カナ文字文庫(漢字廃止論)

日本文学の名作などをカナ書きに改めて掲載。

ココロ 「センセイ と イショ 3」

2015-05-21 | ナツメ ソウセキ
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 ワタクシ が ショモツ ばかり かう の を みて、 オクサン は すこし キモノ を こしらえろ と いいました。 ワタクシ は じっさい イナカ で おった モメンモノ しか もって いなかった の です。 その コロ の ガクセイ は イト の はいった キモノ を ハダ に つけません でした。 ワタクシ の トモダチ に ヨコハマ の アキンド か ナニ か で、 ウチ は なかなか ハデ に くらして いる モノ が ありました が、 そこ へ ある とき ハブタエ の ドウギ が ハイタツ で とどいた こと が あります。 すると ミンナ が それ を みて わらいました。 その オトコ は はずかしがって いろいろ ベンカイ しました が、 せっかく の ドウギ を コウリ の ソコ へ ほうりこんで リヨウ しない の です。 それ を また オオゼイ が よって たかって、 わざと きせました。 すると ウン わるく その ドウギ に シラミ が たかりました。 トモダチ は ちょうど サイワイ と でも おもった の でしょう。 ヒョウバン の ドウギ を ぐるぐる と まるめて、 サンポ に でた ツイデ に、 ネヅ の おおきな ドブ の ナカ へ すてて しまいました。 その とき イッショ に あるいて いた ワタクシ は、 ハシ の ウエ に たって わらいながら トモダチ の ショサ を ながめて いました が、 ワタクシ の ムネ の どこ にも もったいない と いう キ は すこしも おこりません でした。
 その コロ から みる と ワタクシ も だいぶ オトナ に なって いました。 けれども まだ ジブン で ヨソユキ の キモノ を こしらえる と いう ほど の フンベツ は でなかった の です。 ワタクシ は ソツギョウ して ヒゲ を はやす ジダイ が こなければ、 フクソウ の シンパイ など は する に およばない もの だ と いう ヘン な カンガエ を もって いた の です。 それで オクサン に ショモツ は いる が キモノ は いらない と いいました。 オクサン は ワタクシ の かう ショモツ の ブンリョウ を しって いました。 かった ホン を みんな よむ の か と きく の です。 ワタクシ の かう もの の ウチ には ジビキ も あります が、 とうぜん メ を とおす べき はず で ありながら、 ページ さえ きって ない の も たしょう あった の です から、 ワタクシ は ヘンジ に きゅうしました。 ワタクシ は どうせ いらない もの を かう なら、 ショモツ でも イフク でも おなじ だ と いう こと に キ が つきました。 そのうえ ワタクシ は いろいろ セワ に なる と いう コウジツ の モト に、 オジョウサン の キ に いる よう な オビ か タンモノ を かって やりたかった の です。 それで バンジ を オクサン に イライ しました。
 オクサン は ジブン ヒトリ で ゆく とは いいません。 ワタクシ にも イッショ に こい と メイレイ する の です。 オジョウサン も ゆかなくて は いけない と いう の です。 イマ と ちがった クウキ の ナカ に そだてられた ワタクシドモ は、 ガクセイ の ミブン と して、 あまり わかい オンナ など と イッショ に あるきまわる シュウカン を もって いなかった もの です。 その コロ の ワタクシ は イマ より も まだ シュウカン の ドレイ でした から、 たしょう チュウチョ しました が、 おもいきって でかけました。
 オジョウサン は たいそう きかざって いました。 ジタイ が イロ の しろい くせ に、 オシロイ を ホウフ に ぬった もの だ から なお めだちます。 オウライ の ヒト が じろじろ みて ゆく の です。 そうして オジョウサン を みた モノ は きっと その シセン を ひるがえして、 ワタクシ の カオ を みる の だ から、 ヘン な もの でした。
 3 ニン は ニホンバシ へ いって かいたい もの を かいました。 かう アイダ にも いろいろ キ が かわる ので、 おもった より ヒマ が かかりました。 オクサン は わざわざ ワタクシ の ナ を よんで どう だろう と ソウダン を する の です。 ときどき タンモノ を オジョウサン の カタ から ムネ へ タテ に あてて おいて、 ワタクシ に 2~3 ポ とおのいて みて くれろ と いう の です。 ワタクシ は その たび ごと に、 それ は ダメ だ とか、 それ は よく にあう とか、 とにかく イチニンマエ の クチ を ききました。
 こんな こと で ジカン が かかって カエリ は ユウメシ の ジコク に なりました。 オクサン は ワタクシ に たいする オレイ に ナニ か ゴチソウ する と いって、 キハラダナ と いう ヨセ の ある せまい ヨコチョウ へ ワタクシ を つれこみました。 ヨコチョウ も せまい が、 メシ を くわせる ウチ も せまい もの でした。 この ヘン の チリ を いっこう こころえない ワタクシ は、 オクサン の チシキ に おどろいた くらい です。
 ワレワレ は ヨ に いって ウチ へ かえりました。 その あくる ヒ は ニチヨウ でした から、 ワタクシ は シュウジツ ヘヤ の ウチ に とじこもって いました。 ゲツヨウ に なって、 ガッコウ へ でる と、 ワタクシ は アサッパラ そうそう キュウユウ の ヒトリ から からかわれました。 いつ サイ を むかえた の か と いって わざとらしく きかれる の です。 それから ワタクシ の サイクン は ヒジョウ に ビジン だ と いって ほめる の です。 ワタクシ は 3 ニン-ヅレ で ニホンバシ へ でかけた ところ を、 その オトコ に どこ か で みられた もの と みえます。

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 ワタクシ は ウチ へ かえって オクサン と オジョウサン に その ハナシ を しました。 オクサン は わらいました。 しかし さだめて メイワク だろう と いって ワタクシ の カオ を みました。 ワタクシ は その とき ハラ の ナカ で、 オトコ は こんな ふう に して、 オンナ から キ を ひいて みられる の か と おもいました。 オクサン の メ は じゅうぶん ワタクシ に そう おもわせる だけ の イミ を もって いた の です。 ワタクシ は その とき ジブン の かんがえて いる とおり を チョクセツ に うちあけて しまえば よかった かも しれません。 しかし ワタクシ には もう コギ と いう さっぱり しない カタマリ が こびりついて いました。 ワタクシ は うちあけよう と して、 ひょいと とまりました。 そうして ハナシ の カクド を コイ に すこし そらしました。
 ワタクシ は カンジン の ジブン と いう もの を モンダイ の ナカ から ひきぬいて しまいました。 そうして オジョウサン の ケッコン に ついて、 オクサン の イチュウ を さぐった の です。 オクサン は 2~3 そういう ハナシ の ない でも ない よう な こと を、 あきらか に ワタクシ に つげました。 しかし まだ ガッコウ へ でて いる くらい で トシ が わかい から、 こちら では さほど いそがない の だ と セツメイ しました。 オクサン は クチ へは ださない けれども、 オジョウサン の ヨウショク に だいぶ オモキ を おいて いる らしく みえました。 きめよう と おもえば いつでも きめられる ん だ から と いう よう な こと さえ コウガイ しました。 それから オジョウサン より ホカ に コドモ が ない の も、 ヨウイ に てばなしたがらない ゲンイン に なって いました。 ヨメ に やる か、 ムコ を とる か、 それ に さえ まよって いる の では なかろう か と おもわれる ところ も ありました。
 はなして いる うち に、 ワタクシ は イロイロ の チシキ を オクサン から えた よう な キ が しました。 しかし それ が ため に、 ワタクシ は キカイ を いっした と ドウヨウ の ケッカ に おちいって しまいました。 ワタクシ は ジブン に ついて、 ついに イチゴン も クチ を ひらく こと が できません でした。 ワタクシ は イイカゲン な ところ で ハナシ を きりあげて、 ジブン の ヘヤ へ かえろう と しました。
 サッキ まで ソバ に いて、 あんまり だわ とか なんとか いって わらった オジョウサン は、 いつのまにか ムコウ の スミ に いって、 セナカ を こっち へ むけて いました。 ワタクシ は たとう と して ふりかえった とき、 その ウシロスガタ を みた の です。 ウシロスガタ だけ で ニンゲン の ココロ が よめる はず は ありません。 オジョウサン が この モンダイ に ついて どう かんがえて いる か、 ワタクシ には ケントウ が つきません でした。 オジョウサン は トダナ を マエ に して すわって いました。 その トダナ の 1 シャク ばかり あいて いる スキマ から、 オジョウサン は ナニ か ひきだして ヒザ の ウエ へ おいて ながめて いる らしかった の です。 ワタクシ の メ は その スキマ の ハジ に、 オトトイ かった タンモノ を みつけだしました。 ワタクシ の キモノ も オジョウサン の も おなじ トダナ の スミ に かさねて あった の です。
 ワタクシ が なんとも いわず に セキ を たちかける と、 オクサン は キュウ に あらたまった チョウシ に なって、 ワタクシ に どう おもう か と きく の です。 その キキカタ は ナニ を どう おもう の か と ハンモン しなければ わからない ほど フイ でした。 それ が オジョウサン を はやく かたづけた ほう が トクサク だろう か と いう イミ だ と はっきり した とき、 ワタクシ は なるべく ゆっくら な ほう が いい だろう と こたえました。 オクサン は ジブン も そう おもう と いいました。
 オクサン と オジョウサン と ワタクシ の カンケイ が こう なって いる ところ へ、 もう ヒトリ オトコ が いりこまなければ ならない こと に なりました。 その オトコ が この カテイ の イチイン と なった ケッカ は、 ワタクシ の ウンメイ に ヒジョウ な ヘンカ を きたして います。 もし その オトコ が ワタクシ の セイカツ の コウロ を よこぎらなかった ならば、 おそらく こういう ながい もの を アナタ に かきのこす ヒツヨウ も おこらなかった でしょう。 ワタクシ は テ も なく、 マ の とおる マエ に たって、 その シュンカン の カゲ に イッショウ を うすぐらく されて キ が つかず に いた の と おなじ こと です。 ジハク する と、 ワタクシ は ジブン で その オトコ を ウチ へ ひっぱって きた の です。 むろん オクサン の キョダク も ヒツヨウ です から、 ワタクシ は サイショ なにもかも かくさず うちあけて、 オクサン に たのんだ の です。 ところが オクサン は よせ と いいました。 ワタクシ には つれて こなければ すまない ジジョウ が じゅうぶん ある のに、 よせ と いう オクサン の ほう には、 スジ の たった リクツ は まるで なかった の です。 だから ワタクシ は ワタクシ の いい と おもう ところ を しいて ダンコウ して しまいました。

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 ワタクシ は その トモダチ の ナ を ここ に K と よんで おきます。 ワタクシ は この K と コドモ の とき から の ナカヨシ でした。 コドモ の とき から と いえば ことわらない でも わかって いる でしょう。 フタリ には ドウキョウ の エンコ が あった の です。 K は シンシュウ の ボウサン の コ でした。 もっとも チョウナン では ありません、 ジナン でした。 それで ある イシャ の ところ へ ヨウシ に やられた の です。 ワタクシ の うまれた チホウ は たいへん ホンガンジ-ハ の セイリョク の つよい ところ でした から、 シンシュウ の ボウサン は ホカ の もの に くらべる と、 ブッシツテキ に ワリ が よかった よう です。 イチレイ を あげる と、 もし ボウサン に オンナ の コ が あって、 その オンナ の コ が トシゴロ に なった と する と、 ダンカ の モノ が ソウダン して、 どこ か テキトウ な ところ へ ヨメ に やって くれます。 むろん ヒヨウ は ボウサン の フトコロ から でる の では ありません。 そんな ワケ で シンシュウデラ は たいてい ユウフク でした。
 K の うまれた イエ も ソウオウ に くらして いた の です。 しかし ジナン を トウキョウ へ シュギョウ に だす ほど の ヨリョク が あった か どう か しりません。 また シュギョウ に でられる ベンギ が ある ので、 ヨウシ の ソウダン が まとまった もの か どう か、 そこ も ワタクシ には わかりません。 とにかく K は イシャ の ウチ へ ヨウシ に いった の です。 それ は ワタクシタチ が まだ チュウガク に いる とき の こと でした。 ワタクシ は キョウジョウ で センセイ が メイボ を よぶ とき に、 K の セイ が キュウ に かわって いた ので おどろいた の を イマ でも キオク して います。
 K の ヨウシサキ も かなり な ザイサンカ でした。 K は そこ から ガクシ を もらって トウキョウ へ でて きた の です。 でて きた の は ワタクシ と イッショ で なかった けれども、 トウキョウ へ ついて から は、 すぐ おなじ ゲシュク に はいりました。 その ジブン は ヒトツヘヤ に よく フタリ も 3 ニン も ツクエ を ならべて ネオキ した もの です。 K と ワタクシ も フタリ で おなじ マ に いました。 ヤマ で いけどられた ドウブツ が、 オリ の ナカ で だきあいながら、 ソト を にらめる よう な もの でしたろう。 フタリ は トウキョウ と トウキョウ の ヒト を おそれました。 それでいて 6 ジョウ の マ の ナカ では、 テンカ を ヘイゲイ する よう な こと を いって いた の です。
 しかし ワレワレ は マジメ でした。 ワレワレ は じっさい えらく なる つもり で いた の です。 ことに K は つよかった の です。 テラ に うまれた カレ は、 つねに ショウジン と いう コトバ を つかいました。 そうして カレ の コウイ ドウサ は ことごとく この ショウジン の イチゴ で ケイヨウ される よう に、 ワタクシ には みえた の です。 ワタクシ は ココロ の ウチ で つねに K を イケイ して いました。
 K は チュウガク に いた コロ から、 シュウキョウ とか テツガク とか いう むずかしい モンダイ で、 ワタクシ を こまらせました。 これ は カレ の チチ の カンカ なの か、 または ジブン の うまれた イエ、 すなわち テラ と いう イッシュ トクベツ な タテモノ に ぞくする クウキ の エイキョウ なの か、 わかりません。 ともかくも カレ は フツウ の ボウサン より は はるか に ボウサン-らしい セイカク を もって いた よう に みうけられます。 がんらい K の ヨウカ では カレ を イシャ に する つもり で トウキョウ へ だした の です。 しかるに ガンコ な カレ は イシャ には ならない ケッシン を もって、 トウキョウ へ でて きた の です。 ワタクシ は カレ に むかって、 それ では ヨウフボ を あざむく と おなじ こと では ない か と なじりました。 ダイタン な カレ は そう だ と こたえる の です。 ミチ の ため なら、 その くらい の こと を して も かまわない と いう の です。 その とき カレ の もちいた ミチ と いう コトバ は、 おそらく カレ にも よく わかって いなかった でしょう。 ワタクシ は むろん わかった とは いえません。 しかし トシ の わかい ワタクシタチ には、 この ばくぜん と した コトバ が たっとく ひびいた の です。 よし わからない に して も けだかい ココロモチ に シハイ されて、 そちら の ほう へ うごいて ゆこう と する イキグミ に いやしい ところ の みえる はず は ありません。 ワタクシ は K の セツ に サンセイ しました。 ワタクシ の ドウイ が K に とって どの くらい ユウリョク で あった か、 それ は ワタクシ も しりません。 イチズ な カレ は、 たとい ワタクシ が いくら ハンタイ しよう とも、 やはり ジブン の オモイドオリ を つらぬいた に ちがいなかろう とは さっせられます。 しかし マンイチ の バアイ、 サンセイ の セイエン を あたえた ワタクシ に、 タショウ の セキニン が できて くる ぐらい の こと は、 コドモ ながら ワタクシ は よく ショウチ して いた つもり です。 よし その とき に それ だけ の カクゴ が ない に して も、 セイジン した メ で、 カコ を ふりかえる ヒツヨウ が おこった バアイ には、 ワタクシ に わりあてられた だけ の セキニン は、 ワタクシ の ほう で おびる の が シトウ に なる くらい な ゴキ で ワタクシ は サンセイ した の です。

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 K と ワタクシ は おなじ カ へ ニュウガク しました。 K は すました カオ を して、 ヨウカ から おくって くれる カネ で、 ジブン の すき な ミチ を あるきだした の です。 しれ は しない と いう アンシン と、 しれたって かまう もの か と いう ドキョウ と が、 フタツ ながら K の ココロ に あった もの と みる より ほか シカタ が ありません。 K は ワタクシ より も ヘイキ でした。
 サイショ の ナツヤスミ に K は クニ へ かえりません でした。 コマゴメ の ある テラ の ヒトマ を かりて ベンキョウ する の だ と いって いました。 ワタクシ が かえって きた の は 9 ガツ ジョウジュン でした が、 カレ は はたして オオガンノン の ソバ の きたない テラ の ナカ に とじこもって いました。 カレ の ザシキ は ホンドウ の すぐ ソバ の せまい ヘヤ でした が、 カレ は そこ で ジブン の おもう とおり に ベンキョウ が できた の を よろこんで いる らしく みえました。 ワタクシ は その とき カレ の セイカツ の だんだん ボウサン-らしく なって ゆく の を みとめた よう に おもいます。 カレ は テクビ に ジュズ を かけて いました。 ワタクシ が それ は なんの ため だ と たずねたら、 カレ は オヤユビ で ヒトツ フタツ と カンジョウ する マネ を して みせました。 カレ は こうして ヒ に ナンベン も ジュズ の ワ を カンジョウ する らしかった の です。 ただし その イミ は ワタクシ には わかりません。 まるい ワ に なって いる もの を ヒトツブ ずつ かぞえて ゆけば、 どこ まで かぞえて いって も シュウキョク は ありません。 K は どんな ところ で どんな ココロモチ が して、 つまぐる テ を とめた でしょう。 つまらない こと です が、 ワタクシ は よく それ を おもう の です。
 ワタクシ は また カレ の ヘヤ に セイショ を みました。 ワタクシ は それまで に オキョウ の ナ を たびたび カレ の クチ から きいた オボエ が あります が、 キリスト-キョウ に ついて は、 とわれた こと も こたえられた ためし も なかった の です から、 ちょっと おどろきました。 ワタクシ は その ワケ を たずねず には いられません でした。 K は ワケ は ない と いいました。 これほど ヒト の ありがたがる ショモツ なら よんで みる の が アタリマエ だろう とも いいました。 そのうえ カレ は キカイ が あったら、 コーラン も よんで みる つもり だ と いいました。 カレ は モハメッド と ケン と いう コトバ に おおいなる キョウミ を もって いる よう でした。
 2 ネン-メ の ナツ に カレ は クニ から サイソク を うけて ようやく かえりました。 かえって も センモン の こと は なんにも いわなかった もの と みえます。 ウチ でも また そこ に キ が つかなかった の です。 アナタ は ガッコウ キョウイク を うけた ヒト だ から、 こういう ショウソク を よく かいして いる でしょう が、 セケン は ガクセイ の セイカツ だの、 ガッコウ の キソク だの に かんして、 おどろく べく ムチ な もの です。 ワレワレ に なんでも ない こと が いっこう ガイブ へは つうじて いません。 ワレワレ は また ヒカクテキ ナイブ の クウキ ばかり すって いる ので、 コウナイ の こと は サイダイ ともに ヨノナカ に しれわたって いる はず だ と おもいすぎる クセ が あります。 K は その テン に かけて、 ワタクシ より セケン を しって いた の でしょう、 すました カオ で また もどって きました。 クニ を たつ とき は ワタクシ も イッショ でした から、 キシャ へ のる や いなや すぐ どう だった と K に といました。 K は どうでも なかった と こたえた の です。
 3 ド-メ の ナツ は ちょうど ワタクシ が エイキュウ に フボ の フンボ の チ を さろう と ケッシン した トシ です。 ワタクシ は その とき K に キコク を すすめました が、 K は おうじません でした。 そう マイトシ ウチ へ かえって ナニ を する の だ と いう の です。 カレ は また ふみとどまって ベンキョウ する つもり らしかった の です。 ワタクシ は しかたなし に ヒトリ で トウキョウ を たつ こと に しました。 ワタクシ の キョウリ で くらした その 2 カゲツ-カン が、 ワタクシ の ウンメイ に とって、 いかに ハラン に とんだ もの か は、 マエ に かいた とおり です から くりかえしません。 ワタクシ は フヘイ と ユウウツ と コドク の サビシサ と を ヒトツムネ に いだいて、 9 ガツ に いって また K に あいました。 すると カレ の ウンメイ も また ワタクシ と ドウヨウ に ヘンチョウ を しめして いました。 カレ は ワタクシ の しらない うち に、 ヨウカサキ へ テガミ を だして、 こっち から ジブン の イツワリ を ハクジョウ して しまった の です。 カレ は サイショ から その カクゴ で いた の だ そう です。 いまさら シカタ が ない から、 オマエ の すき な もの を やる より ホカ に ミチ は あるまい と、 ムコウ に いわせる つもり も あった の でしょう か。 とにかく ダイガク へ はいって まで も ヨウフボ を あざむきとおす キ は なかった らしい の です。 また あざむこう と して も、 そう ながく つづく もの では ない と みぬいた の かも しれません。

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 K の テガミ を みた ヨウフ は たいへん おこりました。 オヤ を だます よう な フラチ な モノ に ガクシ を おくる こと は できない と いう きびしい ヘンジ を すぐ よこした の です。 K は それ を ワタクシ に みせました。 K は また それ と ゼンゴ して ジッカ から うけとった ショカン も みせました。 これ にも マエ に おとらない ほど きびしい キッセキ の コトバ が ありました。 ヨウカサキ へ たいして すまない と いう ギリ が くわわって いる から でも ありましょう が、 こっち でも いっさい かまわない と かいて ありました。 K が この ジケン の ため に フクセキ して しまう か、 それとも タ に ダキョウ の ミチ を こうじて、 いぜん ヨウカ に とどまる か、 そこ は これから おこる モンダイ と して、 さしあたり どうか しなければ ならない の は、 ツキヅキ に ヒツヨウ な ガクシ でした。
 ワタクシ は その テン に ついて K に ナニ か カンガエ が ある の か と たずねました。 K は ヤガッコウ の キョウシ でも する つもり だ と こたえました。 その ジブン は イマ に くらべる と、 ぞんがい ヨノナカ が くつろいで いました から、 ナイショク の クチ は アナタ が かんがえる ほど フッテイ でも なかった の です。 ワタクシ は K が それ で じゅうぶん やって ゆける だろう と かんがえました。 しかし ワタクシ には ワタクシ の セキニン が あります。 K が ヨウカ の キボウ に そむいて、 ジブン の ゆきたい ミチ を いこう と した とき、 サンセイ した モノ は ワタクシ です。 ワタクシ は そう か と いって テ を こまぬいで いる わけ に ゆきません。 ワタクシ は その バ で ブッシツテキ の ホジョ を すぐ もうしだしました。 すると K は イチ も ニ も なく それ を はねつけました。 カレ の セイカク から いって、 ジカツ の ほう が トモダチ の ホゴ の モト に たつ より はるか に こころよく おもわれた の でしょう。 カレ は ダイガク へ はいった イジョウ、 ジブン ヒトリ ぐらい どうか できなければ オトコ で ない よう な こと を いいました。 ワタクシ は ワタクシ の セキニン を まっとうする ため に、 K の カンジョウ を きずつける に しのびません でした。 それで カレ の おもう とおり に させて、 ワタクシ は テ を ひきました。
 K は ジブン の のぞむ よう な クチ を ほどなく さがしだしました。 しかし ジカン を おしむ カレ に とって、 この シゴト が どの くらい つらかった か は ソウゾウ する まで も ない こと です。 カレ は イマ まで-どおり ベンキョウ の テ を ちっとも ゆるめず に、 あたらしい ニ を しょって モウシン した の です。 ワタクシ は カレ の ケンコウ を きづかいました。 しかし ゴウキ な カレ は わらう だけ で、 すこしも ワタクシ の チュウイ に とりあいません でした。
 ドウジ に カレ と ヨウカ との カンケイ は、 だんだん こんがらがって きました。 ジカン に ヨユウ の なくなった カレ は、 マエ の よう に ワタクシ と はなす キカイ を うばわれた ので、 ワタクシ は ついに その テンマツ を くわしく きかず に しまいました が、 カイケツ の ますます コンナン に なって ゆく こと だけ は ショウチ して いました。 ヒト が ナカ に はいって チョウテイ を こころみた こと も しって いました。 その ヒト は テガミ で K に キコク を うながした の です が、 K は とうてい ダメ だ と いって、 おうじません でした。 この ゴウジョウ な ところ が、 ――K は ガクネンチュウ で かえれない の だ から シカタ が ない と いいました けれども、 ムコウ から みれば ゴウジョウ でしょう。 そこ が ジタイ を ますます ケンアク に した よう にも みえました。 カレ は ヨウカ の カンジョウ を がいする と ともに、 ジッカ の イカリ も かう よう に なりました。 ワタクシ が シンパイ して ソウホウ を ユウワ する ため に テガミ を かいた とき は、 もう なんの キキメ も ありません でした。 ワタクシ の テガミ は ヒトコト の ヘンジ さえ うけず に ほうむられて しまった の です。 ワタクシ も ハラ が たちました。 イマ まで も ユキガカリジョウ、 K に ドウジョウ して いた ワタクシ は、 それ イゴ は リヒ を ドガイ に おいて も K の ミカタ を する キ に なりました。
 サイゴ に K は とうとう フクセキ に けっしました。 ヨウカ から だして もらった ガクシ は、 ジッカ で ベンショウ する こと に なった の です。 そのかわり ジッカ の ほう でも かまわない から、 これから は カッテ に しろ と いう の です。 ムカシ の コトバ で いえば、 まあ カンドウ なの でしょう。 あるいは それほど つよい もの で なかった かも しれません が、 トウニン は そう カイシャク して いました。 K は ハハ の ない オトコ でした。 カレ の セイカク の イチメン は、 たしか に ケイボ に そだてられた ケッカ とも みる こと が できる よう です。 もし カレ の じつの ハハ が いきて いたら、 あるいは カレ と ジッカ との カンケイ に、 こう まで ヘダタリ が できず に すんだ かも しれない と ワタクシ は おもう の です。 カレ の チチ は いう まで も なく ソウリョ でした。 けれども ギリ-がたい テン に おいて、 むしろ サムライ に にた ところ が あり は しない か と うたがわれます。

 22

 K の ジケン が イチダンラク ついた アト で、 ワタクシ は カレ の アネ の オット から ながい フウショ を うけとりました。 K の ヨウシ に いった サキ は、 この ヒト の シンルイ に あたる の です から、 カレ を シュウセン した とき にも、 カレ を フクセキ させた とき にも、 この ヒト の イケン が オモキ を なして いた の だ と、 K は ワタクシ に はなして きかせました。
 テガミ には ソノゴ K が どうして いる か しらせて くれ と かいて ありました。 アネ が シンパイ して いる から、 なるべく はやく ヘンジ を もらいたい と いう イライ も つけくわえて ありました。 K は テラ を ついだ アニ より も、 タケ へ えんづいた この アネ を すいて いました。 カレラ は ミンナ ヒトツハラ から うまれた キョウダイ です けれども、 この アネ と K の アイダ には だいぶ トシ の サ が あった の です。 それで K の コドモ の ジブン には、 ママハハ より も この アネ の ほう が、 かえって ホントウ の ハハ-らしく みえた の でしょう。
 ワタクシ は K に テガミ を みせました。 K は なんとも いいません でした けれども、 ジブン の ところ へ この アネ から おなじ よう な イミ の ショジョウ が 2~3 ド きた と いう こと を うちあけました。 K は その たび に シンパイ する に およばない と こたえて やった の だ そう です。 ウン わるく この アネ は セイカツ に ヨユウ の ない イエ に かたづいた ため に、 いくら K に ドウジョウ が あって も、 ブッシツテキ に オトウト を どうして やる わけ にも ゆかなかった の です。
 ワタクシ は K と おなじ よう な ヘンジ を カレ の ギケイ-アテ で だしました。 その ウチ に、 マンイチ の バアイ には ワタクシ が どうでも する から、 アンシン する よう に と いう イミ を つよい コトバ で かきあらわしました。 これ は もとより ワタクシ の イチゾン でした。 K の ユクサキ を シンパイ する この アネ に アンシン を あたえよう と いう コウイ は むろん ふくまれて いました が、 ワタクシ を ケイベツ した と より ホカ に トリヨウ の ない カレ の ジッカ や ヨウカ に たいする イジ も あった の です。
 K の フクセキ した の は 1 ネンセイ の とき でした。 それから 2 ネンセイ の ナカゴロ に なる まで、 ヤク 1 ネン ハン の アイダ、 カレ は ドクリョク で オノレ を ささえて いった の です。 ところが この カド の ロウリョク が しだいに カレ の ケンコウ と セイシン の ウエ に エイキョウ して きた よう に みえだしました。 それ には むろん ヨウカ を でる でない の うるさい モンダイ も てつだって いた でしょう。 カレ は だんだん センチメンタル に なって きた の です。 トキ に よる と、 ジブン だけ が ヨノナカ の フコウ を ヒトリ で しょって たって いる よう な こと を いいます。 そうして それ を うちけせば すぐ げきする の です。 それから ジブン の ミライ に よこたわる コウミョウ が、 しだいに カレ の メ を とおのいて ゆく よう にも おもって、 いらいら する の です。 ガクモン を やりはじめた とき には、 ダレ しも イダイ な ホウフ を もって、 あたらしい タビ に のぼる の が ツネ です が、 1 ネン と たち 2 ネン と すぎ、 もう ソツギョウ も マヂカ に なる と、 キュウ に ジブン の アシ の ハコビ の のろい の に キ が ついて、 カハン は そこ で シツボウ する の が アタリマエ に なって います から、 K の バアイ も おなじ なの です が、 カレ の アセリカタ は また フツウ に くらべる と はるか に はなはだしかった の です。 ワタクシ は ついに カレ の キブン を おちつける の が センイチ だ と かんがえました。
 ワタクシ は カレ に むかって、 ヨケイ な シゴト を する の は よせ と いいました。 そうして とうぶん カラダ を ラク に して、 あそぶ ほう が おおきな ショウライ の ため に トクサク だ と チュウコク しました。 ゴウジョウ な K の こと です から、 ヨウイ に ワタクシ の いう こと など は きくまい と、 かねて ヨキ して いた の です が、 じっさい いいだして みる と、 おもった より も ときおとす の に ホネ が おれた ので よわりました。 K は ただ ガクモン が ジブン の モクテキ では ない と シュチョウ する の です。 イシ の チカラ を やしなって つよい ヒト に なる の が ジブン の カンガエ だ と いう の です。 それ には なるべく キュウクツ な キョウグウ に いなくて は ならない と ケツロン する の です。 フツウ の ヒト から みれば、 まるで スイキョウ です。 そのうえ キュウクツ な キョウグウ に いる カレ の イシ は、 ちっとも つよく なって いない の です。 カレ は むしろ シンケイ スイジャク に かかって いる くらい なの です。 ワタクシ は シカタ が ない から、 カレ に むかって しごく ドウカン で ある よう な ヨウス を みせました。 ジブン も そういう テン に むかって、 ジンセイ を すすむ つもり だった と ついには メイゲン しました。 (もっとも これ は ワタクシ に とって まんざら クウキョ な コトバ でも なかった の です。 K の セツ を きいて いる と、 だんだん そういう ところ に つりこまれて くる くらい、 カレ には チカラ が あった の です から)。 サイゴ に ワタクシ は K と イッショ に すんで、 イッショ に コウジョウ の ミチ を たどって ゆきたい と ホツギ しました。 ワタクシ は カレ の ゴウジョウ を おりまげる ため に、 カレ の マエ に ひざまずく こと を あえて した の です。 そうして やっと の こと で カレ を ワタクシ の イエ に つれて きました。

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 ワタクシ の ザシキ には ヒカエ の マ と いう よう な 4 ジョウ が フゾク して いました。 ゲンカン を あがって ワタクシ の いる ところ へ とおろう と する には、 ぜひ この 4 ジョウ を よこぎらなければ ならない の だ から、 ジツヨウ の テン から みる と、 しごく フベン な ヘヤ でした。 ワタクシ は ここ へ K を いれた の です。 もっとも サイショ は おなじ 8 ジョウ に フタツ ツクエ を ならべて、 ツギノマ を キョウユウ に して おく カンガエ だった の です が、 K は せまくるしくって も ヒトリ で いる ほう が いい と いって、 ジブン で そっち の ほう を えらんだ の です。
 マエ にも はなした とおり、 オクサン は ワタクシ の この ショチ に たいして ハジメ は フサンセイ だった の です。 ゲシュクヤ ならば、 ヒトリ より フタリ が ベンリ だし、 フタリ より 3 ニン が トク に なる けれども、 ショウバイ で ない の だ から、 なるべく なら よした ほう が いい と いう の です。 ワタクシ が けっして セワ の やける ヒト で ない から かまうまい と いう と、 セワ は やけない でも、 キゴコロ の しれない ヒト は いや だ と こたえる の です。 それでは イマ ヤッカイ に なって いる ワタクシ だって おなじ こと では ない か と なじる と、 ワタクシ の キゴコロ は ハジメ から よく わかって いる と ベンカイ して やまない の です。 ワタクシ は クショウ しました。 すると オクサン は また リクツ の ホウコウ を かえます。 そんな ヒト を つれて くる の は、 ワタクシ の ため に わるい から よせ と いいなおします。 なぜ ワタクシ の ため に わるい か と きく と、 コンド は ムコウ で クショウ する の です。
 ジツ を いう と ワタクシ だって しいて K と イッショ に いる ヒツヨウ は なかった の です。 けれども ツキヅキ の ヒヨウ を カネ の カタチ で カレ の マエ に ならべて みせる と、 カレ は きっと それ を うけとる とき に チュウチョ する だろう と おもった の です。 カレ は それほど ドクリツシン の つよい オトコ でした。 だから ワタクシ は カレ を ワタクシ の ウチ へ おいて、 フタリ-マエ の ショクリョウ を カレ の しらない マ に そっと オクサン の テ に わたそう と した の です。 しかし ワタクシ は K の ケイザイ モンダイ に ついて、 イチゴン も オクサン に うちあける キ は ありません でした。
 ワタクシ は ただ K の ケンコウ に ついて ウンヌン しました。 ヒトリ で おく と ますます ニンゲン が ヘンクツ に なる ばかり だ から と いいました。 それ に つけたして、 K が ヨウカ と オリアイ の わるかった こと や、 ジッカ と はなれて しまった こと や、 いろいろ はなして きかせました。 ワタクシ は おぼれかかった ヒト を だいて、 ジブン の ネツ を ムコウ に うつして やる カクゴ で、 K を ひきとる の だ と つげました。 その つもり で あたたかい メンドウ を みて やって くれ と、 オクサン にも オジョウサン にも たのみました。 ワタクシ は ここ まで きて ようよう オクサン を ときふせた の です。 しかし ワタクシ から なんにも きかない K は、 この テンマツ を まるで しらず に いました。 ワタクシ も かえって それ を マンゾク に おもって、 のっそり ひきうつって きた K を、 しらん カオ で むかえました。
 オクサン と オジョウサン は、 シンセツ に カレ の ニモツ を かたづける セワ や ナニ か を して くれました。 すべて それ を ワタクシ に たいする コウイ から きた の だ と カイシャク した ワタクシ は、 ココロ の ウチ で よろこびました。 ――K が あいかわらず むっちり した ヨウス を して いる にも かかわらず。
 ワタクシ が K に むかって あたらしい スマイ の ココロモチ は どう だ と きいた とき に、 カレ は ただ イチゲン わるく ない と いった だけ でした。 ワタクシ から いわせれば わるく ない どころ では ない の です。 カレ の イマ まで いた ところ は キタムキ の しめっぽい ニオイ の する きたない ヘヤ でした。 クイモノ も ヘヤ ソウオウ に ソマツ でした。 ワタクシ の イエ へ ひきうつった カレ は、 ユウコク から キョウボク に うつった オモムキ が あった くらい です。 それ を さほど に おもう ケシキ を みせない の は、 ヒトツ は カレ の ゴウジョウ から きて いる の です が、 ヒトツ は カレ の シュチョウ から も でて いる の です。 ブッキョウ の キョウギ で やしなわれた カレ は、 イショクジュウ に ついて とかく の ゼイタク を いう の を あたかも フドウトク の よう に かんがえて いました。 なまじい ムカシ の コウソウ だ とか セーント だ とか の デン を よんだ カレ には、 ややともすると セイシン と ニクタイ と を きりはなしたがる クセ が ありました。 ニク を ベンタツ すれば レイ の コウキ が ます よう に かんずる バアイ さえ あった の かも しれません。
 ワタクシ は なるべく カレ に さからわない ホウシン を とりました。 ワタクシ は コオリ を ヒナタ へ だして とかす クフウ を した の です。 いまに とけて あたたかい ミズ に なれば、 ジブン で ジブン に キ が つく ジキ が くる に ちがいない と おもった の です。

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 ワタクシ は オクサン から そういう ふう に とりあつかわれた ケッカ、 だんだん カイカツ に なって きた の です。 それ を ジカク して いた から、 おなじ もの を コンド は K の ウエ に オウヨウ しよう と こころみた の です。 K と ワタクシ と が セイカク の ウエ に おいて、 だいぶ ソウイ の ある こと は、 ながく つきあって きた ワタクシ に よく わかって いました けれども、 ワタクシ の シンケイ が この カテイ に はいって から たしょう カド が とれた ごとく、 K の ココロ も ここ に おけば いつか しずまる こと が ある だろう と かんがえた の です。
 K は ワタクシ より つよい ケッシン を ゆうして いる オトコ でした。 ベンキョウ も ワタクシ の バイ ぐらい は した でしょう。 そのうえ もって うまれた アタマ の タチ が ワタクシ より も ずっと よかった の です。 アト では センモン が ちがいました から なんとも いえません が、 おなじ キュウ に いる アイダ は、 チュウガク でも コウトウ ガッコウ でも、 K の ほう が つねに ジョウセキ を しめて いました。 ワタクシ には ヘイゼイ から ナニ を して も K に およばない と いう ジカク が あった くらい です。 けれども ワタクシ が しいて K を ワタクシ の ウチ へ ひっぱって きた とき には、 ワタクシ の ほう が よく ジリ を わきまえて いる と しんじて いました。 ワタクシ に いわせる と、 カレ は ガマン と ニンタイ の クベツ を リョウカイ して いない よう に おもわれた の です。 これ は とくに アナタ の ため に つけたして おきたい の です から きいて ください。 ニクタイ なり セイシン なり すべて ワレワレ の ノウリョク は、 ガイブ の シゲキ で、 ハッタツ も する し、 ハカイ され も する でしょう が、 どっち に して も シゲキ を だんだん に つよく する ヒツヨウ の ある の は むろん です から、 よく かんがえない と、 ヒジョウ に ケンアク な ホウコウ へ むいて すすんで ゆきながら、 ジブン は もちろん ハタ の モノ も キ が つかず に いる オソレ が しょうじて きます。 イシャ の セツメイ を きく と、 ニンゲン の イブクロ ほど オウチャク な もの は ない そう です。 カユ ばかり くって いる と、 それ イジョウ の かたい もの を こなす チカラ が いつのまにか なくなって しまう の だ そう です。 だから なんでも くう ケイコ を して おけ と イシャ は いう の です。 けれども これ は ただ なれる と いう イミ では なかろう と おもいます。 しだいに シゲキ を ます に したがって、 しだいに エイヨウ キノウ の テイコウリョク が つよく なる と いう イミ で なくて は なりますまい。 もし ハンタイ に イ の チカラ の ほう が じりじり よわって いった なら ケッカ は どう なる だろう と ソウゾウ して みれば すぐ わかる こと です。 K は ワタクシ より イダイ な オトコ でした けれども、 まったく ここ に キ が ついて いなかった の です。 ただ コンナン に なれて しまえば、 シマイ に その コンナン は なんでも なくなる もの だ と きめて いた らしい の です。 カンク を くりかえせば、 くりかえす と いう だけ の クドク で、 その カンク が キ に かからなく なる ジキ に めぐりあえる もの と しんじきって いた らしい の です。
 ワタクシ は K を とく とき に、 ぜひ そこ を あきらか に して やりたかった の です。 しかし いえば きっと ハンコウ される に きまって いました。 また ムカシ の ヒト の レイ など を、 ヒキアイ に もって くる に ちがいない と おもいました。 そう なれば ワタクシ だって、 その ヒトタチ と K と ちがって いる テン を メイハク に のべなければ ならなく なります。 それ を うけがって くれる よう な K なら いい の です けれども、 カレ の セイシツ と して、 ギロン が そこ まで ゆく と ヨウイ に アト へは かえりません。 なお サキ へ でます。 そうして、 クチ で サキ へ でた とおり を、 コウイ で ジツゲン し に かかります。 カレ は こう なる と おそる べき オトコ でした。 イダイ でした。 ジブン で ジブン を ハカイ しつつ すすみます。 ケッカ から みれば、 カレ は ただ ジコ の セイコウ を うちくだく イミ に おいて、 イダイ なの に すぎない の です けれども、 それでも けっして ヘイボン では ありません でした。 カレ の キショウ を よく しった ワタクシ は ついに なんとも いう こと が できなかった の です。 そのうえ ワタクシ から みる と、 カレ は マエ にも のべた とおり、 たしょう シンケイ スイジャク に かかって いた よう に おもわれた の です。 よし ワタクシ が カレ を ときふせた ところ で、 カレ は かならず げきする に ちがいない の です。 ワタクシ は カレ と ケンカ を する こと は おそれて は いません でした けれども、 ワタクシ が コドク の カン に たえなかった ジブン の キョウグウ を かえりみる と、 シンユウ の カレ を、 おなじ コドク の キョウグウ に おく の は、 ワタクシ に とって しのびない こと でした。 イッポ すすんで、 より コドク な キョウグウ に つきおとす の は なお いや でした。 それで ワタクシ は カレ が ウチ へ ひきうつって から も、 トウブン の アイダ は ヒヒョウ-がましい ヒヒョウ を カレ の ウエ に くわえず に いました。 ただ おだやか に シュウイ の カレ に およぼす ケッカ を みる こと に した の です。
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ココロ 「センセイ と イショ 4」

2015-05-06 | ナツメ ソウセキ
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 ワタクシ は カゲ へ まわって、 オクサン と オジョウサン に、 なるべく K と ハナシ を する よう に たのみました。 ワタクシ は カレ の これまで とおって きた ムゴン セイカツ が カレ に たたって いる の だろう と しんじた から です。 つかわない テツ が くさる よう に、 カレ の ココロ には サビ が でて いた と しか、 ワタクシ には おもわれなかった の です。
 オクサン は トリツキハ の ない ヒト だ と いって わらって いました。 オジョウサン は また わざわざ その レイ を あげて ワタクシ に セツメイ して きかせる の です。 ヒバチ に ヒ が ある か と たずねる と、 K は ない と こたえる そう です。 では もって きよう と いう と、 いらない と ことわる そう です。 さむく は ない か と きく と、 さむい けれども いらない ん だ と いった ぎり オウタイ を しない の だ そう です。 ワタクシ は ただ クショウ して いる わけ にも ゆきません。 キノドク だ から、 なんとか いって その バ を とりつくろって おかなければ すまなく なります。 もっとも それ は ハル の こと です から、 しいて ヒ に あたる ヒツヨウ も なかった の です が、 これ では トリツキハ が ない と いわれる の も ムリ は ない と おもいました。
 それで ワタクシ は なるべく、 ジブン が チュウシン に なって、 オンナ フタリ と K との レンラク を はかる よう に つとめました。 K と ワタクシ が はなして いる ところ へ ウチ の ヒト を よぶ とか、 または ウチ の ヒト と ワタクシ が ヒトツヘヤ に おちあった ところ へ、 K を ひっぱりだす とか、 どっち でも その バアイ に おうじた ホウホウ を とって、 カレラ を セッキン させよう と した の です。 もちろん K は それ を あまり このみません でした。 ある とき は ふいと たって ヘヤ の ソト へ でました。 また ある とき は いくら よんで も なかなか でて きません でした。 K は あんな ムダバナシ を して どこ が おもしろい と いう の です。 ワタクシ は ただ わらって いました。 しかし ココロ の ウチ では、 K が その ため に ワタクシ を ケイベツ して いる こと が よく わかりました。
 ワタクシ は ある イミ から みて じっさい カレ の ケイベツ に あたいして いた かも しれません。 カレ の メ の ツケドコロ は ワタクシ より はるか に たかい ところ に あった とも いわれる でしょう。 ワタクシ も それ を いなみ は しません。 しかし メ だけ たかくって、 ホカ が つりあわない の は テ も なく カタワ です。 ワタクシ は ナニ を おいて も、 この サイ カレ を ニンゲン-らしく する の が センイチ だ と かんがえた の です。 いくら カレ の アタマ が えらい ヒト の イメジ で うずまって いて も、 カレ ジシン が えらく なって ゆかない イジョウ は、 なんの ヤク にも たたない と いう こと を ハッケン した の です。 ワタクシ は カレ を ニンゲン-らしく する ダイイチ の シュダン と して、 まず イセイ の ソバ に カレ を すわらせる ホウホウ を こうじた の です。 そうして そこ から でる クウキ に カレ を さらした うえ、 さびつきかかった カレ の ケツエキ を あたらしく しよう と こころみた の です。
 この ココロミ は しだいに セイコウ しました。 ハジメ の うち ユウゴウ しにくい よう に みえた もの が、 だんだん ヒトツ に まとまって きだしました。 カレ は ジブン イガイ に セカイ の ある こと を すこし ずつ さとって ゆく よう でした。 カレ は ある ヒ ワタクシ に むかって、 オンナ は そう ケイベツ す べき もの で ない と いう よう な こと を いいました。 K は はじめ オンナ から も、 ワタクシ ドウヨウ の チシキ と ガクモン を ヨウキュウ して いた らしい の です。 そうして それ が みつからない と、 すぐ ケイベツ の ネン を しょうじた もの と おもわれます。 イマ まで の カレ は、 セイ に よって タチバ を かえる こと を しらず に、 おなじ シセン で スベテ の ナンニョ を イチヨウ に カンサツ して いた の です。 ワタクシ は カレ に、 もし ワレラ フタリ だけ が オトコ ドウシ で エイキュウ に ハナシ を コウカン して いる ならば、 フタリ は ただ チョクセンテキ に サキ へ のびて ゆく に すぎない だろう と いいました。 カレ は もっとも だ と こたえました。 ワタクシ は その とき オジョウサン の こと で、 たしょう ムチュウ に なって いる コロ でした から、 しぜん そんな コトバ も つかう よう に なった の でしょう。 しかし リメン の ショウソク は カレ には ヒトクチ も うちあけません でした。
 イマ まで ショモツ で ジョウヘキ を きずいて その ナカ に たてこもって いた よう な K の ココロ が、 だんだん うちとけて くる の を みて いる の は、 ワタクシ に とって ナニ より も ユカイ でした。 ワタクシ は サイショ から そうした モクテキ で コト を やりだした の です から、 ジブン の セイコウ に ともなう キエツ を かんぜず には いられなかった の です。 ワタクシ は ホンニン に いわない カワリ に、 オクサン と オジョウサン に ジブン の おもった とおり を はなしました。 フタリ も マンゾク の ヨウス でした。

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 K と ワタクシ は おなじ カ に おりながら、 センコウ の ガクモン が ちがって いました から、 しぜん でる とき や かえる とき に チソク が ありました。 ワタクシ の ほう が はやければ、 ただ カレ の クウシツ を とおりぬける だけ です が、 おそい と カンタン な アイサツ を して ジブン の ヘヤ へ はいる の を レイ に して いました。 K は イツモ の メ を ショモツ から はなして、 フスマ を あける ワタクシ を ちょっと みます。 そうして きっと イマ かえった の か と いいます。 ワタクシ は なにも こたえない で うなずく こと も あります し、 あるいは ただ 「うん」 と こたえて ゆきすぎる バアイ も ありました。
 ある ヒ ワタクシ は カンダ に ヨウ が あって、 カエリ が イツモ より ずっと おくれました。 ワタクシ は イソギアシ に モンゼン まで きて、 コウシ を がらり と あけました。 それ と ドウジ に、 ワタクシ は オジョウサン の コエ を きいた の です。 コエ は たしか に K の ヘヤ から でた と おもいました。 ゲンカン から マッスグ に ゆけば、 チャノマ、 オジョウサン の ヘヤ と フタツ つづいて いて、 それ を ヒダリ へ おれる と、 K の ヘヤ、 ワタクシ の ヘヤ、 と いう マドリ なの です から、 どこ で ダレ の コエ が した ぐらい は、 ひさしく ヤッカイ に なって いる ワタクシ には よく わかる の です。 ワタクシ は すぐ コウシ を しめました。 すると オジョウサン の コエ も すぐ やみました。 ワタクシ が クツ を ぬいで いる うち、 ――ワタクシ は その ジブン から ハイカラ で テカズ の かかる アミアゲ を はいて いた の です が、 ――ワタクシ が こごんで その クツヒモ を といて いる うち、 K の ヘヤ では ダレ の コエ も しません でした。 ワタクシ は ヘン に おもいました。 コト に よる と、 ワタクシ の カンチガイ かも しれない と かんがえた の です。 しかし ワタクシ が イツモ の とおり K の ヘヤ を ぬけよう と して、 フスマ を あける と、 そこ に フタリ は ちゃんと すわって いました。 K は レイ の とおり イマ かえった か と いいました。 オジョウサン も 「おかえり」 と すわった まま で アイサツ しました。 ワタクシ には キ の せい か その カンタン な アイサツ が すこし かたい よう に きこえました。 どこ か で シゼン を ふみはずして いる よう な チョウシ と して、 ワタクシ の コマク に ひびいた の です。 ワタクシ は オジョウサン に、 オクサン は と たずねました。 ワタクシ の シツモン には なんの イミ も ありません でした。 イエ の ウチ が ヘイジョウ より なんだか ひっそり して いた から きいて みた だけ の こと です。
 オクサン は はたして ルス でした。 ゲジョ も オクサン と イッショ に でた の でした。 だから ウチ に のこって いる の は、 K と オジョウサン だけ だった の です。 ワタクシ は ちょっと クビ を かたむけました。 イマ まで ながい アイダ セワ に なって いた けれども、 オクサン が オジョウサン と ワタクシ だけ を オキザリ に して、 ウチ を あけた ためし は まだ なかった の です から。 ワタクシ は ナニ か キュウヨウ でも できた の か と オジョウサン に ききかえしました。 オジョウサン は ただ わらって いる の です。 ワタクシ は こんな とき に わらう オンナ が きらい でした。 わかい オンナ に キョウツウ な テン だ と いえば それまで かも しれません が、 オジョウサン も くだらない こと に よく わらいたがる オンナ でした。 しかし オジョウサン は ワタクシ の カオイロ を みて、 すぐ フダン の ヒョウジョウ に かえりました。 キュウヨウ では ない が、 ちょっと ヨウ が あって でた の だ と マジメ に こたえました。 ゲシュクニン の ワタクシ には それ イジョウ といつめる ケンリ は ありません。 ワタクシ は チンモク しました。
 ワタクシ が キモノ を あらためて セキ に つく か つかない うち に、 オクサン も ゲジョ も かえって きました。 やがて バンメシ の ショクタク で ミンナ が カオ を あわせる ジコク が きました。 ゲシュク した トウザ は バンジ キャクアツカイ だった ので、 ショクジ の たび に ゲジョ が ゼン を はこんで きて くれた の です が、 それ が いつのまにか くずれて、 メシドキ には ムコウ へ よばれて ゆく シュウカン に なって いた の です。 K が あたらしく ひきうつった とき も、 ワタクシ が シュチョウ して カレ を ワタクシ と おなじ よう に とりあつかわせる こと に きめました。 そのかわり ワタクシ は うすい イタ で つくった アシ の たたみこめる きゃしゃ な ショクタク を オクサン に キフ しました。 イマ では どこ の ウチ でも つかって いる よう です が、 その コロ そんな タク の シュウイ に ならんで メシ を くう カゾク は ほとんど なかった の です。 ワタクシ は わざわざ オチャノミズ の カグヤ へ いって、 ワタクシ の クフウドオリ に それ を つくりあげさせた の です。
 ワタクシ は その タクジョウ で オクサン から その ヒ イツモ の ジコク に サカナヤ が こなかった ので、 ワタクシタチ に くわせる もの を かい に マチ へ いかなければ ならなかった の だ と いう セツメイ を きかされました。 なるほど キャク を おいて いる イジョウ、 それ も もっとも な こと だ と ワタクシ が かんがえた とき、 オジョウサン は ワタクシ の カオ を みて また わらいだしました。 しかし コンド は オクサン に しかられて すぐ やめました。

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 1 シュウカン ばかり して ワタクシ は また K と オジョウサン が イッショ に はなして いる ヘヤ を とおりぬけました。 その とき オジョウサン は ワタクシ の カオ を みる や いなや わらいだしました。 ワタクシ は すぐ ナニ が おかしい の か と きけば よかった の でしょう。 それ を つい だまって ジブン の イマ まで きて しまった の です。 だから K も イツモ の よう に、 イマ かえった か と コエ を かける こと が できなく なりました。 オジョウサン は すぐ ショウジ を あけて チャノマ へ はいった よう でした。
 ユウメシ の とき、 オジョウサン は ワタクシ を ヘン な ヒト だ と いいました。 ワタクシ は その とき も なぜ ヘン なの か きかず に しまいました。 ただ オクサン が にらめる よう な メ を オジョウサン に むける の に キ が ついた だけ でした。
 ワタクシ は ショクゴ K を サンポ に つれだしました。 フタリ は デンズウイン の ウラテ から ショクブツエン の トオリ を ぐるり と まわって また トミザカ の シタ へ でました。 サンポ と して は みじかい ほう では ありません でした が、 その アイダ に はなした こと は きわめて すくなかった の です。 セイシツ から いう と、 K は ワタクシ より も ムクチ な オトコ でした。 ワタクシ も タベン な ほう では なかった の です。 しかし ワタクシ は あるきながら、 できる だけ ハナシ を カレ に しかけて みました。 ワタクシ の モンダイ は おもに フタリ の ゲシュク して いる カゾク に ついて でした。 ワタクシ は オクサン や オジョウサン を カレ が どう みて いる か しりたかった の です。 ところが カレ は ウミ の もの とも ヤマ の もの とも ミワケ の つかない よう な ヘンジ ばかり する の です。 しかも その ヘンジ は ヨウリョウ を えない くせ に、 きわめて カンタン でした。 カレ は フタリ の オンナ に かんして より も、 センコウ の ガッカ の ほう に オオク の チュウイ を はらって いる よう に みえました。 もっとも それ は 2 ガクネン-メ の シケン が メノマエ に せまって いる コロ でした から、 フツウ の ニンゲン の タチバ から みて、 カレ の ほう が ガクセイ-らしい ガクセイ だった の でしょう。 そのうえ カレ は シュエデンボルグ が どう だ とか こう だ とか いって、 ムガク な ワタクシ を おどろかせました。
 ワレワレ が シュビ よく シケン を すましました とき、 フタリ とも もう あと 1 ネン だ と いって オクサン は よろこんで くれました。 そういう オクサン の ユイイツ の ホコリ とも みられる オジョウサン の ソツギョウ も、 まもなく くる ジュン に なって いた の です。 K は ワタクシ に むかって、 オンナ と いう もの は なんにも しらない で ガッコウ を でる の だ と いいました。 K は オジョウサン が ガクモン イガイ に ケイコ して いる ヌイハリ だの コト だの イケバナ だの を、 まるで ガンチュウ に おいて いない よう でした。 ワタクシ は カレ の ウカツ を わらって やりました。 そうして オンナ の カチ は そんな ところ に ある もの で ない と いう ムカシ の ギロン を また カレ の マエ で くりかえしました。 カレ は べつだん ハンバク も しません でした。 そのかわり なるほど と いう ヨウス も みせません でした。 ワタクシ には そこ が ユカイ でした。 カレ の ふん と いった よう な チョウシ が、 いぜん と して オンナ を ケイベツ して いる よう に みえた から です。 オンナ の ダイヒョウシャ と して ワタクシ の しって いる オジョウサン を、 モノ の カズ とも おもって いない らしかった から です。 イマ から カイコ する と、 ワタクシ の K に たいする シット は、 その とき に もう じゅうぶん きざして いた の です。
 ワタクシ は ナツヤスミ に どこ か へ ゆこう か と K に ソウダン しました。 K は ゆきたく ない よう な クチブリ を みせました。 むろん カレ は ジブン の ジユウ イシ で どこ へも ゆける カラダ では ありません が、 ワタクシ が さそい さえ すれば、 また どこ へ いって も さしつかえない カラダ だった の です。 ワタクシ は なぜ ゆきたく ない の か と カレ に たずねて みました。 カレ は リユウ も なんにも ない と いう の です。 ウチ で ショモツ を よんだ ほう が ジブン の カッテ だ と いう の です。 ワタクシ が ヒショチ へ いって すずしい ところ で ベンキョウ した ほう が、 カラダ の ため だ と シュチョウ する と、 それなら ワタクシ ヒトリ いったら よかろう と いう の です。 しかし ワタクシ は K ヒトリ を ここ に のこして ゆく キ には なれない の です。 ワタクシ は ただでさえ K と ウチ の モノ が だんだん したしく なって ゆく の を みて いる の が、 あまり いい ココロモチ では なかった の です。 ワタクシ が サイショ キボウ した とおり に なる の が、 なんで ワタクシ の ココロモチ を わるく する の か と いわれれば それまで です。 ワタクシ は バカ に ちがいない の です。 ハテシ の つかない フタリ の ギロン を みる に みかねて オクサン が ナカ へ はいりました。 フタリ は とうとう イッショ に ボウシュウ へ ゆく こと に なりました。

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 K は あまり タビ へ でない オトコ でした。 ワタクシ にも ボウシュウ は はじめて でした。 フタリ は なんにも しらない で、 フネ が いちばん サキ へ ついた ところ から ジョウリク した の です。 たしか ホタ とか いいました。 イマ では どんな に かわって いる か しりません が、 その コロ は ひどい ギョソン でした。 だいいち どこ も かしこ も なまぐさい の です。 それから ウミ へ はいる と、 ナミ に おしたおされて、 すぐ テ だの アシ だの を すりむく の です。 コブシ の よう な おおきな イシ が うちよせる ナミ に もまれて、 しじゅう ごろごろ して いる の です。
 ワタクシ は すぐ いや に なりました。 しかし K は いい とも わるい とも いいません。 すくなくとも カオツキ だけ は ヘイキ な もの でした。 そのくせ カレ は ウミ へ はいる たんび に どこ か に ケガ を しない こと は なかった の です。 ワタクシ は とうとう カレ を ときふせて、 そこ から トミウラ に ゆきました。 トミウラ から また ナコ に うつりました。 すべて この エンガン は その ジブン から おもに ガクセイ の あつまる ところ でした から、 どこ でも ワレワレ には ちょうど テゴロ の カイスイヨクジョウ だった の です。 K と ワタクシ は よく カイガン の イワ の ウエ に すわって、 とおい ウミ の イロ や、 ちかい ミズ の ソコ を ながめました。 イワ の ウエ から みおろす ミズ は、 また トクベツ に きれい な もの でした。 あかい イロ だの アイ の イロ だの、 ふつう シジョウ に のぼらない よう な イロ を した コウオ が、 すきとおる ナミ の ナカ を あちらこちら と およいで いる の が あざやか に ゆびさされました。
 ワタクシ は そこ に すわって、 よく ショモツ を ひろげました。 K は なにも せず に だまって いる ほう が おおかった の です。 ワタクシ には それ が カンガエ に ふけって いる の か、 ケシキ に みとれて いる の か、 もしくは すき な ソウゾウ を えがいて いる の か、 まったく わからなかった の です。 ワタクシ は ときどき メ を あげて、 K に ナニ を して いる の だ と ききました。 K は なにも して いない と ヒトクチ こたえる だけ でした。 ワタクシ は ジブン の ソバ に こう じっと して すわって いる モノ が、 K で なくって、 オジョウサン だったら さぞ ユカイ だろう と おもう こと が よく ありました。 それ だけ なら まだ いい の です が、 ときには K の ほう でも ワタクシ と おなじ よう な キボウ を いだいて イワ の ウエ に すわって いる の では ない かしら と こつぜん うたがいだす の です。 すると おちついて そこ に ショモツ を ひろげて いる の が キュウ に いや に なります。 ワタクシ は フイ に たちあがります。 そうして エンリョ の ない おおきな コエ を だして どなります。 まとまった シ だの ウタ だの を おもしろそう に ぎんずる よう な てぬるい こと は できない の です。 ただ ヤバンジン の ごとく に わめく の です。 ある とき ワタクシ は とつぜん カレ の エリクビ を ウシロ から ぐいと つかみました。 こうして ウミ の ナカ へ つきおとしたら どう する と いって K に ききました。 K は うごきません でした。 ウシロムキ の まま、 ちょうど いい、 やって くれ と こたえました。 ワタクシ は すぐ クビスジ を おさえた テ を はなしました。
 K の シンケイ スイジャク は この とき もう だいぶ よく なって いた らしい の です。 それ と ハンピレイ に、 ワタクシ の ほう は だんだん カビン に なって きて いた の です。 ワタクシ は ジブン より おちついて いる K を みて、 うらやましがりました。 また にくらしがりました。 カレ は どうしても ワタクシ に とりあう ケシキ を みせなかった から です。 ワタクシ には それ が イッシュ の ジシン の ごとく うつりました。 しかし その ジシン を カレ に みとめた ところ で、 ワタクシ は けっして マンゾク できなかった の です。 ワタクシ の ウタガイ は もう イッポ マエ へ でて、 その セイシツ を あきらめたがりました。 カレ は ガクモン なり ジギョウ なり に ついて、 これから ジブン の すすんで ゆく べき ゼント の コウミョウ を ふたたび とりかえした ココロモチ に なった の だろう か。 たんに それ だけ ならば、 K と ワタクシ との リガイ に なんの ショウトツ の おこる わけ は ない の です。 ワタクシ は かえって セワ の シガイ が あった の を うれしく おもう くらい な もの です。 けれども カレ の アンシン が もし オジョウサン に たいして で ある と すれば、 ワタクシ は けっして カレ を ゆるす こと が できなく なる の です。 フシギ にも カレ は ワタクシ の オジョウサン を あいして いる ソブリ に まったく キ が ついて いない よう に みえました。 むろん ワタクシ も それ が K の メ に つく よう に わざとらしく は ふるまいません でした けれども。 K は がんらい そういう テン に かける と にぶい ヒト なの です。 ワタクシ には サイショ から K なら だいじょうぶ と いう アンシン が あった ので、 カレ を わざわざ ウチ へ つれて きた の です。

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 ワタクシ は おもいきって ジブン の ココロ を K に うちあけよう と しました。 もっとも これ は その とき に はじまった わけ でも なかった の です。 タビ に でない マエ から、 ワタクシ には そうした ハラ が できて いた の です けれども、 うちあける キカイ を つらまえる こと も、 その キカイ を つくりだす こと も、 ワタクシ の テギワ では うまく ゆかなかった の です。 イマ から おもう と、 その コロ ワタクシ の シュウイ に いた ニンゲン は ミンナ ミョウ でした。 オンナ に かんして たちいった ハナシ など を する モノ は ヒトリ も ありません でした。 ナカ には はなす タネ を もたない の も だいぶ いた でしょう が、 たとい もって いて も だまって いる の が フツウ の よう でした。 ヒカクテキ ジユウ な クウキ を コキュウ して いる イマ の アナタガタ から みたら、 さだめし ヘン に おもわれる でしょう。 それ が ドウガク の ヨシュウ なの か、 または イッシュ の ハニカミ なの か、 ハンダン は アナタ の リカイ に まかせて おきます。
 K と ワタクシ は なんでも はなしあえる ナカ でした。 たまに は アイ とか コイ とか いう モンダイ も、 クチ に のぼらない では ありません でした が、 いつでも チュウショウテキ な リロン に おちて しまう だけ でした。 それ も めった には ワダイ に ならなかった の です。 タイテイ は ショモツ の ハナシ と ガクモン の ハナシ と、 ミライ の ジギョウ と、 ホウフ と、 シュウヨウ の ハナシ ぐらい で もちきって いた の です。 いくら したしくって も こう かたく なった ヒ には、 とつぜん チョウシ を くずせる もの では ありません。 フタリ は ただ かたい なり に したしく なる だけ です。 ワタクシ は オジョウサン の こと を K に うちあけよう と おもいたって から、 ナンベン はがゆい フカイ に なやまされた か しれません。 ワタクシ は K の アタマ の どこ か 1 カショ を つきやぶって、 そこ から やわらかい クウキ を ふきこんで やりたい キ が しました。
 アナタガタ から みて ショウシ センバン な こと も その とき の ワタクシ には じっさい ダイコンナン だった の です。 ワタクシ は タビサキ でも ウチ に いた とき と おなじ よう に ヒキョウ でした。 ワタクシ は しじゅう キカイ を とらえる キ で K を カンサツ して いながら、 へんに コウトウテキ な カレ の タイド を どう する こと も できなかった の です。 ワタクシ に いわせる と、 カレ の シンゾウ の シュウイ は くろい ウルシ で あつく ぬりかためられた の も ドウゼン でした。 ワタクシ の そそぎかけよう と する チシオ は、 イッテキ も その シンゾウ の ナカ へは はいらない で、 ことごとく はじきかえされて しまう の です。
 ある とき は あまり に K の ヨウス が つよくて たかい ので、 ワタクシ は かえって アンシン した こと も あります。 そうして ジブン の ウタガイ を ハラ の ナカ で コウカイ する と ともに、 おなじ ハラ の ナカ で、 K に わびました。 わびながら ジブン が ヒジョウ に カトウ な ニンゲン の よう に みえて、 キュウ に いや な ココロモチ に なる の です。 しかし しばらく する と、 イゼン の ウタガイ が また ギャクモドリ を して、 つよく うちかえして きます。 スベテ が ウタガイ から わりだされる の です から、 スベテ が ワタクシ には フリエキ でした。 ヨウボウ も K の ほう が オンナ に すかれる よう に みえました。 セイシツ も ワタクシ の よう に こせこせ して いない ところ が、 イセイ には キ に いる だろう と おもわれました。 どこ か マ が ぬけて いて、 それ で どこ か に しっかり した おとこらしい ところ の ある テン も、 ワタクシ より は ユウセイ に みえました。 ガクリョク に なれば センモン こそ ちがいます が、 ワタクシ は むろん K の テキ で ない と ジカク して いました。 ――すべて ムコウ の いい ところ だけ が こう イチド に メサキ へ ちらつきだす と、 ちょっと アンシン した ワタクシ は すぐ モト の フアン に たちかえる の です。
 K は おちつかない ワタクシ の ヨウス を みて、 いや なら ひとまず トウキョウ へ かえって も いい と いった の です が、 そう いわれる と、 ワタクシ は キュウ に かえりたく なくなりました。 じつは K を トウキョウ へ かえしたく なかった の かも しれません。 フタリ は ボウシュウ の ハナ を まわって ムコウガワ へ でました。 ワレワレ は あつい ヒ に いられながら、 くるしい オモイ を して、 カズサ の そこ イチリ に だまされながら、 うんうん あるきました。 ワタクシ には そうして あるいて いる イミ が まるで わからなかった くらい です。 ワタクシ は ジョウダン ハンブン K に そう いいました。 すると K は アシ が ある から あるく の だ と こたえました。 そうして あつく なる と、 ウミ に はいって いこう と いって、 どこ でも かまわず シオ へ つかりました。 その アト を また つよい ヒ で てりつけられる の です から、 カラダ が だるくて ぐたぐた に なりました。

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 こんな ふう に して あるいて いる と、 アツサ と ヒロウ と で しぜん カラダ の チョウシ が くるって くる もの です。 もっとも ビョウキ とは ちがいます。 キュウ に ヒト の カラダ の ナカ へ、 ジブン の レイコン が ヤドガエ を した よう な キブン に なる の です。 ワタクシ は ヘイゼイ の とおり K と クチ を ききながら、 どこ か で ヘイゼイ の ココロモチ と はなれる よう に なりました。 カレ に たいする シタシミ も ニクシミ も、 リョチュウ カギリ と いう トクベツ な セイシツ を おびる ふう に なった の です。 つまり フタリ は アツサ の ため、 シオ の ため、 また ホコウ の ため、 ザイライ と ことなった あたらしい カンケイ に いる こと が できた の でしょう。 その とき の ワレワレ は あたかも ミチヅレ に なった ギョウショウ の よう な もの でした。 いくら ハナシ を して も イツモ と ちがって、 アタマ を つかう こみいった モンダイ には ふれません でした。
 ワレワレ は この チョウシ で とうとう チョウシ まで いった の です が、 ドウチュウ たった ヒトツ の レイガイ が あった の を いまに わすれる こと が できない の です。 まだ ボウシュウ を はなれない マエ、 フタリ は コミナト と いう ところ で、 タイノウラ を ケンブツ しました。 もう ネンスウ も よほど たって います し、 それに ワタクシ には それほど キョウミ の ない こと です から、 はんぜん とは おぼえて いません が、 なんでも そこ は ニチレン の うまれた ムラ だ とか いう ハナシ でした。 ニチレン の うまれた ヒ に、 タイ が 2 ビ イソ に うちあげられて いた とか いう イイツタエ に なって いる の です。 それ イライ ムラ の リョウシ が タイ を とる こと を エンリョ して イマ に いたった の だ から、 ウラ には タイ が たくさん いる の です。 ワレワレ は コブネ を やとって、 その タイ を わざわざ み に でかけた の です。
 その とき ワタクシ は ただ イチズ に ナミ を みて いました。 そうして その ナミ の ナカ に うごく すこし むらさきがかった タイ の イロ を、 おもしろい ゲンショウ の ヒトツ と して あかず ながめました。 しかし K は ワタクシ ほど それ に キョウミ を もちえなかった もの と みえます。 カレ は タイ より も かえって ニチレン の ほう を アタマ の ナカ で ソウゾウ して いた らしい の です。 ちょうど そこ に タンジョウジ と いう テラ が ありました。 ニチレン の うまれた ムラ だ から タンジョウジ と でも ナ を つけた もの でしょう、 リッパ な ガラン でした。 K は その テラ に いって ジュウジ に あって みる と いいだしました。 ジツ を いう と、 ワレワレ は ずいぶん ヘン な ナリ を して いた の です。 ことに K は カゼ の ため に ボウシ を ウミ に ふきとばされた ケッカ、 スゲガサ を かって かぶって いました。 キモノ は もとより ソウホウ とも あかじみた うえ に アセ で くさく なって いました。 ワタクシ は ボウサン など に あう の は よそう と いいました。 K は ゴウジョウ だ から ききません。 いや なら ワタクシ だけ ソト に まって いろ と いう の です。 ワタクシ は シカタ が ない から イッショ に ゲンカン に かかりました が、 ココロ の ウチ では きっと ことわられる に ちがいない と おもって いました。 ところが ボウサン と いう もの は あんがい テイネイ な もの で、 ひろい リッパ な ザシキ へ ワタクシタチ を とおして、 すぐ あって くれました。 その ジブン の ワタクシ は K と だいぶ カンガエ が ちがって いました から、 ボウサン と K の ダンワ に それほど ミミ を かたむける キ も おこりません でした が、 K は しきり に ニチレン の こと を きいて いた よう です。 ニチレン は ソウ ニチレン と いわれる くらい で、 ソウショ が たいへん ジョウズ で あった と ボウサン が いった とき、 ジ の まずい K は、 ナン だ くだらない と いう カオ を した の を ワタクシ は まだ おぼえて います。 K は そんな こと より も、 もっと ふかい イミ の ニチレン が しりたかった の でしょう。 ボウサン が その テン で K を マンゾク させた か どう か は ギモン です が、 カレ は テラ の ケイダイ を でる と、 しきり に ワタクシ に むかって ニチレン の こと を ウンヌン しだしました。 ワタクシ は あつくて くたびれて、 それ どころ では ありません でした から、 ただ クチ の サキ で イイカゲン な アイサツ を して いました。 それ も メンドウ に なって シマイ には まったく だまって しまった の です。
 たしか その あくる バン の こと だ と おもいます が、 フタリ は ヤド へ ついて メシ を くって、 もう ねよう と いう すこし マエ に なって から、 キュウ に むずかしい モンダイ を ろんじあいだしました。 K は キノウ ジブン の ほう から はなしかけた ニチレン の こと に ついて、 ワタクシ が とりあわなかった の を、 こころよく おもって いなかった の です。 セイシンテキ に コウジョウシン が ない モノ は バカ だ と いって、 なんだか ワタクシ を さも ケイハクモノ の よう に やりこめる の です。 ところが ワタクシ の ムネ には オジョウサン の こと が わだかまって います から、 カレ の ブベツ に ちかい コトバ を ただ わらって うけとる わけ に いきません。 ワタクシ は ワタクシ で ベンカイ を はじめた の です。

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 その とき ワタクシ は しきり に ニンゲン-らしい と いう コトバ を つかいました。 K は この ニンゲン-らしい と いう コトバ の ウチ に、 ワタクシ が ジブン の ジャクテン の スベテ を かくして いる と いう の です。 なるほど アト から かんがえれば、 K の いう とおり でした。 しかし ニンゲン-らしく ない イミ を K に ナットク させる ため に その コトバ を つかいだした ワタクシ には、 シュッタツテン が すでに ハンコウテキ でした から、 それ を ハンセイ する よう な ヨユウ は ありません。 ワタクシ は なお の こと ジセツ を シュチョウ しました。 すると K が カレ の どこ を つらまえて ニンゲン-らしく ない と いう の か と ワタクシ に きく の です。 ワタクシ は カレ に つげました。 ――キミ は ニンゲン-らしい の だ。 あるいは ニンゲン-らしすぎる かも しれない の だ。 けれども クチ の サキ だけ では ニンゲン-らしく ない よう な こと を いう の だ。 また ニンゲン-らしく ない よう に ふるまおう と する の だ。
 ワタクシ が こう いった とき、 カレ は ただ ジブン の シュウヨウ が たりない から、 ヒト には そう みえる かも しれない と こたえた だけ で、 いっこう ワタクシ を ハンバク しよう と しません でした。 ワタクシ は ハリアイ が ぬけた と いう より も、 かえって キノドク に なりました。 ワタクシ は すぐ ギロン を そこ で きりあげました。 カレ の チョウシ も だんだん しずんで きました。 もし ワタクシ が カレ の しって いる とおり ムカシ の ヒト を しる ならば、 そんな コウゲキ は しない だろう と いって ちょうぜん と して いました。 K の クチ に した ムカシ の ヒト とは、 むろん エイユウ でも なければ ゴウケツ でも ない の です。 レイ の ため に ニク を しいたげたり、 ミチ の ため に タイ を むちうったり した いわゆる ナンギョウ クギョウ の ヒト を さす の です。 K は ワタクシ に、 カレ が どの くらい その ため に くるしんで いる か わからない の が、 いかにも ザンネン だ と メイゲン しました。
 K と ワタクシ とは それぎり ねて しまいました。 そうして その あくる ヒ から また フツウ の ギョウショウ の タイド に かえって、 うんうん アセ を ながしながら あるきだした の です。 しかし ワタクシ は みちみち その バン の こと を ひょいひょい と おもいだしました。 ワタクシ には コノウエ も ない いい キカイ が あたえられた のに、 しらない フリ を して なぜ それ を やりすごした の だろう と いう カイコン の ネン が もえた の です。 ワタクシ は ニンゲン-らしい と いう チュウショウテキ な コトバ を もちいる カワリ に、 もっと チョクセツ で カンタン な ハナシ を K に うちあけて しまえば よかった と おもいだした の です。 ジツ を いう と、 ワタクシ が そんな コトバ を ソウゾウ した の も、 オジョウサン に たいする ワタクシ の カンジョウ が ドダイ に なって いた の です から、 ジジツ を ジョウリュウ して こしらえた リロン など を K の ミミ に ふきこむ より も、 モト の カタチ ソノママ を カレ の メノマエ に ロシュツ した ほう が、 ワタクシ には たしか に リエキ だった でしょう。 ワタクシ に それ が できなかった の は、 ガクモン の コウサイ が キチョウ を コウセイ して いる フタリ の シタシミ に、 おのずから イッシュ の ダセイ が あった ため、 おもいきって それ を つきやぶる だけ の ユウキ が ワタクシ に かけて いた の だ と いう こと を ここ に ジハク します。 きどりすぎた と いって も、 キョエイシン が たたった と いって も おなじ でしょう が、 ワタクシ の いう きどる とか キョエイ とか いう イミ は、 フツウ の とは すこし ちがいます。 それ が アナタ に つうじ さえ すれば、 ワタクシ は マンゾク なの です。
 ワレワレ は マックロ に なって トウキョウ へ かえりました。 かえった とき は ワタクシ の キブン が また かわって いました。 ニンゲン-らしい とか、 ニンゲン-らしく ない とか いう コリクツ は ほとんど アタマ の ナカ に のこって いません でした。 K にも シュウキョウカ-らしい ヨウス が まったく みえなく なりました。 おそらく カレ の ココロ の どこ にも レイ が どう の ニク が どう の と いう モンダイ は、 その とき やどって いなかった でしょう。 フタリ は イジンシュ の よう な カオ を して、 いそがしそう に みえる トウキョウ を ぐるぐる ながめました。 それから リョウゴク へ きて、 あつい のに シャモ を くいました。 K は その イキオイ で コイシカワ まで あるいて かえろう と いう の です。 タイリョク から いえば K より も ワタクシ の ほう が つよい の です から、 ワタクシ は すぐ おうじました。
 ウチ へ ついた とき、 オクサン は フタリ の スガタ を みて おどろきました。 フタリ は ただ イロ が くろく なった ばかり で なく、 むやみ に あるいて いた うち に たいへん やせて しまった の です。 オクサン は それでも ジョウブ そう に なった と いって ほめて くれる の です。 オジョウサン は オクサン の ムジュン が おかしい と いって また わらいだしました。 リョコウ マエ ときどき ハラ の たった ワタクシ も、 その とき だけ は ユカイ な ココロモチ が しました。 バアイ が バアイ なの と、 ヒサシブリ に きいた せい でしょう。

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 それ のみ ならず ワタクシ は オジョウサン の タイド の すこし マエ と かわって いる の に キ が つきました。 ヒサシブリ で タビ から かえった ワタクシタチ が ヘイゼイ の とおり おちつく まで には、 バンジ に ついて オンナ の テ が ヒツヨウ だった の です が、 その セワ を して くれる オクサン は とにかく、 オジョウサン が すべて ワタクシ の ほう を サキ に して、 K を アトマワシ に する よう に みえた の です。 それ を ロコツ に やられて は、 ワタクシ も メイワク した かも しれません。 バアイ に よって は かえって フカイ の ネン さえ おこしかねなかったろう と おもう の です が、 オジョウサン の ショサ は その テン で はなはだ ヨウリョウ を えて いた から、 ワタクシ は うれしかった の です。 つまり オジョウサン は ワタクシ だけ に わかる よう に、 モチマエ の シンセツ を ヨブン に ワタクシ の ほう へ わりあてて くれた の です。 だから K は べつに いや な カオ も せず に ヘイキ で いました。 ワタクシ は ココロ の ウチ で ひそか に カレ に たいする ガイカ を そうしました。
 やがて ナツ も すぎて 9 ガツ の ナカゴロ から ワレワレ は また ガッコウ の カギョウ に シュッセキ しなければ ならない こと に なりました。 K と ワタクシ とは テンデン の ジカン の ツゴウ で、 デイリ の コクゲン に また チソク が できて きました。 ワタクシ が K より おくれて かえる とき は 1 シュウ に 3 ド ほど ありました が、 いつ かえって も オジョウサン の カゲ を K の ヘヤ に みとめる こと は ない よう に なりました。 K は レイ の メ を ワタクシ の ほう に むけて、 「イマ かえった の か」 を キソク の ごとく くりかえしました。 ワタクシ の エシャク も ほとんど キカイ の ごとく カンタン で かつ ムイミ でした。
 たしか 10 ガツ の ナカゴロ と おもいます。 ワタクシ は ネボウ を した ケッカ、 ニホンフク の まま いそいで ガッコウ へ でた こと が あります。 ハキモノ も アミアゲ など を むすんで いる ジカン が おしい ので、 ゾウリ を つっかけた なり とびだした の です。 その ヒ は ジカンワリ から いう と、 K より も ワタクシ の ほう が サキ へ かえる はず に なって いました。 ワタクシ は もどって くる と、 その つもり で ゲンカン の コウシ を がらり と あけた の です。 すると いない と おもって いた K の コエ が ひょいと きこえました。 ドウジ に オジョウサン の ワライゴエ が ワタクシ の ミミ に ひびきました。 ワタクシ は イツモ の よう に テカズ の かかる クツ を はいて いない から、 すぐ ゲンカン に あがって シキリ の フスマ を あけました。 ワタクシ は レイ の とおり ツクエ の マエ に すわって いる K を みました。 しかし オジョウサン は もう そこ には いなかった の です。 ワタクシ は あたかも K の ヘヤ から のがれでる よう に さる その ウシロスガタ を ちらり と みとめた だけ でした。 ワタクシ は K に どうして はやく かえった の か と といました。 K は ココロモチ が わるい から やすんだ の だ と こたえました。 ワタクシ が ジブン の ヘヤ に はいって そのまま すわって いる と、 まもなく オジョウサン が チャ を もって きて くれました。 その とき オジョウサン は はじめて おかえり と いって ワタクシ に アイサツ を しました。 ワタクシ は わらいながら サッキ は なぜ にげた ん です と きける よう な さばけた オトコ では ありません。 それでいて ハラ の ナカ では なんだか その こと が キ に かかる よう な ニンゲン だった の です。 オジョウサン は すぐ ザ を たって エンガワヅタイ に ムコウ へ いって しまいました。 しかし K の ヘヤ の マエ に たちどまって、 フタコト ミコト ウチ と ソト と で ハナシ を して いました。 それ は サッキ の ツヅキ らしかった の です が、 マエ を きかない ワタクシ には まるで わかりません でした。
 そのうち オジョウサン の タイド が だんだん ヘイキ に なって きました。 K と ワタクシ が イッショ に ウチ に いる とき でも、 よく K の ヘヤ の エンガワ へ きて カレ の ナ を よびました。 そうして そこ へ はいって、 ゆっくり して いました。 むろん ユウビン を もって くる こと も ある し、 センタクモノ を おいて ゆく こと も ある の です から、 その くらい の コウツウ は おなじ ウチ に いる フタリ の カンケイジョウ、 トウゼン と みなければ ならない の でしょう が、 ぜひ オジョウサン を センユウ したい と いう キョウレツ な イチネン に うごかされて いる ワタクシ には、 どうしても それ が トウゼン イジョウ に みえた の です。 ある とき は オジョウサン が わざわざ ワタクシ の ヘヤ へ くる の を カイヒ して、 K の ほう ばかり へ ゆく よう に おもわれる こと さえ あった くらい です。 それなら なぜ K に ウチ を でて もらわない の か と アナタ は きく でしょう。 しかし そう すれば ワタクシ が K を ムリ に ひっぱって きた シュイ が たたなく なる だけ です。 ワタクシ には それ が できない の です。
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