カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ニンゲン シッカク 5

2017-02-18 | ダザイ オサム
 2

 ホリキ と ジブン。
 たがいに ケイベツ しながら つきあい、 そうして たがいに ミズカラ を くだらなく して ゆく、 それ が コノヨ の いわゆる 「コウユウ」 と いう もの の スガタ だ と する なら、 ジブン と ホリキ との アイダガラ も、 まさしく 「コウユウ」 に チガイ ありません でした。
 ジブン が あの キョウバシ の スタンド バー の マダム の ギキョウシン に すがり、 (オンナ の ヒト の ギキョウシン なんて、 コトバ の キミョウ な ツカイカタ です が、 しかし、 ジブン の ケイケン に よる と、 すくなくとも トカイ の ダンジョ の バアイ、 オトコ より も オンナ の ほう が、 その、 ギキョウシン と でも いう べき もの を たっぷり と もって いました。 オトコ は たいてい、 おっかなびっくり で、 オテイサイ ばかり かざり、 そうして、 ケチ でした) あの タバコヤ の ヨシコ を ナイエン の ツマ に する こと が できて、 そうして、 ツキジ、 スミダガワ の チカク、 モクゾウ の 2 カイ-ダテ の ちいさい アパート の カイカ の イッシツ を かり、 フタリ で すみ、 サケ は やめて、 そろそろ ジブン の きまった ショクギョウ に なりかけて きた マンガ の シゴト に セイ を だし、 ユウショク-ゴ は フタリ で エイガ を み に でかけ、 カエリ には、 キッサテン など に はいり、 また、 ハナ の ハチ を かったり して、 いや、 それ より も ジブン を しんから シンライ して くれて いる この ちいさい ハナヨメ の コトバ を きき、 ドウサ を みて いる の が たのしく、 これ は ジブン も ひょっと したら、 いまに だんだん ニンゲン-らしい もの に なる こと が できて、 ヒサン な シニカタ など せず に すむ の では なかろう か と いう あまい オモイ を かすか に ムネ に あたためはじめて いた ヤサキ に、 ホリキ が また ジブン の ガンゼン に あらわれました。
「よう! シキマ。 おや? これ でも、 いくらか ふんべつくさい カオ に なりやがった。 キョウ は、 コウエンジ ジョシ から の オシシャ なん だ がね」
 と いいかけて、 キュウ に コエ を ひそめ、 オカッテ で オチャ の シタク を して いる ヨシコ の ほう を アゴ で しゃくって、 だいじょうぶ かい? と たずねます ので、
「かまわない。 ナニ を いって も いい」
 と ジブン は おちついて こたえました。
 じっさい、 ヨシコ は、 シンライ の テンサイ と いいたい くらい、 キョウバシ の バー の マダム との アイダ は もとより、 ジブン が カマクラ で おこした ジケン を しらせて やって も、 ツネコ との アイダ を うたがわず、 それ は ジブン が ウソ が うまい から と いう わけ では なく、 ときには、 あからさま な イイカタ を する こと さえ あった のに、 ヨシコ には、 それ が みな ジョウダン と しか ききとれぬ ヨウス でした。
「あいかわらず、 しょって いやがる。 なに、 たいした こと じゃ ない がね、 たまに は、 コウエンジ の ほう へも あそび に きて くれ って いう ゴデンゴン さ」
 わすれかける と、 ケチョウ が はばたいて やって きて、 キオク の キズグチ を その クチバシ で つきやぶります。 たちまち カコ の ハジ と ツミ の キオク が、 ありあり と ガンゼン に テンカイ せられ、 わあっ と さけびたい ほど の キョウフ で、 すわって おられなく なる の です。
「のもう か」
 と ジブン。
「よし」
 と ホリキ。
 ジブン と ホリキ。 カタチ は、 フタリ にて いました。 そっくり の ニンゲン の よう な キ が する こと も ありました。 もちろん それ は、 やすい サケ を あちこち のみあるいて いる とき だけ の こと でした が、 とにかく、 フタリ カオ を あわせる と、 みるみる おなじ カタチ の おなじ ケナミ の イヌ に かわり コウセツ の チマタ を かけめぐる と いう グアイ に なる の でした。
 その ヒ イライ、 ジブン たち は ふたたび キュウコウ を あたためた と いう カタチ に なり、 キョウバシ の あの ちいさい バー にも イッショ に ゆき、 そうして、 とうとう、 コウエンジ の シヅコ の アパート にも その デイスイ の 2 ヒキ の イヌ が ホウモン し、 シュクハク して かえる など と いう こと に さえ なって しまった の です。
 わすれ も、 しません。 むしあつい ナツ の ヨル でした。 ホリキ は ヒグレ-ゴロ、 よれよれ の ユカタ を きて ツキジ の ジブン の アパート に やって きて、 キョウ ある ヒツヨウ が あって ナツフク を シチイレ した が、 その シチイレ が ロウボ に しれる と まことに グアイ が わるい、 すぐ うけだしたい から、 とにかく カネ を かして くれ、 と いう こと でした。 あいにく ジブン の ところ にも、 オカネ が なかった ので、 レイ に よって、 ヨシコ に いいつけ、 ヨシコ の イルイ を シチヤ に もって ゆかせて オカネ を つくり、 ホリキ に かして も、 まだ すこし あまる ので その ザンキン で ヨシコ に ショウチュウ を かわせ、 アパート の オクジョウ に ゆき、 スミダガワ から ときたま かすか に ふいて くる どぶくさい カゼ を うけて、 まことに うすぎたない ノウリョウ の エン を はりました。
 ジブン たち は その とき、 キゲキ メイシ、 ヒゲキ メイシ の アテッコ を はじめました。 これ は、 ジブン の ハツメイ した ユウギ で、 メイシ には、 すべて ダンセイ メイシ、 ジョセイ メイシ、 チュウセイ メイシ など の ベツ が ある けれども、 それ と ドウジ に、 キゲキ メイシ、 ヒゲキ メイシ の クベツ が あって しかるべき だ、 たとえば、 キセン と キシャ は いずれ も ヒゲキ メイシ で、 シデン と バス は、 いずれ も キゲキ メイシ、 なぜ そう なの か、 それ の わからぬ モノ は ゲイジュツ を だんずる に たらん、 キゲキ に 1 コ でも ヒゲキ メイシ を さしはさんで いる ゲキサクカ は、 すでに それ だけ で ラクダイ、 ヒゲキ の バアイ も また しかり、 と いった よう な わけ なの でした。
「いい かい? タバコ は?」
 と ジブン が といます。
「トラ (トラジディ の リャク)」
 と ホリキ が ゲンカ に こたえます。
「クスリ は?」
「コナグスリ かい? ガンヤク かい?」
「チュウシャ」
「トラ」
「そう かな? ホルモン チュウシャ も ある し ねえ」
「いや、 だんぜん トラ だ。 ハリ が だいいち、 オマエ、 リッパ な トラ じゃ ない か」
「よし、 まけて おこう。 しかし、 キミ、 クスリ や イシャ は ね、 あれ で あんがい、 コメ (コメディ の リャク) なん だぜ。 シ は?」
「コメ。 ボクシ も オショウ も しかり じゃ ね」
「オオデキ。 そうして、 セイ は トラ だなあ」
「ちがう。 それ も、 コメ」
「いや、 それ では、 なんでも かでも みな コメ に なって しまう。 では ね、 もう ヒトツ おたずね する が、 マンガカ は? よもや、 コメ とは いえません でしょう?」
「トラ、 トラ。 ダイ ヒゲキ メイシ!」
「ナン だ、 オオトラ は キミ の ほう だぜ」
 こんな、 ヘタ な ダジャレ みたい な こと に なって しまって は、 つまらない の です けど、 しかし ジブン たち は その ユウギ を、 セカイ の サロン にも かつて そんしなかった すこぶる キ の きいた もの だ と トクイ-がって いた の でした。
 また もう ヒトツ、 これ に にた ユウギ を トウジ、 ジブン は ハツメイ して いました。 それ は、 アントニム の アテッコ でした。 クロ の アント (アントニム の リャク) は、 シロ。 けれども、 シロ の アント は、 アカ。 アカ の アント は、 クロ。
「ハナ の アント は?」
 と ジブン が とう と、 ホリキ は クチ を まげて かんがえ、
「ええっと、 カゲツ と いう リョウリヤ が あった から、 ツキ だ」
「いや、 それ は アント に なって いない。 むしろ、 シノニム だ。 ホシ と スミレ だって、 シノニム じゃ ない か。 アント で ない」
「わかった、 それ は ね、 ハチ だ」
「ハチ?」
「ボタン に、 ……アリ か?」
「なあん だ、 それ は モチーフ だ。 ごまかしちゃ いけない」
「わかった! ハナ に ムラクモ、……」
「ツキ に ムラクモ だろう」
「そう、 そう。 ハナ に カゼ。 カゼ だ。 ハナ の アント は、 カゼ」
「まずい なあ、 それ は ナニワブシ の モンク じゃ ない か。 オサト が しれる ぜ」
「いや、 ビワ だ」
「なお いけない。 ハナ の アント は ね、 ……およそ コノヨ で もっとも ハナ-らしく ない もの、 それ を こそ あげる べき だ」
「だから、 その、 ……まて よ、 なあん だ、 オンナ か」
「ついでに、 オンナ の シノニム は?」
「ゾウモツ」
「キミ は、 どうも、 ポエジー を しらん ね。 それじゃあ、 ゾウモツ の アント は?」
「ギュウニュウ」
「これ は、 ちょっと うまい な。 その チョウシ で もう ヒトツ。 ハジ。 オント の アント」
「ハジシラズ さ。 リュウコウ マンガカ ジョウシ イクタ」
「ホリキ マサオ は?」
 この ヘン から フタリ だんだん わらえなく なって、 ショウチュウ の ヨイ トクユウ の、 あの ガラス の ハヘン が アタマ に ジュウマン して いる よう な、 インウツ な キブン に なって きた の でした。
「ナマイキ いうな。 オレ は まだ オマエ の よう に、 ナワメ の チジョク など うけた こと が ねえ ん だ」
 ぎょっと しました。 ホリキ は ナイシン、 ジブン を、 マニンゲン アツカイ に して いなかった の だ、 ジブン を ただ、 シニゾコナイ の、 ハジシラズ の、 アホウ の バケモノ の、 いわば 「いける シカバネ」 と しか かいして くれず、 そうして、 カレ の カイラク の ため に、 ジブン を リヨウ できる ところ だけ は リヨウ する、 それっきり の 「コウユウ」 だった の だ、 と おもったら、 さすが に いい キモチ は しません でした が、 しかし また、 ホリキ が ジブン を そのよう に みて いる の も、 もっとも な ハナシ で、 ジブン は ムカシ から、 ニンゲン の シカク の ない みたい な コドモ だった の だ、 やっぱり ホリキ に さえ ケイベツ せられて シトウ なの かも しれない、 と かんがえなおし、
「ツミ。 ツミ の アントニム は、 ナン だろう。 これ は、むずかしい ぞ」
 と なにげなさそう な ヒョウジョウ を よそおって、 いう の でした。
「ホウリツ さ」
 ホリキ が へいぜん と そう こたえました ので、 ジブン は ホリキ の カオ を みなおしました。 チカク の ビル の メイメツ する ネオン サイン の あかい ヒカリ を うけて、 ホリキ の カオ は、 オニケイジ の ごとく イゲン ありげ に みえました。 ジブン は、 つくづく あきれかえり、
「ツミ って の は、 キミ、 そんな もの じゃ ない だろう」
 ツミ の タイギゴ が、 ホウリツ とは! しかし、 セケン の ヒトタチ は、 ミンナ それ くらい に カンタン に かんがえて、 すまして くらして いる の かも しれません。 ケイジ の いない ところ に こそ ツミ が うごめいて いる、 と。
「それじゃあ、 ナン だい、 カミ か? オマエ には、 どこ か ヤソ ボウズ-くさい ところ が ある から な。 イヤミ だぜ」
「まあ そんな に、 かるく かたづけるな よ。 もすこし、 フタリ で かんがえて みよう。 これ は でも、 おもしろい テーマ じゃ ない か。 この テーマ に たいする コタエ ヒトツ で、 その ヒト の ゼンブ が わかる よう な キ が する の だ」
「まさか。 ……ツミ の アント は、 ゼン さ。 ゼンリョウ なる シミン。 つまり、 オレ みたい な モノ さ」
「ジョウダン は、 よそう よ。 しかし、 ゼン は アク の アント だ。 ツミ の アント では ない」
「アク と ツミ とは ちがう の かい?」
「ちがう、 と おもう。 ゼンアク の ガイネン は ニンゲン が つくった もの だ。 ニンゲン が カッテ に つくった ドウトク の コトバ だ」
「うるせえ なあ。 それじゃ、 やっぱり、 カミ だろう。 カミ、 カミ。 なんでも、 カミ に して おけば マチガイ ない。 ハラ が へった なあ」
「イマ、 シタ で ヨシコ が ソラマメ を にて いる」
「ありがてえ。 コウブツ だ」
 リョウテ を アタマ の ウシロ に くんで、 アオムケ に ごろり と ねました。
「キミ には、 ツミ と いう もの が、 まるで キョウミ ない らしい ね」
「そりゃ そう さ、 オマエ の よう に、 ザイニン では ない ん だ から。 オレ は ドウラク は して も、 オンナ を しなせたり、 オンナ から カネ を まきあげたり なんか は しねえ よ」
 しなせた の では ない、 まきあげた の では ない、 と ココロ の どこ か で かすか な、 けれども ヒッシ の コウギ の コエ が おこって も、 しかし、 また、 いや ジブン が わるい の だ と すぐに おもいかえして しまう この シュウヘキ。
 ジブン には、 どうしても、 ショウメン きって の ギロン が できません。 ショウチュウ の インウツ な ヨイ の ため に こくいっこく、 キモチ が けわしく なって くる の を ケンメイ に おさえて、 ほとんど ヒトリゴト の よう に して いいました。
「しかし、 ロウヤ に いれられる こと だけ が ツミ じゃ ない ん だ。 ツミ の アント が わかれば、 ツミ の ジッタイ も つかめる よう な キ が する ん だ けど、 ……カミ、 ……スクイ、 ……アイ、 ……ヒカリ、 ……しかし、 カミ には サタン と いう アント が ある し、 スクイ の アント は クノウ だろう し、 アイ には ニクシミ、 ヒカリ には ヤミ と いう アント が あり、 ゼン には アク、 ツミ と イノリ、 ツミ と クイ、 ツミ と コクハク、 ツミ と、 ……ああ、 みんな シノニム だ、 ツミ の ツイゴ は ナン だ」
「ツミ の ツイゴ は、 ミツ さ。 ミツ の ごとく あまし だ。 ハラ が へった なあ。 ナニ か くう もの を もって こい よ」
「キミ が もって きたら いい じゃ ない か!」
 ほとんど うまれて はじめて と いって いい くらい の、 はげしい イカリ の コエ が でました。
「ようし、 それじゃ、 シタ へ いって、 ヨシ ちゃん と フタリ で ツミ を おかして こよう。 ギロン より ジッチ ケンブン。 ツミ の アント は、 ミツマメ、 いや、 ソラマメ か」
 ほとんど、 ロレツ の まわらぬ くらい に よって いる の でした。
「カッテ に しろ。 どこ か へ いっちまえ!」
「ツミ と クウフク、 クウフク と ソラマメ、 いや、 これ は シノニム か」
 デタラメ を いいながら おきあがります。
 ツミ と バツ。 ドストイエフスキー。 ちらと それ が、 ズノウ の カタスミ を かすめて とおり、 はっと おもいました。 もしも、 あの ドスト シ が、 ツミ と バツ を シノニム と かんがえず、 アントニム と して おきならべた もの と したら? ツミ と バツ、 ゼッタイ に あいつうぜざる もの、 ヒョウタン あいいれざる もの。 ツミ と バツ を アント と して かんがえた ドスト の アオミドロ、 くさった イケ、 ランマ の オクソコ の、 ……ああ、 わかりかけた、 いや、 まだ、 ……など と ズノウ に ソウマトウ が くるくる まわって いた とき に、
「おい! とんだ、 ソラマメ だ。 こい!」
 ホリキ の コエ も カオイロ も かわって います。 ホリキ は、 たったいま ふらふら おきて シタ へ いった、 か と おもう と また ひきかえして きた の です。
「ナン だ」
 イヨウ に サッキ-だち、 フタリ、 オクジョウ から 2 カイ へ おり、 2 カイ から、 さらに カイカ の ジブン の ヘヤ へ おりる カイダン の チュウト で ホリキ は たちどまり、
「みろ!」
 と コゴエ で いって ゆびさします。
 ジブン の ヘヤ の ウエ の コマド が あいて いて、 そこ から ヘヤ の ナカ が みえます。 デンキ が ついた まま で、 2 ヒキ の ドウブツ が いました。
 ジブン は、 ぐらぐら メマイ しながら、 これ も また ニンゲン の スガタ だ、 これ も また ニンゲン の スガタ だ、 おどろく こと は ない、 など はげしい コキュウ と ともに ムネ の ナカ で つぶやき、 ヨシコ を たすける こと も わすれ、 カイダン に たちつくして いました。
 ホリキ は、 おおきい セキバライ を しました。 ジブン は、 ヒトリ にげる よう に また オクジョウ に かけあがり、 ねころび、 アメ を ふくんだ ナツ の ヨゾラ を あおぎ、 その とき ジブン を おそった カンジョウ は、 イカリ でも なく、 ケンオ でも なく、 また、 カナシミ でも なく、 ものすさまじい キョウフ でした。 それ も、 ボチ の ユウレイ など に たいする キョウフ では なく、 ジンジャ の スギコダチ で ハクイ の ゴシンタイ に あった とき に かんずる かも しれない よう な、 しのごの いわさぬ コダイ の あらあらしい キョウフカン でした。 ジブン の ワカジラガ は、 その ヨ から はじまり、 いよいよ、 スベテ に ジシン を うしない、 いよいよ、 ヒト を そこしれず うたがい、 コノヨ の イトナミ に たいする イッサイ の キタイ、 ヨロコビ、 キョウメイ など から エイエン に はなれる よう に なりました。 じつに、 それ は ジブン の ショウガイ に おいて、 ケッテイテキ な ジケン でした。 ジブン は、 マッコウ から ミケン を わられ、 そうして それ イライ その キズ は、 どんな ニンゲン に でも セッキン する ごと に いたむ の でした。
「ドウジョウ は する が、 しかし、 オマエ も これ で、 すこし は おもいしったろう。 もう、 オレ は、 ニド と ここ へは こない よ。 まるで、 ジゴク だ。 ……でも、 ヨシ ちゃん は、 ゆるして やれ。 オマエ だって、 どうせ、 ろく な ヤツ じゃ ない ん だ から。 シッケイ する ぜ」
 きまずい バショ に、 ながく とどまって いる ほど マ の ぬけた ホリキ では ありません でした。
 ジブン は おきあがって、 ヒトリ で ショウチュウ を のみ、 それから、 おいおい コエ を はなって なきました。 いくらでも、 いくらでも なける の でした。
 いつのまにか、 ハイゴ に、 ヨシコ が、 ソラマメ を ヤマモリ に した オサラ を もって ぼんやり たって いました。
「なんにも、 しない から って いって、……」
「いい。 なにも いうな。 オマエ は、 ヒト を うたがう こと を しらなかった ん だ。 おすわり。 マメ を たべよう」
 ならんで すわって マメ を たべました。 ああ、 シンライ は ツミ なり や? アイテ の オトコ は、 ジブン に マンガ を かかせて は、 わずか な オカネ を もったいぶって おいて ゆく 30 サイ ゼンゴ の ムガク な コオトコ の ショウニン なの でした。
 さすが に その ショウニン は、 ソノゴ やって は きません でした が、 ジブン には、 どうして だ か、 その ショウニン に たいする ゾウオ より も、 サイショ に みつけた すぐ その とき に おおきい セキバライ も なにも せず、 そのまま ジブン に しらせ に また オクジョウ に ひきかえして きた ホリキ に たいする ニクシミ と イカリ が、 ねむられぬ ヨル など に むらむら おこって うめきました。
 ゆるす も、 ゆるさぬ も ありません。 ヨシコ は シンライ の テンサイ なの です。 ヒト を うたがう こと を しらなかった の です。 しかし、 それ ゆえ の ヒサン。
 カミ に とう。 シンライ は ツミ なり や。
 ヨシコ が けがされた と いう こと より も、 ヨシコ の シンライ が けがされた と いう こと が、 ジブン に とって その ノチ ながく、 いきて おられない ほど の クノウ の タネ に なりました。 ジブン の よう な、 いやらしく おどおど して、 ヒト の カオイロ ばかり うかがい、 ヒト を しんじる ノウリョク が、 ひびわれて しまって いる モノ に とって、 ヨシコ の ムク の シンライシン は、 それこそ アオバ の タキ の よう に すがすがしく おもわれて いた の です。 それ が イチヤ で、 きいろい オスイ に かわって しまいました。 みよ、 ヨシコ は、 その ヨ から ジブン の イッピン イッショウ に さえ キ を つかう よう に なりました。
「おい」
 と よぶ と、 ぴくっと して、 もう メ の ヤリバ に こまって いる ヨウス です。 どんな に ジブン が わらわせよう と して、 オドウケ を いって も、 おろおろ し、 びくびく し、 やたら に ジブン に ケイゴ を つかう よう に なりました。
 はたして、 ムク の シンライシン は、 ツミ の ゲンセン なり や。
 ジブン は、 ヒトヅマ の おかされた モノガタリ の ホン を、 いろいろ さがして よんで みました。 けれども、 ヨシコ ほど ヒサン な オカサレカタ を して いる オンナ は、 ヒトリ も ない と おもいました。 どだい、 これ は、 てんで モノガタリ にも なにも なりません。 あの コオトコ の ショウニン と、 ヨシコ との アイダ に、 すこし でも コイ に にた カンジョウ でも あった なら、 ジブン の キモチ も かえって たすかる かも しれません が、 ただ、 ナツ の イチヤ、 ヨシコ が シンライ して、 そうして、 それっきり、 しかも その ため に ジブン の ミケン は、 マッコウ から わられ コエ が しゃがれて ワカジラガ が はじまり、 ヨシコ は イッショウ おろおろ しなければ ならなく なった の です。 タイテイ の モノガタリ は、 その ツマ の 「コウイ」 を オット が ゆるす か どう か、 そこ に ジュウテン を おいて いた よう でした が、 それ は ジブン に とって は、 そんな に くるしい ダイモンダイ では ない よう に おもわれました。 ゆるす、 ゆるさぬ、 そのよう な ケンリ を リュウホ して いる オット こそ サイワイ なる かな、 とても ゆるす こと が できぬ と おもった なら、 なにも そんな に オオサワギ せず とも、 さっさと ツマ を リエン して、 あたらしい ツマ を むかえたら どう だろう、 それ が できなかったら、 いわゆる 「ゆるして」 ガマン する さ、 いずれ に して も オット の キモチ ヒトツ で シホウ ハッポウ が まるく おさまる だろう に、 と いう キ さえ する の でした。 つまり、 そのよう な ジケン は、 たしか に オット に とって おおいなる ショック で あって も、 しかし、 それ は 「ショック」 で あって、 いつまでも つきる こと なく うちかえし うちよせる ナミ と ちがい、 ケンリ の ある オット の イカリ で もって どう に でも ショリ できる トラブル の よう に ジブン には おもわれた の でした。 けれども、 ジブン たち の バアイ、 オット に なんの ケンリ も なく、 かんがえる と なにもかも ジブン が わるい よう な キ が して きて、 おこる どころ か、 オコゴト ヒトツ も いえず、 また、 その ツマ は、 その ショユウ して いる まれ な ビシツ に よって おかされた の です。 しかも、 その ビシツ は、 オット の かねて アコガレ の、 ムク の シンライシン と いう たまらなく カレン な もの なの でした。
 ムク の シンライシン は、 ツミ なり や。
 ユイイツ の タノミ の ビシツ に さえ、 ギワク を いだき、 ジブン は、 もはや なにもかも、 ワケ が わからなく なり、 おもむく ところ は、 ただ アルコール だけ に なりました。 ジブン の カオ の ヒョウジョウ は キョクド に いやしく なり、 アサ から ショウチュウ を のみ、 ハ が ぼろぼろ に かけて、 マンガ も ほとんど ワイガ に ちかい もの を かく よう に なりました。 いいえ、 はっきり いいます。 ジブン は その コロ から、 シュンガ の コピー を して ミツバイ しました。 ショウチュウ を かう オカネ が ほしかった の です。 いつも ジブン から シセン を はずして おろおろ して いる ヨシコ を みる と、 コイツ は まったく ケイカイ を しらぬ オンナ だった から、 あの ショウニン と イチド だけ では なかった の では なかろう か、 また、 ホリキ は? いや、 あるいは ジブン の しらない ヒト とも? と ギワク は ギワク を うみ、 さりとて おもいきって それ を といただす ユウキ も なく、 レイ の フアン と キョウフ に のたうちまわる オモイ で、 ただ ショウチュウ を のんで よって は、 わずか に ヒクツ な ユウドウ ジンモン みたい な もの を おっかなびっくり こころみ、 ナイシン おろかしく イッキ イチユウ し、 ウワベ は、 やたら に おどけて、 そうして、 それから、 ヨシコ に いまわしい ジゴク の アイブ を くわえ、 ドロ の よう に ねむりこける の でした。
 その トシ の クレ、 ジブン は ヨル おそく デイスイ して キタク し、 サトウミズ を のみたく、 ヨシコ は ねむって いる よう でした から、 ジブン で オカッテ に ゆき サトウツボ を さがしだし、 フタ を あけて みたら サトウ は なにも はいって なくて、 くろく ほそながい カミ の コバコ が はいって いました。 なにげなく テ に とり、 その ハコ に はられて ある レッテル を みて がくぜん と しました。 その レッテル は、 ツメ で ハンブン イジョウ も かきはがされて いました が、 ヨウジ の ブブン が のこって いて、 それ に はっきり かかれて いました。 DIAL。
 ジアール。 ジブン は その コロ もっぱら ショウチュウ で、 サイミンザイ を もちいて は いません でした が、 しかし、 フミン は ジブン の ジビョウ の よう な もの でした から、 タイテイ の サイミンザイ には オナジミ でした。 ジアール の この ハコ ヒトツ は、 たしか に チシリョウ イジョウ の はず でした。 まだ ハコ の フウ を きって は いません でした が、 しかし、 いつかは、 やる キ で こんな ところ に、 しかも レッテル を かきはがしたり など して かくして いた の に チガイ ありません。 かわいそう に、 あの コ には レッテル の ヨウジ が よめない ので、 ツメ で ハンブン かきはがして、 これ で だいじょうぶ と おもって いた の でしょう。 (オマエ に ツミ は ない)
 ジブン は、 オト を たてない よう に そっと コップ に ミズ を みたし、 それから、 ゆっくり ハコ の フウ を きって、 ゼンブ、 イッキ に クチ の ナカ に ほうり、 コップ の ミズ を おちついて のみほし、 デントウ を けして そのまま ねました。
 3 チュウヤ、 ジブン は しんだ よう に なって いた そう です。 イシャ は カシツ と みなして、 ケイサツ に とどける の を ユウヨ して くれた そう です。 カクセイ しかけて、 いちばん サキ に つぶやいた ウワゴト は、 ウチ へ かえる、 と いう コトバ だった そう です。 ウチ とは、 どこ の こと を さして いった の か、 とうの ジブン にも、 よく わかりません が、 とにかく、 そう いって、 ひどく ないた そう です。
 しだいに キリ が はれて、 みる と、 マクラモト に ヒラメ が、 ひどく フキゲン な カオ を して すわって いました。
「コノマエ も、 トシ の クレ の こと でして ね、 おたがい もう、 メ が まわる くらい いそがしい のに、 いつも、 トシ の クレ を ねらって、 こんな こと を やられた ヒ には、 こっち の イノチ が たまらない」
 ヒラメ の ハナシ の キキテ に なって いる の は、 キョウバシ の バー の マダム でした。
「マダム」
 と ジブン は よびました。
「うん、 ナニ? キ が ついた?」
 マダム は ワライガオ を ジブン の カオ の ウエ に かぶせる よう に して いいました。
 ジブン は、 ぽろぽろ ナミダ を ながし、
「ヨシコ と わかれさせて」
 ジブン でも おもいがけなかった コトバ が でました。
 マダム は ミ を おこし、 かすか な タメイキ を もらしました。
 それから ジブン は、 これ も また じつに おもいがけない コッケイ とも あほうらしい とも、 ケイヨウ に くるしむ ほど の シツゲン を しました。
「ボク は、 オンナ の いない ところ に いく ん だ」
 うわっはっは、 と まず、 ヒラメ が オオゴエ を あげて わらい、 マダム も くすくす わらいだし、 ジブン も ナミダ を ながしながら セキメン の テイ に なり、 クショウ しました。
「うん、 その ほう が いい」
 と ヒラメ は、 いつまでも だらしなく わらいながら、
「オンナ の いない ところ に いった ほう が よい。 オンナ が いる と、 どうも いけない。 オンナ の いない ところ とは、 いい オモイツキ です」
 オンナ の いない ところ。 しかし、 この ジブン の あほうくさい ウワゴト は、 ノチ に いたって、 ヒジョウ に インサン に ジツゲン せられました。
 ヨシコ は、 ナニ か、 ジブン が ヨシコ の ミガワリ に なって ドク を のんだ と でも おもいこんで いる らしく、 イゼン より も なお いっそう、 ジブン に たいして、 おろおろ して、 ジブン が ナニ を いって も わらわず、 そうして ろくに クチ も きけない よう な アリサマ なので、 ジブン も アパート の ヘヤ の ナカ に いる の が、 うっとうしく、 つい ソト へ でて、 あいかわらず やすい サケ を あおる こと に なる の でした。 しかし、 あの ジアール の イッケン イライ、 ジブン の カラダ が めっきり やせほそって、 テアシ が だるく、 マンガ の シゴト も なまけがち に なり、 ヒラメ が あの とき、 ミマイ と して おいて いった オカネ (ヒラメ は それ を、 シブタ の ココロザシ です、 と いって いかにも ゴジシン から でた オカネ の よう に して さしだしました が、 これ も コキョウ の アニ たち から の オカネ の よう でした。 ジブン も その コロ には、 ヒラメ の イエ から にげだした あの とき と ちがって、 ヒラメ の そんな もったいぶった シバイ を、 おぼろげ ながら みぬく こと が できる よう に なって いました ので、 こちら も ずるく、 まったく きづかぬ フリ を して、 シンミョウ に その オカネ の オレイ を ヒラメ に むかって もうしあげた の でした が、 しかし、 ヒラメ たち が、 なぜ、 そんな ややこしい カラクリ を やらかす の か、 わかるよう な、 わからない よう な、 どうしても ジブン には、 ヘン な キ が して なりません でした) その オカネ で、 おもいきって ヒトリ で ミナミ イズ の オンセン に いって みたり など しました が、 とても そんな ユウチョウ な オンセン メグリ など できる ガラ では なく、 ヨシコ を おもえば ワビシサ かぎりなく、 ヤド の ヘヤ から ヤマ を ながめる など の おちついた シンキョウ には はなはだ とおく、 ドテラ にも きがえず、 オユ にも はいらず、 ソト へ とびだして は うすぎたない チャミセ みたい な ところ に とびこんで、 ショウチュウ を、 それこそ あびる ほど のんで、 カラダグアイ を いっそう わるく して キキョウ した だけ の こと でした。
 トウキョウ に オオユキ の ふった ヨル でした。 ジブン は よって ギンザ ウラ を、 ここ は オクニ を ナンビャクリ、 ここ は オクニ を ナンビャクリ、 と コゴエ で くりかえし くりかえし つぶやく よう に うたいながら、 なおも ふりつもる ユキ を クツサキ で けちらして あるいて、 とつぜん、 はきました。 それ は ジブン の サイショ の カッケツ でした。 ユキ の ウエ に、 おおきい ヒノマル の ハタ が できました。 ジブン は、 しばらく しゃがんで、 それから、 よごれて いない カショ の ユキ を リョウテ で すくいとって、 カオ を あらいながら なきました。
 こうこ は、 どうこ の ホソミチ じゃ?
 こうこ は、 どうこ の ホソミチ じゃ?
 あわれ な ドウジョ の ウタゴエ が、 ゲンチョウ の よう に、 かすか に トオク から きこえます。 フコウ。 コノヨ には、 サマザマ の フコウ な ヒト が、 いや、 フコウ な ヒト ばかり、 と いって も カゴン では ない でしょう が、 しかし、 その ヒトタチ の フコウ は、 いわゆる セケン に たいして どうどう と コウギ が でき、 また 「セケン」 も その ヒトタチ の コウギ を ヨウイ に リカイ し ドウジョウ します。 しかし、 ジブン の フコウ は、 すべて ジブン の ザイアク から なので、 ダレ にも コウギ の シヨウ が ない し、 また くちごもりながら ヒトコト でも コウギ-めいた こと を いいかける と、 ヒラメ ならず とも セケン の ヒトタチ ゼンブ、 よくも まあ そんな クチ が きけた もの だ と あきれかえる に ちがいない し、 ジブン は いったい ぞくに いう 「ワガママモノ」 なの か、 または その ハンタイ に、 キ が よわすぎる の か、 ジブン でも ワケ が わからない けれども、 とにかく ザイアク の カタマリ らしい ので、 どこまでも おのずから どんどん フコウ に なる ばかり で、 ふせぎとめる グタイサク など ない の です。
 ジブン は たって、 とりあえず ナニ か テキトウ な クスリ を と おもい、 チカク の クスリヤ に はいって、 そこ の オクサン と カオ を みあわせ、 シュンカン、 オクサン は、 フラッシュ を あびた みたい に クビ を あげ メ を みはり、 ボウダチ に なりました。 しかし、 その みはった メ には、 キョウガク の イロ も ケンオ の イロ も なく、 ほとんど スクイ を もとめる よう な、 したう よう な イロ が あらわれて いる の でした。 ああ、 この ヒト も、 きっと フコウ な ヒト なの だ、 フコウ な ヒト は、 ヒト の フコウ にも ビンカン な もの なの だ から、 と おもった とき、 ふと、 その オクサン が マツバヅエ を ついて あぶなっかしく たって いる の に キ が つきました。 かけよりたい オモイ を おさえて、 なおも その オクサン と カオ を みあわせて いる うち に ナミダ が でて きました。 すると、 オクサン の おおきい メ から も、 ナミダ が ぽろぽろ と あふれて でました。
 それっきり、 ヒトコト も クチ を きかず に、 ジブン は その クスリヤ から でて、 よろめいて アパート に かえり、 ヨシコ に シオミズ を つくらせて のみ、 だまって ねて、 あくる ヒ も、 カゼギミ だ と ウソ を ついて イチニチ いっぱい ねて、 ヨル、 ジブン の ヒミツ の カッケツ が どうにも フアン で たまらず、 おきて、 あの クスリヤ に ゆき、 コンド は わらいながら、 オクサン に、 じつに すなお に イマ まで の カラダグアイ を コクハク し、 ソウダン しました。
「オサケ を およし に ならなければ」
 ジブン たち は、 ニクシン の よう でした。
「アルチュウ に なって いる かも しれない ん です。 イマ でも のみたい」
「いけません。 ワタシ の シュジン も、 テーベ の くせ に、 キン を サケ で ころす ん だ なんて いって、 サケビタリ に なって、 ジブン から ジュミョウ を ちぢめました」
「フアン で いけない ん です。 こわくて、 とても、 ダメ なん です」
「オクスリ を さしあげます。 オサケ だけ は、 およしなさい」
 オクサン (ミボウジン で、 オトコ の コ が ヒトリ、 それ は チバ だ か どこ だ か の イダイ に はいって、 まもなく チチ と おなじ ヤマイ に かかり、 キュウガク ニュウインチュウ で、 イエ には チュウフウ の シュウト が ねて いて、 オクサン ジシン は 5 サイ の オリ、 ショウニ マヒ で カタホウ の アシ が ぜんぜん ダメ なの でした) は、 マツバヅエ を ことこと と つきながら、 ジブン の ため に あっち の タナ、 こっち の ヒキダシ、 いろいろ と ヤクヒン を とりそろえて くれる の でした。
 これ は、 ゾウケツザイ。
 これ は、 ヴィタミン の チュウシャエキ。 チュウシャキ は、 これ。
 これ は、 カルシウム の ジョウザイ。 イチョウ を こわさない よう に、 ジアスターゼ。
 これ は、 ナニ。 これ は、 ナニ、 と 5~6 シュ の ヤクヒン の セツメイ を アイジョウ こめて して くれた の です が、 しかし、 この フコウ な オクサン の アイジョウ も また、 ジブン に とって ふかすぎました。 サイゴ に オクサン が、 これ は、 どうしても、 なんと して も オサケ を のみたくて、 たまらなく なった とき の オクスリ、 と いって すばやく カミ に つつんだ コバコ。
 モルヒネ の チュウシャエキ でした。
 サケ より は、 ガイ に ならぬ と オクサン も いい、 ジブン も それ を しんじて、 また ヒトツ には、 サケ の ヨイ も さすが に フケツ に かんぜられて きた ヤサキ でも あった し、 ヒサシブリ に アルコール と いう サタン から のがれる こと の できる ヨロコビ も あり、 なんの チュウチョ も なく、 ジブン は ジブン の ウデ に、 その モルヒネ を チュウシャ しました。 フアン も、 ショウソウ も、 ハニカミ も、 きれい に ジョキョ せられ、 ジブン は はなはだ ヨウキ な ノウベンカ に なる の でした。 そうして、 その チュウシャ を する と ジブン は、 カラダ の スイジャク も わすれて、 マンガ の シゴト に セイ が でて、 ジブン で かきながら ふきだして しまう ほど チンミョウ な シュコウ が うまれる の でした。
 1 ニチ 1 ポン の つもり が、 2 ホン に なり、 4 ホン に なった コロ には、 ジブン は もう それ が なければ、 シゴト が できない よう に なって いました。
「いけません よ、 チュウドク に なったら、 そりゃ もう、 タイヘン です」
 クスリヤ の オクサン に そう いわれる と、 ジブン は もう かなり の チュウドク カンジャ に なって しまった よう な キ が して きて、 (ジブン は、 ヒト の アンジ に じつに もろく ひっかかる タチ なの です。 この オカネ は つかっちゃ いけない よ、 と いって も、 オマエ の こと だ もの なあ、 なんて いわれる と、 なんだか つかわない と わるい よう な、 キタイ に そむく よう な、 ヘン な サッカク が おこって、 かならず すぐに その オカネ を つかって しまう の でした) その チュウドク の フアン の ため、 かえって ヤクヒン を たくさん もとめる よう に なった の でした。
「たのむ! もう ヒトハコ。 カンジョウ は ゲツマツ に きっと はらいます から」
「カンジョウ なんて、 いつでも かまいません けど、 ケイサツ の ほう が、 うるさい ので ねえ」
 ああ、 いつでも ジブン の シュウイ には、 なにやら、 にごって くらく、 うさんくさい ヒカゲモノ の ケハイ が つきまとう の です。
「そこ を なんとか、 ごまかして、 たのむ よ、 オクサン。 キス して あげよう」
 オクサン は、 カオ を あからめます。
 ジブン は、 いよいよ つけこみ、
「クスリ が ない と シゴト が ちっとも、 はかどらない ん だよ。 ボク には、 あれ は キョウセイザイ みたい な もの なん だ」
「それじゃ、 いっそ、 ホルモン チュウシャ が いい でしょう」
「バカ に しちゃ いけません。 オサケ か、 そう で なければ、 あの クスリ か、 どっち か で なければ シゴト が できない ん だ」
「オサケ は、 いけません」
「そう でしょう? ボク は ね、 あの クスリ を つかう よう に なって から、 オサケ は イッテキ も のまなかった。 おかげで、 カラダ の チョウシ が、 とても いい ん だ。 ボク だって、 いつまでも、 ヘタクソ な マンガ など を かいて いる つもり は ない、 これから、 サケ を やめて、 カラダ を なおして、 ベンキョウ して、 きっと えらい エカキ に なって みせる。 イマ が ダイジ な ところ なん だ。 だから さ、 ね、 おねがい。 キス して あげよう か」
 オクサン は わらいだし、
「こまる わねえ。 チュウドク に なって も しりません よ」
 ことこと と マツバヅエ の オト を させて、 その ヤクヒン を タナ から とりだし、
「ヒトハコ は、 あげられません よ。 すぐ つかって しまう の だ もの。 ハンブン ね」
「ケチ だなあ、 まあ、 シカタ が ない や」
 イエ へ かえって、 すぐに 1 ポン、 チュウシャ を します。
「いたく ない ん です か?」
 ヨシコ は、 おどおど ジブン に たずねます。
「それ あ いたい さ。 でも、 シゴト の ノウリツ を あげる ため には、 いや でも これ を やらなければ いけない ん だ。 ボク は コノゴロ、 とても ゲンキ だろう? さあ、 シゴト だ。 シゴト、 シゴト」
 と はしゃぐ の です。
 シンヤ、 クスリヤ の ト を たたいた こと も ありました。 ネマキスガタ で、 ことこと マツバヅエ を ついて でて きた オクサン に、 いきなり だきついて キス して、 なく マネ を しました。
 オクサン は、 だまって ジブン に ヒトハコ、 てわたしました。
 ヤクヒン も また、 ショウチュウ ドウヨウ、 いや、 それ イジョウ に、 いまわしく フケツ な もの だ と、 つくづく おもいしった とき には、 すでに ジブン は カンゼン な チュウドク カンジャ に なって いました。 しんに、 ハジシラズ の キワミ でした。 ジブン は その ヤクヒン を えたい ばかり に、 またも シュンガ の コピー を はじめ、 そうして、 あの クスリヤ の フグ の オクサン と モジドオリ の シュウカンケイ を さえ むすびました。
 しにたい、 いっそ、 しにたい、 もう トリカエシ が つかない ん だ、 どんな こと を して も、 ナニ を して も、 ダメ に なる だけ なん だ、 ハジ の ウワヌリ を する だけ なん だ、 ジテンシャ で アオバ の タキ など、 ジブン には のぞむ べく も ない ん だ、 ただ けがらわしい ツミ に あさましい ツミ が かさなり、 クノウ が ゾウダイ し キョウレツ に なる だけ なん だ、 しにたい、 しななければ ならぬ、 いきて いる の が ツミ の タネ なの だ、 など と おもいつめて も、 やっぱり、 アパート と クスリヤ の アイダ を ハンキョウラン の スガタ で オウフク して いる ばかり なの でした。
 いくら シゴト を して も、 クスリ の シヨウリョウ も したがって ふえて いる ので、 クスリダイ の カリ が おそろしい ほど の ガク に のぼり、 オクサン は、 ジブン の カオ を みる と ナミダ を うかべ、 ジブン も ナミダ を ながしました。
 ジゴク。
 この ジゴク から のがれる ため の サイゴ の シュダン、 これ が シッパイ したら、 アト は もう クビ を くくる ばかり だ、 と いう カミ の ソンザイ を かける ほど の ケツイ を もって、 ジブン は、 コキョウ の チチ-アテ に ながい テガミ を かいて、 ジブン の ジツジョウ イッサイ を (オンナ の こと は、 さすが に かけません でした が) コクハク する こと に しました。
 しかし、 ケッカ は いっそう わるく、 まてど くらせど なんの ヘンジ も なく、 ジブン は その ショウソウ と フアン の ため に、 かえって クスリ の リョウ を ふやして しまいました。
 コンヤ、 10 ポン、 イッキ に チュウシャ し、 そうして オオカワ に とびこもう と、 ひそか に カクゴ を きめた その ヒ の ゴゴ、 ヒラメ が、 アクマ の カン で かぎつけた みたい に、 ホリキ を つれて あらわれました。
「オマエ は、 カッケツ した ん だって な」
 ホリキ は、 ジブン の マエ に アグラ を かいて そう いい、 イマ まで みた こと も ない くらい に やさしく ほほえみました。 その やさしい ビショウ が、 ありがたくて、 うれしくて、 ジブン は つい カオ を そむけて ナミダ を ながしました。 そうして カレ の その やさしい ビショウ ヒトツ で、 ジブン は カンゼン に うちやぶられ、 ほうむりさられて しまった の です。
 ジブン は ジドウシャ に のせられました。 とにかく ニュウイン しなければ ならぬ、 アト は ジブン たち に まかせなさい、 と ヒラメ も、 しんみり した クチョウ で、 (それ は ジヒ-ぶかい と でも ケイヨウ したい ほど、 ものしずか な クチョウ でした) ジブン に すすめ、 ジブン は イシ も ハンダン も なにも ない モノ の ごとく、 ただ めそめそ なきながら いい だくだく と フタリ の イイツケ に したがう の でした。 ヨシコ も いれて 4 ニン、 ジブン たち は、 ずいぶん ながい こと ジドウシャ に ゆられ、 アタリ が うすぐらく なった コロ、 モリ の ナカ の おおきい ビョウイン の、 ゲンカン に トウチャク しました。
 サナトリアム と ばかり おもって いました。
 ジブン は わかい イシ の いやに ものやわらか な、 テイチョウ な シンサツ を うけ、 それから イシ は、
「まあ、 しばらく ここ で セイヨウ する ん です ね」
 と、 まるで、 はにかむ よう に ビショウ して いい、 ヒラメ と ホリキ と ヨシコ は、 ジブン ヒトリ を おいて かえる こと に なりました が、 ヨシコ は キガエ の イルイ を いれて ある フロシキヅツミ を ジブン に てわたし、 それから だまって オビ の アイダ から チュウシャキ と ツカイノコリ の あの ヤクヒン を さしだしました。 やはり、 キョウセイザイ だ と ばかり おもって いた の でしょう か。
「いや、 もう いらない」
 じつに、 めずらしい こと でした。 すすめられて、 それ を キョヒ した の は、 ジブン の それまで の ショウガイ に おいて、 その とき ただ イチド、 と いって も カゴン で ない くらい なの です。 ジブン の フコウ は、 キョヒ の ノウリョク の ない モノ の フコウ でした。 すすめられて キョヒ する と、 アイテ の ココロ にも ジブン の ココロ にも、 エイエン に シュウゼン しえない しらじらしい ヒビワレ が できる よう な キョウフ に おびやかされて いる の でした。 けれども、 ジブン は その とき、 あれほど ハンキョウラン に なって もとめて いた モルヒネ を、 じつに シゼン に キョヒ しました。 ヨシコ の いわば 「カミ の ごとき ムチ」 に うたれた の でしょう か。 ジブン は、 あの シュンカン、 すでに チュウドク で なくなって いた の では ない でしょう か。
 けれども、 ジブン は それから すぐに、 あの はにかむ よう な ビショウ を する わかい イシ に アンナイ せられ、 ある ビョウトウ に いれられて、 がちゃん と カギ を おろされました。 ノウビョウイン でした。
 オンナ の いない ところ へ いく と いう、 あの ジアール を のんだ とき の ジブン の おろか な ウワゴト が、 まことに キミョウ に ジツゲン せられた わけ でした。 その ビョウトウ には、 オトコ の キョウジン ばかり で、 カンゴニン も オトコ でした し、 オンナ は ヒトリ も いません でした。
 イマ は もう ジブン は、 ザイニン どころ では なく、 キョウジン でした。 いいえ、 だんじて ジブン は くるって など いなかった の です。 イッシュンカン と いえど も、 くるった こと は ない ん です。 けれども、 ああ、 キョウジン は、 たいてい ジブン の こと を そう いう もの だ そう です。 つまり、 この ビョウイン に いれられた モノ は キチガイ、 いれられなかった モノ は、 ノーマル と いう こと に なる よう です。
 カミ に とう。 ムテイコウ は ツミ なり や?
 ホリキ の あの フシギ な うつくしい ビショウ に ジブン は なき、 ハンダン も テイコウ も わすれて ジドウシャ に のり、 そうして ここ に つれて こられて、 キョウジン と いう こと に なりました。 いまに、 ここ から でて も、 ジブン は やっぱり キョウジン、 いや、 ハイジン と いう コクイン を ヒタイ に うたれる こと でしょう。
 ニンゲン、 シッカク。
 もはや、 ジブン は、 カンゼン に、 ニンゲン で なくなりました。
 ここ へ きた の は ショカ の コロ で、 テツ の コウシ の マド から ビョウイン の ニワ の ちいさい イケ に あかい スイレン の ハナ が さいて いる の が みえました が、 それから ミツキ たち、 ニワ に コスモス が さきはじめ、 おもいがけなく コキョウ の チョウケイ が、 ヒラメ を つれて ジブン を ヒキトリ に やって きて、 チチ が センゲツマツ に イカイヨウ で なくなった こと、 ジブン たち は もう オマエ の カコ は とわぬ、 セイカツ の シンパイ も かけない つもり、 なにも しなくて いい、 そのかわり、 いろいろ ミレン も ある だろう が すぐに トウキョウ から はなれて、 イナカ で リョウヨウ セイカツ を はじめて くれ、 オマエ が トウキョウ で しでかした こと の アトシマツ は、 だいたい シブタ が やって くれた はず だ から、 それ は キ に しない で いい、 と レイ の キマジメ な キンチョウ した よう な クチョウ で いう の でした。
 コキョウ の サンガ が ガンゼン に みえる よう な キ が して きて、 ジブン は かすか に うなずきました。
 まさに ハイジン。
 チチ が しんだ こと を しって から、 ジブン は いよいよ ふぬけた よう に なりました。 チチ が、 もう いない、 ジブン の キョウチュウ から イッコク も はなれなかった あの なつかしく おそろしい ソンザイ が、 もう いない、 ジブン の クノウ の ツボ が カラッポ に なった よう な キ が しました。 ジブン の クノウ の ツボ が やけに おもかった の も、 あの チチ の せい だった の では なかろう か と さえ おもわれました。 まるで、 ハリアイ が ぬけました。 クノウ する ノウリョク を さえ うしないました。
 チョウケイ は ジブン に たいする ヤクソク を セイカク に ジッコウ して くれました。 ジブン の うまれて そだった マチ から キシャ で 4~5 ジカン、 ナンカ した ところ に、 トウホク には めずらしい ほど あたたかい ウミベ の オンセンチ が あって、 その ムラハズレ の、 マカズ は イツツ も ある の です が、 かなり ふるい イエ らしく カベ は はげおち、 ハシラ は ムシ に くわれ、 ほとんど シュウリ の シヨウ も ない ほど の ボウオク を かいとって ジブン に あたえ、 60 に ちかい ひどい アカゲ の みにくい ジョチュウ を ヒトリ つけて くれました。
 それから 3 ネン と すこし たち、 ジブン は その アイダ に その テツ と いう ロウジョチュウ に スウド ヘン な オカサレカタ を して、 ときたま フウフ-ゲンカ みたい な こと を はじめ、 ムネ の ビョウキ の ほう は イッシン イッタイ、 やせたり ふとったり、 ケッタン が でたり、 キノウ、 テツ に カルモチン を かって おいで、 と いって、 ムラ の クスリヤ に オツカイ に やったら、 イツモ の ハコ と ちがう カタチ の ハコ の カルモチン を かって きて、 べつに ジブン も キ に とめず、 ねる マエ に 10 ジョウ のんで も いっこう に ねむく ならない ので、 おかしい な と おもって いる うち に、 オナカ の グアイ が ヘン に なり いそいで ベンジョ へ いったら モウレツ な ゲリ で、 しかも、 それから ひきつづき 3 ド も ベンジョ に かよった の でした。 フシン に たえず、 クスリ の ハコ を よく みる と、 それ は ヘノモチン と いう ゲザイ でした。
 ジブン は アオムケ に ねて、 オナカ に ユタンポ を のせながら、 テツ に コゴト を いって やろう と おもいました。
「これ は、 オマエ、 カルモチン じゃ ない、 ヘノモチン、 と いう」
 と いいかけて、 うふふふ と わらって しまいました。 「ハイジン」 は、 どうやら これ は、 キゲキ メイシ の よう です。 ねむろう と して ゲザイ を のみ、 しかも、 その ゲザイ の ナマエ は、 ヘノモチン。
 イマ は ジブン には、 コウフク も フコウ も ありません。
 ただ、 イッサイ は すぎて ゆきます。
 ジブン が イマ まで アビキョウカン で いきて きた いわゆる 「ニンゲン」 の セカイ に おいて、 たった ヒトツ、 シンリ らしく おもわれた の は、 それ だけ でした。
 ただ、 イッサイ は すぎて ゆきます。
 ジブン は コトシ、 27 に なります。 シラガ が めっきり ふえた ので、 タイテイ の ヒト から、 40 イジョウ に みられます。

 アトガキ

 この シュキ を かきつづった キョウジン を、 ワタシ は、 チョクセツ には しらない。 けれども、 この シュキ に でて くる キョウバシ の スタンド バー の マダム とも おぼしき ジンブツ を、 ワタシ は ちょっと しって いる の で ある。 コガラ で、 カオイロ の よく ない、 メ が ほそく つりあがって いて、 ハナ の たかい、 ビジン と いう より は、 ビセイネン と いった ほう が いい くらい の かたい カンジ の ヒト で あった。 この シュキ には、 どうやら、 ショウワ 5、 6、 7 ネン、 あの コロ の トウキョウ の フウケイ が おもに うつされて いる よう に おもわれる が、 ワタシ が、 その キョウバシ の スタンド バー に、 ユウジン に つれられて 2~3 ド、 たちより、 ハイボール など のんだ の は、 レイ の ニホン の 「グンブ」 が そろそろ ロコツ に あばれはじめた ショウワ 10 ネン ゼンゴ の こと で あった から、 この シュキ を かいた オトコ には、 オメ に かかる こと が できなかった わけ で ある。
 しかるに、 コトシ の 2 ガツ、 ワタシ は チバ ケン フナバシ シ に ソカイ して いる ある ユウジン を たずねた。 その ユウジン は、 ワタシ の ダイガク ジダイ の いわば ガクユウ で、 イマ は ボウ-ジョシダイ の コウシ を して いる の で ある が、 じつは ワタシ は この ユウジン に ワタシ の ミウチ の モノ の エンダン を イライ して いた ので、 その ヨウジ も あり、 かたがた ナニ か シンセン な カイサンブツ でも しいれて ワタシ の イエ の モノタチ に くわせて やろう と おもい、 リュックサック を せおって フナバシ シ へ でかけて いった の で ある。
 フナバシ シ は、 ドロウミ に のぞんだ かなり おおきい マチ で あった。 シン ジュウミン たる その ユウジン の イエ は、 その トチ の ヒト に トコロバンチ を つげて たずねて も、 なかなか わからない の で ある。 さむい うえ に、 リュックサック を せおった カタ が いたく なり、 ワタシ は レコード の ヴァイオリン の オト に ひかれて、 ある キッサテン の ドア を おした。
 そこ の マダム に ミオボエ が あり、 たずねて みたら、 まさに、 10 ネン マエ の あの キョウバシ の ちいさい バー の マダム で あった。 マダム も、 ワタシ を すぐに おもいだして くれた ヨウス で、 たがいに おおげさ に おどろき、 わらい、 それから こんな とき の オキマリ の、 レイ の、 クウシュウ で やけだされた オタガイ の ケイケン を とわれ も せぬ のに、 いかにも ジマン-らしく かたりあい、
「アナタ は、 しかし、 かわらない」
「いいえ、 もう オバアサン。 カラダ が、 がたぴし です。 アナタ こそ、 おわかい わ」
「とんでもない、 コドモ が もう 3 ニン も ある ん だよ。 キョウ は ソイツラ の ため に カイダシ」
 など と、 これ も また ヒサシブリ で あった モノ ドウシ の オキマリ の アイサツ を かわし、 それから、 フタリ に キョウツウ の チジン の ソノゴ の ショウソク を たずねあったり して、 その うち に、 ふと マダム は クチョウ を あらため、 アナタ は ヨウ ちゃん を しって いた かしら、 と いう。 それ は しらない、 と こたえる と、 マダム は、 オク へ いって、 3 サツ の ノートブック と、 3 ヨウ の シャシン を もって きて ワタシ に てわたし、
「ナニ か、 ショウセツ の ザイリョウ に なる かも しれません わ」
 と いった。
 ワタシ は、 ヒト から おしつけられた ザイリョウ で モノ を かけない タチ なので、 すぐに その バ で かえそう か と おもった が、 (3 ヨウ の シャシン、 その キカイサ に ついて は、 ハシガキ にも かいて おいた) その シャシン に ココロ を ひかれ、 とにかく ノート を あずかる こと に して、 カエリ には また ここ へ たちよります が、 ナニマチ ナン-バンチ の ナニ さん、 ジョシダイ の センセイ を して いる ヒト の イエ を ゴゾンジ ない か、 と たずねる と、 やはり シン ジュウミン ドウシ、 しって いた。 ときたま、 この キッサテン にも おみえ に なる と いう。 すぐ キンジョ で あった。
 その ヨル、 ユウジン と わずか な オサケ を くみかわし、 とめて もらう こと に して、 ワタシ は アサ まで イッスイ も せず に、 レイ の ノート に よみふけった。
 その シュキ に かかれて ある の は、 ムカシ の ハナシ では あった が、 しかし、 ゲンダイ の ヒトタチ が よんで も、 かなり の キョウミ を もつ に ちがいない。 ヘタ に ワタシ の フデ を くわえる より は、 これ は このまま、 どこ か の ザッシシャ に たのんで ハッピョウ して もらった ほう が、 なお、 ユウイギ な こと の よう に おもわれた。
 コドモ たち への ミヤゲ の カイサンブツ は、 ヒモノ だけ。 ワタシ は、 リュックサック を せおって ユウジン の モト を じし、 レイ の キッサテン に たちより、
「キノウ は、 どうも。 ところで、……」
 と すぐに きりだし、
「この ノート は、 しばらく かして いただけません か」
「ええ、 どうぞ」
「この ヒト は、 まだ いきて いる の です か?」
「さあ、 それ が、 さっぱり わからない ん です。 10 ネン ほど マエ に、 キョウバシ の オミセ-アテ に、 その ノート と シャシン の コヅツミ が おくられて きて、 サシダシニン は ヨウ ちゃん に きまって いる の です が、 その コヅツミ には、 ヨウ ちゃん の ジュウショ も、 ナマエ さえ も かいて いなかった ん です。 クウシュウ の とき、 ホカ の もの に まぎれて、 これ も フシギ に たすかって、 ワタシ は こないだ はじめて、 ゼンブ よんで みて、……」
「なきました か?」
「いいえ、 なく と いう より、 ……ダメ ね、 ニンゲン も、 ああ なって は、 もう ダメ ね」
「それから 10 ネン、 と する と、 もう なくなって いる かも しれない ね。 これ は、 アナタ への オレイ の つもり で おくって よこした の でしょう。 たしょう、 コチョウ して かいて いる よう な ところ も ある けど、 しかし、 アナタ も、 そうとう ひどい ヒガイ を こうむった よう です ね。 もし、 これ が ゼンブ ジジツ だったら、 そうして ボク が この ヒト の ユウジン だったら、 やっぱり ノウビョウイン に つれて いきたく なった かも しれない」
「あの ヒト の オトウサン が わるい の です よ」
 なにげなさそう に、 そう いった。
「ワタシタチ の しって いる ヨウ ちゃん は、 とても すなお で、 よく キ が きいて、 あれ で オサケ さえ のまなければ、 いいえ、 のんで も、 ……カミサマ みたい な いい コ でした」
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ホウジョウキ

2017-02-04 | カモ ノ チョウメイ
 ホウジョウキ

 カモ ノ チョウメイ

 ゆく カハ の ナガレ は たえず して、 しかも、 モト の ミヅ に あらず。 ヨドミ に うかぶ ウタカタ は、 かつ きえ、 かつ むすびて、 ひさしく とどまりたる タメシ なし。 ヨノナカ に ある ヒト と スミカ と、 また かく の ごとし。
 タマシキ の ミヤコ の ウチ に、 ムネ を ならべ、 イラカ を あらそへる、 たかき、 いやしき、 ヒト の スマヒ は、 ヨヨ を へて つきせぬ もの なれど、 これ を マコト か と たづねれば、 ムカシ ありし イヘ は まれ なり。 あるいは コゾ やけて コトシ つくれり。 あるいは オホイヘ ほろびて コイヘ と なる。 すむ ヒト も これ に おなじ。 トコロ も かはらず、 ヒト も おほかれど、 イニシヘ みし ヒト は、 20~30 ニン が ウチ に、 わづか に ヒトリ フタリ なり。 アシタ に しに、 ユフベ に うまるる ナラヒ、 ただ、 ミヅ の アワ にぞ にたりける。
 しらず、 うまれ しぬる ヒト、 いづかた より きたりて、 いづかた へ か さる。 また しらず、 カリ の ヤドリ、 タ が ため に か ココロ を なやまし、 ナニ に よりて か メ を よろこばしむる。 そ の アルジ と スミカ と、 ムジャウ を あらそふ サマ、 いはば アサガホ の ツユ に こと ならず。 あるいは ツユ おちて ハナ のこれり。 のこる と いへど も アサヒ に かれぬ。 あるいは ハナ しぼみて ツユ なほ きえず。 きえず と いへど も ユフベ を まつ こと なし。
 ワレ、 モノ の ココロ を しれりし より、 ヨソヂ あまり の ハルアキ を おくれる アヒダ に、 ヨ の フシギ を みる こと、 やや たびたび に なりぬ。
 いんじ アンゲン 3 ネン ウヅキ 28 ニチ か とよ。 カゼ はげしく ふきて、 しづか ならざりし ヨ、 イヌ ノ トキ ばかり、 ミヤコ の タツミ より ヒ いできて、 イヌヰ に いたる。 ハテ には スザクモン、 ダイコクデン、 ダイガクレウ、 ミンブ シャウ など まで うつりて、 イチヤ の うち に チリハヒ と なりにき。
 ホモト は、 ヒグチ トミ ノ コウヂ とか や。 マヒビト を やどせる カリヤ より いできたりける と なん。 ふきまよふ カゼ に、 とかく うつりゆく ほど に、 アフギ を ひろげたる が ごとく スヱヒロ に なりぬ。 とほき イヘ は ケブリ に むせび、 ちかき アタリ は ひたすら ホノホ を チ に ふきつけたり。 ソラ には ハヒ を ふきたてたれば、 ヒ の ヒカリ に えいじて、 あまねく クレナヰ なる ナカ に、 カゼ に たへず、 ふききられたる ホノホ、 とぶ が ごとく して 1~2 チャウ を こえつつ うつりゆく。 そ の ナカ の ヒト、 ウツシゴコロ あらん や。 あるいは ケブリ に むせびて たふれふし、 あるいは ホノホ に まぐれて たちまち に しぬ。 あるいは ミヒトツ、 からうじて のがるる も、 シザイ を とりいづる に およばず、 シッチン マンボウ さながら クヮイジン と なりにき。 そ の ツヒエ、 いくそばく ぞ。 そ の タビ、 クギャウ の イヘ 16 やけたり。 まして そ の ホカ、 かぞへしる に およばず。 すべて ミヤコ の ウチ、 3 ブ が 1 に およべり とぞ。 ナンニョ しぬる モノ スジフニン、 ウマ、 ウシ の タグヒ ヘンサイ を しらず。
 ヒト の イトナミ、 みな おろか なる ナカ に、 さしも あやふき キャウヂュウ の イヘ を つくる とて、 タカラ を つひやし、 ココロ を なやます こと は、 すぐれて あぢきなく ぞ はべる。
 また、 ヂショウ 4 ネン ウヅキ の コロ、 ナカミカド キャウゴク の ホド より おほき なる ツジカゼ おこりて、 ロクデウ ワタリ まで ふける こと はべりき。
 3~4 チャウ を ふきまくる アヒダ に、 こもれる イヘ ども、 おほき なる も ちひさき も、 ヒトツ と して やぶれざる は なし。 さながら ひら に たふれたる も あり、 ケタ、 ハシラ ばかり のこれる も あり。 カド を ふきはなちて、 4~5 チャウ が ホカ に おき、 また、 カキ を ふきはらひて、 トナリ と ヒトツ に なせり。 いはんや、 イヘ の ウチ の シザイ、 カズ を つくして ソラ に あり、 ヒハダ、 フキイタ の タグヒ、 フユ の コノハ の カゼ に みだるる が ごとし。 チリ を ケブリ の ごとく ふきたてたてれば、 すべて メ も みえず、 おびたたしく なりどよむ ほど に、 モノ いふ コヱ も きこえず。 か の ヂゴク の ゴフ の カゼ なり とも、 かばかり に こそ は とぞ おぼゆる。 イヘ の ソンマウ せる のみ に あらず、 これ を とりつくろふ アヒダ に、 ミ を そこなひ、 かたはづける ヒト、 カズ も しらず。 こ の カゼ、 ヒツジ の カタ に うつりゆきて、 オホク の ヒト の ナゲキ を なせり。
 ツジカゼ は つねに ふく もの なれど、 かかる こと や ある、 タダゴト に あらず、 さるべき もの の サトシ か、 など ぞ うたがひはべりし。
 また、 ヂショウ 4 ネン ミナヅキ の コロ、 にはか に ミヤコウツリ はべりき。 いと おもひのほか なりし こと なり。 おほかた、 こ の キャウ の ハジメ を きける こと は、 サガ ノ テンワウ の オントキ、 ミヤコ と さだまりにける より ノチ、 すでに 400 ヨサイ を へたり。 こと なる ユヱ なくて、 たやすく あらたまる べく も あらねば、 これ を ヨ の ヒト やすからず うれへあへる、 げに コトワリ にも すぎたり。
 されど、 とかく いふかひなくて、 ミカド より はじめたてまつりて、 ダイジン、 クギャウ ミナ ことごとく うつろひたまひぬ。 ヨ に つかふる ホド の ヒト、 タレ か ヒトリ フルサト に のこりをらむ。 ツカサ、 クラヰ に オモヒ を かけ、 シュクン の カゲ を たのむ ホド の ヒト は、 ヒトヒ なり とも とく うつろはむ と はげみ、 トキ を うしなひ、 ヨ に あまされて、 ごする ところ なき モノ は、 うれへながら とまりをり。 ノキ を あらそひし ヒト の スマヒ、 ヒ を へつつ あれゆく。 イヘ は こぼたれて ヨドガハ に うかび、 チ は メノマヘ に ハタケ と なる。 ヒト の ココロ みな あらたまりて、 ただ ウマ、 クラ を のみ おもく す。 ウシ、 クルマ を ようする ヒト なし。 サイナンカイ の リャウショ を ねがひて、 トウホク の シャウヱン を このまず。
 そ の トキ、 おのづから コト の タヨリ ありて、 ツ ノ クニ の イマ の キャウ に いたれり。 トコロ の アリサマ を みる に、 そ の チ、 ホド せばくて デウリ を わる に たらず。 キタ は ヤマ に そひて たかく、 ミナミ は ウミ ちかくて くだれり。 ナミ の オト つねに かまびすしく、 シホカゼ ことに はげし。 ダイリ は ヤマ の ナカ なれば、 か の キノマロドノ も かく や と、 なかなか ヤウ かはりて、 イウ なる カタ も はべり。 ヒビ に こぼち、 カハ も せに はこびくだす イヘ、 いづく に つくれる に か ある らん。 なほ むなしき チ は おほく、 つくれる ヤ は すくなし。 コキャウ は すでに あれて、 シント は いまだ ならず。 あり とし ある ヒト は ミナ ウキグモ の オモヒ を なせり。 もとより こ の トコロ に をる モノ は、 チ を うしなひて うれふ。 イマ うつれる ヒト は、 ドボク の ワヅラヒ ある こと を なげく。 ミチ の ホトリ を みれば、 クルマ に のる べき は ウマ に のり、 イクヮン、 ホイ なる べき は、 おほく ヒタタレ を きたり。 ミヤコ の テブリ たちまち に あらたまりて、 ただ ひなびたる モノノフ に こと ならず。 ヨ の みだるる ズイサウ とか きける も しるく、 ヒ を へつつ ヨノナカ うきたちて、 ヒト の ココロ も をさまらず、 タミ の ウレヘ、 つひに むなしからざりければ、 おなじき トシ の フユ、 なほ こ の キャウ に かへりたまひにき。 されど、 こぼちわたせりし イヘ ども は、 いかに なりにける に か、 ことごとく モト の やう に しも つくらず。
 つたへきく、 イニシヘ の かしこき ミヨ には、 アハレミ を もちて クニ を をさめたまふ。 すなはち、 トノ に カヤ ふきて、 そ の ノキ を だに ととのへず、 ケブリ の ともしき を みたまふ トキ は、 カギリ ある ミツキモノ を さへ ゆるされき。 これ、 タミ を めぐみ、 ヨ を たすけたまふ に よりて なり。 イマ の ヨ の アリサマ、 ムカシ に なぞらへて しりぬ べし。
 また、 ヤウワ の コロ とか、 ひさしく なりて おぼえず、 フタトセ が アヒダ、 ヨノナカ ケカツ して、 あさましき こと はべりき。 あるいは ハル、 ナツ ヒデリ、 あるいは アキ、 オホカゼ、 オホミヅ など、 よからぬ こと ども うちつづきて、 ゴコク ことごとく ならず。 むなしく ハル かへし、 ナツ ううる イトナミ ありて、 アキ かり、 フユ をさむる ゾメキ は なし。
 これ に よりて、 クニグニ の タミ、 あるいは チ を すてて サカヒ を いで、 あるいは イヘ を わすれて ヤマ に すむ。 サマザマ の オンイノリ はじまりて、 なべて ならぬ ノリ ども おこなはるれど、 さらに そ の シルシ なし。 キャウ の ナラヒ、 ナニワザ に つけて も、 ミナモト は ヰナカ を こそ たのめる に、 たえて のぼる もの なければ、 さのみ やは ミサヲ も つくりあへん。 ねんじわびつつ、 サマザマ の タカラモノ、 カタハシ より すつる が ごとく すれど も、 さらに、 メ みたつる ヒト なし。 たまたま かふる モノ は コガネ を かろく し、 ゾク を おもく す。 コツジキ、 ミチ の ホトリ に おほく、 うれへかなしむ コヱ ミミ に みてり。
 マヘ の トシ、 かく の ごとく からうじて くれぬ。 あくる トシ は たちなほる べき か と おもふ ほど に、 あまりさへ エキレイ うちそひて、 まさざま に アトカタ なし。 ヨ の ヒト ミナ けいしぬれば、 ヒ を へつつ きはまりゆく サマ、 セウスイ の イヲ の タトヘ に かなへり。 ハテ には、 カサ うちき、 アシ ひきつつみ、 よろしき スガタ したる モノ、 ひたすら に イヘ ごと に こひありく。 かく わびしれたる モノドモ の、 ありく か と みれば、 すなはち たふれふしぬ。 ツイヒジ の ツラ、 ミチ の ホトリ に、 うゑしぬる モノ の タグヒ、 カズ も しらず。 とりすつる ワザ も しらねば、 くさき カ セカイ に みちみちて、 かはりゆく カタチ アリサマ、 メ も あてられぬ こと おほかり。 いはんや、 カハラ など には、 ウマ、 クルマ の ゆきかふ ミチ だに なし。 あやしき シヅ、 ヤマガツ も チカラ つきて、 タキギ さへ ともしく なりゆけば、 たのむ カタ なき ヒト は、 ミヅカラ が イヘ を こぼちて、 イチ に いでて うる。 ヒトリ が もちて いでたる アタヒ、 イチニチ が イノチ に だに およばず とぞ。 あやしき こと は、 タキギ の ナカ に、 あかき ニ つき、 ハク など トコロドコロ に みゆる キ、 あひまじはりける を たづねれば、 す べき カタ なき モノ、 フルデラ に いたりて ホトケ を ぬすみ、 ダウ の モノノグ を やぶりとりて、 わりくだける なりけり。 ヂョクアク の ヨ に しも うまれあひて、 かかる こころうき ワザ を なん みはべりし。
 また、 いと あはれ なる こと も はべりき。 さりがたき メ、 ヲトコ もちたる モノ は、 そ の オモヒ まさりて ふかき モノ、 かならず さきだちて しぬ。 そ の ユヱ は、 ワガミ は ツギ に して、 ヒト を いたはしく おもふ アヒダ に、 まれまれ えたる クヒモノ をも、 カレ に ゆづる に よりて なり。 されば、 オヤコ ある モノ は、 さだまれる こと にて、 オヤ ぞ さきだちける。 また、 ハハ の イノチ つきたる を しらず して、 いとけなき コ の、 なほ チ を すひつつ ふせる など も ありけり。
 ニンナジ に リュウゲウ ホフイン と いふ ヒト、 かく しつつ カズ も しらず しぬる こと を かなしみて、 そ の カウベ の みゆる ごと に、 ヒタヒ に アジ を かきて、 エン を むすばしむる ワザ を なん せられける。 ヒトカズ を しらん とて、 4、 5 リャウゲツ を かぞへたりければ、 キャウ の ウチ、 イチデウ より は ミナミ、 クデウ より は キタ、 キャウゴク より は ニシ、 スザク より は ヒンガシ の、 ミチ の ホトリ なる カシラ、 すべて 4 マン 2300 あまり なん ありける。 いはんや、 そ の ゼンゴ に しぬる モノ おほく、 また カハラ、 シラカハ、 ニシ ノ キャウ、 モロモロ の ヘンヂ など を くはへて いはば、 サイゲン も ある べからず。 いかに いはんや、 シチダウ ショコク をや。
 ストクヰン の オホンクラヰ の トキ、 チャウジョウ の コロ とか、 かかる タメシ ありけり と きけど、 そ の ヨ の アリサマ は しらず。 まのあたり めづらか なりし こと なり。
 また、 おなじ コロ か とよ。 おびたたしく オホナヰ ふる こと はべりき。 そ の サマ、 ヨ の ツネ ならず。 ヤマ は くづれて カハ を うづみ、 ウミ は かたぶきて クガチ を ひたせり。 ツチ さけて ミヅ わきいで、 イハホ われて タニ に まろびいる。 ナギサ こぐ フネ は ナミ に ただよひ、 ミチ ゆく ウマ は アシ の タチド を まどはす。 ミヤコ の ホトリ には、 ザイザイ ショショ、 ダウシャ タフメウ、 ヒトツ と して またからず。 あるいは くづれ、 あるいは たふれぬ。 チリハヒ たちのぼりて、 さかり なる ケブリ の ごとし。 チ の うごき、 イヘ の やぶるる オト、 イカヅチ に こと ならず。 イヘ の ウチ に おれば、 たちまち に ひしげなん と す。 はしりいづれば、 チ われさく。 ハネ なければ、 ソラ をも とぶ べからず。 リュウ ならば や、 クモ にも のらん。 オソレ の ナカ に おそる べかりける は、 ただ ナヰ なりけり と こそ おぼえはべりしか。
 かく、 おびたたしく ふる こと は、 しばし にて やみにしかど も、 そ の ナゴリ しばし は たえず。 ヨ の ツネ、 おどろく ホド の ナヰ、 20~30 ド ふらぬ ヒ は なし。 トヲカ、 ハツカ すぎにしかば、 やうやう まどほ に なりて、 あるいは 4~5 ド、 2~3 ド、 もしは ヒトヒマゼ、 2~3 ニチ に イチド など、 おほかた そ の ナゴリ、 ミツキ ばかり や はべりけん。
 シダイシュ の ナカ に、 スイ、 クヮ、 フウ は つねに ガイ を なせど、 ダイチ に いたりて は こと なる ヘン を なさず。 ムカシ、 サイカウ の コロ とか、 オホナヰ ふりて、 トウダイジ の ホトケ の ミグシ おち など、 いみじき こと ども はベりけれど、 なほ コノタビ には しかず とぞ。 スナハチ は、 ヒトミナ あぢきなき こと を のべて、 いささか ココロ の ニゴリ も うすらぐ と みえしかど、 ツキヒ かさなり、 トシ へにし ノチ は、 コトバ に かけて いひいづる ヒト だに なし。
 すべて ヨノナカ の ありにくく、 ワガミ と スミカ と の、 はかなく、 あだ なる サマ、 また かく の ごとし。 いはんや、 トコロ に より、 ミノホド に したがひつつ、 ココロ を なやます こと は、 あげて かぞふ べからず。
 もし、 オノレ が ミ、 カズ ならず して、 ケンモン の カタハラ に をる モノ は、 ふかく よろこぶ こと あれど も、 おほき に たのしむ に あたはず。 ナゲキ せち なる トキ も、 コヱ を あげて なく こと なし。 シンダイ やすからず、 タチヰ に つけて、 おそれをののく サマ、 たとえば、 スズメ の タカ の ス に ちかづける が ごとし。 もし、 まづしくて、 とめる イヘ の トナリ に をる モノ は、 アサユフ すぼき スガタ を はぢて、 へつらひつつ いでいる。 サイシ、 ドウボク の うらやめる サマ を みる にも、 フクカ の ヒト の ないがしろ なる ケシキ を きく にも、 ココロ ネンネン に うごきて、 ときとして やすからず。 もし、 せばき チ に をれば、 ちかく エンシャウ ある トキ、 そ の サイ を のがるる こと なし。 もし、 ヘンヂ に あれば、 ワウバン ワヅラヒ おほく、 タウゾク の ナン はなはだし。 また、 イキホヒ ある モノ は トンヨク ふかく、 ヒトリミ なる モノ は ヒト に かろめらる。 タカラ あれば オソレ おほく、 まづしければ ウラミ せち なり。 ヒト を たのめば、 ミ、 タ の イウ なり。 ヒト を はぐくめば、 ココロ、 オンアイ に つかはる。 ヨ に したがへば、 ミ くるし。 したがはねば、 きゃうせる に にたり。 いづれ の トコロ を しめて、 いかなる ワザ を して か、 しばし も こ の ミ を やどし、 たまゆら も ココロ を やすむ べき。
 ワガミ、 チチカタ の オホバ の イヘ を つたへて、 ひさしく か の トコロ に すむ。 そ の ノチ、 エン かけて ミ おとろへ、 しのぶ カタガタ しげかりしかど、 つひに アト とむる こと を えず。 ミソヂ あまり に して、 さらに ワ が ココロ と、 ヒトツ の イホリ を むすぶ。 これ を ありし スマヒ に ならぶる に、 10 ブ が 1 なり。 ただ ヰヤ ばかり を かまへて、 はかばかしく ヤ を つくる に およばず。 わづか に ツイヒヂ を つけり と いへど も、 カド を たつる たづきなし。 タケ を ハシラ と して クルマ を やどせり。 ユキ ふり、 カゼ ふく ごと に、 あやふからず しも あらず。 トコロ、 カハラ ちかければ、 ミヅ の ナン も ふかく、 シラナミ の オソレ も さわがし。
 すべて、 あられぬ ヨ を ねんじすぐしつつ、 ココロ を なやませる こと、 30 ヨネン なり。 そ の アイダ、 ヲリヲリ の タガヒメ、 おのづから みじかき ウン を さとりぬ。 すなはち、 イソヂ の ハル を むかへて、 イヘ を いで、 ヨ を そむけり。 もとより サイシ なければ、 すてがたき ヨスガ も なし。 ミ に クヮンロク あらず。 ナニ に つけて か シフ を とどめん。 むなしく オホハラヤマ の クモ に ふして、 また イツカヘリ の ハルアキ を なん へにける。
 ここ に、 ムソヂ の ツユ キエガタ に およびて、 さらに スヱハ の ヤドリ を むすべる こと あり。 いはば、 タビビト の ヒトヨ の ヤド を つくり、 おいたる カヒコ の マユ を いとなむ が ごとし。 これ を ナカゴロ の スミカ に ならぶれば、 また 100 ブ が 1 に およばず。 とかく いふ ほど に、 ヨハヒ は トシドシ に たかく、 スミカ は をりをり に せばし。 そ の イヘ の アリサマ、 ヨ の ツネ にも にず。 ヒロサ は わづか に ハウヂャウ、 タカサ は 7 シャク が ウチ なり。 トコロ を おもひさだめざる が ゆゑ に、 チ を しめて つくらず。 ツチヰ を くみ、 ウチオホヒ を ふきて、 ツギメ ごと に カケガネ を かけたり。 もし、 ココロ に かなはぬ こと あらば、 やすく ホカ へ うつさん が ため なり。 そ の、 あらためつくる こと、 いくばく の ワヅラヒ か ある。 つむ ところ、 わづか に 2 リョウ、 クルマ の チカラ を むくふ ホカ には、 さらに タ の ヨウトウ いらず。
 イマ、 ヒノヤマ の オク に アト を かくして ノチ、 ヒンガシ に 3 ジャク あまり の ヒサシ を さして、 シバ をりくぶる ヨスガ と す。 ミナミ に タケ の スノコ を しき、 そ の ニシ に アカダナ を つくり、 キタ に よせて、 シャウジ を へだてて、 アミダ の ヱザウ を アンヂ し、 ソバ に フゲン を かき、 マヘ に ホケキャウ を おけり。 ヒンガシ の キハ に ワラビ の ホドロ を しきて、 ヨル の ユカ と す。 ニシミナミ に タケ の ツリダナ を かまへて、 くろき カハゴ 3 ガフ を おけり。 すなはち、 ワカ、 クヮンゲン、 ワウジャウ エウシフ ごとき の セウモツ を いれたり。 カタハラ に、 コト、 ビハ おのおの 1 チャウ を たつ。 いはゆる ヲリゴト、 ツギビハ これ なり。 カリ の イホリ の アリヤウ、 かく の ごとし。
 そ の トコロ の サマ を いはば、 ミナミ に カケヒ あり。 イハ を たてて、 ミヅ を ためたり。 ハヤシ の キ ちかければ、 ツマギ を ひろふ に ともしからず。 ナ を トヤマ と いふ。 マサキノカヅラ、 アト うづめり。 タニ しげけれど、 ニシ はれたり。 クヮンネン の タヨリ、 なき に しも あらず。 ハル は フヂナミ を みる。 シウン の ごとく して、 サイハウ に にほふ。 ナツ は ホトトギス を きく。 かたらふ ごと に、 シデ の ヤマヂ を ちぎる。 アキ は ヒグラシ の コエ、 ミミ に みてり。 ウツセミ の ヨ を かなしむ か と きこゆ。 フユ は ユキ を あはれぶ。 つもり きゆる サマ、 ザイシャウ に たとへつ べし。 もし、 ネンブツ ものうく、 ドキャウ まめ ならぬ トキ は、 みづから やすみ、 みづから おこたる。 さまたぐる ヒト も なく、 また はづ べき ヒト も なし。 ことさら に ムゴン を せざれど も、 ヒトリ をれば、 クゴフ を をさめつ べし。 かならず キンカイ を まもる と しも なく とも、 キャウガイ なければ、 ナニ に つけて か やぶらん。 もし、 アト の シラナミ に、 こ の ミ を よする アシタ には、 ヲカノヤ に ゆきかふ フネ を ながめて、 マンシャミ が フゼイ を ぬすみ、 もし、 カツラ の カゼ、 ハ を ならす ユフベ には、 ジンヤウ ノ エ を おもひやりて、 ゲン トトク の オコナヒ を ならふ。 もし、 ヨキョウ あれば、 しばしば マツ の ヒビキ に シウフウラク を たぐへ、 ミヅ の オト に リウセン の キョク を あやつる。 ゲイ は これ つたなけれど も、 ヒト の ミミ を よろこばしめん と には あらず。 ヒトリ しらべ、 ヒトリ えいじて、 みづから ココロ を やしなふ ばかり なり。
 また、 フモト に ヒトツ の シバ の イホリ あり。 すなはち、 こ の ヤマモリ が をる トコロ なり。 かしこ に コワラハ あり。 ときどき きたりて あひとぶらふ。 もし、 ツレヅレ なる トキ は、 これ を トモ と して ユギャウ す。 カレ は トトセ、 コレ は ムソヂ。 そ の ヨハヒ、 ことのほか なれど、 ココロ を なぐさむる こと、 これ おなじ。 あるいは ツバナ を ぬき、 イハナシ を とり、 ヌカゴ を もり、 セリ を つむ。 あるいは スソワ の タヰ に いたりて、 オチボ を ひろひて、 ホグミ を つくる。 もし、 うららか なれば、 ミネ に よぢのぼりて、 はるか に フルサト の ソラ を のぞみ、 コハタヤマ、 フシミ の サト、 トバ、 ハツカシ を みる。 ショウチ は ヌシ なければ、 ココロ を なぐさむる に サハリ なし。 アユミ ワヅラヒ なく、 ココロ とほく いたる トキ は、 これ より ミネツヅキ、 スミヤマ を こえ、 カサトリ を すぎて、 あるいは イハマ に まうで、 あるいは イシヤマ を をがむ。 もしは また、 アハヅ ノ ハラ を わけつつ、 セミウタ の オキナ が アト を とぶらひ、 タナカミガハ を わたりて、 サルマル マウチギミ が ハカ を たづぬ。 カヘルサ には、 ヲリ に つけつつ、 サクラ を かり、 モミヂ を もとめ、 ワラビ を をり、 コノミ を ひろひて、 かつは ホトケ に たてまつり、 かつは イヘヅト と す。 もし、 ヨ しづか なれば、 マド の ツキ に コジン を しのび、 サル の コヱ に ソデ を うるほす。 クサムラ の ホタル は とほく マキノシマ の カガリビ に まがひ、 アカツキ の アメ は おのづから コノハ ふく アラシ に にたり。 ヤマドリ の ほろほろ と なく を ききて も、 チチ か ハハ か と うたがひ、 ミネ の カセギ の ちかく なれたる に つけて も、 ヨ に とほざかる ホド を しる。 あるいは また、 ウヅミビ を かきおこして、 オイ の ネザメ の トモ と す。 おそろしき ヤマ ならねば、 フクロフ の コヱ を あはれむ に つけて も、 ヤマナカ の ケイキ、 ヲリ に つけて、 つくる こと なし。 いはんや、 ふかく おもひ、 ふかく しらん ヒト の ため には、 これ に しも かぎる べからず。
 おほかた、 こ の トコロ に すみはじめし トキ は、 あからさま と おもひしかど も、 イマ すでに、 イツトセ を へたり。 カリ の イホリ も やや フルサト と なりて、 ノキ に クチバ ふかく、 ツチヰ に こけむせり。 おのづから、 コト の タヨリ に ミヤコ を きけば、 こ の ヤマ に こもりゐて ノチ、 やんごとなき ヒト の かくれたまへる も あまた きこゆ。 まして、 そ の カズ ならぬ タグヒ、 つくして これ を しる べからず。 たびたび の エンシャウ に ほろびたる イヘ、 また いくそばく ぞ。 ただ カリ の イホリ のみ、 のどけく して オソレ なし。 ホド せばし と いへど も、 ヨル ふす ユカ あり、 ヒル ゐる ザ あり。 イッシン を やどす に フソク なし。 ガウナ は ちいさき カヒ を このむ。 これ ミ しれる に よりて なり。 ミサゴ は アライソ に ゐる。 すなはち、 ヒト を おそるる が ゆゑ なり。 ワレ また かく の ごとし。 ミ を しり、 ヨ を しれれば、 ねがはず、 わしらず。 ただ しづか なる を ノゾミ と し、 ウレヘ なき を タノシミ と す。 すべて ヨ の ヒト の スミカ を つくる ナラヒ、 かならずしも、 ミ の ため に せず。 あるいは サイシ、 ケンゾク の ため に つくり、 あるいは シンヂツ、 ホウイウ の ため に つくる。 あるいは シュクン、 シシャウ および ザイホウ、 ギウバ の ため に さへ これ を つくる。 ワレ イマ、 ミ の ため に むすべり。 ヒト の ため に つくらず。 ユヱ いかん と なれば、 イマ の ヨ の ナラヒ、 こ の ミ の アリサマ、 ともなふ べき ヒト も なく、 たのむ べき ヤツコ も なし。 たとひ、 ひろく つくれり とも、 タレ を やどし、 タレ を か すゑん。
 それ、 ヒト の トモ と ある モノ は、 とめる を たふとみ、 ねんごろ なる を サキ と す。 かならずしも、 ナサケ ある と、 すなほ なる と をば あいせず。 ただ、 シチク、 クヮゲツ を トモ と せん には しかじ。 ヒト の ヤツコ たる モノ は、 シャウバツ はなはだしく、 オンコ あつき を サキ と す。 さらに、 はぐくみ あはれむ と、 やすく しづか なる と をば ねがはず。 ただ、 ワガミ を ヌヒ と する には しかず。 いかが ヌヒ と する と ならば、 もし、 なす べき こと あれば、 すなはち オノ が ミ を つかふ。 たゆからず しも あらねど、 ヒト を したがへ、 ヒト を かへりみる より やすし。 もし、 ありく べき こと あれば、 みづから あゆむ。 くるし と いへど も、 ウマ、 クラ、 ウシ、 クルマ と、 ココロ を なやます には しかず。 イマ、 イッシン を わかちて、 フタツ の ヨウ を なす。 テ の ヤツコ、 アシ の ノリモノ、 よく ワ が ココロ に かなへり。 ココロ、 ミ の クルシミ を しれれば、 くるしむ トキ は やすめつ、 まめ なれば つかふ。 つかふ とて も、 たびたび すぐさず。 ものうし とて も、 ココロ を うごかす こと なし。 いかに いはんや、 つねに ありき、 つねに はたらく は、 ヤウジャウ なる べし。 なんぞ いたづら に やすみをらん。 ヒト を なやます、 ザイゴフ なり。 いかが タ の チカラ を かる べき。 イショク の タグヒ、 また おなじ。 フヂ の コロモ、 アサ の フスマ、 うる に したがひて、 ハダヘ を かくし、 ノベ の オハギ、 ミネ の コノミ、 わづか に イノチ を つぐ ばかり なり。 ヒト に まじはらざれば、 スガタ を はづる クイ も なし。 カテ ともしければ、 おろそか なる ムクイ を あまく す。 すべて、 かやう の タノシミ、 とめる ヒト に たいして いふ には あらず。 ただ、 ワガミ ヒトツ に とりて、 ムカシ と イマ と を なぞらふる ばかり なり。
 それ、 サンガイ は ただ ココロ ヒトツ なり。 ココロ もし やすからず は、 ザウメ、 シッチン も よしなく、 クウデン、 ロウカク も ノゾミ なし。 イマ、 さびしき スマヒ、 ヒトマ の イホリ、 みづから これ を あいす。 おのづから ミヤコ に いでて、 ミ の コツガイ と なれる こと を はづ と いへど も、 かへりて ここ に をる トキ は、 タ の ゾクヂン に はする こと を あはれむ。 もし、 ヒト こ の いへる こと を うたがはば、 イヲ と トリ との アリサマ を みよ。 イヲ は ミヅ に あかず。 イヲ に あらざれば、 そ の ココロ を しらず。 トリ は ハヤシ を ねがふ。 トリ に あらざれば、 そ の ココロ を しらず。 カンキョ の キビ も また おなじ。 すまず して タレ か さとらん。
 そもそも、 イチゴ の ツキカゲ かたぶきて、 ヨサン、 ヤマノハ に ちかし。 たちまち に サンヅ の ヤミ に むかはん と す。 ナニ の ワザ を か かこたん と する。 ホトケ の をしへたまふ オモムキ は、 コト に ふれて シフシン なかれ と なり。 イマ、 サウアン を あいする も トガ と す。 カンセキ に ぢゃくする も サハリ なる べし。 いかが エウ なき タノシミ を のべて、 あたら トキ を すぐさん。
 しづか なる アカツキ、 こ の コトワリ を おもひつづけて、 みづから ココロ に とひて いはく、 ヨ を のがれて、 サンリン に まじはる は、 ココロ を をさめて ミチ を おこなはん と なり。 しかるを、 ナンヂ、 スガタ は ヒジリ にて、 ココロ は ニゴリ に しめり。 スミカ は すなはち、 ジャウミャウ コジ の アト を けがせり と いへど も、 たもつ ところ は、 わづか に シュリ ハンドク が オコナヒ に だに およばず。 もし これ、 ヒンセン の ムクイ の みづから なやます か、 はたまた マウシン の いたりて きゃうせる か。 そ の トキ、 ココロ さらに こたふる こと なし。 ただ、 カタハラ に ゼッコン を やとひて、 フシャウ の アミダブツ、 リャウサンベン まうして やみぬ。
 ときに、 ケンリャク の フタトセ、 ヤヨヒ の ツゴモリゴロ、 サウモン の レンイン、 トヤマ の イホリ に して、 これ を しるす。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする