう で、 いざ と なる と、 ぴょんと はねあがって しまって クタビレモウケ さ」
「アタイ、 もう マルビル なんか に いかない わ、 もう こりごり よ、 けど、 オジサマ の カオ みて いる と、 だんだん こわい の が はがれて いく わ。 よっぽど、 オジサマ の ナマエ を いって ゴヨウ が あったら、 オウチ に きて ちょうだい と いおう か と かんがえた けど、 オナマエ を だす の が わるい と おもって やめといた わ」
「ナマエ なんか だす の は よしなさい、 いわない の が、 リコウ なん だ」
「じゃ、 アタイ、 リコウ だった わね」
「シゼン に ふせぐ テ を キミ は しって いて、 それ を ジブン で かんがえない で やって いた こと は、 やはり ミ を まもる こと を しって いた わけ なん だ」
「オジサマ、」
「ナニ」
「アタイ、 オナカ が キュウ に すいちゃった。 オチャ 1 パイ のまない で いた ん です もの」
「では フ でも おあがり」
「アタイ、 フ なんか ぐにゃぐにゃ して いや、 しおからい、 ワカサギ の カラボシ が つっつきたい ん です もの、 くたびれちゃった」
「じゃ カラボシ を おたべ」
「あ、 おいしい、 オジサマ、 イドミズ を くんで きて ちょうだい、 やわらかい ミズ に じっと、 しばらく、 かがみこんで みたい わ」
「よしよし、 ほら おいしい イドミズ だよ」
「モ も すこし いれて よ、 ふるい の は すてちゃって、 ごわごわ した イキ の いい の が いい わ。 あ、 わすれて いた。 どう、 この ハ は リッパ でしょう」
「あって も なくて も いい のに、 オシャレ だね、 キミ は、」
「だって バン には しくしく と いつまでも うずいて、 どうにも テ が つけられない ん です もの、 オジサマ が そんな に レイタン な こと おっしゃる と、 ばけて でる わよ」
「キンギョ が ばけられる もの かい」
「アタイ ね、 ときどき ね、 しんだら、 も イチド ばけて も いい から おあい したい わ、 どんな オカオ を して いらっしゃる か みたい ん です もの。 アタイタチ の イノチ って みじかい でしょう、 だから ばけられたら、 いつか ばけて でて みたい と おもう わよ」
「まだまだ しなない よ。 ナツ は ながい し アキ も ゆっくり だ もの、 フユ は こわい けれど」
「フユ は こわい わね、 カラダ の イロ が うすく なっちまう し、 オジサマ は オニワ に でなく なる し、 ねえ、 フユ ん なったら オヘヤ に いれて ね」
「いれて ダイジ に して やる よ、 あたたかい ヒナタ に ね。 そして ワカサギ の カラボシ を やる よ」
「カガミ の ついた ハコイリ の エサ も ね、 こまかく テイネイ に カナヅチ で くだいて、」
「ドブガワ の ミジンコ、 ミミズ も さがして あるく よ、 キミ は あれ が すき だ から」
「あ、 うれしい。 オジサマ は、 いつも、 シンセツ だ から すき だわ、 よわっちゃった、 また すき に なっちゃった、 アタイ って ダレ でも すぐ すき に なる ん だ もん、 すき に ならない よう に キ を つけて いながら、 ほんの ちょっと の アイダ に すき に なる ん だ もの。 このあいだ ね、 アタイ の オトモダチ が オトコ の ヒト に、 イチニチジュウ オテガミ を かいて いた わ、 ヒト が すき に なる と いう こと は たのしい こと の ナカ でも、 いっとう たのしい こと で ございます。 ヒト が ヒト を すき に なる こと ほど、 うれしい と いう コトバ が つきとめられる こと が ございません、 すき と いう トビラ を ナンマイ ひらいて いって も、 それ は すき で つくりあげられて いる、 オウチ の よう な もの なん です、 と、 その カタ の ブンショウ が うまくて、 アト の ほう で シメククリ を こんな ふう に つけて ありました。 ワタクシ リョコウサキ で オカシ を たくさん かって、 それ を リョカン に もって かえって ながめて いる と、 ダレ が サイショ に オカシ を つくる こと を かんがえた の でしょう と、 そんな バカ みたい な こと も かいて ございました」
「キミ は イクツ に なる」
「アタイ、 うまれて 3 ネン たって いる の、 だから、 こんな に カラダ が おおきい の」
「ニンゲン で いう と ハタチ くらい かな、 アタマ なぞ がっちり して いる ね」
「ええ。 でも、 オジサマ、 ヒト を すく と いう こと は たのしい こと で ございます と いう コトバ は、 とても ハデ だ けれど、 ホンモノ の ウツクシサ で うざうざ して いる わね」
「それ イジョウ の コトバ は まず みつからない ね、 オンナ の ヒト の コトバ と して は ショウジキ-すぎて いる くらい で、 ダレ でも そう は かけない もの が ある ね、 ダイタン な ヒョウゲン で しかも きわめて フツウ な ところ が いい ね、 どんな ヒト なの」
「あって みたい の」
「きれい な ヒト か どう か、 それ が キガカリ なの さ」
「それ は それ は きれい な ヒト よ。 セイ は ひくい けど」
「ナニ を して いる ヒト なん だ」
「ある ザッシ の ヘンシュウ を して いる カタ、 カイドウ フジン と いう ナマエ が ついて いる カタ なの」
「その テガミ を もらった アイテ は ダレ」
「カブキ ハイユウ だった の だ けれど、 イマ は、 たまに しか でない ナ の ある ハイユウ なの ね、 オジサマ は きっと ナマエ を いえば オワカリ でしょう けど、 アタイ、 オトモダチ から クチドメ されて いる から、 いえない わ。 けど ね、 ヒト を すく と いう こと は たのしい こと で ございます と いう の は、 とても、 たまらない よい コトバ ね、 ヒト を すく と いう こと は、 オジサマ、 いって ゴラン あそばせ」
「いや だよ、 いい トシ を して さ」
「ね、 イッペン こっきり で いい から いって みて ちょうだい、 オトコ の ヒト の クチ から それ を きいて みたい ん だ もの、 ヒト を すく と いう こと は たのしい こと で ございます、……」
「ヒト を すく と いう こと は、……」
「たのしい こと で ございます、 と、 イキ を いれず に ヒトイキ に おっしゃる のよ、 オジサマ ったら、 はがゆくて じれったい わよ、 ヒト を すく と いう こと は たのしい こと で ございます と いう のよ」
「ヒト を すく と いう こと は、……」
「また どもった わね、 ずっと イッキ に つづける ん だ と いって いる じゃ ない の」
「ヒト を すく と いう こと は、……」
「すぐ、 アト を いいつづける のよ。 わからない カタ ね」
「ボク には とても いえない、 カンニン して くれ」
「なんて トシヨリ の くせ に ハニカミヤ だろう、 もう いわなくて も いい わよ」
「おこった ね、 じゃ いう よ、 ヒト を すく と いう こと は ニンゲン の もつ いっとう すぐれた カンジョウ で ございます」
「ちがう わね、 カッテ に コトバ を つくって は ダメ じゃ ない の、 ヒト を すく と いう こと は、 ほら、 はやく さ」
「ヒト を すく と いう こと は、……」
「なんて じれったい オジサマ でしょう、 それ で ショウセツカ だの なんの って おかしい わよ、 アタイ の コトバ の おわらない マエ に つづける のよ、 ヒト を すく と いう こと は、 なの よ、 あら、 だまっちゃった」
「…………」
「いわない の、 はやく さ」
「ボク は ダメ だ、 キミ ヒトリ で そこ で ナンド でも いって くれ、 ボク は ばかばかしく なる ばかり だ」
「ワカサ が ない のね」
「なにも ない よ、 スッカラカン だよ、 すき でも クチ には いえない コトバ と いう もの が ある もん だ」
「アタイ ね、 オジサマ みたい な オトシヨリ きらい に なっちゃった、 いくら いって も テンポ が のろくて、 じれじれ して かみつきたい くらい だわ」
「キンギョ に かみつかれたって いたか ない よ、 いくらでも かみつく が いい よ」
「あんな こと を いって いる、 アタイ だって イッショウ ケンメイ に かみついたら、 オジサマ の やせた ホオ の ニク なんか、 かみとる わよ」
「こわい ね、 おおきな メ を して」
「オジサマ と あそんで やらなかったら こまる でしょう。 よんだって ヘンジ しない から ね」
「おこるな、 あやまる、 キミ が あそんで くれなかったら、 ダレ と あそんだら いい ん だ」
「じゃ、 サッキ の こと を もう イッペン くりかえして いう のよ、 ね、 いい こと、 ヒト を すく と いう こと は、……」
「ヒト を すく と いう こと は たのしい もの です」

「オジサマ、 はやく おきて」
「すぐ おきる よ、 イシ が ついた らしい ね」
「どんどん ついて いる わよ、 オモテ に でて みて おどろいちゃった。 ミチバタ は とおれない くらい つみあげて いった わ」
「まだまだ はこんで くる よ、 そう だな、 キョウ いっぱい ウンパン は かかる ね」
「あんな に イシ を おかい に なって、 ナニ を なさる おつもり なの」
「あれ で イシ の ヘイ を つくる ん だよ、 イシ の ヘイ は もえない から ね」
「コノアイダ の カジ で おこり に なった のね、 あん とき、 アタイ くらい ある おおきい ヒノコ が どんどん ふって きた わね、 アタイ、 ミズ の ソコ から みて いる と、 しゅっと ミズ に おちた ヒノコ で、 アタイ の いる ところ の ミズ まで あつく なっちゃった。 オジサマ が こなかったら ミズ が あつく わいて しまって、 しんで いた かも しれない わ」
「ひらったく なって ミナソコ で ふるえて いた ね、 メ だけ おおきく あけて、」
「でも よんだら きて くだすって、 たすかった わ、 アタイ、 あれ から ずっと メ が やけた よう に ヘン に なって いる のよ」
「まるで 2 ヒキ ずつ かさなって ふくれて みえた ほど だ、 キンギョ に カジ と きたら、 それ イジョウ の あかい イロ ない ね、 だから あの バン から オジサン は かんがえつづけた のさ」
「イシ の ヘイ を おつくり に なる こと でしょう」
「イマ まで の タケ の ゴマホ だ と マッチ 1 ポン で、 ヒ が イチメン に ひろがる から ね、 まるで イエ の シュウイ に もえやすい タキツケ を おいて いた よう な もの なん だ」
「カジ が あったら オバサマ の アシ が たたない から、 なかなか にげだせない し、 アタイ は ちいちゃい から オテツダイ が できない もん、 その マエ に アタイ なんか あぶられて しんじまって いる かも しれない わ、 オジサマ は どうして オバサマ を しょいだす おつもり なの」
「そこで ヘイ は イシ に つくりかえる こと に かんがえついた ん だ。 オジサン が しんだ アト に カキネ を ゆいかえす ヒツヨウ も ない し ね、 ゴマホ の カキネ って オカネ が かかる ん だ、 ムスコ や ムスメ が いて も ミンナ オカネ が とれない から、 カキネ を やりかえる こと も、 1 ネン オクレ に なり 5 ネン 8 ネン と おくれて ボロヤ に ボロ の カキネ に なって しまう、 キミ は オジサン の ダイジ な トモダチ だ けれど、 それ は タダ の キンギョ と いう ぴかぴか の オサカナ に すぎない し ね」
「なんの ヤク にも たたない わね、 ただ、 オジサマ の セイシンテキ な パトロン みたい には なって いる けど、 イッショ に ねる こと も できない わね」
「ナマイキ な こと は、 ダレ より も ナマイキ だし、……」
「オジサマ、 はやく おきて よ」
「イマ すぐ」
「オジサマ、 あれ なんて イシ なの、 まぶしい くらい しろっぽくて、 かさかさ して メ に いたい の」
「あれ は オオヤイシ と いう イシ なの、 あれ で イエ の マワリ を ぐるっと かこんで、 カジ が あって も イマ まで の よう に もえる シンパイ が ない だろう。 7 ダン くらい つみあげれば ね」
「まるで オシロ みたい に なる わね、 キ が ついて よかった わ」
「とうに キ が ついて いた けれど、 オジサン には、 そんな オカネ が イマ まで に なかった の だよ」
「じゃ、 イマ ある の」
「コノゴロ の オジサン は ね、 やっと イシベイ くらい つくれる よう に なった。 ニンゲン は イッショウ かかって いながら、 カキネ も ゆえない とき が つづいた わけ だね」
「オジサマ は なんでも イッショウ かかって なさる こと は して いる わね、 オニワ、 ヤキモノ、 オシゴト、 みんな オクテ なの ね」
「ナマイキ いうな」
「オジサマ、 いろいろ オモノイリ ばかり つづく けれど、 アタイ、 オネガイ が ヒトツ ございます けれど、 とうから かんがえて いた ん だ けれど、 コンド は ついでに つくって いただきたい ん です」
「どういう タノミ か、 いって ごらん」
「アタイ の オウチ も ついでに つくって ほしい の、 あの イシ で マワリ を かこうて ひろびろ と した オイケ みたい に して いただいて、 マンナカ に りゅうと した フンスイ を しかけて、 フキミズ が したした と イチニチ、 ヤマアイ の タキ の よう に しぶく オウチ が ほしい ん です、 その ナカ で アタイ、 オジサマ に オウギ の クジャク の よう に およいで おみせ する こと も できる し、 オジサマ の すき な オオグチ を あけて うたう こと も できる わ」
「だんだん ゼイタク に なって くる ね、 つくって あげる よ、 その つもり で くろい イシ も たくさん かって おいた ん だ」
「あ、 うれしい、 アタイ、 しろい イシ ばかり か と おもって うちうち フフク だった けれど、 くろい イシ も おかい に なって いた の、 とても うれしい わ、 だから オジサマ は キ が きいて いて すき だ と いう のよ、 オ の ところ に おさわり に なって も いい わ、 くすぐったく ない よう、 そよろ そよろ と おさわり に なる のよ。 オジサマ、 オ に のめのめ の もの が ある でしょう、 あれ を おなめ に なる と、 あんまり あまく は ない けど、 とても おいしい わよ、 しごいて おとり に なって も いい わよ」
「そんな こと したら、 キミ は およげなく なる じゃ ない か」
「すぐ つくれる もの、 いくらでも ツギ から のめのめ の アブラ が わいて でて くる わ。 アタイ、 あの のめのめ の たくさん わいて いる ヒ が いっとう うれしい ヒ なの よ、 こう いって いる マ に ぐんぐん わいて くる わ」
「オ の ツケネ が ひかりだした ね、 ちょいと シツレイ だ けれど、 おたずね します がね、 おこりだしたら いけない よ」
「ナアニ、」
「いったい キンギョ の オシリ って どこ に ある の かね」
「ある わよ、 ツケネ から ちょっと ウエ の ほう なの よ」
「ちっとも うつくしく ない じゃ ない か、 すぼっと して いる だけ だね」
「キンギョ は オナカ が ハデ だ から、 オシリ の カワリ に なる のよ」
「そう かい、 ニンゲン では いっとう オシリ と いう もの が うつくしい ん だよ、 オシリ に ユウバエ が あたって それ が だんだん に きえて ゆく ケシキ なんて、 とても セカイジュウ を さがして みて も、 そんな おとなしい フメツ の ケシキ は ない な、 ヒト は その ため に ヒト も ころす し ジサツ も する ん だ が、 まったく オシリ の ウエ には、 いつだって イキモノ は 1 ピキ も いない し、 クサ 1 ポン だって はえて いない オダヤカサ だ から ね、 ボク の トモダチ が ね、 あの オシリ の ウエ で クビ を くくりたい と いう ヤツ が いた が、 まったく シニバショ では ああいう つるつるてん の、 ゴクラク みたい な ところ は ない ね」
「オジサマ、 おおきな コエ で そんな こと おっしゃって はずかしく なる じゃ ない の、 オジサマ なぞ は、 オシリ の こと なぞ イッショウ みて いて も、 みて いない フリ して いらっしゃる もの よ、 たとえ ヒト が オシリ の こと を おっしゃって も、 ヨコ むいて しらん カオ を して いて こそ シンシ なの よ」
「そう は ゆかん よ、 ユウバエ は しぬ まで かがやかしい から ね、 それ が オシリ に あたって いたら、 ゴンゴ に ぜっする ウツクシサ だ から ね」
「オバカサン、 そんな こと ヘイキ で おっしゃる なら、 アタイ、 もう あそんで あげない わよ。 ニンゲン も キンギョ も いつも きちんと した コトバ を クチ に す べき だわ。 オシリ って ジブン で みられない よう に、 ウシロガワ に ついて いて、 ニンゲン の ナカ でも イッショウ ジブン の オシリ を みない で しぬ ヒト さえ ある のに、 オジサマ ったら その ヒミツ が わからない の、 どんな エイガ だって オシリ だけ は うつさない わよ」
「このあいだ 『トノガタ ごめん あそばせ』 って エイガ で、 ブリジット バルドー が オシリ を みせる ところ が あった よ。 かわいい オシリ だった、 もっとも、 はなはだ シュンカンテキ の もの では あった がね」
「オジサマ、 いや な ところ ばかり みて いらっしゃる のね、 アタイ、 オジサマ と あそぶ の が また いや に なっちゃった」
「ニンゲン でも キンギョ でも クダモノ でも、 まるい と いう ところ が すべて いっとう うつくしい ん だよ、 トオ くらい の オンナ の コ が オシッコ を して いる の を ソト で みかける と、 びっくり して いくら オジサマ でも カオ を そむけたく なる ね、 ジブン と いう もの を しらない で して いる こと が、 それ を ゼンブ しって いる ガワ から みる と、 ジュンケツ イゼン の ヤバン な カンジョウ で ジブン ジシン で どやしつけられる ん だ。 それ が あまり に フイ に みなければ ならない ジョウタイ に おかれた ジブン を せめたい キブン だね、 こまる ね、 そんな とき は ね」
「アタイ ね、 オジサマ が コドモ の オシッコ して いる の を みて さえ、 ジブン の どこ か に ひびかして かんがえよう と する の は、 フコウ だ と おもう わ、 ダレ も そこ まで カンガエ を つきこんで いる ヒト いない わよ」
「そう かな、 いやらしい こと くらい ハンセイ を うながして くる もの が ない はず だ が、 ニンゲン の コドモ の する こと なぞ、 イッペン に オジサマ を やっつけて くる ん だ。 いわば フコウ かも しれない ね、 この フコウ を フコウ に かんじない ニンゲン に、 たまたま ハレンチ な ハンザイ が うまれて くる ん だね、 イマ まで に その ため に ナンジュウニン か の ショウジョ が ころされた か わからない ね。 オジサマ だって ジブン を こわい ところ に たたせて みて、 どれ だけ の ブンリョウ で ジブン に イヤラシサ が ある か を しらべて いる ん だ が、 いつも おそろしい ケッカ が ヘビ の よう に クビ を あげて くる ね、 サイバンカン と いう ヒトタチ は どれだけ タニン を しらべて いながら、 ハンザイシャ から おしえられ また すくわれて いる か わからない ね。 だから ニンゲン は ジブン に あたえられた オシリ ばかり を みつめくらして い さえ すれば、 ホカ に クジョウ が おこらない ん だ。 タイガイ の ニンゲン は そうして いる ん だよ」
「オジサマ は? オジサマ だって まだ オシリ が みたい ん でしょう」
「そりゃ みたい さ。 しかし モンダイ が ユウバエ の ケシキ から はずした オシリ の こと に なる と、 だんだん コエ が ひくく なる し おおっぴら には いえなく なる ね、 オジサン の わずか ばかり うけた キョウイク が そう させて くる ん だね、 ニンゲン に ショモツ とか キョウヨウ が あたえられた こと は、 ボク ヒトリ に とって も タイヘン な カンシャ に あたいする わけ だね」
「オジサマ は そんな に ながい アイダ いきて いらっして、 ナニ いっとう こわかった の、 イッショウ もてあました こと は ナン なの」
「ボク ジシン の セイヨク の こと だね、 こいつ の ため には じつに こまりぬいた、 こいつ の つきまとうた ところ では、 ツキ も ヤマ の ケシキ も なかった ね、 ニンゲン の ウツクシサ ばかり が メ に はいって きて、 それ と ジブン と が つねに ムカンケイ だった こと に、 いよいよ うつくしい もの と はなれる こと が できなかった ね、 やれる だけ は やって みた が ダメ だった、 なにも もらえなかった、 もらった もの は うつくしい もの と ムカンケイ で あった と いう こと だった、 それ が オジサン に タアイ の ない ショウセツルイ を かかせた の だ、 ショウセツ の ナカ で オジサン は タクサン の アイジン を もち、 タクサン の ヒト を フコウ にも して みた」
「オジサマ、 いい カンガエ が うかんだ のよ、 オジサン と アタイ の こと を ね、 コイビト ドウシ に して みたら どう かしら、 おかしい かしら、 ダレ も みて いない し ダレ も かんがえ も しない こと だ もの」
「そういう バアイ も ある だろう ね、 コジキ の よう に いきて ゆく ヒト は、 イヌ や ネコ と ショウガイ を おくる こと も ある から な、 イヌ や ネコ は ねて いる と おんなくさく なって ゆく けれど、 キンギョ とは ねる こと が できない し キス も でき は しない、 ただ、 キミ の コトバ を ボク が つくる こと に よって キミ を ニンゲンナミ に あつかえる だけ だ が、 まあ それでも いい ね、 キミ と コイナカ に なって も いい や、 ボク には うつくしすぎた スギモノ かも しれない けれど、 ヒトミ は おおきい し オナカ だけ は デブ ちゃん だ けれど ね」
「アタイ ね、 オジサマ の オナカ の ウエ を ちょろちょろ およいで いって あげる し、 アンヨ の フトモモ の ウエ にも のって あげて も いい わ、 オセナカ から のぼって カミ の ナカ に もぐりこんで、 カオ にも およいで いって、 オクチ の ところ に しばらく とまって いて も いい のよ、 そしたら オジサマ、 キス が できる じゃ ない の、 アタイ、 おおきい メ を いっぱい に ひらいて クチビル を うんと ひらく わ、 アタイ の クチビル は おおきい し、 ノメノメ が ある し、 チカラ も ある わよ」
「シマイ に あやまって キミ を のみこんで しまったら どう なる、 それ が イチダイ ジケン だ」
「そしたら オナカ の ナカ を ヒトマワリ して、 また ウワクチビル の ウエ に もどって でて くる わよ、 キンギョ です もの、 ネバリケ の ある ところ では、 アタイ の カラダ は どんな に ちいさく も ノビチヂミ する こと が できる し、 はやく およぐ こと も できる のよ。 どう、 オナカ の ウエ を およいで あげたら、 オジサマ は くすぐったく なり うれしく なる でしょう」
「そう ね おもしろい だろう ね、 けど、 くすぐったくて かなわない だろう、 ぴちぴち はねられたら?」
「そっと して あげる わ、 シンチョウ に」
「なにぶん、 よろしく たのむ よ」
「では コイビト に なる わね」
「なんて よんだら いい ん だ、 ナマエ から つけなきゃ」
「あかい イ の ナカ の アカゴ、 アカイ アカコ って の は どう」
「いい ね、 アカコ、 アカイ アカコ と いう の は ちょっと かわって いて、 よびいい ね。 では そう よぶ こと に しよう」
「それから ね、 いろいろ モノ を かって いただかなくちゃ、 アタイ、 なにひとつ もって いない ん です もの、 ネックレス だの、 トケイ だの、 トケイ は キンイロ を した ぴかぴか した の ね、 それから ユビワ も いる けど クツ だの ヨウフク だの、……」
「キミ が そんな もの を きたり はめたり したら、 オバケ みたい じゃ ない か」
「オバケ でも なんでも いい わよ、 かって いただける の」
「かう よ、 オジサン の カイモノ を ヒカエメ に すれば、 なんでも かえる」
「も ヒトツ カンジン な こと は マイツキ コヅカイ どれ くらい もらえる の、 それ を きめて かからなきゃ、 それ が いっとう カンジン な こと だ と おもう わ」
「そう だな、 1000 エン も あれば いい ん じゃ ない か」
「1000 エン ぽっち で ナニ が かえる と おおもい に なる の、 どんな に すくなく とも 5 マン エン いただかなくちゃ くらせない わよ」
「5 マン エン と いう カネ は オジサン の ショウセツ ヒトツ かいた オカネ の タカ だよ、 それだけ マイツキ キミ に あげたら オジサン こそ、 どう くらして いい か わからない、 まあ せいぜい 1 マン エン くらい だよ、 それ で すくなかったら コイビト は ヤメ だ」
「こまる わ、 1 マン エン じゃ。 じゃ ね、 クリーム だの クチベニ の オカネ は ときどき ベツ の ザッピ と して だして いただけます?」
「それ は ズイジ に だす こと に する よ、 ゲンキン では 1 マン エン イジョウ は とても だせない よ、 キンギョ の くせ に カネ とって どう する つもり なの」
「じゃ 1 マン エン で いい わ、 ふふ、 1 マン エン の コイビト ね、 アタイ、 はたらく こと に する わ、 エンニチ の キンギョダライ に でて ゆく わ」
「そして どう する」
「かって いった ヒト の ウチ から、 バンガタ には オジサマ の ウチ に すぐ にげて もどる わ、 アタイ は 1 ピキ で 300 エン が カケネ の ない オネダン だ から、 にげだして は また ベツ の キンギョヤ に うられて、 また オジサマ の ところ に もどって くる わ」
「みつかったら どう する、 ころされる ぜ」
「ニンゲン って ケチ だ から 300 エン も する キンギョ は けっして ころし は しない わよ、 それに、 ミナサン は キンギョ だけ は どんな ザンコクヤ さん でも、 ころす もん です か、 キンギョ は ショウガイ かわいがられる こと しか、 ミナサン から もらって ない もの、 キンギョ を みて おこる ヒト も また にくむ ヒト も いない わ、 キンギョ は あいされて いる だけ なの よ、 オジサマ も、 それ だけ は アタマ に いれて おいて アタイ を いじめたり、 おこらせたり しちゃ ダメ よ」
「わかった、 キミ は えらい キンギョ だ、 ショウフ で ある が シンリ ガクシャ でも ある キンギョ だ」
「ムカシ、 シナ の コウテイ が オイケ で キンギョ の イショウ を つけた オンナ たち を およがせた こと が ある の、 それ イライ キンギョ は ギジンホウ を ならう こと が できた し、 ミズ の ナカ で ウンコ を する こと も おぼえた の」
「じゃ ナニ かい、 その オイケ で ダレ か が ウンコ を もらした オンナ が いた の」
「そう らしい わ、 キンギョ トウシ に でて いる わ、 シナ から およいで きた と いう の は デタラメ だ わね。 きっと ショウニン たち が もうける ため に オフネ で もって きた のよ、 オジサマ、 もう、 そろそろ ねましょう よ、 コンヤ は アタイ の ショヤ だ から ダイジ に して ちょうだい」
「ダイジ に して あげる よ、 オジサン も ニンゲン の オンナ たち が もう アイテ に して くれない ので、 とうとう キンギョ と ねる こと に なった が、 おもえば はかない ヨノナカ に かわった もの だ、 トシ を とる と いう こと は ケンソン な こと おびただしい ね、 ここ へ おいで、 カミ を といて あげよう」
「これ は うつくしい モウフ ね」
「タータン チェック で イギリス の ヘイタイ さん の スカート なん だよ、 キミ に もってこい の モヨウ だね」
「これ ちょうだい、」
「ナン に する の、 あつぼったくて きられ は しない じゃ ない か」
「だいじょうぶ、 スカート に いたします、 まあ、 なぜ おわらい に なる の」
「だって キミ が スカート を はいたら、 どう なる、」
「みて いらっしゃい、 ちゃんと つくって おみせ する から。 どう、 アタイ、 つめたい カラダ を して いる でしょう。 ほら、 ここ が オナカ なの よ」
「お、 つめたい」
「ムカシ ね、 オジサマ、」
「また シン の シコウ が おおきな コイ と ねて カゼ を ひいた と いう ハナシ でしょう、 それ なら ナンベン も きいた よ、 それ で なきゃ トウ の ヒメ たち が 1 ピキ ずつ キンギョ を クチ に ふくんで、 コウテイ の オンザ を かざった と いう ハナシ だろう、 うまい こと を かんがえついた もの だね。 キンギョ を くわえて シコウ する なんて ね」
「ムカシムカシ ね、 オジサマ」
「ふむ」
「アタイタチ の メ が あんまり うごかない ので、 マバタキ を して ヒョウジョウ を タヨウ に する ため の メ の オイシャ サマ が いた のよ、 イマ の メ を おおきく する ビョウイン みたい な ところ なの よ、 その メイシャ が たいへん はやっちゃって、 ミンナ、 メ の チリョウ に いった けれど、 アト で よく キ が つく と、 メンタマ が ひっくりかえった だけ で いぜん と して、 キンギョ の メ は またたく こと が できない で、 じっと して いる じゃ ない の」
「キンギョ の メ は いやに うごかない メ だな」
「だから コウリン ヒトミ と きそい、 ドウコウ ヒト これ を みず と いう かなしい シ が ある くらい だわ、 オジサマ、 そんな に オッポ を いじくっちゃ ダメ、 いたい わよ、 オッポ は ね、 ネモト の ほう から サキ の ほう に むけて、 そっと なでおろす よう に しない と、 よわい オウギ だ から すぐ さける わよ、 そう、 そんな ふう に ミズ の さわる よう に なでる の、 なんとも いえない サワリグアイ でしょう、 セカイジュウ に こんな ユメ みたい な もの ない でしょう」
「まず ゼツム と いって いい ね、 ニンゲン なら シタ と いう ところ だ」
「アト で オナカ の ソウジ も して あげる わ」
「どこ に いく の、 じっと して いたまえ、」
「セナカ の ヨウス を みて から、 ムネ の ウエ に のぼって と、 まるで オヤマ が つづいて いる みたい ね。 ニンゲン ヒトリ を つかまえて しらべて みる と、 とても、 おおきい クジラ みたい な もの だ わね」
「ねたまえ、 オシャベリ は イイカゲン に して ねたまえ」
「ええ。 オジサマ は アシタ は ナニ を なさる おつもり」
「アシタ は ね、 イシ の ヘイ を つくる ん だ、 ショクニン-シュウ の くる マエ に おきて、 サシズ を したり カタチ を きめなければ ならない んで いそがしい ん だよ」
「アタイ、 どうして いたら いい の」
「アタイ は ヒトリ で あそんで いたら いい ん だ。 メダカ を のみこんだり はきだしたり して いれば いい よ」
「オジサマ は あそんで くれない の、 つまんない な」
「キミ と あそんで ばかり いられない よ、 その ホカ に シゴト も ある ん だ」
「また ショウセツ でしょう、 アタイ の こと なぞ かいちゃ いや よ、 かく ヒト と かかれる ヒト の チガイ は、 タイヘン な チガイ だ から かかないで よ、」
「ところが ね、 オジサン は コノアイダ から キンギョ は なぜ あんな みじかい ショウガイ を いきなければ ならない か と、 そんな こと を しじゅう、 かんがえつづけて いる ん だ、 たとえば メダカ は ニンゲン に したしまない が、 キンギョ は アシオト が する と、 すぐ あつまって くる、 そこ に メダカ と キンギョ の エンキン が ジンルイ と むすびついて くる」
「つまんない こと を おっしゃる わね、 それ より、 こっち を むいて ちょうだい、 コトワザ に いわく サッカ おいて ヒキョウ に おちいる と いう こと が ある が、 オジサマ も その ブルイ ね、 カクゴ は して いた、 なんて おっしゃる けど、 こう みる と すでに フツウ の ヒト の 100 サイ の ネンレイ に アシ を ふみいれて いる わね、 アシ は がさがさ して シカ の アシ の ごとく、 オセナカ は やっと はって いる だけ ね、 とおい とおい 100 サイ が もう やって きて いる わね、 70 サイ で もう 100 サイ の ヒト、 ある だけ を かき、 ある だけ を たたきうった ココロ の ボロ を さげて いる カカト の やぶれた ヒト、 そんな ヒト が さ、 アタイ の よう な わかい の と イッショ に ねる の は、 100 サイ に して コイ を えた と ほこりがましく おっしゃって も、 いい くらい よ、 アタイ は もう キンギョ じゃ ない わね、 1 マイ の シブガミ ドウヨウ の オジサマ だって いきて いらっしゃる ん だ もの、 いったい どこ に イノチ が ある のよ、 イノチ の ある ところ を おしえて いただきたい わ」
「オジサン は オジサン を かんがえて みて も、 イノチ を しる の に リクツ を かんじて ダメ だ が、 キンギョ を みて いる と かえって イノチ の ジョウタイ が わかる。 ひねりつぶせば ワケ も ない イノチ の アワレサ を おぼえる が、 オジサン ジシン の イノチ を さぐる とき には、 ダイロンブン を かかなければ ならない メンドウサ が ある」
「ロンブン なんて いや ね。 そして アタイ が フ を たべて いる とき に、 イノチ を かんじる と おっしゃりたい ん でしょう。 アタイ の いきて いる こと は、 オジサマ を こまらせて いる とき ばかり だ」
「スーツ を かえ クツ を かえ と いう とき か」
「その ホカ にも ある。 おいおい わかって くる わ。 シマイ に オジサマ は アタイ を うるさがって、 どこ か に すて に いき や しない か と おもう こと が ある わ。 で なきゃ ころして しまう か の フタツ だわ」
「キミ が キギ の アイダ を およぎまわり オジサン に ついて いる アイダ、 オジサン は キミ を ダイジ に して いる ん だ、 キミ は どこ に でも かくす こと が できる し ジャマ には ならない」
「オジサマ、 いつ アタイ が キ の アイダ に およいで いる の を ゴラン に なった の、」
「あかるい ヒ の ナカ の コズエ に ナン だろう と みて いる と、 キミ の およいで いる スガタ が みえて いた。 イケ を みる と キミ は いなかった の だ。 キミ は おそろしい キンギョ だ、 キ の アイダ を つたい、 キ の シタ に おりて いった が、 イマ でも ホントウ の こと だ とは おもえない くらい だ」
「アタイ だって あれ は ホントウ の こと に おもえない わ。 オジサマ、 あおむいて ねて よ、 アタイ、 オナカ の ウエ だ と、 とても おはなしよい のよ」
「オジサン の ほう から は、 カオ が よく みえない じゃ ない か」
「これ で いい?」
「あ、 それ で いい、 だいぶ、 カラダ が あたたまって きた ね、 オナカ が ふにゃふにゃ して きた じゃ ない か」
「オナカ が すいて きた のよ、 オミズ と エサ と を もって きて ちょうだい、 なんか おおきな ハチ の よう な もの に ミズ を いっぱい いれて きて ね、 ときどき、 ざんぶり と はいらない と いきぐるしい わ、 ついでに アゲ-タオル も ね、 はやく ね」
「はい、 はい」
「オジサマ は シンセツ ね、 おいしい オミズ ね、 レイゾウコ から とりだして きた の でしょう、 おう つめたい、 あ、 イロ が かわる くらい つめたい わね」
「はい、 ヒダラ」
「こまかく きざんで くだすった わ、 しょっぱくて いい キモチ、 オジサマ、 して」
「キス かい」
「アタイ の は つめたい けれど、 のめっと して いい でしょう、 なんの ニオイ が する か しって いらっしゃる。 ソラ と ミズ の ニオイ よ、 オジサマ、 もう イッペン して」
「キミ の クチ も ニンゲン の クチ も、 その オオキサ から は たいした チガイ は ない ね、 こりこり して いて ミョウ な キス だね」
「だから オジサマ も クチ を ちいさく すぼめて する のよ、 そう、 じっと して いて ね、 それ で いい わ、 では おやすみ なさいまし」

ミツ の アワレ 2

2020-07-07 | ムロウ サイセイ
 2、 オバサマ たち

「イシ の ウエ に コドモ たち が あつまって あそんで いる わよ、 あれ、 くずれたら、 シタジキ に なっちまう わ」
「そりゃ こまる ね、 そんな に たかく つみあげて いった の か」
「ウエ へ ウエ へ と つみあげた もん だ から、 いっとう ウエ の ほう から、 ジメン を みて いる と、 メマイ が して くる くらい たかい わ」
「キミ いって、 コドモ を おろして しまえ」
「ええ、 そう いって くる わ。 あの、 ミナサン、 その イシ の ウエ で あそんじゃ ダメ、 あぶない わよ、 くずれて シタ に なったら、 しんじまう、 オリコウサン だ から ベツ の ところ に いって あそんで ちょうだい、 ほら、 ね、 キュウ には おりられない でしょう、 さあ、 アタイ が ダッコ して あげる から、 あっち に いって」
「ミナ、 いった か」
「いった わ、 アタイ の カオ を フシギ そう に みて いて、 あの ヒト ダレ だい、 あんな ヒト、 あの ウチ で みた こと が ない じゃ ない か、 と いって いた わ」
「キミ は ハデ な カオ を して いる から な」
「オジサマ、 また きた わよ、 こわい オトナリ の ジヌシ さん が きた わ、 きっと、 ハナレ が オトナリ の ジショ に ヤネ を つんだして いる の を、 コンド は なんとか しなきゃ ね」
「ハナレ を 1 シャク くらい、 がりがり けずりとる ん だね」
「コンド は イシ の ヘイ だ から、 フツウ の バアイ と ちがう わよ、 どう なさる」
「ダイク を よんで キョウカイ ぎりぎり に けずりとる ん だ。 で ない と サイバンザタ に なる し、 ホウリツ では ハバ 1 シャク の 15 ケン ブン の、 つまり その 30 ネン-カン の ジダイ も はらわなければ ならなく なる、 やはり ハナレ を こわす こと に なる ん だ」
「かわいそう な オジサマ ね、 でも、 やむ を えない わね」
「やむ を えない ね。 しかし カタガワ の デキバエ は、 なかなか いい じゃ ない か。 やっと コンド こそ ショウガイ の カキネ が できた わけ だ」
「オジサマ、 ここ へ いらっしゃい、 イシベイ の ウエ に こしかけて いる と、 ずっと マチ の かなた まで みえて きて、 いい キモチ だ わよ」
「たかき に のぼる と いう こと は、 いい ね。 イシベイ を つくって おいて よかった」
「アタイ ね、 オジサマ が オハナレ を おこわし に なる か、 そのまま つっぱねる か どう か と、 じっと みて いた わ」
「このまえ、 そう だな 5 ネン くらい マエ だ、 オトナリ の オジサン が きて ね、 アナタ も メイヨ の ある カタ だ から、 イマ すぐ とは もうしません が、 ヘイ を つくりかえる よう な こと が あったら、 ジショ は かえして ください と、 そう いわれて いた ん だ、 ジショ と いったって、 わずか 1 シャク に たりない ノキサキ だけ が オトナリ に とびだして いた ん だ がね、 そこで オトナリ では、 ゴジツ の ため に 1 マイ の カキツケ を くれ と いって ね、 オジサン は カキツケ を かいて わたして おいた ん だよ」
「どう、 おかき に なった」
「ヒツヨウ の ジキ には ハナレ を とりこわして も、 ジショ の デッパリ を ひっこめます と かいた ね」
「その ジキ が きて しまった のね、 コンド は イシ の ヘイ だ から ながい アイダ こわれない から、 ノキサキ を ひっこめた のね、 だから、 オハナレ の オトコノマ が まがっちゃった」
「だから すなお に こわして アマオチ も、 オトナリ に おちない よう に した ん だ」
「ジショ と いう もの は、 ユウウツ な サカイ を もって いる もの ね」
「ニンゲン は ムカシ から クニ と クニ の アイダ でも、 その ため に センソウ も して きた ん だし、 コジン の アイダ でも、 がみがみ かみあった もん だよ、 だから、 オジサン は ジショ と いう もの は、 ヒトツボ も もって いない、 この ウチ も シャクチ だし カルイザワ の ジショ も かりて いる」
「カルイザワ に イチド つれて いって よ、 キシャ の ナカ でも、 おとなしく して います から つれてって」
「ドビン に ミズ を いれて、 キミ を つれて いく か」
「エキエキ で ミズ を かえて くださらなきゃ ダメ。 ミズ が レッシャ で ユレドオシ だ から、 アタイ、 ふらふら に なっちゃって、 とても くたびれて しまう のよ」
「ヤマ の ミズ は キミ には どう か」
「ヤマ の ミズ に ひたる と、 アタイ の カラダ は もえあがって くる し、 ヒトミ は いっそう きらきら に なる わ。 アタイ、 オジサマ と マイニチ ヤマノボリ を する わ。 ね、 かんがえて も たのしい じゃ ない の。 サカナ は キ を こえ ヤマ に のぼる と、 ダレ か も いった じゃ ない? アタイ、 せいぜい うつくしい メ を して みせ、 オジサマ を とろり と させて あげる わ」
「キミ は ニンゲン に ばけられない か」
「マイニチ ばけて いる じゃ ない の、 これ より バケヨウ が ない じゃ ない の」
「もっと うつくしい オンナ に なって、 みせて ほしい ん だ」
「オジサマ は どうして、 そんな に ネンジュウ オンナ オンナ って、 オンナ が おすき なの」
「オンナ の きらい な オトコ なんて もの は、 セカイ に ヒトリ も い は しない よ、 オンナ が きらい だ と いう オトコ に あった こと が ない」
「だって オジサマ の よう な、 オトシ に なって も、 まだ、 そんな に オンナ が すき だ なんて いう の は、 すこし イジョウ じゃ ない かしら」
「ニンゲン は 70 に なって も、 いきて いる アイダ、 セイヨク も、 カンカク も ホウフ に ある もん なん だよ、 それ を ショウジキ に いいあらわす か、 かくして いる か の チガイ が ある だけ だ、 もっとも、 セイキ と いう もの は つかわない と、 シマイ には、 ツカイモノ に ならない ヒゲキ に でっくわす けれど、 だから いきたかったら、 つかわなければ ならない ん だ、 ナニ より それ が おそろしい ん だ、 オジサン も ね、 70 くらい の ジジイ を ショウネン の ジブン に みて いて、 あんな ヤツ、 もう ハンブン くたばって やがる と、 けとばして やりたい よう な キ に なって みて いた がね、 それ が さ、 70 に なって みる と ニンゲン の ミズミズシサ に いたって は、 まるで おどろいて ジブン を みなおす くらい に なって いる ん だ」
「セイキ なんて いや な こと、 ヘイキ で おっしゃる わね。 そんな こと は、 クチ に なさらない ほう が リッパ なの よ」
「シンゾウ も セイキ も おなじ くらい ダイジ なん だ。 なにも はずかしい こと なんか ない さ、 そりゃ、 オジサン だって セイキ と いう もの には、 こいつ が なくなって しまえば、 どんな に さわやか に なる かも しれない と、 ひそか に かんがえた こと も あった けれど ね、 やはり あった ほう が いい し、 ある こと は、 どこ か で ナニゴト か が おこなえる ノゾミ が ある と いう もん だ」
「そんな こと オオゴエ で おっしゃって は、 アタイ が あかく なって しまう じゃ ない の。 ニンゲン の タシナミ の ナカ でも、 いっとう つつしんで そっと して おく べき こと なの よ、 クチ に す べき こと じゃ ない わ」
「そりゃ そっと して おきたい ん だよ、 けれども イッペン くらい は 70 の ニンゲン だって 100 サイ の ニンゲン だって、 いきて みゃくうって いる こと を しりたい ん だよ」
「じゃ、 オジサマ は わかい ヒト と、 まだ ねて みたい の、 そういう キカイ が あったら なんでも なさいます?」
「する さ」
「あきれた」
「だから キミ と つきあって いる じゃ ない か。 オジサン が ボクシ や キョウイン の マネ を して いたら、 いきる こと に ソン を する。 そりゃ きれい に いきる ため にも、 したい こと は する ん だ。 キミ は イマ、 オジサン の フトモモ の ウエ に のって いる でしょう、 そして ときどき そっと ヨコ に なって ひかった オナカ を みせびらかして いる だろう、 それでいて ジブン で はずかしい と おもった こと が ない の」
「ちっとも はずかしい こと なんか、 ない わよ、 アタイ、 オジサマ が シンセツ に して くださる から、 あまえられる だけ あまえて みたい のよ、 ガンジツ の アサ の ギュウニュウ の よう に、 あまい の を あじわって いたい の」
「それ みたまえ、 チンピラ の キミ だって、 ジブン の つくった ところ に、 とろけよう と して いる ん じゃ ない か。 なにも わかり も しない キミ が、 こすりつけたり かみついたり して いて も、 それ で ちっとも はずかしい キ が しない の は、 キミ が ラク な こと を ラク に たのしんで いる から なん だ」
「あら、 そう なる かしら。 だったら、 はずかしく なる わね」
「コウフン して カラダジュウ ぴかぴか じゃ ない か。 これ で オジサン の サッキ から いった こと わかった だろう」
「わかった わ。 ごめん ね、 なんだか アタイ、 ふだん かんがえて いる こと かくして いた のね」
「ジッサイ に おこのうて いながら ね」
「ツジツマ が あわなかった わね」
「つまり トシ を とる と、 ホンモノ だけ に なって いきかえって いる ところ が ある ん だよ」
「だから わかい ヒト が いい の」
「こちら が ショウネン に なって いる から、 けっきょく、 わかい の が よく なる」
「けど ね、 オジイチャン が わかい ヒト を すく と いう の は、 ちょっと、 いやあ ね。 みぐるしい わ」
「ちっとも シュウアク じゃ ない、 アタリマエ の こと なん だ」
「だから、 アタイ の よう な わかい ん じゃ なくて は、 ダメ だ と いう の」
「キミ より わかい ヒト は いない ね、 たった 3 サイ だ から ね。 3 サイ の キミ が 70 サイ の オジサン と、 ウデ を くんで ヤマノボリ する なんて、 セカイ に フタツ と ない チンフウケイ だね。 キミ は キマリ の わるい オモイ を しない か」
「アタイ は ホントウ は、 オサカナ でしょう。 だから ちっとも はずかしく ない わ。 オジサマ は ホカ の カタ に おあい に なったら、 きっと オコマリ でしょう に」
「なるべく かくれて あるきたい な、 みつけられたって かまい は しない けど、 オジサン の いきる ツキヒ が アト に つまって たくさん ない ん だ もの、 だから セケン なんて かまって いられない ん だ。 わらおう と する ヤツ に わらって もらい、 ゆるして くれる モノ には ゆるして もらう だけ なん だよ。 キミ は きらい かも しれない けど、 その テン で じつに ずうずうしく オオデ を ふって あるける ん だよ、 セケン で テ を たたいて バカ アツカイ に したって ヘイキ な もん だ。 いきる の に ナニ を ミナサン に エンリョ する ヒツヨウ が ある もん か」
「オジサマ は とても ずぶとい こと ばかり、 はっと する こと を ぬけぬけ と おっしゃる。 そう か と おもう と、 アタイ の オシリ を ふいて くださる し……」
「だって キミ の ウンコ は ハンブン でて、 ハンブン オシリ に くっついて いて、 いつも くるしそう で みて いられない から、 ふいて やる ん だよ、 どう、 ラク に なった だろう」
「ええ、 ありがとう、 アタイ ね、 いつでも、 ヒケツ する クセ が ある のよ」
「ビジン と いう もの は、 たいがい、 ヒケツ する もの らしい ん だよ、 かたくて ね」
「あら、 じゃ、 ビジン で なかったら、 ヒケツ しない こと」
「しない ね、 ビジン は ウンコ まで ビジン だ から ね」
「では、 どんな、 ウンコ する の」
「かたい かんかん の それ は タマ みたい で、 けっして くずれて なんか いない やつ だ」
「くずれて いて は うつくしく ない わね、 なんだか わかって きた わよ」
「キメ の こまかい ヒト は ね、 イブクロ でも ナイゾウ の ナカ でも、 なんでも かんでも、 キメ が おなじ よう に こまかい ん だよ、 ウンコ も したがって そう なる ん だ」
「オジサマ、 うかがいます が、 アタイ ビジン なの、 どう なの おしえて」
「キミ は ビジン だ とも、 キミ の マワリ に いつも 10 ニン くらい の コドモ が、 うやうや して キミ を あきる こと も しらない で ながめて いる」
「どの コ も オカネ を もって いない で、 ながめて いる だけ ね。 かわいそう ね、 コドモ は オカネ を もって は いけない の」
「コドモ は ホカ の こと に オカネ を みんな つかって しまって、 サイゴ に キンギョヤ の マエ を とおって、 しまった、 あんな に オカネ は つかう ん じゃ なかった と、 かなしげ に キンギョ を ながめて いる だけ なん だよ。 いつも いつも そう なん だよ」
「わかった わ、 で、 ミンナ ヒカン して ぼうぜん と たって いる だけ なの ね。 キンギョ は かえない し、 みれば みる ほど うつくしい、 だから、 サッキ から 1 ジカン も たって ながめて いる、 ……オジサマ、 キンギョ を 1 ピキ ずつ でも いい から、 コドモ たち に かって あげて よ」
「うむ、 ほら、 オカネ だ、 キミ が かって ミンナ に わけて やる が いい」
「ありがとう。 コドモ の カオ ったら かなしそう で みて いられない わ。 あら、 あの キンギョヤ さん は、 じっと サッキ から フシギ そう に アタイ の カオ を みて いる、……」
「どこ か に ミオボエ が ある らしい ん だな」
「アタイ も あの カオ だけ は わすれる こと が できない わ。 マイニチ あの カオ ばかり みて いて、 そだって きた ん だ もん、 イマ アタイ、 オジサマ の ホッペ を ひっぱたいて も、 おこらないで よ」
「どうして そんな こと を する」
「アタイ が えらく なった ショウコ を、 キンギョヤ さん の メ に みせて やる のよ、 きっと おどろく でしょう」
「じゃ、 ひっぱたいて も いい よ」
「ごめん よ、 びっしり と ゆく わよ、 いたく ない こと、」
「ちっとも、」
「キンギョヤ さん たら あきれちゃって、 こっち を きょとん と した メ で みて、 クチ を あけた まんま コトバ も でない ふう ね」
「ホカ の モノ には オンナ に みえ、 キンギョヤ には キンギョ に みえる キミ が フシギ なん だろう」
「その キンギョ が オカネ を もって ね、 キンギョ を かい に いく と いう こと は うれしい オハナシ じゃ ない の、 ほら ね、 コドモ たち が ミンナ こっち を むいて、 キンギョ を すくいだしはじめた じゃ ない の。 ボウヤ、 おおきい の を あげる わよ、 オバチャン が オカネ はらう から、 シンパイ しない で、 どんどん、 すくいあげて いい のよ」
「オバチャン、 10 ニン も いる ん だぜ」
「ナンジュウニン いたって いい わよ、 オバチャン は、 キョウ は、 オカネ は うんと もって いる ん だ」
「そんなら、 ショウコ に オカネ を みせて よ、 オバチャン」
「これだけ みんな かって あげる わ。 ある だけ タライ の キンギョ を すくいだして もって おかえり に なる が いい わ。 ほしけりゃ キンギョヤ の オジイチャン も うって も いい わよ、 ふふ、 ……こんにちわ おひさしく、 オジイチャマ」
「おう、 3 サイ-ッコ、 あれ が オメエ の ダンナ かい、 うまく やった な、 ヨボヨボ は すぐ カタ が つく から、 しこたま もらっとく が いい ぜ」
「ナニ いってん の、 ダンナ じゃ なくて センセイ だわ、 しめころしたって しぬ カタ じゃ ない わよ、 シンゾウ には テツクズ が いっぱい つまって いらっしゃる から、 アンタ なんぞ の テ に おえ は しない」
「それ じゃ キカンシャ じゃ ねえ か」
「キュウシキ の キカンシャ な もん だ から、 シンリン でも ヤマ でも、 かみたおして はしって ゆく わよ」
「オメエ は いったい、 あの カタ の ナン なん だ、 わかった、 オメカケサン だな」
「アタイ、 あの カタ の これ なの よ、 オメカケサン なんか じゃ ない わ、 も イッペン、 ホッペ たたいて みせて あげる わ、 ね、 ちっとも、 おおこり に ならない でしょう、 アタイ の いう こと なんだって きいて くれる のよ、 いまに オイケ と ウロ を つくって くださる オヤクソク なの、 オジイチャマ、 オカネ が ほしかったら、 コンド くる とき に うんと キンギョ もって いらっしゃい、 オイケ に はなす ん だ から、 どれだけ いたって たりる こと は ない わ」
「オメエ は えらい キンギョ に、 いつのまに ハヤガワリ した ん だ」
「アイテ-シダイ で どんな に でも、 かわれば かわる こと が できる もの よ、 たしょう バカ でも ね」
「いつでも キョウダイ に むかって ベソ かいて いた から な、 オキャク は つかない し カラダ は よわい し ね。 だが、 3 サイ-ッコ、 コンダ あてた な、 あの ジジイ、 したたか な カオ を して いる が、 ショウバイ は いったい ナン だ」
「しらない」
「しらない こと ある もん か、 こそっと オラ に だけ いえ よ」
「しらない ったら しらない わよ、 しって いたって キンギョヤ さん なんか に、 あの ヒト の こと いう もん です か」
「いえない ショウバイ なら ドロボウ か、 カタリ の タグイ だろう、 だが、 ドロボウ が イシベイ の ナカ に すむ こと は、 ねえ から な。 ひょっと する と ズメンヒキ かな。 なんとか いって くれ よ」
「しらない、 アタイ、 あの カタ の こと いわない って オヤクソク が して あん だ から、 いくら、 オジイチャマ だって いえない わ、 ダレ に だって いう もん か。 おうい、 オジサマ、 そろそろ オデカケ の オジカン よ、 はやく オヒゲ を そって オユ に はいって、 ゴヨウイ なさらなければ、 ジカン に おくれたら タイヘン な こと に なる わよ」
「ユウウツ だな、 コウエン と いう もの は もう ミッカ マエ から、 ショクヨク が なくなって しまう し、 ムネ は すっぱく なる し、 ゲンキ まで なくなる、……」
「だって コノアイダ から おかき に なって いた ゲンコウ を ほどよく、 ジカン を おおき に なって ロウドク なされば いい のよ、 さあ、 オヒゲ を おそり に なって」
「キミ は きて は ダメ だよ」
「だって アタイ が いなかったら、 オジサマ は びくびく して コウエン できない じゃ ない の。 アタイ、 ウシロ に かくれて いて、 オシリ を つねって おあげ する わ」
「だから オセッカイ は やめて くれ と いう ん だ。 ヒトリ なら どもりながら でも しゃべれる が、 キミ が いる と キ が ちる ん だ、 たのむ、 キョウ は こない で くれ」
「なんて ヒソウ な オカオ なさる わね、 じゃ、 いかない わよ」
「おこるな よ、 オジサン は ヒトリ だ と、 さばさば して なんでも オシャベリ が できる ん だ」
「じゃ、 まいりません、 アンシン して いって いらっしゃい。 カイダン は すべる から キ を つけて ね。 それから、 パイプ を わすれない で もって かえって いらっしゃい」
「じゃ いって くる」
「テーブル の ウエ に コップ と ミズ を たのんで おかなくちゃ ね。 オハナシ に つまったら、 オヒヤ を あがる が いい わ。 たすかる わよ」
「キンギョ じゃ あるまい し、 ミズ なんか いらない よ、 ミズ ばかり のんで コウダン したら どう なる ん だ。 ミズ を のみ に エンダン に たつ よう な もの だ」
「それなら、 なお ハクシュ カッサイ だわ、 コップ の ミズ を のんで、 それきり で コウダン する エンゼツ も あって いい じゃ ない の」
「あ、 こまった」
「クルマ が きた わよ、 あら、 うつくしい フジン キシャ が オムカエ なの よ。 ぴちぴち して いて、 クルマ と おなじ イロ の クツ はいて いらっしゃる」
「キョウ は ビジン も メ に はいらない」
「なんて カオ なさる の、 ほら、 オボウシ よ」
「じゃ、 いって くる、 こない で くれ よ」
「じゃ、 いって らっしゃい。 オジサマ、 カオ、 もう イッペン みせて、 それ で いい わ、 もう ゲンキ が でて きて、 カクゴ を した オカオイロ に なって いる わ」

「あの、 おみうけ した ところ、 どこ か、 オカラダ が おわるい ん じゃ ございません か」
「は、 すこし なんだか キュウ に」
「たいへん オイキ が くるしそう です が、 オミズ でも、 おあがり に なりましたら?」
「ミズ なんか アナタ、 ここ では とても」
「オミズ なら アタイ、 いいえ、 ワタクシ、 もって います から、 スイトウ の クチ から じかに おあがり くださいまし、 さあ、 どうぞ」
「まあ、 これ は、 おそれいります」
「どうぞ、 ぐっと、……」
「は、」
「もっと めしあがって、 あ、 オラク に なって、 オカオ の イロ が でて きました わ。 ほら ね、 イキヅカイ が ちゃんと、 ヘイキン して きた じゃ ございません か」
「は、 どきどき する の が とまって まいりました。 なんとも、 オレイ の モウシヨウ も ございません」
「もう、 ちょっと めしあがれ」
「あ、 おいしい。 もう、 おさすり くださらなくて も、 ケッコウ で ございます。 どうぞ、 オテ を おろして くださいまし」
「オイキ の くるしい アイダ、 オセナカ が こわばって いました けれど、 あ、 そう、 ワタクシ も オミズ いただいて おきましょう。 オロウカ に でて おやすみ に なったら? カミヤマ さん の コウエン も おわりました し」
「では、 ゴメイワク ツイデ に、 ゴイッショ に して いただきます」
「この クッション には、 ヨリカカリ が あって よ ございます」
「もう すっかり ラク に なりました。 ワタクシ シンゾウ が わるい もの です から、 カイジョウ に まいって から も キ を つけて いた ん です けれど、 フイ に、 マエ の ほう が くらく なって しまいまして」
「アナタ が うつむいて いらっしって も、 オイキ の はあはあ いう の が きこえて くる ん です もの、 おどろいちゃって どう しよう か と、 ヒトリ で、 うろたえて しまった ん です」
「あの、 ヘン な こと おきき する よう です けれど、 どうして オミズ を あんな に たくさん おもち に、 なって いらっしった ん でしょう か」
「ええ、 すこし ワケ が ございまして、……」
「あら、 ごめん あそばせ、 シツレイ な こと もうしあげまして、 アナタ が そんな に おわかい のに ゴヨウジン-ぶかい と、 つい そう おもった もの です から」
「ワタクシ は いつも オミズ が ほしい ショウブン な もの です から、 スイトウ を はなした こと が、 まだ イチド も ございません」
「オイド の ミズ で ございます ね」
「よく ゴゾンジ で いらっしゃいます こと。 それ より キョウ は ドナタ の ゴコウエン を おきき に いらっしった ん です か、 まだ、 ゴコウエン が ある はず なん です が」
「ワタクシ カミヤマ さん の ゴコウエン を おきき して、 もう かえろう と シタク しかかって いて、 つい、 メマイ が した もの です から」
「カミヤマ さん を ゴゾンジ で いらっしゃいます か」
「カミヤマ さん に カキモノ を みて いただいた こと が ある ん です。 15 ネン も マエ の こと です が、 めった に ゴコウエン なぞ なさらない カタ な もの です から、 オメ に かかりたくて も キカイ が なかった の です が、 シンブン で オナマエ を みて キョウ は はやく から まいって いた の が、 カラダ に さわった の かも しれません」
「まあ、 オジサマ と 15 ネン も マエ に、 おあい に なって いらっしった ん です か」
「オジサマ って おっしゃる と、 それ は カミヤマ さん の こと です か、 スイトウ に カミヤマ と かいて あった もの です から、 はっと した の です が、 カミヤマ さん の ゴシンセキ の カタ なん です か」
「ええ、 シンセキ の、 そう ね、 マゴ の よう な モノ なん です けれど、 オミノマワリ の こと も みて おあげ して いる モノ です、 どう いったら うまく ワタクシ の タチバ が いいあらわせる か、 いいにくい ん です けど」
「でも、 オジサマ って および に なって いらっしゃいます から、 きっと、 おなじ オウチ に いらっしゃる ん でしょう」
「え、 キョウ の ゴコウエン は きき に きちゃ いけない って、 きびしく もうしつけられて いた ん です けれど、 ウチ に いる の が たまんなくて まいりました の、 アタイ が いなくて は、 カミヤマ は なにも できない ん です もの」
「まあ、 アタイ って おかわいらしい こと を おっしゃる」
「もう、 いっちゃった から いう けど、 アタイ、 オジサマ が シツゲン したり なんか しない か と、 びくびく して きいて いました。 そしたら うまく おしゃべり に なれて ほっと しちゃった の。 そしたら コンド は、 アナタ の オカラダ が わるく なって、 それ が カイジョウ ソウダチ に なったら オジサマ が かわいそう だ から、 オミズ を さしあげた のよ、 アタイ、 あんな に あわてた こと が ない ん です もの」
「アナタ は オイクツ に オナリ なの」
「アタイ、 イクツ かしら、 イクツ だ と いったら テキトウ なの か わかんない けれど、 17 くらい に なる でしょう か」
「それで カミヤマ さん は アナタ を おかわいがり に なって いらっしゃる ん です か、 たとえば、 オミヤゲ とか、 オカイモノ とか、 ゴハン も、 ゴイッショ に あがって いらっしゃいます か」
「いいえ、 ゴハン は ベツ です けれど、 アタイ の たべる もの は、 フツウ の ヒト とは ちがいます もの」
「どういう ふう に、 おちがい に なる ん です か」
「そんな こと ちょっと カンタン には いえない わ、 オショクジ は ちがって います けれど、 ヨル も ゴイッショ に ねる こと も ある し、……」
「まあ、 ゴイッショ に おやすみ に なる ん です か、 そんな こと を アナタ は ヘイキ で おっしゃいます けれど、 ゴイッショ と いう こと は、 ヒトツ の オトコ で カミヤマ さん と おやすみ に なる こと なの よ、 カンチガイ を して いらっしゃる ん じゃ ない、……」
「いいえ、 ヒトツ の オトコ なの よ、 アタイ、 オジサマ の ムネ や、 オセナカ の ウエ に のって あそぶ こと も ある し、……」
「あそぶ ん ですって」
「ええ、 くすぐったり とんだり はねたり する わ、 オジサマ は メ を つぶって いらっしゃいます だけ だ けど、 アタイ、 その オメメ を ムリ に あけたり、 それから オメメ の ウエ に カラダ を すえて いたり して います と、 オジサマ は、 とても、 メ が ひえて およろこび に なります」
「あら、 そんな こと まで おっしゃって、 アナタ は ダイタン で ムジャキ で イマ まで アナタ みたい な カタ に、 ワタクシ おあい した こと イチド も ない わ、 も イチド おきき したい ん です けれど、 あまり シツレイ な こと で ワタクシ ジシン うかがう こと も、 はずかしい くらい なん です けれど」
「どんな こと かしら、 なんでも おこたえ できる わ、 アタイ、 オバサマ も すき に なっちゃった、 ダレ でも すき に なって こまる ん です けれど」
「オバサマ と いって くださる と、 うれしく なる わ、 あのね、 おおこり に ならない で きいてて ね、 アナタ は カミヤマ さん と カンケイ が おあり に なる の、 ヨル も ゴイッショ だ と おっしゃる し、……」
「カンケイ って どんな こと です か、 アタイ、 カンケイ と いう こと はじめて きいた わ」
「オジサマ は アナタ と おやすみ に なって から、 どんな こと を なさいます の、 こんな ふう に モノ を いう の、 ごめんなさい ね、 だって、 こう いう より トイカタ が ない ん です もの、 たとえば アナタ を おだき に なったり なさいます?」
「いいえ、 アオムキ に ねて いらっしゃる だけ なの、 だいて いただいた こと ない わ、 ただ、 アタイ の ほう で ふざける だけ なの」
「だって そんな こと ある はず ない と おもう ん です けれど、 まあ、 アナタ って カタ、 オンナ でも ない みたい に、 ちっとも はずかしがらない で、 なんでも フツウ の こと の よう に おっしゃる わね、 つよく だいたら つぶれて しまう なんて、」
「つぶれて しまう わ、 アタイ、 ちいちゃい ん です もの」
「そんな に おおきく なって いらっしゃる じゃ ない の、 オッパイ も オタナ みたい だし、 ウデ も まんまるくて アブラ で つめたい し、 ケッショク も いい し、 それ で オジサマ が なにも なさらない ん です か」
「アタイ、 オジサマ の コモリウタ かも しれない わ、 ふう と きて、 ふう と ふかれて いく だけ なん です もの。 でも、 オジサマ は たんと たのしい こと を しって いながら、 アタイ に、 して くださらない こと に なる わね、 ずるい わ、 アタイ、 オジサマ に いって やる わ、 たのしい こと を ヌキ に しちゃ いや だ って」
「そんな こと おっしゃって は ダメ、 イマ まで-どおり の オジサマ で タクサン じゃ ない ん です か。 ワタクシ つまらない こと を おはなし しました けれど」
「アタイ、 これ イジョウ たのしい こと ある はず ない と、 いつも そう おもって いた ん です もの」
「ワタクシ ね、 さっき いただいた オミズ を あんな に たくさん もって いらっしゃる ワケ が、 おきき したい ん です けれど、 どう かんがえて みて も わからない の」
「あれ は いえない、」
「なぜ おわらい に なります、 だって スイトウ に いっぱい オミズ を もって コウエンカイ に いらっしゃる ワケ は、 とても わからない わ。 ダレ に でも わかりっこ ない わ」
「そう ね、 オバサマ には とても、 わかりっこ ない わ、 ダレ も わかる ヒト ない わ、 ダレ にも しられたく ない アタイ の ヒミツ なん だ もん、 オバサマ にも いう こと できない のよ、 アタイ の オクチ に テ を かけて はかそう と なすって も、 がん と して いわない わ、 オジサマ だけ が その ワケ しって いらっしゃいます けれど」
「カミヤマ さん は なんと おっしゃって いらっしゃる の」
「いつも オミズ を わすれるな と おっしゃる わ、 アタイ の なにもかも、 みんな しって いらっしゃる ん だ もの」
「オカラダ に イリヨウ なん です か」
「そう なの、 ミズ が なくなる と、 アタイ の メ が みえなく なる かも しれない ん です もの。 それ より か、 いったい、 オバサマ は なぜ 15 ネン も オジサマ に、 おあい に ならなかった の、 アタイ、 その ワケ が ききたい ん です。 オバサマ、 その ワケ を くわしく おはなし して ちょうだい、 オバサマ の カオ は うつくしい けれど あまり に しろっぽい し、 オセナカ だって さっき さすった とき に かんじた ん だ けど、 まるで、 オサカナ みたい に ひえきって いた わ」
「ワタクシ あの とき、 ずっと チ の ひいて ゆく グアイ が、 すぐ わかって いた ぐらい です もの、 ひえる の アタリマエ の こと だわ」
「いいえ、 その こと を おきき して いる の じゃ ない わ。 なぜ、 オジサマ に おあい に ならなかった か と いう こと なの よ、 ね、 それ を おはなし して」
「アナタ に オミズ が イリヨウ で その ワケ が おっしゃれない よう に、 ワタクシ が おあい できなかった こと も、 イマ すぐに は おはなし できない わ、」
「それ も ヒミツ なの ね、」
「ええ、 そう よ、 ヒミツ なの よ」
「オバサマ は アタイ を おすき」
「え、 もう、 キョウ カイジョウ に はいる と、 すぐ アナタ の オソバ に すわる よう に、 アタマ が フイ に しらせた の」
「アタマ が しらせた?」
「そう よ、 あの ちいさい オカタ の ところ に いけ、 そして おあい しろ と いわれた わ」
「ドナタ に、 ドナタ が そう いった の」
「アタマ が そう つくりあげた のよ、 その とき、 アナタ も トビラ の ほう に ちらと メ を むけて、 ちゃんと しって いらっした ふう じゃ ない の」
「アタイ、 あの トビラ から ダレ か が くる はず だ と、 カイジョウ に はいる と、 すぐ、 ずっと、 おもいつづけて いた わ、 イッペン も あった こと の ない ヒト だ が、 あえば すぐ うちとけて オハナシ の できる カタ で、 おはなし しなければ ならない こと が たくさん たまって いる カタ だ と そう おもって いた の。 だから、 オセキ を とって おすわり に なれる よう に して いた のよ」
「アナタ は うれしそう に にこにこ してた わね」
「アタイ、 オジサマ が バカ を いわない か と、 それ が おかしくて。 アナタ は どうして ゴコウエンチュウ うつむいて ばかり いらっしった の。 まるで きいて いらっしゃらない ふう だった わ」
「オカオ を みる の が はずかしかった し、 みられまい と ケンメイ に うつむいて いた の、 そして ついに イチド も みなかった わ」
「なぜ、 オカオ を おみせ に ならなかった ん です」
「あの カタ には おあい できない ワケ が あります のよ」
「どうして」
「どうしても、」
「アタイ、 オジサマ に アナタ に オメ に かかった って、 キョウ かえったら おはなし する わ、 まあ、 そんな に オカオ の イロ を かえちゃって。 おはなし する の が わるい ん です か」
「アナタ に なにも いって くださるな と いったって、 とても、 だまって は いらっしゃらない わね、 けれど、 オジサマ は ワタクシ に アナタ が あった と おっしゃって も、 そんな バカ な こと が ある もの か と、 しんじて くださらない わよ」
「なぜ かしら、 だって こうして おあい して いる のに? オバサマ、 オテテ だして、 こんな に しっかり にぎって いる のに、 ウソ なんか じゃ ない でしょう、 オバサマ、 キス しましょう」
「まあ、 アナタ って なんて コドモ さん なん でしょう、 でも、 キス する こと しって いる わね」
「オジサマ と いつも して いる ん だ もの、 アタイ、 の、 つめたい でしょう」
「ええ、 とても」
「あら、 あら、 オバサマ、 ミナサン が でて きた わ、 コウエン が おわっちゃった のよ、 アタイ、 こうして は いられない わよ、 オバサマ、 イッショ に オジサマ の ところ に いきましょう。 きっと びっくり なさる わよ、 あら、 そんな オカオ を おかえ に なって いったい どこ に いらっしゃる の」
「ワタクシ、 これ で シツレイ します」
「ね、 オジサマ に おあい に なって よ、 アタイ、 うまく とりなして おあげ する から、 イッショ に いらっしゃい」
「もし ワタクシ の こと おっしゃる よう だったら、 わすれない で います と、 そう おっしゃって ね、 オシアワセ の よう に って ね」
「オバサマ、 いっちゃ ダメ よ、 ダメ よ、 いっちゃ」
「では、 おわかれ する わ、 オリコウサン」
「オバサマ、 オテテ だして」
「そうして いられない ん です よ、 では、 アナタ、 オジサマ を よく みて あげて ね」
「よく して あげる わ、 いっちゃ いけない と いう のに」
「じゃ ね」
「オバサマ、 オバサマ」
「…………」
「あ、 いっちゃった、 せっかく、 ダイジ な オトモダチ が できた のに いっちゃったい、 オバサマ の バカ、 もどって きて、 オバサマ、……」

「オジサマ、 アタイ よ。 おどろいた でしょう、 ちゃんと きて いた のよ」
「びっくり する じゃ ない か、 チンピラ、 どうして きた ん だ」
「ここ あけて よ、 ずっと、 ゴコウエン を きいて いた のよ、 とんでもない こと、 おっしゃる か と おもって シンパイ しちゃった。 ここ、 あけて よ」
「おはいり、 あんな に きちゃ いけない って いって いた のに、 こまった ヤツ だ」
「だって オウチ に ヒトリ で いる の が、 ムネ が やきもき して、 とても、 たまんなかった もん、 ゴコウエン よく きこえた わよ」
「でも、 よく、 ヒトリ で クルマ を みつけて のった ね」
「かけずりまわって やっと みつけた のよ、 この クルマ シンブンシャ の でしょう」
「おくって くれる ん だ、 ウチ まで」
「アタイ、 あかい ハタ の たって いる クルマ に のる の はじめて だわ、 とても、 いさましい わね」
「ミズ を もって いる ね、 スイトウ なんか さげて ヨウジン-ぶかくて いい」
「オジサマ、 おはなし したい こと が たくさん ある のよ、 こっち おむき に なって」
「むずかしい カオ を して ナニ を いいだす ん だね、 くたびれて いる から、 しばらく、 なにも いわない で くれ」
「タイヘン な こと が あった のよ、 くたびれた では すまない わよ、 キョウ ね、 アタイ の ヨコ に すわって いる カタ が いて ね、 カオイロ が あおじろい ん だ か しろい ん だ か わからない くらい、 チチ の よう な イロ を して いる カタ が いらっしった の、 うつむいて コウエン を きいて いらっしゃる のよ、 オジサマ に カオ を みられ は しない か と、 それ ばかり キ に して いる よう な カタ なの よ」
「エンダン から は ヒト の カオ なんか、 くらくて みえ は しない よ」
「そのうち その カタ が キュウ に ひどそう に、 コキュウ コンナン みたい に なっちゃって、 アタイ、 びっくり して ミズ を あげた のよ、 そしたら おちついて、 ふう と イキ も フダン の まま に なって きた のよ」
「よく キ が ついた な、 シンゾウ が わるい ヒト らしい ね」
「よく オワカリ ね、 オジサマ は」
「ナン だ、 ヒト の カオ を じっと みつめたり なんか して、 ヘン な コ だ」
「その カタ を オロウカ の ほう に おさそい して、 やすませて おあげ した の、 もう、 オジサマ の オハナシ が すんだ アト だった から、 クッション の ウエ で ながい アイダ おはなし した わ、 ミズ の よう に オロウカ に ヒトケ が なくて、 その カタ の カオ の イロ が アタイ の ゴタイ に しみわたる ほど、 へんに つめたかった、 オジサマ、 その カタ は いったい ダレ だ と おおもい に なる、……」
「さあ、 ダレ だ かね」
「オジサマ、 いって あげましょう か」
「ミョウ な カオ を する じゃ ない か、 しって いる ヒト なら はやく いいたまえ」
「びっくり しないで よ、 タムラ ユリコ と いう カタ なの よ、 とても ハナスジ の きれい な カタ、 あら、 オジサマ の メ の ナカ が キュウ に うごく の が とまっちゃった」
「タムラ ユリコ」
「そう なの よ、 タムラ ユリコ って いう カタ なの よ、 どう、 びっくり した でしょう」
「ジブン から タムラ ユリコ と ナ を いった の、」
「アタイ が おきき した から よ、 そしたら スイトウ の ミズ を おあげ した とき に、 カミヤマ って かいて あった の を およみ に なった らしい わ、 キュウ に メ を アタイ に じっと そそいで、 こう、 おっしゃった わ。 アナタ は カミヤマ さん の ドナタ だ と おいい に なった から、 アタイ、 オジサン の こと なんでも みて あげて いる モノ だ と いったら、 オイクツ と おきき に なり、 アタイ、 17 サイ だ と おこたえ した わ。 そしたら アタイ の カオ を また じっと みなおして、 アタイ の こと が みんな わかって いる ふう だった わ、 どうか する と、 オジサマ、 あの カタ、 アタイ が オジサマ の どういう モノ だ か も、 ちゃんと わかって いる らしかった わ」
「それ は わかるまい、 いや、 わかって いる かも しれない が、 たしか に タムラ ユリコ と いった ね、 どう かんがえて も、 そんな オンナ が イマゴロ あらわれる なんて こと は、 ありえない こと だ、 ホントウ の こと を いおう か、 その タムラ ユリコ と いう オンナ は、 とうに しんで いる オンナ だ、 しんで いる ニンゲン が あらわれる こと は ゼッタイ に ない」
「まあ、 しんで いる カタ なの」
「その ナマエ の ヒト なら しんで いる、 キミ の はなした ヒト は その ヒト では ない ん だ、 こわい か、」
「こわい」
「おもいあたる こと が ナニ か ある の、 こまかく いって ごらん」
「たとえば あまり に おきれい で、 なにもかも しって いらっしって、 そらとぼけて いらっしゃる ふう だった わ、 アタイ、 しじゅう、 ぞくぞく うれしい よう な かなしい みたい な、 それ で キミ が わるい よう な ときどき いやあ な キ が して いた わ、 しんで いる ヒト だ と いえば そんな キ も しない では ない の です が、 フシギ な こと が あった わ、」
「どんな こと なの だ」
「アタイ、 キ の せい か、 オバサマ の テ を にぎって みたくて、 きゅっと、 にぎっちゃった の、 あら、 いつのまにか アタイ、 その カタ を オバサマ と よぶ よう に なっちゃった の、 わずか の アイダ に そういう ふう に したしく なって いた のね、 その とき に ね、 オバサマ の ヒダリ の テ に ヒトツ の キズアト を みつけた の、 キンゾク の サッカショウ の よう だった ので、 これ、 どう なさいました と いったら、 すぐ テ を おかくし に なった わ、 アタイ、 そこ に ウデドケイ が フダン から はめられて いた アト が、 あかく のこって いる の を メ に いれた の」
「ウデドケイ の アト だって、」
「それ が トケイ の カタチ と クサリ の アト が、 まるで ソノママ で のこって いた のよ、 だから、 アタイ、 オトケイ キョウ は あそばさない の と いったら、 こわれて いる もの です から と おっしゃって いた わ、 コトバ が とても きれい な カタ なの ね。 その とき の オカオ の イロ ったら とても わるかった」
「その キズ と いう の は ひどく なって いた の」
「そう よ、 ザンコク に トケイ を テクビ から もぎとった シュンカン の キズアト だった らしい わ、 アタイ、 その ワケ を きこう と した けれど、 おっしゃらなかった、 きっと、 オジサマ が おとり に なった の でしょう と いう と、 カミヤマ さん じゃ ない と おっしゃった わ、 その ホカ の こと は なにも おっしゃらなかった。 まあ、 オジサマ、 なんて いや な オカオ を なさる の、 オジサマ、 オジサマ、 ふるえだしちゃった、……」
「そんな ヒト が モノ を いう はず が ない、 だが、 その トケイ の ハナシ は ホント の こと なん だ、 アケガタ に シンゾウ マヒ で たおれて から、 5 ジカン ダレ も その ヘヤ に はいった ニンゲン が いない ん だ、 ソウジフ が カギ の かかって いない ドア から なにげなく すかして みる と、 タムラ ユリコ は アオムケ に なって タタミ の ウエ で しんで いた、 その とき に まだ トケイ は うごいて いた のさ」
「だって オジサマ は なぜ そんな オカオ を なさる の、 また、 ヒタイ から アセ が にじんで きた わ、 ひょっと する と アブラ かも しれない わ」
「オジサン の おどろいた の は、 その オンナ と キミ と が ハナシ を した と いう こと に、 おどろいて いる ん だ、 キミ は その オンナ を まるで しらない くせ に、 イマ いう こと が みんな ホントウ の こと なの だ、 その ジッサイ の こと に やられて いる の だ」
「オセナカ を さすって おあげ した とき、 ナリ の たかい カタ だ と いう こと が、 セナカ の スジ の ながい こと で すぐ わかった わ」
「どういう コエ を して いた ん だ、 コエ の こと を いって ごらん」
「やわらかくて ききかえす ヒツヨウ の ない とおった コエ だった わ、 アタイ、 アナタ に オメ に かかった こと を オジサマ に、 みんな おはなし する と いう と、 おとめ して も きっと おっしゃって おしまい に なる から、 おとめ しない と おっしゃって いた わ」
「そして ナニ か コトヅテ が なかった か」
「アタイ に ね、 オジサマ を よく みて あげて と いった だけ だわ、 キョウ は 15 ネン-ぶり に オメ に かかれた と、 それきり おわかれ しちゃった。 いくら よんで みて も ふりかえり も しない で、 デグチ の ほう に おゆき に なった のよ」
「たしか に その ヒト は タムラ ユリコ と いった ん だね、 キミ が カイホウ して あげた ヒト が グウゼン に、 そんな ナマエ の ヒト だった わけ じゃ ない ね、 トケイ の こと も、 グウゼン に にた ハナシ だ と する より、 オジサン の カンガエヨウ が ない ん だ が」
「その オンナ の ヒト は オジサマ の いったい ナン なの よ。 それ から きかない と ハナシ が わからない わ」
「それ は タムラ さん の かいた もの を オジサン が よんで あげて いた ん だ、 そう だな、 5~6 ネン も マ を おいて つづけて いる うち、 とつぜん、 カキモノ の ゲンコウ を おくって こなく なった ん だ。 すると ある ヒ ケイサツ の ヒト が きて ね、 タムラ ユリコ が サクヤ キュウシ した と いって、 オジサン が ショ に レンコウ されて しらべられた ん だ、 オジサン は ウチ にも きて カオ は しって いる が、 アパート の ヘヤ なぞ には まるで イチド も いった こと が ない、 だから シイン も なにも わかって いない の だ、 ケイサツ では オジサン から の ゲンコウ を カイソウ した フウトウ から ジュウショ が わかった らしく、 そんな フウトウ まで ちゃんと とって あった そう だ」
「オジサマ は オンナ だ と オセッカイ ばかり なさる から よ、 ケイサツ から じゃ、 いやあ ね。 きっと オトケイ が なくなって いた から でしょう」
「トケイ と ホカ に ヨウフク なぞ も なくなって いた らしく、 ギュウニュウヤ さん が ハイタツ に まわった とき に、 ドア が アケハナシ だった そう だ が、 ハンニン は でなかった らしい」
「オジサマ の ケンギ は?」
「ジケン と カンケイ が ない こと は すぐ わかった さ、 だが、 その キュウシ と ドウジ に オジサン は ながい アイダ みて いた ゲンコウ の ナイヨウ から、 タムラ さん と いう ヒトリ の オンナ が、 ヤク にも たたない ゲンコウ を かきながら しんだ と いう こと が、 ショウセツ-フウ な ジョウケイ で アタマ に のこった の だ」
「ゲンコウ は オジョウズ だった の」
「フツウ の ヒト と かわった ところ は ない、 むしろ つたない ほう だった かも しれない ね、 ただ、 とびきった 2~3 ギョウ くらい の おもしろい ところ が トコロドコロ に あった くらい だ、 それ は オトコ の ヒト と トモダチ に なる と、 すぐ この ヒト も だんだん に したしく なって、 いいよって こない か と、 それ が みえすいて くる こと が こわい と かいて いた こと だ、 そして その オトコ が タムラ さん に くどいて くる と、 イッペン に、 さけて しまう と いう ミョウ な クセ の ある ブンショウ の ヒト だった の だ」
「オジサマ も きっと、 ひきつけられて いた の でしょう」
「タムラ さん の ショウセツ が そんな ふう なので、 いつも サキ を こされて いる キ が して いた ん だよ、 あの ヒト が イマゴロ でて くる なんて こと は ない さ」
「でも、 アタイ、 ちゃんと みた ん だ もん」
「ヘン な こと が かさなる もの だね、」
「オジサマ、 どこ か で おやすみ に ならない、 ギンザ に きた わよ、 アタイ、 しおからい もの が たべたい わ」
「おりよう、 バー に いこう」
「オサケ あがれない くせ に、 よく コノゴロ バー に いらっしゃる」
「あそこ に すわって いる と ミナサン の シュキ が ただようて きて、 ホオ が あつく なって よった よう な キ が する ん だ」
「いらっしゃいませ」
「ナニ か しおからい もの を ちょうだい、 それから、 オジサマ は ナアニ」
「なんでも いい よ、 ニオイ を かぐ だけ だ から」
「あら、 キンギョ が たくさん いる わね、 ミンナ、 あたらしい ミズ を ほしがって、 かわいそう に あぶあぶ して ひどそう だわ、 あの、 この キンギョ の ミズ くさりかけて います から、 かわいそう だ から とりかえて あげて」
「マイニチ オミセ に でて くる と すぐ、 オミズ かえる ん です けれど、 キョウ は つい わすれまして」
「それから オシオ を ヒトツマミ いれて あげて」
「オシオ が いい ん です か」
「くたびれた キンギョ には ほんの ちょっぴり、 オシオ が いる のよ。 おうい、 チビ ちゃん、 オシオケ が ほしい ん でしょう、 そう、 そう なの ね。 オジサマ、 ちゃんと もう わかって いて、 ソバ に よって きた でしょう、 ナニ いって いる の か いくら オジサマ でも、 この ヒミツ は わかりっこ ない でしょう、 オネエサマ は どこ から どうして いらしった って、 そんな カッコウ が どう したら できた の と、 ミナ、 メ に いっぱい フシギ な イロ を あらわして、 いって いる のよ、 クチ を あけて マタタキ も しない で アタイ を みて いる でしょう、 アタイ も みて やる、」
「キミ、 あまり ヘン な こと いう と、 ミナ が ヘン な カオ を する よ、 ミモト を あらわれる よ」
「あ、 オミズ が きた わ、 その オミズ ここ に ちょうだい、 アタイ が いれて あげる から、 ミンナ オツム を ならべる のよ、 したした と、 ……どう、 とても、 さっぱり と いい キモチ でしょう、 したした と いう この オト たまらない わね、 ミンナ ウロコ の イロ も わるい し やせて いる のね、 かたい フ ばかり たべて いる から よ、 ほら、 おすき な オシオ よ、 それ を ぐっと のんで イブクロ が ひりついた グアイ が、 とても、 たまらない でしょう、 みて ごらん、 ほら、 ほら、 メ に ツヤ が でて きた し、 コウリン たちまち さかえて きた わ」
「イイカゲン に しない か。 あの カタ、 まるで キンギョ の ゴシンセキ みたい に ナニ か いって いらっしゃる。 よほど、 キンギョ が おすき と みえる って いって いる じゃ ない か」
「ニンゲン に アタイ の バケノカワ が わかる もん です か、 オジサマ、 ヒサシブリ で フコウ な オトモダチ の ヨウス を みて、 オジサマ が アタイ を ダイジ に して くださる こと が、 どんな シアワセ だ か わかって きた わ、 オジサマ に、 オレイ を いう わ」
「だから ね、 キンギョ と おはなし する の やめる ん だよ、 ミナサン、 ヘン な カオ を して いる じゃ ない か」
「だいじょうぶ、 チビ たち が はなれない ん です もの、 あら、 しろい カビ の よう な オデキ が できて いる コ も いる わ、 すぐ とらなくちゃ タイヘン な こと に なる、 ……すみません が オチャワン ヒトツ かして ちょうだい、 この コ を ベツ に して カビ を とらなくちゃ、 じっと して いて、 いたい の を ガマン して いる のよ、 すぐ すむ わよ、 ほら、 はげた わ、 この アト に シオ を ぬって と、 さあ、 もう あそんで も いい わよ、 アシタ は さっぱり する から」
「オジョウサマ は キンギョヤ さん みたい です ね、 ドナタ が いらっしって も、 キンギョ の こと なんか ちっとも みて くださらない のに、 ゴシンセツ に して いただいて すみません、 ミナ、 オジョウサマ の ほう を みあげて います わ、 コトバ が わかる よう な カオ を して いる ん です もの」
「ええ、 アタイ が すき だ から、 キンギョ の ほう でも わかる らしい のね、 オジサマ、 キンギョ が オジサマ の こと を アナタ の ダレ だ と たずねて いる わよ、 だから アタイ、 この ヒト は アタイ の いい ヒト だ と いって やった わ、 そしたら ミナ が うふふ、 ……って わらって いる わよ、 あの コエ、 あんな にぎやか なの きこえて、 オジサマ」
「きこえる もん か、 ミンナ キンギョ って おなじ カオ して いる じゃ ない か」
「でも、 カオ の ヒトツ ずつ が ミンナ ことなって いる わよ、 オヤコ シマイ ベツベツ な カオ を して いる わ、 よく、 くらべて みる と わかる わよ。 アタイ ね、 オネガイ が ある ん です けれど、 きっと きいて いただける わね」
「ナン なの、」
「この キンギョ いただけない かしら、 ここ に おく の かわいそう だ から つれて かえりたい の、 ミンナ フシアワセ なん だ もの、 このまま、 みて もどったら、 アタイ、 キ に なって コンヤ は とても ねむれそう も ない わ」
「ベツ の キンギョ を かって もらう こと に したら、 きっと くれる よ、 キ に なる なら かって あげよう、 ワケ の ない こと だ」
「ありがとう、 オジサマ、 5 ヒキ で 100 エン だせば いい わよ、 たんと だす ヒツヨウ ない わ、 アタイ、 ネダン みんな しってん だ から」
「では 100 エン だす こと に しよう。 そろそろ かえろう ね」
「ええ…… あら、 ダレ でしょう、 ダレ か が トビラ の アイダ から こっち を のぞいて みて いる わ。 ジョキュウ さん、 ドナタ か、 いらっしって いる らしい わよ」
「あの ヒト、 ロウケツゾメ の もの を うって いる カタ なん です。 オイリヨウ だったら、 そう いいましょう か、 イツモ は ナカ に はいって いらっしゃる ん だ けれど、 キョウ は どうした ん でしょう、 おはいり に ならない わ、……」
「あら、 ちょっと まってて オジサマ、 キョウ カイジョウ に いらっしった カタ だわ、 ちがいない わ、 ヨコガオ が オバサマ そっくり だ もの。 オバサマ、 オバサマ じゃ ない の、 あら、 トビラ から カオ を はずしちゃった、 オジサマ、 アタイ、 ちょっと おっかけて いって みる わ」
「ナニ いって いる ん だ」
「オバサマ、 タムラ の オバサマ、 アタイ よ、 ヒルマ、 オミズ を あげた アタイ よ、 ちょっと まってて、 そこ の コウジ は イキドマリ なの よ、 オジサマ も ゴイッショ で、 サッキ から オバサマ の オハナシ を して いた ところ なの よ、 ねえ、 ひきかえして ちょうだい」
「キミ、 ヒトチガイ だよ、 ロウケツゾメ なんて おかしい じゃ ない か」
「オジサマ、 オモテ に でて いらっしゃい、 ほら、 こっち を おむき に なった、 オバサマ だ、 あの カタ よ、 あの カタ なの よ、 イキドマリ な もの だ から、 まごまご して いらっしゃる。 ね、 オジサマ、 ヘイ の ところ を みる のよ、 マショウメン で すこし の マドイ も なく たって いらっしゃる じゃ ない の、 みて よ、 みて よ」
「みた、 たしか に タムラ ユリコ だ、 いくら ぼやけたって ウソ の ない カオ だ」
「オジサマ、 ナニ か おっしゃい、 オジサマ の おっしゃる の を まって いらっしゃる ふう だわ、 あ、 オクチ が すこし ずつ あいた、 おわらい に なった、 オジサマ、 コシ を かがめて ついに アイサツ なすった じゃ ない の、 オジサマ も ゴアイサツ を なさい、 はやく よ、 はやく する のよ、 わらって おあげ する のよ、 なんて オクビョウ な オジサマ な こと か、 やっと した わ。 オバサマ の うれしそう な オカオ ったら ない わ、 ふだん、 あんな オカオ で わらって いらっしった の、 すごい うつくしい カオ だな」
「キミ、 よんで みたまえ」
「オジサマ が よんで あげる のよ、 あら、 オバサマ、 そこ の レンガベイ の アナ は ぬけられない わよ、 オカラダ に キズ が つきます、 アタイ、 そこ に イマ いきます から」
「いって つかまえて くれ」
「しんだって はなさない つもり で、 オテテ に ぶらさがる わ、 オジサマ も いらっしゃい」
「うむ」
「オバサマ、 そこ の アナ は カケイシ で がじがじ して あぶない ったら。 ぬけたって ムコウガワ は ドロドロガワ なの よ、 おっこったら しんじまう」
「くぐった ね、 はやい ね」
「あ、 アナ の ソト に くぐって でちゃった、 あれ、 ミズ の オト じゃ ない、 ごぼん と いった の は?」
「そう、 ミズ の オト かな」
「オジサマ、 また アセ と アブラ が サッキ みたい に、 ヒタイ に にじみでた わよ、」
「だまって いろ、 ナニ か きこえる」
「オバサマ の コエ だ わね、 うなって いらっしゃる よう ね、 ミズ の ナカ から かしら、 それとも、……」