カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ノギク の ハカ 3

2013-08-23 | イトウ サチオ
 10 ヨッカ は マツリ の ショニチ で ただ ものせわしく ヒ が くれた。 おたがいに キ の ない フウ は して いて も、 テ に せわしい シゴト の ある ばかり に、 とにかく おもいまぎらす こと が できた。
 15 ニチ と 16 ニチ とは、 ショクジ の ホカ ヨウジ も ない まま に、 ショシツ へ こもりとおして いた。 ぼんやり ツクエ に もたれた なり ナニ を する でも なく、 また フタリ の カンケイ を どう しよう か と いう よう な こと すら も かんがえて は いない。 ただ タミコ の こと が アタマ に みちて いる ばかり で、 きわめて タンジュン に タミコ を おもうて いる ホカ に カンガエ は はたらいて おらぬ。 この フツカ の アイダ に タミコ と 3~4 カイ は あった けれど、 ハナシ も できず ビショウ を コウカン する ゲンキ も なく、 うらさびしい ココロモチ を たがいに メ に うったうる のみ で あった。 フタリ の ココロモチ が いますこし ませて おった ならば、 この フツカ の アイダ にも ショウライ の こと など ずいぶん はなしあう こと が できた の で あろう けれど、 しぶとい ココロモチ など は ケ ほど も なかった フタリ には、 その バアイ に なかなか そんな こと は できなかった。 それでも ボク は 16 ニチ の ゴゴ に なって、 なんとはなし に イカ の よう な こと を マキガミ へ かいて、 ヒグレ に ちょっと きた タミコ に ボク が いなく なって から みて くれ と いって わたした。

 アサ から ここ へ はいった きり、 ナニ を する キ にも ならない。 ソト へ でる キ にも ならず、 ホン を よむ キ にも ならず、 ただ くりかえし くりかえし タミ さん の こと ばかり おもって いる。 タミ さん と イッショ に いれば カミサマ に だかれて クモ に でも のって いる よう だ。 ボク は どうして こんな に なった ん だろう。 ガクモン を せねば ならない ミ だ から、 ガッコウ へは ゆく けれど、 ココロ では タミ さん と はなれたく ない。 タミ さん は ジブン の トシ の おおい の を キ に して いる らしい が、 ボク は そんな こと は なんとも おもわない。 ボク は タミ さん の おもう とおり に なる つもり です から、 タミ さん も そう おもって いて ください。 アシタ は はやく たちます。 トウキ の ヤスミ には かえって きて タミ さん に あう の を タノシミ に して おります。
 10 ガツ 16 ニチ          マサオ
 タミコ サマ

 ガッコウ へ ゆく とは いえ、 ツミ が あって はやく やられる と いう キョウグウ で ある から、 ヒト の ワライゴエ ハナシゴエ にも いちいち ヒガミゴコロ が おきる。 みな フタリ に たいする チョウショウ か の よう に きかれる。 いっそ はやく ガッコウ へ いって しまいたく なった。 ケッシン が きまれば ゲンキ も カイフク して くる。 この ヨ は アタマ も すこしく さえて ユウメシ も ココロモチ よく たべた。 ガッコウ の こと なにくれ と なく ハハ と ハナシ を する。 やがて シン に ついて から も、
「ナン だ ばかばかしい、 15 か そこら の コゾウ の くせ に、 オンナ の こと など ばかり くよくよ かんがえて…… そう だ そう だ、 アシタ は さっそく ガッコウ へ ゆこう。 タミコ は かわいそう だ けれど…… もう かんがえまい、 かんがえたって シカタ が ない、 ガッコウ ガッコウ……」
 ヒトリグチ ききつつ ネムリ に いった よう な わけ で あった。

 フネ で カワ から イチカワ へ でる つもり だ から、 17 ニチ の アサ、 コサメ の ふる の に、 イッサイ の モチモノ を カバン ヒトツ に つめこみ タミコ と オマス に おくられて ヤギリ の ワタシ へ おりた。 ムラ の モノ の ニブネ に ビンジョウ する わけ で もう フネ は きて いる。 ボク は タミ さん それじゃ…… と いう つもり でも ノド が つまって コエ が でない。 タミコ は ボク に ツツミ を わたして から は、 ジブン の テ の ヤリバ に こまって ムネ を なでたり エリ を なでたり して、 シタ ばかり むいて いる。 メ に もつ ナミダ を オマス に みられまい と して、 カラダ を ワキ へ そらして いる。 タミコ が あわれ な スガタ を みて は ボク も ナミダ が おさえきれなかった。 タミコ は キョウ を ワカレ と おもって か、 カミ は さっぱり と した イチョウガエシ に うすく ケショウ を して いる。 ススイロ と コン の こまかい ベンケイジマ で、 ハオリ も ナガギ も おなじい ヨネザワ ツムギ に、 ヒン の よい ユウゼン チリメン の オビ を しめて いた。 タスキ を かけた タミコ も よかった けれど キョウ の タミコ は また いっそう ひきたって みえた。
 ボク の キ の せい で でも ある か、 タミコ は 13 ニチ の ヨ から は ヒトヒ ヒトヒ と やつれて きて、 この ヒ の イタイタシサ、 ボク は なかず には いられなかった。 ムシ が しらせる と でも いう の か、 これ が ショウガイ の ワカレ に なろう とは、 ボク は もちろん タミコ とて、 よもや そう は おもわなかったろう けれど、 この とき の ツラサ カナシサ は、 とても タニン に はなして も しんじて くれる モノ は ない と おもう くらい で あった。
 もっとも タミコ の オモイ は ボク より ふかかった に ソウイ ない。 ボク は チュウガッコウ を ソツギョウ する まで にも、 4~5 ネン アイダ の ある カラダ で ある のに、 タミコ は 17 で コトシ の うち にも エンダン の ハナシ が あって リョウシン から そう いわれれば、 ムゾウサ に こばむ こと の できない ミ で ある から、 ユクスエ の こと を いろいろ かんがえて みる と シンパイ の おおい わけ で ある。 トウジ の ボク は そこ まで は かんがえなかった けれど、 したしく メ に しみた タミコ の いたいたしい スガタ は イクネン たって も キノウ の こと の よう に メ に うかんで いる の で ある。
 ヨソ から みた ならば、 わかい うち に よく ある イタズラ の カッテ な ナキガオ と みぐるしく も あった で あろう けれど、 フタリ の ミ に とって は、 しんに あわれ に かなしき ワカレ で あった。 たがいに テ を とって コウライ を かたる こと も できず、 コサメ の しょぼしょぼ ふる ワタシバ に、 ナキ の ナミダ も ヒトメ を はばかり、 ヒトコト の コトバ も かわしえない で エイキュウ の ワカレ を して しまった の で ある。 ムジョウ の フネ は ナガレ を くだって はやく、 10 プン-カン と たたぬ うち に 5 チョウ と さがらぬ うち に、 オタガイ の スガタ は アメ の クモリ に へだてられて しまった。 モノ も いいえない で、 しょんぼり と しおれて いた フビン な タミ さん の オモカゲ、 どうして わすれる こと が できよう。 タミ さん を おもう ため に カミ の イカリ に ふれて ソクザ に うちころさるる よう な こと が ある とて も ボク には タミ さん を おもわず に いられない。 トシ を とって の ノチ の カンガエ から いえば、 ああ も したら こう も したら と おもわぬ こと も なかった けれど、 トウジ の わかい ドウシ の シリョ には なんら の クフウ も なかった の で ある。 ヤオヤ オシチ は イエ を やいたらば、 ふたたび おもう ヒト に あわれる こと と クフウ を した の で ある が、 ワレワレ フタリ は ツマド 1 マイ を しのんで あける ほど の チエ も でなかった。 それほど に ムジャキ な カレン な コイ で ありながら、 なお オヤ に おじ キョウダイ に はばかり、 タニン の マエ にて ナミダ も ふきえなかった の は いかに キ の よわい ドウシ で あったろう。

 ボク は ガッコウ へ いって から も、 とかく タミコ の こと ばかり おもわれて シカタ が ない。 ガッコウ に おって こんな こと を かんがえて どう する もの か など と、 ジブン で ジブン を しかりはげまして みて も なんの カイ も ない。 そういう コトバ の シリ から すぐ タミコ の こと が わいて くる。 オオク の ヒトナカ に いれば どうにか まぎれる ので、 ヒノウチ は なるたけ ヒトリ で いない よう に こころがけて いた。 ヨ に なって も ねる と シカタ が ない から、 なるたけ ヒトナカ で さわいで いて つかれて ねる クフウ を して いた。 そういう シマツ で ようやく トシ も くれ トウキ キュウギョウ に なった。
 ボク が 12 ガツ 25 ニチ の ゴゼン に かえって みる と、 ニワ イチメン に モミ を ほして あって、 ハハ は マエ の エンガワ に フトン を しいて ヒナタボッコ を して いた。 チカゴロ は よほど カラダ の グアイ も よい。 キョウ は アニフウフ と オトコ と オマス とは ヤマ へ クズ を はき に いった との ハナシ で ある。 ボク は タミ さん は と クチ の サキ まで でた けれど ついに いいきらなかった。 ハハ も いじわるく なんとも いわない。 ボク は カエリ そうそう タミコ の こと を とう の が いかにも きまりわるく、 そのまま レイ の ショシツ を かたづけて ここ に おちついた。 しかし ヒグレ まで には タミコ も かえって くる こと と おもいながら、 おろおろ して まって いる。 ミナ が かえって いよいよ ユウメシ と いう こと に なって も タミコ の スガタ は みえない、 タレ も また タミコ の こと を ヒトコト も いう モノ も ない。 ボク は もう タミコ は イチカワ へ かえった もの と さっして、 ヒト に とう の も いまいましい から、 ホカ の ハナシ も せず、 メシ が すむ と それなり ショシツ へ はいって しまった。
 キョウ は かならず タミコ に あわれる こと と ヒトカタ ならず タノシミ に して かえって きた のに、 この シマツ で なんとも いえず チカラ が おちて さびしかった。 さりとて タレ に この クモン を ハナシヨウ も なく、 タミコ の シャシン など を とりだして みて おった けれど、 ちっとも キ が はれない。 また あの ヤツ タミコ が いない から かんがえこんで いやがる と おもわれる も くちおしく、 ようやく ココロ を とりなおし、 ハハ の マクラモト へ いって ヨル おそく まで ガッコウ の ハナシ を して きかせた。
 あくる ヒ は 9 ジ-ゴロ に ようやく おきた。 ハハ は まだ ねて いる。 ダイドコロ へ でて みる と ホカ の モノ は ミナ また ヤマ へ いった とか で、 オマス が ヒトリ ダイドコロ カタヅケ に のこって いる。 ボク は カオ を あらった なり メシ も くわず に、 セド の ハタケ へ でて しまった。 この アキ、 タミコ と フタリ で ナス を とった ハタケ が イマ は あおあお と ナ が ほきて いる。 ボク は しばらく たって いずこ を ながめる とも なく、 タミコ の オモカゲ を ノウチュウ に えがきつつ オモイ に しずんで いる。
「マサオ さん、 ナニ を そんな に かんがえて いる の」
 オマス が だしぬけ に ウシロ から そ いって、 チカク へ よって きた。 ボク が ヨイカゲン な こと を ヒトコト フタコト いう と、 オマス は いきなり ボク の テ を とって、 もすこし こっち へ きて ここ へ コシ を かけなさい まあ と いいつつ、 ワラ を つんで ある ところ へ ジブン も コシ を かけて ボク にも かけさせた。
「マサオ さん…… オタミ さん は ホント に かわいそう でした よ。 ウチ の ネエサン たら ホント に イジマガリ です から ね。 なんと いう コンジョウ の わるい ヒト だ か、 ワタシ も はあ ここ の ウチ に いる の は いや に なって しまった。 キノウ マサオ さん が くる の は わかりきって いる のに、 ネエサン が いろんな こと を いって、 オトトイ オタミ さん を イチカワ へ かえした ん です よ。 まつ ヒト が ある だっぺ とか あいたい ヒト が まちどおかっぺ とか、 アテコスリ を いって オタミ さん を なかせたり して ね、 オカアサン にも なんでも イロイロ な こと を いった らしい、 とうとう オトトイ オヒルマエ に かえして しまった の でさ。 マサオ さん が オトトイ きたら あわれた ん です よ。 マサオ さん、 ワタシ は オタミ さん が かわいそう で かわいそう で ならない だよ。 なんだって アナタ が いなく なって から は まるで ナキ の ナミダ で ヒ を くらして いる ん だ もの、 マサオ さん に テガミ を やりたい けれど、 それ が よく ジブン には できない から くやしい と いって ね。 ワタシ の ヘヤ へ ミバン も スズリ と カミ を もって きて は ないて いました。 オタミ さん も ハジマリ は ワタシ にも かくして いた けれど、 ノチ には かくして いられなく なった のさ。 ワタシ も オタミ さん の ため に いくら ないた か しれない……」
 みれば オマス は もう ぽろぽろ ナミダ を こぼして いる。 いったい オマス は ごく ヒト の よい シンセツ な オンナ で、 ボク と タミコ が メノマエ で ナカ よい フウ を する と、 シットシン を おこす けれど、 もとより シュウネン-ぶかい ショウ で ない から、 タミコ が ヒトリ に なれば タミコ と ナカ が よく、 ボク が ヒトリ に なれば ボク を オオサワギ する の で ある。
 それから なお オマス は、 ボク が いない アト で タミコ が ヒジョウ に ハハ に しかられた こと など を はなした。 それ は ガイリャク こう で ある。 イジワル の アニヨメ が ナニ を いうて も、 ハハ が タミコ を あいする こと は すこしも かわらない けれど、 フタツ も トシ の おおい タミコ を ボク の ヨメ に する こと は どうしても いけぬ と いう こと に なった らしく、 それ には アニヨメ も いろいろ いうて、 ヨメ に しない と すれば、 フタリ の ナカ は なるたけ さく よう な クフウ を せねば ならぬ。 ハハ も アニヨメ も そういう ココロモチ に なって いる から、 タミコ に たいする シムケ は、 マサオ の こと を おもうて いて も とうてい ダメ で ある と トオマワシ に フウジ して いた。 そこ へ きて タミコ が あけて も くれて も くよくよ して、 ヒト の メ にも とまる ほど で ある から、 ときどき は モノワスレ を したり、 よんで も ヘンジ が おそかったり して、 ハハ の カンシャク に さわった こと も たびたび あった。 ボク が いなく なって から ハツカ ばかり たって 11 ガツ の ツキハジメ の コロ、 タミコ も ホカ の モノ と ノ へ でる こと と なって、 ハハ が タミコ に オマエ は ヒトアシ アト に なって、 ザシキ の マワリ を ゾウキンガケ して それから ニワ に ひろげて ある ムシロ を クラ へ かたづけて から ノ へ ゆけ と いいつけた。 タミコ は ゾウキンガケ を して から うっかり わすれて しまって、 ムシロ を いれず に ノ へ でた ところ、 マ が わるく その ヒ アメ が ふった から、 その ムシロ 10 マイ ばかり を ぬらして しまった。 タミコ は アメ が ふって から キ が ついた けれど、 もう まにあわない。 ウチ へ かえって さっそく ハハ に わびた けれど ハハ は ヘイジツ の こと が ムネ に ある から、
「なにも 10 マイ ばかり の ムシロ が おしい では ない けれど、 いったい ワタシ の イイツケ を おろそか に きいて いる から おこった こと だ。 モト の タミコ は そう で なかった。 エテ カッテ な カンガエゴト など して いる から、 ヒト の いう こと も ミミ へ はいらない の だ……」
 と いう よう な ずいぶん いたい コゴト を いった。 タミコ は ハハ の マクラモト チカク へ いって、 どうか ワタシ が わるかった の です から カンニン して…… と リョウテ を ついて あやまった。 そう する と ハハ は また そう なにも タニン-らしく あらたまって あやまらなく とも だ と しかった そう で、 タミコ は たまらなく なって わっと なきふした。 そのまま タミコ が なきやんで しまえば なんの こと も なく すんだ で あろう が、 タミコ は とうとう ヒトバンジュウ なきとおした ので あくる アサ は メ を あかく して いた。 ハハ も ヨル ときどき メ を さまして みる と、 タミコ は いつでも、 すくすく ないて いる コエ が して いた と いう ので、 コンド は ハハ が ヒジョウ に リップク して、 オマス と タミコ と フタリ よんで ハハ が フルエゴエ に なって いう には、
「アイタイ では ワタシ が どんな ワガママ な こと を いう かも しれない から オマス は キキテ に なって くれ。 タミコ は ユウベ ヒトバンジュウ なきとおした。 さだめし ワタシ に いわれた こと が ムネン で たまらなかった から でしょう」
 タミコ は ここ で ワタシ は そう で ありません と ナキゴエ で いうた けれど、 ハハ は ミミ にも かけず に、
「なるほど ワタシ の コゴト も すこし イイスギ かも しれない が、 タミコ だって なにも それほど くやしがって くれなくて も よさそう な もの じゃ ない か。 ワタシ は ホント に かんがえる と なさけなく なって しまった。 かわいがった の を オン に きせる では ない が、 モト を いえば タニン だ けれど、 チノミゴ の とき から、 タミコ は しょっちゅう ウチ へ きて いて イマ の マサオ と フタツ の チブサ を ヒトツ ずつ ふくませて いた くらい、 オマス が きて から も あの とおり で、 フタツ の もの は ヒトツ ずつ ヨッツ の もの は フタツ ずつ、 キモノ を こしらえて も あれ に 1 マイ これ に 1 マイ と すこしも ワケヘダテ を せない で きた。 タミコ も シン の オヤ の よう に おもって くれ ワタシ も ワガコ と おもって ヨソ の ヒト は ダレ だって フタリ を キョウダイ と おもわない モノ は なかった ほど で ある のに、 アト にも サキ にも イチド の コゴト を あんな に くやしがって ヨジュウ ないて くれなく とも よさそう な もの。 イチカワ の ヒトタチ に きかれたらば、 サイトウ の バア が どんな ひどい こと を いった か と おもう だろう。 10 ナンネン と いう アイダ ワガコ の よう に おもって きた こと も ただ イチド の コゴト で わすれられて しまった か と おもう と ワタシ は くやしい。 ニンゲン と いう もの は そうした もの かしら。 オマス、 よく きいて くれ、 ワタシ が ムリ か タミコ が ムリ か。 なあ オマス」
 ハハ は メ に ナミダ を いっぱい に ためて そう いった。 タミコ は ミ も ヨ も あらぬ サマ で いきなり に オマス の ヒザ へ すがりついて なきなき、
「オマス や、 オカアサン に モウシワケ を して おくれ。 ワタシ は そんな だいそれた リョウケン では ない。 ユンベ あんな に ないた は まったく ワタシ が わるかった から、 まったく ワタシ が とどかなかった の だ から、 オマス や、 オマエ が よく モウシワケ を そう いって おくれ……」
 それから オマス が、
「オカアサン の ゴリップク も ごもっとも です けれど、 ワタシ が おもう にゃ オカアサン も すこし カンチガイ を して おいで なさいます。 オカアサン は ナガネン オタミ さん を かわいがって おいで です から、 オタミ さん の キダテ は わかって おりましょう。 ワタシ も こうして 1 ネン ゴヤッカイ に なって いて みれば、 オタミ さん は ホント やさしい おとなしい ヒト です。 オカアサン に すこし ばかり しかられたって、 それ を くやしがって ないたり なんぞ する よう な ヒト では ありますまい。 ワタシ が こんな こと もうして は おかしい です が、 マサオ さん と オタミ さん とは、 ああして なかよく して いた の を、 ナニ か の ゴツゴウ で キュウ に おわかれ なさった もん です から、 それから と いう もの、 オタミ さん は かわいそう な ほど ゲンキ が ない の です。 コノハ の そよぐ にも タメイキ を つき カラス の なく にも なみだぐんで、 さわれば なきそう な ふう で いた ところ へ、 オカアサン から すこし きつく しかられた から トメド なく ないた の でしょう。 オカアサン、 ワタシ は まったく そう おもいます わ。 オタミ さん は けっして アナタ に しかられた とて くやしがる よう な ヒト では ありません。 オタミ さん の よう な おとなしい ヒト を、 オカアサン の よう に ああ いって しかって は、 あんまり かわいそう です わ」
 オマス が トモナキ を して イイワケ を いうた ので、 もとより タミコ は にくく ない ハハ だ から、 にわか に カオイロ を なおして、
「なるほど オマス が そう いえば、 ワタシ も すこし カンチガイ を して いました。 よく オマス そう いうて くれた。 ワタシ は もう すっかり ココロモチ が なおった。 タミ や、 だまって おくれ、 もう ないて くれるな。 タミ や も かわいそう で あった。 なに マサオ は ガッコウ へ いった ん じゃ ない か、 クレ には かえって くる よ。 なあ オマス、 オマエ は キョウ は シゴト を やすんで、 うまい もの でも こしらえて くれ」
 その ヒ は 3 ニン が イクタビ も よりあって、 イロイロ な もの を こしらえて は チャゴト を やり、 イチニチ おもしろく ハナシ を した。 タミコ も この ヒ は いつ に なく タカワライ を し ゲンキ よく あそんだ。 なんと いって も ハハ の ほう は すぐ ハナシ が わかる けれど、 アニヨメ が まがなすきがな イロイロ な こと を いう ので、 とうとう ボク の かえらない うち に タミコ を イチカワ へ かえした との ハナシ で あった。 オマス は ながい ハナシ を おわる や いなや すぐ ウチ へ かえった。
 なるほど そう で あった か、 アネ は もちろん ハハ まで が そういう ココロ に なった では、 かよわい ノゾミ も たえた も ドウヨウ。 ココロボソサ の ヤルセ が なく、 なく より ホカ に セン が なかった の だろう。 そんな に ハハ に しかられた か…… ヒトバンジュウ なきとおした…… なるほど など と おもう と、 ふたたび あつい ナミダ が みなぎりだして トメド が ない。 ボク は しばらく の アイダ、 ナミダ の でる が まま に そこ に ぼんやり して おった。 その ヒ は とうとう アサハン も たべず、 ヒルスギ まで ハタケ の アタリ を うろついて しまった。
 そう なる と にわか に ウチ に いる の が いや で たまらない。 できる ならば クレ の うち に ガッコウ へ かえって しまいたかった けれど、 そう も ならない で ようやく こらえて、 トシ を こし ガンジツ 1 ニチ おいて フツカ の ヒ には アサ はやく ガッコウ へ たって しまった。
 コンド は リクロ イチカワ へ でて、 イチカワ から キシャ に のった から、 タミコ の キンジョ を とおった の で あれど、 ボク は キマリ が わるくて どうしても タミコ の イエ へ よれなかった。 また ボク に よられたらば、 タミコ が こまる だろう とも おもって、 イクタビ よろう と おもった けれど ついに よらなかった。
 おもえば じつに ヒト の キョウグウ は ヘンカ する もの で ある。 その 1 ネン マエ まで は、 タミコ が ボク の ところ へ きて いなければ、 ボク は ニチヨウ の たび に タミコ の イエ へ いった の で ある。 ボク は タミコ の イエ へ いって も ホカ の ヒト には ヨウ は ない。 いつでも、
「オバアサン、 タミ さん は」
 そら 「タミ さん は」 が きた と いわれる くらい で、 ある とき など は ボク が ゆく と、 タミコ は ニワ に キク の ハナ を つんで いた。 ボク は タミ さん ちょっと おいで と ムリ に セド へ ひっぱって いって、 ニケン-バシゴ を フタリ で にないだし、 カキ の キ へ かけた の を タミコ に おさえさせ、 ボク が のぼって カキ を ムッツ ばかり とる。 タミコ に ハンブン やれば タミコ は ヒトツ で タクサン と いう から、 ボク は その イツツ を もって そのまま ウラ から ぬけて かえって しまった。 さすが に この とき は トムラ の イエ でも ウチジュウ で ボク を わるく いった そう だ けれど、 タミコ ヒトリ は ただ にこにこ わらって いて、 けっして マサオ さん わるい とは いわなかった そう だ。 これ くらい ヘダテ なくした アイダガラ だに、 コイ と いう こと おぼえて から は、 イチカワ の マチ を とおる すら はずかしく なった の で ある。
 この トシ の ショチュウ ヤスミ には イエ に かえらなかった。 クレ にも かえるまい と おもった けれど、 トシ の クレ だ から 1 ニチ でも フツカ でも かえれ と いうて ハハ から テガミ が きた ゆえ、 オオミソカ の ヨル かえって きた。 オマス も コトシ きり で さがった との ハナシ で いよいよ ハナシアイテ も ない から、 また ガンジツ 1 ニチ で フツカ の ヒ に でかけよう と する と、 ハハ が オマエ にも いうて おく が タミコ は ヨメ に いった、 キョネン の シモツキ やはり イチカワ の ウチ で、 たいへん ユウフク な イエ だ そう だ、 と カンタン に いう の で あった。 ボク は はあ そう です か と ムゾウサ に こたえて でて しまった。
 タミコ は ヨメ に いった。 この イチゴ を きいた とき の ボク の ココロモチ は ジブン ながら フシギ と おもう ほど の ヘイキ で あった。 ボク が タミコ を おもって いる カンジョウ に なんら の ドウヨウ を おこさなかった。 これ には ナニ か ソウトウ の リユウ が ある かも しれねど、 ともかくも ジジツ は そう で ある。 ボク は ただ リクツ なし に タミコ は いかな キョウガイ に いろう とも、 ボク を おもって いる ココロ は けっして かわらぬ もの と しんじて いる。 ヨメ に いこう が どう しよう が、 タミコ は いぜん タミコ で、 ボク が タミコ を おもう ココロ に スンブン の カワリ ない よう に タミコ にも けっして カワリ ない よう に おもわれて、 その カンネン は ほとんど オオイシ の ウエ に ざして いる よう で ケ の サキ ほど の キグシン も ない。 それ で ある から タミコ は ヨメ に いった と きいて も すこしも おどろかなかった。 しかし その コロ から イマ まで に ない カンガエ も でて きた。 タミコ は ただただ すこしも ゲンキ が なく、 やせおとろえて ふさいで ばかり いる だろう と のみ おもわれて ならない。 かわいそう な タミ さん と いう カンネン ばかり たかまって きた の で ある。 そういう ワケ で ある から、 ガッコウ へ いって も イゼン とは ほとんど ハンタイ に なって、 イゼン は つとめて ヒトナカ へ はいって、 クモン を まぎらそう と した けれど、 コンド は なるべく ヒト を さけて、 ヒトリ で タミコ の ウエ に オモイ を はせて たのしんで おった。 ナスバタケ の こと や ワタバタケ の こと や、 13 ニチ の バン の さびしい カゼ や、 また ヤギリ の ワタシ で わかれた とき の こと や を、 くりかえし くりかえし かんがえて は ヒトリ なぐさんで おった。 タミコ の こと さえ かんがえれば いつでも キブン が よく なる。 もちろん かなしい ココロモチ に なる こと が しばしば ある けれど、 さんざん ナミダ を だせば やはり アト は キブン が よく なる。 タミコ の こと を おもって いれば かえって ガッカ の セイセキ も わるく ない の で ある。 これら も フシギ の ヒトツ で、 いかなる リユウ か しらねど、 ボク は じっさい そう で あった。
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ノギク の ハカ 4

2013-08-07 | イトウ サチオ
 いつしか ツキ も たって、 わすれ も せぬ 6 ガツ 22 ニチ、 ボク が サンジュツ の カイダイ に くるしんで かんがえて いる と、 コヅカイ が サイトウ さん オウチ から デンポウ です、 と いって ツクエ の ハタ へ おいて いった。 レイ の すぐ かえれ で ある から、 さっそく シャカン に ハナシ を して ソクジツ キセイ した。 ナニゴト が おこった か と ムネ に ドウキ を はずませて かえって みる と、 ヨイヤミ の イエ の アリサマ は イガイ に しずか だ。 ダイドコロ で ウチジュウ ユウメシドキ で あった が、 ただ そこ に ハハ が みえない ばかり、 なんの かわった ヨウス も ない。 ボク は ダイドコロ へは カオ も ださず、 すぐと ハハ の シンジョ へ きた。 アンドウ の ヒ も うすぐらく、 ハハ は ひったり マクラ に ついて ふせって いる。
「オカアサン、 どうか しました か」
「ああ マサオ、 よく はやく かえって くれた。 イマ ワタシ も おきる から オマエ ゴハン マエ なら ゴハン を すまして しまえ」
 ボク は なんの こと か しきり に キ に なる けれど、 ハハ が そう いう まま に そうそう に メシ を すまして ふたたび ハハ の ところ へ くる。 ハハ は オビ を ゆうて フトン の ウエ に おきて いた。 ボク が マエ に すわって も ただ ムゴン で いる。 みる と ハハ は アメ の よう に ナミダ を おとして うつむいて いる。
「オカアサン、 まあ どうした ん でしょう」
 ボク の コトバ に はげまされて ハハ は ようやく ナミダ を ふき、
「マサオ、 カンニン して くれ…… タミコ は しんで しまった…… ワタシ が ころした よう な もの だ……」
「そりゃ いつ です。 どうして タミ さん は しんだ ん です」
 ボク が ムチュウ に なって といかえす と、 ハハ は むせびかえって カオ を おさえて いる。
「シジュウ を きいたら、 さだめし ひどい オヤ だ と おもう だろう が、 こらえて くれ、 マサオ…… オマエ に イチゴン の ハナシ も せず、 たって いや だ と いう タミコ を ムリ に すすめて ヨメ に やった の が、 こういう こと に なって しまった…… たとい オンナ の ほう が トシウエ で あろう とも ホンニン ドウシ が トクシン で あらば、 なにも オヤ だ から とて ヨケイ な クチダシ を せなく も よい のに、 この ハハ が トシガイ も なく オヤ-だてら に いらぬ オセワ を やいて、 トリカエシ の つかぬ こと を して しまった。 タミコ は ワタシ が テ を かけて ころした も おなじ。 どうぞ カンニン して くれ、 マサオ…… ワタシ は タミコ の アト おって ゆきたい……」
 ハハ は もう おいおい おいおい コエ を たてて ないて いる。 タミコ の シ と いう こと だけ は わかった けれど、 ナニ が なにやら さらに わからぬ。 ボク とて タミコ の シ と きいて、 シッシン する ほど の オモイ で あれど、 イマ メノマエ で ハハ の ナゲキ の ヒトトオリ ならぬ を みて は、 なく にも なかれず、 ボク が おろおろ して いる ところ へ アニフウフ が でて きた。
「オカアサン、 まあ そう ないたって シカタ が ない」
 と いえば ハハ は、 かまわず に なかして おくれ なかして おくれ と いう の で ある、 どう シヨウ も ない。
 その アイダ で アニヨメ が わずか に はなす ところ を きけば、 イチカワ の ソレガシ と いう イエ で サキ の オトコ の キショウ も しれて いる に ザイサン も トムラ の イエ に バイ イジョウ で あり、 それ で ムコウ から タミコ を たって の ショモウ、 ナコウド と いう の も トムラ が セワ に なる ヒト で ある、 ぜひ やりたい ぜひ いって くれ と いう こと に なった。 タミコ は どうでも いや だ と いう。 タミコ の いや だ と いう ココロ は よく わかって いる けれど、 マサオ さん の ほう は トシ も ちがい サキ の ながい こと だ から、 どうでも ソレガシ の イエ へ やりたい とは、 トムラ の ヒトタチ は もちろん シンルイ まで の キボウ で あった。 それで いよいよ サイトウ の オッカサン に イケン を して もらう と いう こと に ソウダン が きまり、 それで ウチ の オカアサン が タミコ に イクタビ イケン を して も ないて ばかり ショウチ しない から、 トド の ツマリ、 オマエ が そう ゴウジョウ はる の も マサオ の ところ へ きたい カンガエ から だろう けれど、 それ は この ハハ が フショウチ で ならない よ、 オマエ は それでも コンド の エンダン が フショウチ か。 こんな ふう に いわれた から、 タミコ は すっかり ジブン を あきらめた らしく、 とうとう ミナサマ の よい よう に と いって ショウチ を した。 それから は なにもかも ヒト の イウナリ に なって、 シモツキ ナカバ に シュウギ を した けれど、 タミコ の ココロモチ が ホントウ の ショウチ で ない から、 ムコウ でも いくらか イヤキ に なり、 タミコ は ミモチ に なった が、 ムツキ で おりて しまった。 アト の ヒダチ が ヒジョウ に わるく ついに 6 ガツ 19 ニチ に イキ を ひきとった。 ビョウチュウ ボク に しらせよう との ハナシ も あった が、 いまさら マサオ に しらせる カオ も ない と いう ワケ から しらせなかった。 ウチ の オカアサン は タミコ が まだ クチ を きく とき から、 イチカワ へ いって おって、 タミコ が いけなく なる と、 もう ないて ないて なきぬいた。 ヒトクチマゼ に、 タミコ は ワタシ が ころした よう な もの だ、 と ばかり いって いて、 イチカワ へ おいた では どう なる か しれぬ と いう ワケ から、 キノウ クルマ で ウチ へ おくられて きた の だ。 はなし さえ すれば なく、 なけば ワタシ が わるかった わるかった と いって いる。 タレ にも シヨウ が ない から、 マサオ さん の ところ へ デンポウ を うった。 タミコ も かわいそう だし オカアサン も かわいそう だし、 とんだ こと に なって しまった。 マサオ さん、 どう したら よい でしょう。
 アニヨメ の ハナシ で オオカタ は わかった けれど、 ボク も どうして よい やら ほとんど トホウ に くれた。 ハハ は もう ハンキチガイ だ。 なにしろ ここ では ハハ の ココロ を しずめる の が ダイイチ とは おもった けれど、 ナグサメヨウ が ない。 ボク だって いっそ キチガイ に なって しまったら と おもった くらい だ から、 ハハ を なぐさめる ほど の キリョク は ない。 そうこう して いる うち に ようやく ハハ も すこし おちついて きて、 また はなしだした。
「マサオ や、 きいて くれ。 ワタシ は もう ジブン の アクトウ に あきれて しまった。 なんだって あんな ひどい こと を タミコ に いったっけ かしら。 いまさら なんぼ くいて も シカタ が ない けど、 ワタシ は マサオ…… タミコ に こう いった ん だ。 マサオ と フウフ に する こと は この ハハ が フショウチ だ から オマエ は ヨソ へ ヨメ に ゆけ。 なるほど タミコ は ワタシ に そう いわれて みれば ジブン の ミ を あきらめる ホカ は ない わけ だ。 どうして あんな むごたらしい こと を いった の だろう。 ああ かわいそう な こと を して しまった。 まったく ワタシ が アクトウ を いうた ため に タミコ は しんだ。 オマエ は ね、 アシタ は ヨ が あけたら すぐに いって よおく タミコ の ハカ に まいって くれ。 それで オカアサン の わるかった こと を よく わびて くれ。 ねえ マサオ」
 ボク も ようやく なく こと が できた。 たとい どういう ツゴウ が あった に せよ、 いよいよ ミコミ が なくなった とき には あわせて くれて も よかったろう に、 しんで から しらせる とは ずいぶん ひどい わけ だ。 タミ さん だって ボク には あいたかったろう。 ヨメ に いって しまって は モウシワケ が なく おもったろう けれど、 それでも いよいよ の マギワ に なって は ボク に あいたかった に ちがいない。 じつに なさけない こと だ。 かんがえて みれば ボク も あんまり コドモ で あった。 ソノゴ イチカワ を 3 カイ も とおりながら たずねなかった は、 いまさら ザンネン で ならぬ。 ボク は タミコ が ヨメ に ゆこう が ゆくまい が、 ただ タミコ に あい さえ せば よい の だ。 いま ヒトメ あいたかった…… ツギ から ツギ と はてしなく オモイ は あふれて くる。 しかし ハハ に そういう こと を いえば、 コンド は ボク が ハハ を ころす よう な こと に なる かも しれない。 ボク は きっと ココロ を とりなおした。
「オカアサン、 ホント に タミコ は かわいそう で ありました。 しかし とって かえらぬ こと を いくら くやんで も シカタ が ない です から、 アト の こと を ねんごろ に して やる ホカ は ない。 オカアサン は ただただ ゴジブン の わるい よう に ばかり とって いる けれど、 オカアサン とて ココロ は ただ タミコ の ため マサオ の ため と ヒトスジ に おもって くれた こと です から、 よし それ が おもう よう に ならなかった とて、 タミコ や ワタシラ が なにとて オカアサン を うらみましょう。 オカアサン の ココロ は どこまでも ナサケゴコロ で した もの を、 タミコ も けっして うらんで は い や しまい。 なにもかも こう なる ウンメイ で あった の でしょう。 ワタシ は もう あきらめました。 どうぞ このうえ オカアサン も あきらめて ください。 アス の アサ は ヨ が あけたら すぐ イチカワ へ まいります」
 ハハ は なお コトバ を ついで、
「なるほど なにもかも こう なる ウンメイ かも しらねど コンド と いう コンド ワタシ は よくよく コウカイ しました。 ぞくに オヤバカ と いう こと が ある が、 その オヤバカ が とんでもない わるい こと を した。 オヤ が いつまでも モノ の わかった つもり で いる が、 タイヘン な マチガイ で あった。 ジブン は アミダサマ に おすがり もうして すくうて いただく ホカ に たすかる ミチ は ない。 マサオ や、 オマエ は カラダ を ダイジ に して くれ。 おもえば タミコ は ナガネン の アイダ にも ついぞ ワタシ に さからった こと は なかった、 おとなしい コ で あった だけ、 ジブン の した こと が くいられて ならない、 どうしても かわいそう で たまらない。 タミコ が イマワ の トキ の こと も オマエ に はなして きかせたい けれど ワタシ には とても それ が できない」
 など と また コエ を くもらして きた。 もう はなせば はなす ほど かなしく なる から とて しいて イチドウ ねる こと に した。
 ハハ の テマエ アニフウフ の テマエ、 なくまい と こらえて ようやく こらえて いた ボク は、 ジブン の カヤ へ はいり フトン に たおれる と、 もう たまらなく イチド に こみあげて くる。 クチ へは テヌグイ を かんで、 ナンダ を しぼった。 どれだけ ナミダ が でた か、 リンシツ の ハハ から ヨ が あけた よう だよ と コエ を かけられる まで、 すこしも やまず ナミダ が でた。 きた まま で ねて いた ボク は そのまま おきて カオ を あらう や いなや、 まだ ほのぐらい のに イエ を でる。 ユメ の よう に 2 リ の ミチ を はしって、 タイヨウ が ようやく チヘイセン に あらわれた ジブン に トムラ の イエ の モンゼン まで きた。 この ヤ の カマド の ある ところ は ニワ から ショウメン に みとおして みえる。 アサダキ に ムギワラ を たいて ぱちぱち オト が する。 ボク が マエ の エンサキ に たつ と オク に いた オバアサン が、 めざとく みつけて でて くる。
「カネ や、 カネ や、 トミ や…… マサオ さん が きました。 まあ マサオ さん よく きて くれました。 たいそう はやく。 さあ おあがんなさい。 オキヌキ でしょう。 さあ…… カネ や……」
 タミコ の オトウサン と オカアサン、 タミコ の ネエサン も きた。
「まあ よく きて くれました。 アナタ の くる の を まって ました。 とにかくに あがって ゴハン を たべて……」
 ボク は あがり も せず コシ も かけず、 しばらく ムゴン で たって いた。 ようやく と、
「タミ さん の オハカ に まいり に きました」
 せつなる サマ は メ に あまった と みえ、 ヨッタリ とも クチ が きけなく なって しまった。 ……やがて オトウサン が、
「それでも まあ ちょっと ゴハン を すまして いったら…… ああ そう です か。 それでは ミナ して まいって くる が よかろう…… いや キモノ など きかえん で よい じゃ ない か」
 オンナ たち は、 もう ハナススリ を しながら、 それじゃあ とて たちあがる。 ミズ を もち、 センコウ を もち、 ニワ の ハナ を タクサン に とる。 オダマキソウ、 センニチソウ、 テンジク ボタン と てんでん テ に とりわけて でかける。 カキ の キ の シタ から セド へ ぬけ マキベイ の ウラモン を でる と マツバヤシ で ある。 モモバタケ ナシバタケ の アイダ を ゆく と わずか の タ が ある。 その サキ の マツバヤシ の カタスミ に ゾウキ の モリ が あって あまた の ハカ が みえる。 トムラ-ケ の ボチ は モチノキ 4~5 ホン を チュウシン と して ムツボ ばかり を クワケ して ある。 その ほどよい ところ の ニイハカ が タミコ が トワ の スミカ で あった。 ホウムリ を して から アメ にも あわない ので、 ほんの あたらしい まま で、 チカラガミ など も イマ むすんだ よう で ある。 オバアサン が サキ に いでて、
「さあ マサオ さん、 なにもかも アナタ の テ で やって ください。 タミコ の ため には ほんに センソウ の クヨウ に まさる アナタ の コウゲ、 どうぞ マサオ さん、 よおく オマイリ を して ください…… キョウ は タミコ も さだめて クサバ の カゲ で うれしかろう…… なあ この ヒト に せめて イチド でも、 メ を ねむらない タミコ に…… まあ せめて イチド でも あわせて やりたかった……」
 3 ニン は メ を こすって いる ヨウス。 ボク は コウ を あげ ハナ を あげ ミズ を そそいで から、 マエ に つくばって ココロ の ゆく まで おがんだ。 しんに なさけない わけ だ。 ジュミョウ で しぬ は しかたない に して も、 ながく わずらって いる マ に、 ああ みまって やりたかった。 ヒトメ あいたかった。 ボク も タミ さん に あいたかった もの、 タミ さん だって ボク に あいたかった に ちがいない。 むりむり に しいられた とは いえ、 ヨメ に いって は ボク に あわせる カオ が ない と おもった に ちがいない。 おもえば それ が ビンゼン で ならない。 あんな おとなしい タミ さん だ もの、 リョウシン から シンルイ-ジュウ かかって しいられて、 どうして それ が こばまれよう。 タミ さん が キ の つよい ヒト なら きっと ジサツ を した の だ けれど、 おとなしい ヒト だけ に それ も できなかった の だ。 タミ さん は ヨメ に いって も ボク の ココロ に カワリ は ない と、 せめて ボク の クチ から ヒトコト いって しなせたかった。 ヨノナカ に なさけない と いって こういう なさけない こと が あろう か。 もう ワタシ も いきて いたく ない…… われしらず コエ を だして ボク は リョウヒザ と リョウテ を ジベタ へ ついて しまった。
 ボク の ヨウス を みて、 ウシロ に いた 3 ニン が どんな に ないた か。 ボク も ワレ ヒトリ で ない に キ が ついて ようやく たちあがった。 3 ニン の ナカ の タレ が いう の か、
「なんだって タミコ は、 マサオ さん と いう こと をば ヒトコト も いわなかった の だろう……」
「それほど に おもいあってる ナカ と しったら あんな に すすめ は せぬ もの を」
「うすうす は しれて いた の だに、 この ヒト の ムネ も きいて みず、 タミコ も あれほど いやがった もの を…… いくら わかい から とて あんまり で あった…… かわいそう に……」
 3 ニン も コウゲ を たむけ ミズ を そそいだ。 オバアサン が また、
「マサオ さん、 アナタ チカラガミ を むすんで ください。 たくさん むすんで ください。 タミコ は アナタ が ナサケ の チカラ を タヨリ に アノヨ へ ゆきます。 ナム アミダブツ、 ナム アミダブツ」
 ボク は フトコロ に あった カミ の アリタケ を チカラヅエ に むすぶ。 この とき ふっと キ が ついた。 タミ さん は ノギク が たいへん すき で あった に ノギク を ほって きて うえれば よかった。 いや すぐ ほって きて うえよう。 こう かんがえて アタリ を みる と、 フシギ に ノギク が しげってる。 トブライ の ヒト に ふまれた らしい が なお くきだって あおあお と して いる。 タミ さん は ノギク の ナカ へ ほうむられた の だ。 ボク は ようやく すこし おちついて ヒトビト と ともに ハカバ を じした。

 ボク は なにも ほしく ありません。 ゴハン は もちろん チャ も ほしく ない です。 このまま オイトマ ねがいます、 アス は また はやく あがります から と いって かえろう と する と、 ウチジュウ で ひきとめる。 タミコ の オカアサン は もう たまらなそう な ふう で、
「マサオ さん、 アナタ に そうして かえられて は ワタシドモ は いて も たって も いられません。 アナタ が おもしろく ない オココロモチ は じゅうじゅう さっして います。 かんがえて みれば ワタシドモ の とどかなかった ため に、 タミコ にも フビン な シニヨウ を させ、 マサオ さん にも モウシワケ の ない こと を した の です。 ワタシドモ は いかよう にも アナタ に オワビ を いたします。 タミコ かわいそう と おぼしめしたら、 どうぞ タミコ が イマワ の ハナシ も きいて いって ください な。 アナタ が おいで に なったら、 おはなし もうす つもり で、 キョウ は オイデ か アス は オイデ か と、 じつは ウチジュウ が おまち もうした の です から どうぞ……」
 そう いわれて は ボク も かえる わけ に ゆかず、 ハハ も そう いった の に キ が ついて ザシキ へ あがった。 チャ や ゴハン や と だされた けれど マネ ばかり で すます。 その うち に ヒトビト ミナ オク へ あつまり オバアサン が はなしだした。
「マサオ さん、 タミコ の こと に ついて は、 ワタシドモ イチドウ まことに モウシワケ が なく、 アナタ に あわせる カオ は ない の です。 アナタ に いろいろ ゴムネン な ところ も ありましょう けれど、 どうぞ マサオ さん、 すぎさった こと と あきらめて、 ゴカンベン を ねがいます。 アナタ に オワビ を する の が ナニ より タミコ の クヨウ に なる の です」
 ボク は ただ もう ムネイッパイ で なにも いう こと が できない。 オバアサン は ハナシ を つづける。
「じつは と もうす と、 アナタ の オカアサン ハジメ、 ワタクシ また タミコ の リョウシン とも、 アナタ と タミコ が それほど ふかい ナカ で あった とは しらなかった もん です から」
 ボク は ここ で ヒトコト いいだす。
「タミ さん と ワタシ と ふかい ナカ と おっしゃって も、 タミ さん と ワタシ とは どうも し や しません」
「いいえ、 アナタ と タミコ が どうした と もうす では ない です。 もとから アナタ と タミコ は ヒジョウ な ナカヨシ でした から、 それ が わからなかった ん です。 それに タミコ は あの とおり の ウチキ な コ でした から、 アナタ の こと は ヒトコト も クチ に ださない。 それ は まるきり しらなかった とは もうされません。 それ です から オワビ を もうす よう な わけ……」
 ボク は ミナサン に そんな に オワビ を いわれる ワケ は ない と いう。 タミコ の オトウサン は オワビ を いわして くれ と いう。
「そりゃ マサオ さん の いう の は ごもっとも です、 ワタシドモ が カッテ な こと を して、 カッテ な こと を オマエサン に いう と いう もの です が、 マサオ さん きいて ください、 リクツ の ウエ の こと では ない です。 オトコオヤ の クチ から こんな こと いう も いかが です が、 タミコ は イノチ に かえられない オモイ を すてて フタオヤ の キボウ に したがった の です。 オヤ の イイツケ で そむかれない と おもうて も、 ドウリ で カンジョウ を おさえる は ムリ な ところ も ありましょう。 タミコ の シ は まったく それ ゆえ です から、 オヤ の ミ に なって みる と、 どうも ザンネン で ありまして、 どうも し や しません と マサオ さん が いう とおり、 オマエサンタチ フタリ に なんの ツミ も ない だけ、 オヤ の メ から は フビン が いっそう で な。 あの とおり おとなしかった タミコ は、 ジブン の しぬ の は ココロガラ と あきらめて か、 ついぞ イチド フソク-らしい フウ も みせなかった です。 それ や これ や を おもいます と な、 どう かんがえて も ちと オヤ が ムジヒ で あった よう で……。 マサオ さん、 さっして ください。 みる とおり ウチジュウ が もう、 カナシミ の ヤミ に とざされて いる の です。 おろか な こと でしょう が、 この バアイ オマエサン に タミコ の ハナシ を きいて もらう の が ナニ より の イセキ に おもわれます から、 トシガイ も ない こと もうす よう だ が、 どうぞ きいて ください」
 オバアサン が また ハナシ を つづける。 ケッコン の ハナシ から いよいよ むずかしく なった まで の ハナシ は アニヨメ が ウチ での ハナシ と おなじ で、 イマワ と いう ヒ の ハナシ は こう で あった。
「6 ガツ 17 ニチ の ゴゴ に イシャ が きて、 もう 1 ニチ フツカ の ところ だ から、 シンルイ など に しらせる ならば キョウジュウ にも しらせる が よい と いいます から、 それでは とて とりあえず アナタ の オカアサン に つげる と 18 ニチ の アサ とんで きました。 その ヒ は タミコ は カオイロ が よく、 はっきり と ハナシ も いたしました。 アナタ の オッカサン が きまして、 タミ や、 けっして キ を よわく して は ならない よ、 どうしても いま イチド なおる キ に なって おくれ よ、 タミ や…… タミコ は にっこり エガオ さえ みせて、 ヤギリ の オカアサン、 いろいろ ありがとう ございます。 ながなが かわいがって いただいた ゴオン は しんで も わすれません。 ワタクシ も、 もう ながい こと は ありますまい……。 タミ や、 そんな キ の よわい こと は おもって は いけない。 けっして そんな こと は ない から、 しっかり しなくて は いけない と、 アナタ の オカアサン が いいましたら、 タミコ は しばらく たって、 ヤギリ の オカアサン、 ワタシ は しぬ が ホンモウ で あります、 しねば それ で よい の です…… と いいまして から なお クチ の ウチ で ナニ か いった よう で、 なんでも、 マサオ さん、 アナタ の こと を いった に ちがいない です が、 よく ききとれません でした。 それきり クチ は きかない で、 その ヨ の アケガタ に イキ を ひきとりました……。 それから マサオ さん、 こういう ワケ です…… ヨ が あけて から、 マクラ を なおさせます とき、 あれ の ハハ が みつけました。 タミコ は ヒダリ の テ に モミ の キレ に つつんだ ちいさな もの を にぎって その テ を ムネ へ のせて いる の です。 それで ウチジュウ の ヒト が ミナ あつまって、 これ を どう しよう か と ソウダン しました が、 かわいそう な よう な キモチ も する けれど、 みず に おく の も キ に かかる、 とにかく ひらいて みる が よい と、 あれ の チチ が いいだしまして、 ミナ の いる ナカ で あけました。 それ が マサオ さん、 アナタ の シャシン と アナタ の オテガミ で ありまして……」
 オバアサン が なきだして、 そこ に いた ヒト ミナ ナミダ を ふいて いる。 ボク は イッシン に タタミ を みつめて いた。 やがて オバアサン が ようよう ハナシ を つぐ。
「その オテガミ を オトミ が よみましたら、 ダレ も カレ も イチド に コエ を たって なきました。 あれ の チチ は オトコ ながら オオゴエ して なく の です。 アナタ の オカアサン は、 キ が ふれ は しない か と おもう ほど、 くどいて なく。 オマエタチ フタリ が これほど の カタライ とは しらず に、 ムリ ムタイ に すすめて ヨメ に やった は わるかった。 ああ わるい こと を した、 フビン だった。 タミ や、 カンニン して、 ワタシ が わるかった から カンニン して くれ。 にわか の サワギ です から、 キンジョ の ヒトタチ が、 どう しました と いって たずね に きた くらい で ありました。 それで アナタ の オカアサン は どうしても なきやまない です。 カラダ に さわって は と おもいまして ソウシキ が すむ と クルマ で おおくり もうした シダイ です。 ミ を あきらめた タミコ の ココロモチ が、 こう わかって みる と、 ダレ も カレ も おなじ こと で いまさら の よう に ムリ に ヨメ に やった こと が コウカイ され、 たまらない です よ。 かんがえれば かんがえる ほど あの コ が かわいそう で かわいそう で いて も たって も いられない…… せめて アナタ に きて いただいて、 ミナ が わるかった こと を じゅうぶん アナタ に オワビ を し、 また あれ の ハカ にも コウゲ を アナタ の テ から たむけて いただいたら、 すこし は ウチジュウ の ココロモチ も やすまる か と おまいまして…… キョウ の こと を なんぼう まちましたろ。 マサオ さん、 どうぞ ききわけて ください。 ねえ タミコ は アナタ には そむいて は いません。 どうぞ フビン と おもうて やって ください……」
 イチゴ イック ミナ ナミダ で、 ボク も イチジ なきふして しまった。 タミコ は しぬ の が ホンモウ だ と いった か、 そう いった か…… ウチ の ハハ が あんな に ミ を せめて なかれる の も、 その はず で あった。 ボク は、
「オバアサン、 よく わかりました。 ワタシ は タミ さん の ココロモチ は よく しって います。 キョネン の クレ、 タミ さん が ヨメ に ゆかれた と きいた とき で さえ、 ワタシ は タミ さん を ケ ほど も うたがわなかった です もの。 どのよう な こと が あろう とも、 ワタシ が タミ さん を おもう ココロモチ は かわりません。 ウチ の ハハ など も ただ それ ばかり いって なげいて います が、 それ も みな ワルギ が あって の ワザ で ない の です から、 ワタシ は もちろん タミ さん だって けっして ウラミ に おも や しません。 なにもかも さだまった エン と あきらめます。 ワタシ は とうぶん マイニチ オハカ へ まいります……」
 はなして は なき ないて は はなし、 コウ イチゴ オツ イチゴ いくら ないて も ハテシ が ない。 ボク は ハハ の こと も キ に かかる ので、 もう オヒル だ と いう ジブン に トムラ の イエ を じした。 トムラ の オカアサン は、 タミコ の ハカ の マエ で ボク の ソブリ が あまり いたわしかった から、 トチュウ が シンパイ に なる とて、 ジブン で ヤギリ の イリグチ まで おくって きて くれた。 タミコ の ビンゼン な こと は いくら おもうて も おもいきれない。 いくら ないて も なききれない。 しかしながら また メノマエ の ハハ が、 カイゴ の ネン に せめられ、 みずから タイザイ を おかした と しんじて なげいて いる ビンゼンサ を みる と、 ボク は どうしても イマ は タミコ を ないて は いられない。 ボク が めそめそ して おった では、 ハハ の クルシミ は ます ばかり と キ が ついた。 それから イッシン に ジブン で ジブン を はげまし、 ゲンキ を よそおうて ひたすら ハハ を なぐさめる クフウ を した。 それでも ココロ に ない こと は シカタ の ない もの、 ハハ は いつしか それ と キ が ついてる ヨウス、 そう なって は ボク が ウチ に いない より ホカ は ない。
 マイニチ ナヌカ の アイダ イチカワ へ かよって、 タミコ の ハカ の シュウイ には ノギク が イチメン に うえられた。 その あくる ヒ に ボク は じゅうぶん ハハ の セイシン の やすまる よう に ジブン の ココロモチ を はなして、 けつぜん ガッコウ へ でた。

     *     *     *     *

 タミコ は よぎなき ケッコン を して ついに ヨ を さり、 ボク は よぎなき ケッコン を して ながらえて いる。 タミコ は ボク の シャシン と ボク の テガミ と を ムネ を はなさず に もって いよう。 ユウメイ はるけく へだつ とも ボク の ココロ は 1 ニチ も タミコ の ウエ を さらぬ。
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