ジョセイト
ダザイ オサム
アサ、 メ を さます とき の キモチ は、 おもしろい。 カクレンボ の とき、 オシイレ の まっくらい ナカ に、 じっと、 しゃがんで かくれて いて、 とつぜん、 デコ ちゃん に、 がらっと フスマ を あけられ、 ヒ の ヒカリ が どっと きて、 デコ ちゃん に、 「みつけた!」 と オオゴエ で いわれて、 マブシサ、 それから、 ヘン な マ の ワルサ、 それから、 ムネ が どきどき して、 キモノ の マエ を あわせたり して、 ちょっと、 てれくさく、 オシイレ から でて きて、 キュウ に むかむか はらだたしく、 あの カンジ、 いや、 ちがう、 あの カンジ でも ない、 なんだか、 もっと やりきれない。 ハコ を あける と、 その ナカ に、 また ちいさい ハコ が あって、 その ちいさい ハコ を あける と、 また その ナカ に、 もっと ちいさい ハコ が あって、 そいつ を あける と、 また、 また、 ちいさい ハコ が あって、 その ちいさい ハコ を あける と、 また ハコ が あって、 そうして、 ナナツ も、 ヤッツ も、 あけて いって、 とうとう オシマイ に、 サイコロ くらい の ちいさい ハコ が でて きて、 そいつ を そっと あけて みて、 なにも ない、 カラッポ、 あの カンジ、 すこし ちかい。 ぱちっと メ が さめる なんて、 あれ は ウソ だ。 にごって にごって、 その うち に、 だんだん デンプン が シタ に しずみ、 すこし ずつ ウワズミ が できて、 やっと つかれて メ が さめる。 アサ は、 なんだか、 しらじらしい。 かなしい こと が、 たくさん たくさん ムネ に うかんで、 やりきれない。 いや だ、 いや だ。 アサ の ワタシ は いちばん みにくい。 リョウホウ の アシ が、 くたくた に つかれて、 そうして、 もう、 なにも したく ない。 ジュクスイ して いない せい かしら。 アサ は ケンコウ だ なんて、 あれ は ウソ。 アサ は ハイイロ。 いつも いつも おなじ。 いちばん キョム だ。 アサ の ネドコ の ナカ で、 ワタシ は いつも エンセイテキ だ。 いや に なる。 いろいろ みにくい コウカイ ばっかり、 イチド に、 どっと かたまって ムネ を ふさぎ、 ミモダエ しちゃう。
アサ は、 イジワル。
「オトウサン」 と ちいさい コエ で よんで みる。 へんに きはずかしく、 うれしく、 おきて、 さっさと フトン を たたむ。 フトン を もちあげる とき、 よいしょ、 と カケゴエ して、 はっと おもった。 ワタシ は、 イマ まで、 ジブン が、 よいしょ なんて、 げびた コトバ を いいだす オンナ だ とは、 おもって なかった。 よいしょ、 なんて、 オバアサン の カケゴエ みたい で、 いやらしい。 どうして、 こんな カケゴエ を はっした の だろう。 ワタシ の カラダ の ナカ に、 どこ か に、 バアサン が ヒトツ いる よう で、 キモチ が わるい。 これから は、 キ を つけよう。 ヒト の ゲヒン な アルキ カッコウ を ヒンシュク して いながら、 ふと、 ジブン も、 そんな アルキカタ して いる の に キ が ついた とき みたい に、 すごく、 しょげちゃった。
アサ は、 いつでも ジシン が ない。 ネマキ の まま で キョウダイ の マエ に すわる。 メガネ を かけない で、 カガミ を のぞく と、 カオ が、 すこし ぼやけて、 しっとり みえる。 ジブン の カオ の ナカ で いちばん メガネ が いや なの だ けれど、 ホカ の ヒト には、 わからない メガネ の ヨサ も、 ある。 メガネ を とって、 トオク を みる の が すき だ。 ゼンタイ が かすんで、 ユメ の よう に、 ノゾキエ みたい に、 すばらしい。 きたない もの なんて、 なにも みえない。 おおきい もの だけ、 センメイ な、 つよい イロ、 ヒカリ だけ が メ に はいって くる。 メガネ を とって ヒト を みる の も すき。 アイテ の カオ が、 ミナ、 やさしく、 きれい に、 わらって みえる。 それに、 メガネ を はずして いる とき は、 けっして ヒト と ケンカ を しよう なんて おもわない し、 ワルクチ も いいたく ない。 ただ、 だまって、 ぽかん と して いる だけ。 そうして、 そんな とき の ワタシ は、 ヒト にも オヒトヨシ に みえる だろう と おもえば、 なお の こと、 ワタシ は、 ぽかん と アンシン して、 あまえたく なって、 ココロ も、 たいへん やさしく なる の だ。
だけど、 やっぱり メガネ は、 いや。 メガネ を かけたら カオ と いう カンジ が なくなって しまう。 カオ から うまれる、 イロイロ の ジョウチョ、 ロマンチック、 ウツクシサ、 ハゲシサ、 ヨワサ、 アドケナサ、 アイシュウ、 そんな もの、 メガネ が みんな さえぎって しまう。 それに、 メ で オハナシ を する と いう こと も、 おかしな くらい できない。
メガネ は、 オバケ。
ジブン で、 いつも ジブン の メガネ が いや だ と おもって いる ゆえ か、 メ の うつくしい こと が、 いちばん いい と おもわれる。 ハナ が なくて も、 クチ が かくされて いて も、 メ が、 その メ を みて いる と、 もっと ジブン が うつくしく いきなければ と おもわせる よう な メ で あれば、 いい と おもって いる。 ワタシ の メ は、 ただ おおきい だけ で、 なんにも ならない。 じっと ジブン の メ を みて いる と、 がっかり する。 オカアサン で さえ、 つまらない メ だ と いって いる。 こんな メ を ヒカリ の ない メ と いう の で あろう。 タドン、 と おもう と、 がっかり する。 これ です から ね。 ひどい です よ。 カガミ に むかう と、 その たんび に、 ウルオイ の ある いい メ に なりたい と、 つくづく おもう。 あおい ミズウミ の よう な メ、 あおい ソウゲン に ねて オオゾラ を みて いる よう な メ、 ときどき クモ が ながれて うつる。 トリ の カゲ まで、 はっきり うつる。 うつくしい メ の ヒト と たくさん あって みたい。
ケサ から 5 ガツ、 そう おもう と、 なんだか すこし うきうき して きた。 やっぱり うれしい。 もう ナツ も ちかい と おもう。 ニワ に でる と イチゴ の ハナ が メ に とまる。 オトウサン の しんだ と いう ジジツ が、 フシギ に なる。 しんで、 いなく なる、 と いう こと は、 リカイ できにくい こと だ。 フ に おちない。 オネエサン や、 わかれた ヒト や、 ながい アイダ あわず に いる ヒトタチ が なつかしい。 どうも アサ は、 すぎさった こと、 モウセン の ヒトタチ の こと が、 いやに ミヂカ に、 オタクワン の ニオイ の よう に あじけなく おもいだされて、 かなわない。
ジャピー と、 カア (かわいそう な イヌ だ から、 カア と よぶ ん だ) と、 2 ヒキ もつれあいながら、 はしって きた。 2 ヒキ を マエ に ならべて おいて、 ジャピー だけ を、 うんと かわいがって やった。 ジャピー の まっしろい ケ は ひかって うつくしい。 カア は、 きたない。 ジャピー を かわいがって いる と、 カア は、 ソバ で なきそう な カオ を して いる の を ちゃんと しって いる。 カア が カタワ だ と いう こと も しって いる。 カア は、 かなしくて、 いや だ。 かわいそう で かわいそう で たまらない から、 わざと いじわるく して やる の だ。 カア は、 ノライヌ みたい に みえる から、 いつ イヌコロシ に やられる か、 わからない。 カア は、 アシ が、 こんな だ から、 にげる の に、 おそい こと だろう。 カア、 はやく、 ヤマ の ナカ に でも ゆきなさい。 オマエ は ダレ にも かわいがられない の だ から、 はやく しねば いい。 ワタシ は、 カア だけ で なく、 ヒト にも いけない こと を する コ なん だ。 ヒト を こまらせて、 シゲキ する。 ホントウ に いや な コ なん だ。 エンガワ に こしかけて、 ジャピー の アタマ を なでて やりながら、 メ に しみる アオバ を みて いる と、 なさけなく なって、 ツチ の ウエ に すわりたい よう な キモチ に なった。
ないて みたく なった。 うんと イキ を つめて、 メ を ジュウケツ させる と、 すこし ナミダ が でる かも しれない と おもって、 やって みた が、 ダメ だった。 もう、 ナミダ の ない オンナ に なった の かも しれない。
あきらめて、 オヘヤ の ソウジ を はじめる。 オソウジ しながら、 ふと 「トウジン オキチ」 を うたう。 ちょっと アタリ を みまわした よう な カンジ。 ふだん、 モーツァルト だの、 バッハ だの に ネッチュウ して いる はず の ジブン が、 ムイシキ に、 「トウジン オキチ」 を うたった の が、 おもしろい。 フトン を もちあげる とき、 よいしょ、 と いったり、 オソウジ しながら、 トウジン オキチ を うたう よう では、 ジブン も、 もう、 ダメ か と おもう。 こんな こと では、 ネゴト など で、 どんな に ゲヒン な こと いいだす か、 フアン で ならない。 でも、 なんだか おかしく なって、 ホウキ の テ を やすめて、 ヒトリ で わらう。
キノウ ぬいあげた あたらしい シタギ を きる。 ムネ の ところ に、 ちいさい しろい バラ の ハナ を シシュウ して おいた。 ウワギ を きちゃう と、 この シシュウ みえなく なる。 ダレ にも わからない。 トクイ で ある。
オカアサン、 ダレ か の エンダン の ため に オオワラワ、 アサ はやく から オデカケ。 ワタシ の ちいさい とき から オカアサン は、 ヒト の ため に つくす ので、 ナレッコ だ けれど、 ホントウ に おどろく ほど、 しじゅう うごいて いる オカアサン だ。 カンシン する。 オトウサン が、 あまり にも ベンキョウ ばかり して いた から、 オカアサン は、 オトウサン の ブン も する の で ある。 オトウサン は、 シャコウ とか から は、 およそ エン が とおい けれど、 オカアサン は、 ホントウ に キモチ の よい ヒトタチ の アツマリ を つくる。 フタリ とも ちがった ところ を もって いる けれど、 おたがいに、 ソンケイ しあって いた らしい。 みにくい ところ の ない、 うつくしい やすらか な フウフ、 と でも いう の で あろう か。 ああ、 ナマイキ、 ナマイキ。
オミオツケ の あたたまる まで、 ダイドコログチ に こしかけて、 マエ の ゾウキバヤシ を、 ぼんやり みて いた。 そしたら、 ムカシ にも、 これから サキ にも、 こう やって、 ダイドコロ の クチ に こしかけて、 この とおり の シセイ で もって、 しかも そっくり おなじ こと を かんがえながら マエ の ゾウキバヤシ を みて いた、 みて いる、 よう な キ が して、 カコ、 ゲンザイ、 ミライ、 それ が イッシュンカン の うち に かんじられる よう な、 ヘン な キモチ が した。 こんな こと は、 ときどき ある。 ダレ か と ヘヤ に すわって ハナシ を して いる。 メ が、 テーブル の スミ に いって ことん と とまって うごかない。 クチ だけ が うごいて いる。 こんな とき に、 ヘン な サッカク を おこす の だ。 いつ だった か、 こんな おなじ ジョウタイ で、 おなじ こと を はなしながら、 やはり、 テーブル の スミ を みて いた、 また、 これから サキ も、 イマ の こと が、 そっくり ソノママ に ジブン に やって くる の だ、 と しんじちゃう キモチ に なる の だ。 どんな トオク の イナカ の ノミチ を あるいて いて も、 きっと、 この ミチ は、 いつか きた ミチ、 と おもう。 あるきながら ミチバタ の マメ の ハ を、 さっと むしりとって も、 やはり、 この ミチ の ここ の ところ で、 この ハ を むしりとった こと が ある、 と おもう。 そうして、 また、 これから も、 ナンド も ナンド も、 この ミチ を あるいて、 ここ の ところ で マメ の ハ を むしる の だ、 と しんじる の で ある。 また、 こんな こと も ある。 ある とき オユ に つかって いて、 ふと テ を みた。 そしたら、 これから サキ、 ナンネン か たって、 オユ に はいった とき、 この、 イマ の なにげなく、 テ を みた こと を、 そして みながら、 ことん と かんじた こと を きっと おもいだす に ちがいない、 と おもって しまった。 そう おもったら、 なんだか、 くらい キ が した。 また、 ある ユウガタ、 ゴハン を オヒツ に うつして いる とき、 インスピレーション、 と いって は おおげさ だ けれど、 ナニ か ミウチ に ぴゅうっと はしりさって ゆく もの を かんじて、 なんと いおう か、 テツガク の シッポ と いいたい の だ けれど、 そいつ に やられて、 アタマ も ムネ も、 スミズミ まで トウメイ に なって、 ナニ か、 いきて ゆく こと に ふわっと おちついた よう な、 だまって、 オト も たてず に、 トコロテン が そろっと おしだされる とき の よう な ジュウナンセイ で もって、 このまま ナミ の まにまに、 うつくしく かるく いきとおせる よう な カンジ が した の だ。 この とき は、 テツガク どころ の サワギ では ない。 ヌスミネコ の よう に、 オト も たてず に いきて ゆく ヨカン なんて、 ろく な こと は ない と、 むしろ、 おそろしかった。 あんな キモチ の ジョウタイ が、 ながく つづく と、 ヒト は、 カミガカリ みたい に なっちゃう の では ない かしら。 キリスト。 でも、 オンナ の キリスト なんて の は、 いやらしい。
けっきょく は、 ワタシ ヒマ な もん だ から、 セイカツ の クロウ が ない もん だ から、 マイニチ、 イクヒャク、 イクセン の みたり きいたり の カンジュセイ の ショリ が できなく なって、 ぽかん と して いる うち に、 そいつら が、 オバケ みたい な カオ に なって ぽかぽか ういて くる の では ない の かしら。
ショクドウ で、 ゴハン を、 ヒトリ で たべる。 コトシ、 はじめて、 キュウリ を たべる。 キュウリ の アオサ から、 ナツ が くる。 5 ガツ の キュウリ の アオミ には、 ムネ が カラッポ に なる よう な、 うずく よう な、 くすぐったい よう な カナシサ が ある。 ヒトリ で ショクドウ で ゴハン を たべて いる と、 やたらむしょう に リョコウ に でたい。 キシャ に のりたい。 シンブン を よむ。 コノエ さん の シャシン が でて いる。 コノエ さん て、 いい オトコ なの かしら。 ワタシ は、 こんな カオ を すかない。 ヒタイ が いけない。 シンブン では、 ホン の コウコクブン が いちばん たのしい。 1 ジ 1 ギョウ で、 100 エン、 200 エン と コウコクリョウ とられる の だろう から、 みな、 イッショウ ケンメイ だ。 イチジ イック、 サイダイ の コウカ を おさめよう と、 うんうん うなって、 しぼりだした よう な メイブン だ。 こんな に オカネ の かかる ブンショウ は、 ヨノナカ に、 すくない で あろう。 なんだか、 キミ が よい。 ツウカイ だ。
ゴハン を すまして、 トジマリ して、 トウコウ。 だいじょうぶ、 アメ が ふらない とは おもう けれど、 それでも、 キノウ オカアサン から、 もらった よき アマガサ どうしても もって あるきたくて、 そいつ を ケイタイ。 この アンブレラ は、 オカアサン が、 ムカシ、 ムスメ さん ジダイ に つかった もの。 おもしろい カサ を みつけて、 ワタシ は、 すこし トクイ。 こんな カサ を もって、 パリー の シタマチ を あるきたい。 きっと、 イマ の センソウ が おわった コロ、 こんな、 ユメ を もった よう な コフウ の アンブレラ が リュウコウ する だろう。 この カサ には、 ボンネット-フウ の ボウシ が、 きっと にあう。 ピンク の スソ の ながい、 エリ の おおきく ひらいた キモノ に、 くろい キヌ レース で あんだ ながい テブクロ を して、 おおきな ツバ の ひろい ボウシ には、 うつくしい ムラサキ の スミレ を つける。 そうして シンリョク の コロ に パリー の レストラン に チュウショク を し に ゆく。 ものうそう に かるく ホオヅエ して、 ソト を とおる ヒト の ナガレ を みて いる と、 ダレ か が、 そっと ワタシ の カタ を たたく。 キュウ に オンガク、 バラ の ワルツ。 ああ、 おかしい、 おかしい。 ゲンジツ は、 この ふるぼけた キタイ な、 エ の ひょろながい アマガサ 1 ポン。 ジブン が、 みじめ で かわいそう。 マッチ-ウリ の ムスメ さん。 どれ、 クサ でも、 むしって ゆきましょう。
デガケ に、 ウチ の モン の マエ の クサ を、 すこし むしって、 オカアサン への キンロウ ホウシ。 キョウ は ナニ か いい こと が ある かも しれない。 おなじ クサ でも、 どうして こんな、 むしりとりたい クサ と、 そっと のこして おきたい クサ と、 いろいろ ある の だろう。 かわいい クサ と、 そう で ない クサ と、 カタチ は、 ちっとも ちがって いない のに、 それでも、 いじらしい クサ と、 にくにくしい クサ と、 どうして こう、 ちゃんと わかれて いる の だろう。 リクツ は ない ん だ。 オンナ の スキキライ なんて、 ずいぶん イイカゲン な もの だ と おもう。 10 プン-カン の キンロウ ホウシ を すまして、 テイシャバ へ いそぐ。 ハタケミチ を とおりながら、 しきり と エ が かきたく なる。 トチュウ、 ジンジャ の モリ の コミチ を とおる。 これ は、 ワタシ ヒトリ で みつけて おいた チカミチ で ある。 モリ の コミチ を あるきながら、 ふと シタ を みる と、 ムギ が 2 スン ばかり あちこち に、 かたまって そだって いる。 その あおあお した ムギ を みて いる と、 ああ、 コトシ も ヘイタイ さん が きた の だ と、 わかる。 キョネン も、 タクサン の ヘイタイ さん と ウマ が やって きて、 この ジンジャ の モリ の ナカ に やすんで いった。 しばらく たって そこ を とおって みる と、 ムギ が、 キョウ の よう に、 すくすく して いた。 けれども、 その ムギ は、 それ イジョウ そだたなかった。 コトシ も、 ヘイタイ さん の ウマ の オケ から こぼれて はえて、 ひょろひょろ そだった この ムギ は、 この モリ は こんな に くらく、 まったく ヒ が あたらない もの だ から、 かわいそう に、 これだけ そだって しんで しまう の だろう。
ジンジャ の モリ の コミチ を ぬけて、 エキ ちかく、 ロウドウシャ 4~5 ニン と イッショ に なる。 その ロウドウシャ たち は、 イツモ の レイ で、 いえない よう な いや な コトバ を ワタシ に むかって はきかける。 ワタシ は、 どう したら よい か と まよって しまった。 その ロウドウシャ たち を おいぬいて、 どんどん サキ に いって しまいたい の だ が、 そう する には、 ロウドウシャ たち の アイダ を ぬって くぐりぬけ、 すりぬけ しなければ ならない。 おっかない。 それ と いって、 だまって タチンボ して、 ロウドウシャ たち を サキ に ゆかせて、 うんと キョリ の できる まで まって いる の は、 もっと もっと タンリョク の いる こと だ。 それ は シツレイ な こと なの だ から、 ロウドウシャ たち は おこる かも しれない。 カラダ は、 かっか して くる し、 なきそう に なって しまった。 ワタシ は、 その なきそう に なる の が はずかしくて、 その モノタチ に むかって わらって やった。 そして、 ゆっくり と、 その モノタチ の アト に ついて あるいて いった。 その とき は、 それぎり に なって しまった けれど、 その クヤシサ は、 デンシャ に のって から も きえなかった。 こんな くだらない こと に へいぜん と なれる よう に、 はやく つよく、 きよく、 なりたかった。
デンシャ の イリグチ の すぐ チカク に あいて いる セキ が あった から、 ワタシ は そこ へ そっと ワタシ の オドウグ を おいて、 スカート の ヒダ を ちょっと なおして、 そうして すわろう と したら、 メガネ の オトコ の ヒト が、 ちゃんと ワタシ の オドウグ を どけて セキ に こしかけて しまった。
「あの、 そこ は ワタシ、 みつけた セキ です の」 と いったら、 オトコ は クショウ して ヘイキ で シンブン を よみだした。 よく かんがえて みる と、 どっち が ずうずうしい の か わからない。 こっち の ほう が ずうずうしい の かも しれない。
しかたなく、 アンブレラ と オドウグ を、 アミダナ に のせ、 ワタシ は ツリカワ に ぶらさがって、 イツモ の とおり、 ザッシ を よもう と、 ぱらぱら カタテ で ページ を くって いる うち に、 ひょんな こと を おもった。
ジブン から、 ホン を よむ と いう こと を とって しまったら、 この ケイケン の ない ワタシ は、 ナキベソ を かく こと だろう。 それほど ワタシ は、 ホン に かかれて ある こと に たよって いる。 ヒトツ の ホン を よんで は、 ぱっと その ホン に ムチュウ に なり、 シンライ し、 ドウカ し、 キョウメイ し、 それ に セイカツ を くっつけて みる の だ。 また、 ホカ の ホン を よむ と、 たちまち、 くるっと かわって、 すまして いる。 ヒト の もの を ぬすんで きて ジブン の もの に ちゃんと つくりなおす サイノウ は、 その ズルサ は、 これ は ワタシ の ユイイツ の トクギ だ。 ホントウ に、 この ズルサ、 インチキ には いや に なる。 マイニチ マイニチ、 シッパイ に シッパイ を かさねて、 アカハジ ばかり かいて いたら、 すこし は ジュウコウ に なる かも しれない。 けれども、 そのよう な シッパイ に さえ、 なんとか リクツ を こじつけて、 ジョウズ に つくろい、 ちゃんと した よう な リロン を あみだし、 クニク の シバイ なんか とくとく と やりそう だ。 (こんな コトバ も どこ か の ホン で よんだ こと が ある)
ホントウ に ワタシ は、 どれ が ホントウ の ジブン だ か わからない。 よむ ホン が なくなって、 マネ する オテホン が なんにも みつからなく なった とき には、 ワタシ は、 いったい どう する だろう。 テ も アシ も でない、 イシュク の テイ で、 むやみ に ハナ を かんで ばかり いる かも しれない。 なにしろ デンシャ の ナカ で、 マイニチ こんな に ふらふら かんがえて いる ばかり では、 ダメ だ。 カラダ に、 いや な アタタカサ が のこって、 やりきれない。 ナニ か しなければ、 どうにか しなければ と おもう の だ が、 どう したら、 ジブン を はっきり つかめる の か。 これまで の ワタシ の ジコ ヒハン なんて、 まるで イミ ない もの だった と おもう。 ヒハン を して みて、 いや な、 よわい ところ に きづく と、 すぐ それ に あまく おぼれて、 いたわって、 ツノ を ためて ウシ を ころす の は よく ない、 など と ケツロン する の だ から、 ヒハン も なにも あった もの で ない。 なにも かんがえない ほう が、 むしろ リョウシンテキ だ。
この ザッシ にも、 「わかい オンナ の ケッテン」 と いう ミダシ で、 いろんな ヒト が かいて ある。 よんで いる うち に、 ジブン の こと を いわれた よう な キ が して はずかしい キ にも なる。 それに かく ヒト、 ヒト に よって、 ふだん バカ だ と おもって いる ヒト は、 その とおり に、 バカ の カンジ が する よう な こと を いって いる し、 シャシン で みて、 オシャレ の カンジ の する ヒト は、 オシャレ の コトバヅカイ を して いる ので、 おかしくて、 ときどき くすくす わらいながら よんで ゆく。 シュウキョウカ は、 すぐに シンコウ を もちだす し、 キョウイクカ は、 ハジメ から オワリ まで オン、 オン、 と かいて ある。 セイジカ は、 カンシ を もちだす。 サッカ は、 きどって、 オシャレ な コトバ を つかって いる。 しょって いる。
でも、 みんな、 なかなか カクジツ な こと ばかり かいて ある。 コセイ の ない こと。 フカミ の ない こと。 ただしい キボウ、 ただしい ヤシン、 そんな もの から とおく はなれて いる こと。 つまり、 リソウ の ない こと。 ヒハン は あって も、 ジブン の セイカツ に ちょくせつ むすびつける セッキョクセイ の ない こと。 ムハンセイ。 ホントウ の ジカク、 ジアイ、 ジチョウ が ない。 ユウキ の ある コウドウ を して も、 その あらゆる ケッカ に ついて、 セキニン が もてる か どう か。 ジブン の シュウイ の セイカツ ヨウシキ には ジュンノウ し、 これ を ショリ する こと に たくみ で ある が、 ジブン、 ならびに ジブン の シュウイ の セイカツ に、 ただしい つよい アイジョウ を もって いない。 ホントウ の イミ の ケンソン が ない。 ドクソウセイ に とぼしい。 モホウ だけ だ。 ニンゲン ホンライ の 「アイ」 の カンカク が ケツジョ して しまって いる。 オジョウヒン-ぶって いながら、 キヒン が ない。 その ホカ、 タクサン の こと が かかれて いる。 ホントウ に、 よんで いて、 はっと する こと が おおい。 けっして ヒテイ できない。
けれども ここ に かかれて ある コトバ ゼンブ が、 なんだか、 ラッカンテキ な、 この ヒトタチ の フダン の キモチ とは はなれて、 ただ かいて みた と いう よう な カンジ が する。 「ホントウ の イミ の」 とか、 「ホンライ の」 とか いう ケイヨウシ が たくさん ある けれど、 「ホントウ の」 アイ、 「ホントウ の」 ジカク、 とは、 どんな もの か、 はっきり テ に とる よう には かかれて いない。 この ヒトタチ には、 わかって いる の かも しれない。 それならば、 もっと グタイテキ に、 ただ ヒトコト、 ミギ へ ゆけ、 ヒダリ へ ゆけ、 と、 ただ ヒトコト、 ケンイ を もって ユビ で しめして くれた ほう が、 どんな に ありがたい か わからない。 ワタシタチ、 アイ の ヒョウゲン の ホウシン を みうしなって いる の だ から、 あれ も いけない、 これ も いけない、 と いわず に、 こう しろ、 ああ しろ、 と つよい チカラ で いいつけて くれたら、 ワタシタチ、 みんな、 その とおり に する。 ダレ も ジシン が ない の かしら。 ここ に イケン を ハッピョウ して いる ヒトタチ も、 いつでも、 どんな バアイ に でも、 こんな イケン を もって いる、 と いう わけ では ない の かも しれない。 ただしい キボウ、 ただしい ヤシン を もって いない、 と しかって おられる けれども、 そんなら ワタシタチ、 ただしい リソウ を おって コウドウ した バアイ、 この ヒトタチ は どこまでも ワタシタチ を みまもり、 みちびいて いって くれる だろう か。
ワタシタチ には、 ジシン の ゆく べき サイゼン の バショ、 ゆきたく おもう うつくしい バショ、 ジシン を のばして ゆく べき バショ、 おぼろげ ながら わかって いる。 よい セイカツ を もちたい と おもって いる。 それこそ ただしい キボウ、 ヤシン を もって いる。 たよれる だけ の うごかない シンネン をも もちたい と、 あせって いる。 しかし、 これら ゼンブ、 ムスメ なら ムスメ と して の セイカツ の ウエ に グゲン しよう と かかったら、 どんな に ドリョク が ヒツヨウ な こと だろう。 オカアサン、 オトウサン、 アネ、 アニ たち の カンガエカタ も ある。 (クチ だけ では、 やれ ふるい の なんの って いう けれども、 けっして ジンセイ の センパイ、 ロウジン、 キコン の ヒトタチ を ケイベツ なんか して いない。 それ どころ か、 いつでも ニモク も サンモク も おいて いる はず だ) しじゅう セイカツ と カンケイ の ある シンルイ と いう もの も、 ある。 チジン も ある。 トモダチ も ある。 それから、 いつも おおきな チカラ で ワタシタチ を おしながす 「ヨノナカ」 と いう もの も ある の だ。 これら スベテ の こと を おもったり みたり かんがえたり する と、 ジブン の コセイ を のばす どころ の サワギ では ない。 まあ、 まあ めだたず に、 フツウ の オオク の ヒトタチ の とおる ミチ を だまって すすんで ゆく の が、 いちばん リコウ なの でしょう くらい に おもわず には いられない。 ショウスウシャ への キョウイク を、 ゼンパン へ ほどこす なんて、 ずいぶん むごい こと だ とも おもわれる。 ガッコウ の シュウシン と、 ヨノナカ の オキテ と、 すごく ちがって いる の が、 だんだん おおきく なる に つれて わかって きた。 ガッコウ の シュウシン を ゼッタイ に まもって いる と、 その ヒト は バカ を みる。 ヘンジン と いわれる。 シュッセ しない で、 いつも ビンボウ だ。 ウソ を つかない ヒト なんて、 ある かしら。 あったら、 その ヒト は、 エイエン に ハイボクシャ だ。 ワタシ の ニクシン カンケイ の ウチ にも、 ヒトリ、 オコナイ ただしく、 かたい シンネン を もって、 リソウ を ツイキュウ して、 それこそ ホントウ の イミ で いきて いる ヒト が ある の だ けれど、 シンルイ の ヒト ミンナ、 その ヒト を わるく いって いる。 バカ アツカイ して いる。 ワタシ なんか、 そんな バカ アツカイ されて ハイボク する の が わかって いながら、 オカアサン や ミナ に ハンタイ して まで ジブン の カンガエカタ を のばす こと は、 できない。 おっかない の だ。 ちいさい ジブン には、 ワタシ も、 ジブン の キモチ と ヒト の キモチ と まったく ちがって しまった とき には、 オカアサン に、
「なぜ?」 と きいた もの だ。 その とき には、 オカアサン は、 ナニ か ヒトコト で かたづけて、 そうして おこった もの だ。 わるい、 フリョウ みたい だ、 と いって、 オカアサン は かなしがって いた よう だった。 オトウサン に いった こと も ある。 オトウサン は、 その とき ただ だまって わらって いた。 そして アト で オカアサン に 「チュウシン ハズレ の コ だ」 と おっしゃって いた そう だ。 だんだん おおきく なる に つれて、 ワタシ は、 おっかなびっくり に なって しまった。 ヨウフク 1 マイ つくる の にも、 ヒトビト の オモワク を かんがえる よう に なって しまった。 ジブン の コセイ みたい な もの を、 ホントウ は、 こっそり あいして いる の だ けれども、 あいして ゆきたい とは おもう の だ けど、 それ を はっきり ジブン の もの と して タイゲン する の は、 おっかない の だ。 ヒトビト が、 よい と おもう ムスメ に なろう と いつも おもう。 タクサン の ヒトタチ が あつまった とき、 どんな に ジブン は ヒクツ に なる こと だろう。 クチ に だしたく も ない こと を、 キモチ と ぜんぜん はなれた こと を、 ウソ ついて ぺちゃぺちゃ やって いる。 その ほう が トク だ、 トク だ と おもう から なの だ。 いや な こと だ と おもう。 はやく ドウトク が イッペン する とき が くれば よい と おもう。 そう する と。 こんな ヒクツサ も、 また ジブン の ため で なく、 ヒト の オモワク の ため に マイニチ を ぽたぽた セイカツ する こと も なくなる だろう。
おや、 あそこ、 セキ が あいた。 いそいで アミダナ から、 オドウグ と カサ を おろし、 すばやく わりこむ。 ミギドナリ は チュウガクセイ、 ヒダリドナリ は、 コドモ せおって ネンネコ きて いる オバサン。 オバサン は、 トシヨリ の くせ に アツゲショウ を して、 カミ を リュウコウマキ に して いる。 カオ は きれい なの だ けれど、 ノド の ところ に シワ が くろく よって いて、 あさましく、 ぶって やりたい ほど いや だった。 ニンゲン は、 たって いる とき と、 すわって いる とき と、 まるっきり かんがえる こと が ちがって くる。 すわって いる と、 なんだか たよりない、 ムキリョク な こと ばかり かんがえる。 ワタシ と むかいあって いる セキ には、 4~5 ニン、 おなじ トシカッコウ の サラリーマン が、 ぼんやり すわって いる。 30 ぐらい で あろう か。 ミンナ、 いや だ。 メ が、 どろん と にごって いる。 ハキ が ない。 けれども、 ワタシ が イマ、 この ウチ の ダレ か ヒトリ に、 にっこり わらって みせる と、 たった それ だけ で ワタシ は、 ずるずる ひきずられて、 その ヒト と ケッコン しなければ ならぬ ハメ に おちる かも しれない の だ。 オンナ は、 ジブン の ウンメイ を けっする の に、 ビショウ ヒトツ で タクサン なの だ。 おそろしい。 フシギ な くらい だ。 キ を つけよう。 ケサ は、 ホント に ミョウ な こと ばかり かんがえる。 2~3 ニチ マエ から、 ウチ の オニワ を テイレ し に きて いる ウエキヤ さん の カオ が メ に ちらついて、 シカタ が ない。 どこ から どこ まで ウエキヤ さん なの だ けれど、 カオ の カンジ が、 どうしても ちがう。 おおげさ に いえば、 シサクカ みたい な カオ を して いる。 イロ は くろい だけ に しまって みえる。 メ が よい の だ。 マユ も せまって いる。 ハナ は、 すごく シシッパナ だ けれど、 それ が また、 イロ の くろい の に マッチ して、 イシ が つよそう に みえる。 クチビル の カタチ も、 なかなか よい。 ミミ は すこし きたない。 テ と いったら、 それこそ ウエキヤ さん に ギャクモドリ だ けれど、 くろい ソフト を ふかく かぶった ヒカゲ の カオ は、 ウエキヤ さん に して おく の は おしい キ が する。 オカアサン に、 3 ド も 4 ド も、 あの ウエキヤ さん、 ハジメ から ウエキヤ さん だった の かしら、 と たずねて、 シマイ に しかられて しまった。 キョウ、 オドウグ を つつんで きた この フロシキ は、 ちょうど、 あの ウエキヤ さん が はじめて きた ヒ に、 オカアサン から もらった の だ。 あの ヒ は、 ウチ の ほう の オオソウジ だった ので、 ダイドコロ ナオシ さん や、 タタミヤ さん も はいって いて、 オカアサン も タンス の もの を セイリ して、 その とき に、 この フロシキ が でて きて、 ワタシ が もらった。 きれい な おんならしい フロシキ。 きれい だ から、 むすぶ の が おしい。 こうして すわって、 ヒザ の ウエ に のせて、 ナンド も そっと みて みる。 なでる。 デンシャ の ナカ の ミナ の ヒト にも みて もらいたい けれど、 ダレ も みない。 この かわいい フロシキ を、 ただ、 ちょっと みつめて さえ くださったら、 ワタシ は、 その ヒト の ところ へ オヨメ に ゆく こと に きめて も いい。 ホンノウ、 と いう コトバ に つきあたる と、 ないて みたく なる。 ホンノウ の オオキサ、 ワタシタチ の イシ では うごかせない チカラ、 そんな こと が、 ジブン の トキドキ の いろんな こと から わかって くる と、 キ が くるいそう な キモチ に なる。 どう したら よい の だろう か、 と ぼんやり なって しまう。 ヒテイ も コウテイ も ない、 ただ、 おおきな おおきな もの が、 がばと アタマ から かぶさって きた よう な もの だ。 そして ワタシ を ジユウ に ひきずりまわして いる の だ。 ひきずられながら マンゾク して いる キモチ と、 それ を かなしい キモチ で ながめて いる ベツ の カンジョウ と。 なぜ ワタシタチ は、 ジブン だけ で マンゾク し、 ジブン だけ を イッショウ あいして ゆけない の だろう。 ホンノウ が、 ワタシ の イマ まで の カンジョウ、 リセイ を くって ゆく の を みる の は、 なさけない。 ちょっと でも ジブン を わすれる こと が あった アト は、 ただ、 がっかり して しまう。 あの ジブン、 この ジブン にも ホンノウ が、 はっきり ある こと を しって くる の は、 なけそう だ。 オカアサン、 オトウサン と よびたく なる。 けれども、 また、 シンジツ と いう もの は、 あんがい、 ジブン が いや だ と おもって いる ところ に ある の かも しれない の だ から、 いよいよ なさけない。
もう、 オチャノミズ。 プラットフォム に おりたったら、 なんだか すべて、 けろり と して いた。 イマ すぎた こと を、 いそいで おもいかえしたく つとめた けれど、 いっこう に おもいうかばない。 あの、 ツヅキ を かんがえよう と、 あせった けれど、 なにも おもう こと が ない。 カラッポ だ。 その とき、 ときには、 ずいぶん と ジブン の キモチ を うった もの も あった よう だし、 くるしい はずかしい こと も あった はず なのに、 すぎて しまえば、 なにも なかった の と まったく おなじ だ。 イマ、 と いう シュンカン は、 おもしろい。 イマ、 イマ、 イマ、 と ユビ で おさえて いる うち にも、 イマ、 は トオク へ とびさって、 あたらしい 「イマ」 が きて いる。 ブリッジ の カイダン を ことこと のぼりながら、 なんじゃら ほい と おもった。 ばかばかしい。 ワタシ は、 すこし コウフク-すぎる の かも しれない。
ケサ の コスギ センセイ は きれい。 ワタシ の フロシキ みたい に きれい。 うつくしい アオイロ の にあう センセイ。 ムネ の シンク の カーネーション も めだつ。 「つくる」 と いう こと が なかったら、 もっと もっと この センセイ すき なの だ けれど。 あまり に ポーズ を つけすぎる。 どこ か、 ムリ が ある。 あれ じゃあ つかれる こと だろう。 セイカク も、 どこ か ナンカイ な ところ が ある。 わからない ところ を たくさん もって いる。 くらい セイシツ なのに、 ムリ に あかるく みせよう と して いる ところ も みえる。 しかし、 なんと いって も ひかれる オンナ の ヒト だ。 ガッコウ の センセイ なんて させて おく の おしい キ が する。 オキョウシツ では、 マエ ほど ニンキ が なくなった けれど、 ワタシ は、 ワタシ ヒトリ は、 マエ と ドウヨウ に ひかれて いる。 サンチュウ、 コハン の コジョウ に すんで いる レイジョウ、 そんな カンジ が ある。 いやに、 ほめて しまった もの だ。 コスギ センセイ の オハナシ は、 どうして、 いつも こんな に かたい の だろう。 アタマ が わるい の じゃ ない かしら。 かなしく なっちゃう。 サッキ から、 アイコクシン に ついて ながなが と といて きかせて いる の だ けれど、 そんな こと、 わかりきって いる じゃ ない か。 どんな ヒト に だって、 ジブン の うまれた ところ を あいす キモチ は ある のに。 つまらない。 ツクエ に ホオヅエ ついて、 ぼんやり マド の ソト を ながめる。 カゼ の つよい ゆえ か、 クモ が きれい だ。 オニワ の スミ に、 バラ の ハナ が ヨッツ さいて いる。 キイロ が ヒトツ、 シロ が フタツ、 ピンク が ヒトツ。 ぽかん と ハナ を ながめながら、 ニンゲン も、 ホントウ に よい ところ が ある、 と おもった。 ハナ の ウツクシサ を みつけた の は、 ニンゲン だし、 ハナ を あいする の も ニンゲン だ もの。
オヒルゴハン の とき は、 オバケバナシ が でる。 ヤスベエ ネエチャン の、 イチコウ ナナフシギ の ヒトツ、 「あかず の トビラ」 には、 もう、 ミンナ、 きゃあ、 きゃあ。 ドロンドロン-シキ で なく、 シンリテキ なので、 おもしろい。 あんまり さわいだ ので、 イマ たべた ばかり なのに、 もう ぺこ に なって しまった。 さっそく アンパン フジン から、 キャラメル ゴチソウ に なる。 それから また、 ひとしきり キョウフ モノガタリ に ミナサン ムチュウ。 ダレ でも カレ でも、 この オバケバナシ と やら には、 キョウミ が わく らしい。 ヒトツ の シゲキ でしょう かな。 それから、 これ は カイダン では ない けれど、 「クハラ フサノスケ」 の ハナシ、 おかしい、 おかしい。
ゴゴ の ズガ の ジカン には、 ミナ、 コウテイ に でて、 シャセイ の オケイコ。 イトウ センセイ は、 どうして ワタシ を、 いつも ムイミ に こまらせる の だろう。 キョウ も ワタシ に、 センセイ ゴジシン の エ の モデル に なる よう いいつけた。 ワタシ の ケサ ジサン した ふるい アマガサ が、 クラス の ダイカンゲイ を うけて、 ミナサン さわぎたてる もの だ から、 とうとう イトウ センセイ にも わかって しまって、 その アマガサ もって、 コウテイ の スミ の バラ の ソバ に たって いる よう、 いいつけられた。 センセイ は、 ワタシ の こんな スガタ を かいて、 コンド テンランカイ に だす の だ そう だ。 30 プン-カン だけ、 モデル に なって あげる こと を ショウダク する。 すこし でも、 ヒト の オヤク に たつ こと は、 うれしい もの だ。 けれども、 イトウ センセイ と フタリ で むかいあって いる と、 とても つかれる。 ハナシ が ねちねち して リクツ が おおすぎる し、 あまり にも ワタシ を イシキ して いる ゆえ か、 スケッチ しながら でも はなす こと が、 みんな ワタシ の こと ばかり。 ヘンジ する の も めんどうくさく、 わずらわしい。 はっきり しない ヒト で ある。 へんに わらったり、 センセイ の くせ に はずかしがったり、 なにしろ さっぱり しない の には、 げっと なりそう だ。
「しんだ イモウト を、 おもいだします」 なんて、 やりきれない。 ヒト は、 いい ヒト なん だろう けれど、 ゼスチュア が おおすぎる。
ゼスチュア と いえば、 ワタシ だって、 まけない で たくさん もって いる。 ワタシ の は、 そのうえ、 ずるくて リコウ に たちまわる。 ホントウ に キザ なの だ から シマツ に こまる。 「ジブン は、 ポーズ を つくりすぎて、 ポーズ に ひきずられて いる ウソツキ の バケモノ だ」 なんて いって、 これ が また、 ヒトツ の ポーズ なの だ から、 ウゴキ が とれない。 こうして、 おとなしく センセイ の モデル に なって あげて いながら も、 つくづく、 「シゼン に なりたい、 すなお に なりたい」 と いのって いる の だ。 ホン なんか よむ の やめて しまえ。 カンネン だけ の セイカツ で、 ムイミ な、 コウマンチキ の シッタカブリ なんて、 ケイベツ、 ケイベツ。 やれ セイカツ の モクヒョウ が ない の、 もっと セイカツ に、 ジンセイ に、 セッキョクテキ に なれば いい の、 ジブン には ムジュン が ある の どう の って、 しきり に かんがえたり なやんだり して いる よう だ が、 オマエ の は、 カンショウ だけ さ。 ジブン を かわいがって、 なぐさめて いる だけ なの さ。 それから ずいぶん ジブン を かいかぶって いる の です よ。 ああ、 こんな ココロ の きたない ワタシ を モデル に したり なんか して、 センセイ の エ は、 きっと ラクセン だ。 うつくしい はず が ない もの。 いけない こと だ けれど、 イトウ センセイ が バカ に みえて シヨウ が ない。 センセイ は、 ワタシ の シタギ に、 バラ の ハナ の シシュウ が ある こと さえ、 しらない。
だまって おなじ シセイ で たって いる と、 やたらむしょう に、 オカネ が ほしく なって くる。 10 エン あれば、 よい の だ けれど。 「マダム キュリー」 が いちばん よみたい。 それから、 ふっと、 オカアサン ナガイキ する よう に、 と おもう。 センセイ の モデル に なって いる と、 へんに、 つらい。 くたくた に つかれた。
ホウカゴ は、 オテラ の ムスメ さん の キンコ さん と、 こっそり、 ハリウッド へ いって、 カミ を やって もらう。 できあがった の を みる と、 たのんだ よう に できて いない ので、 がっかり だ。 どう みたって、 ワタシ は、 ちっとも かわいく ない。 あさましい キ が した。 したたか に、 しょげちゃった。 こんな ところ へ きて、 こっそり カミ を つくって もらう なんて、 すごく きたならしい 1 ワ の メンドリ みたい な キ さえ して きて、 つくづく イマ は コウカイ した。 ワタシタチ、 こんな ところ へ くる なんて、 ジブン ジシン を ケイベツ して いる こと だ と おもった。 オテラサン は、 オオハシャギ。
「このまま、 ミアイ に いこう かしら」 なぞ と ランボウ な こと いいだして、 その うち に、 なんだか オテラサン ゴジシン、 ミアイ に、 ホントウ に ゆく こと に きまって しまった よう な サッカク を おこした らしく、
「こんな カミ には、 どんな イロ の ハナ を さしたら いい の?」 とか、 「ワフク の とき には、 オビ は、 どんな の が いい の?」 なんて、 ホンキ に やりだす。
ホント に、 なにも かんがえない かわいらしい ヒト。
「ドナタ と ミアイ なさる の?」 と ワタシ も、 わらいながら たずねる と、
「モチヤ は、 モチヤ と いいます から ね」 と、 すまして こたえた。 それ どういう イミ なの、 と ワタシ も すこし おどろいて きいて みたら、 オテラ の ムスメ は オテラ へ オヨメイリ する の が いちばん いい のよ、 イッショウ たべる の に こまらない し、 と こたえて、 また ワタシ を おどろかせた。 キンコ さん は、 まったく ムセイカク みたい で、 それゆえ、 オンナラシサ で いっぱい だ。 ガッコウ で ワタシ と セキ が オトナリドウシ だ と いう だけ で、 そんな に ワタシ は したしく して あげて いる わけ でも ない のに、 オテラサン の ほう では、 ワタシ の こと を、 アタシ の イチバン の シンユウ です、 なんて ミナ に いって いる。 かわいい ムスメ さん だ。 1 ニチ-オキ に テガミ を よこしたり、 なんとなく よく セワ を して くれて、 ありがたい の だ けれど、 キョウ は、 あんまり おおげさ に はしゃいで いる ので、 ワタシ も、 さすが に いや に なった。 オテラサン と わかれて、 バス に のって しまった。 なんだか、 なんだか ユウウツ だ。 バス の ナカ で、 いや な オンナ の ヒト を みた。 エリ の よごれた キモノ を きて、 もじゃもじゃ の あかい カミ を クシ 1 ポン に まきつけて いる。 テ も アシ も きたない。 それに オトコ か オンナ か、 わからない よう な、 むっと した あかぐろい カオ を して いる。 それに、 ああ、 ムネ が むかむか する。 その オンナ は、 おおきい オナカ を して いる の だ。 ときどき、 ヒトリ で、 にやにや わらって いる。 メンドリ。 こっそり、 カミ を つくり に、 ハリウッド なんか へ ゆく ワタシ だって、 ちっとも、 この オンナ の ヒト と かわらない の だ。
ケサ、 デンシャ で となりあわせた アツゲショウ の オバサン をも おもいだす。 ああ、 きたない、 きたない。 オンナ は、 いや だ。 ジブン が オンナ だけ に、 オンナ の ナカ に ある フケツサ が、 よく わかって、 ハギシリ する ほど、 いや だ。 キンギョ を いじった アト の、 あの たまらない ナマグササ が、 ジブン の カラダ いっぱい に しみついて いる よう で、 あらって も、 あらって も、 おちない よう で、 こうして イチニチ イチニチ、 ジブン も メス の タイシュウ を ハッサン させる よう に なって ゆく の か と おもえば、 また、 おもいあたる こと も ある ので、 いっそ このまま、 ショウジョ の まま で しにたく なる。 ふと、 ビョウキ に なりたく おもう。 うんと おもい ビョウキ に なって、 アセ を タキ の よう に ながして ほそく やせたら、 ワタシ も、 すっきり セイジョウ に なれる かも しれない。 いきて いる カギリ は、 とても のがれられない こと なの だろう か。 しっかり した シュウキョウ の イミ も わかりかけて きた よう な キ が する。
バス から おりる と、 すこし ほっと した。 どうも ノリモノ は、 いけない。 クウキ が、 なまぬるくて、 やりきれない。 ダイチ は、 いい。 ツチ を ふんで あるいて いる と、 ジブン を すき に なる。 どうも ワタシ は、 すこし オッチョコチョイ だ。 ゴクラク トンボ だ。 かえろ かえろ と ナニ みて かえる、 ハタケ の タマネギ みいみい かえろ、 カエロ が なく から かえろ。 と ちいさい コエ で うたって みて、 この コ は、 なんて ノンキ な コ だろう、 と ジブン ながら はがゆく なって、 セ ばかり のびる この ボーボー が にくらしく なる。 いい ムスメ さん に なろう と おもった。
この オウチ に かえる イナカミチ は、 マイニチ マイニチ、 あんまり みなれて いる ので、 どんな しずか な イナカ だ か、 わからなく なって しまった。 ただ、 キ、 ミチ、 ハタケ、 それ だけ なの だ から。 キョウ は、 ひとつ、 ヨソ から はじめて この イナカ に やって きた ヒト の マネ を して みよう。 ワタシ は、 ま、 カンダ アタリ の ゲタヤ さん の オジョウサン で、 うまれて はじめて コウガイ の ツチ を ふむ の だ。 すると、 この イナカ は、 いったい どんな に みえる だろう。 すばらしい オモイツキ。 かわいそう な オモイツキ。 ワタシ は、 あらたまった カオツキ に なって、 わざと、 おおげさ に きょろきょろ して みる。 ちいさい ナミキミチ を くだる とき には、 ふりあおいで シンリョク の エダエダ を ながめ、 まあ、 と ちいさい サケビ を あげて みて、 ドバシ を わたる とき には、 しばらく オガワ を のぞいて、 ミズカガミ に カオ を うつして、 わんわん と、 イヌ の マネ して ほえて みたり、 トオク の ハタケ を みる とき は、 メ を ちいさく して、 うっとり した フウ を して、 いい わねえ、 と つぶやいて タメイキ。 ジンジャ では、 また ヒトヤスミ。 ジンジャ の モリ の ナカ は、 くらい ので、 あわてて たちあがって、 おお、 こわ こわ、 と いい カタ を ちいさく すぼめて、 そそくさ モリ を とおりぬけ、 モリ の ソト の アカルサ に、 わざと おどろいた よう な フウ を して、 いろいろ あたらしく あたらしく、 と こころがけて イナカ の ミチ を、 こって あるいて いる うち に、 なんだか、 たまらなく さびしく なって きた。 とうとう ミチバタ の クサハラ に、 ぺたり と すわって しまった。 クサ の ウエ に すわったら、 つい イマシガタ まで の うきうき した キモチ が、 ことん と オト たてて きえて、 ぎゅっと マジメ に なって しまった。 そうして、 コノゴロ の ジブン を、 しずか に、 ゆっくり おもって みた。 なぜ、 コノゴロ の ジブン が、 いけない の か。 どうして、 こんな に フアン なの だろう。 いつでも、 ナニ か に おびえて いる。 コノアイダ も、 ダレ か に いわれた。 「アナタ は、 だんだん ぞくっぽく なる のね」
そう かも しれない。 ワタシ は、 たしか に、 いけなく なった。 くだらなく なった。 いけない、 いけない。 よわい、 よわい。 だしぬけ に、 おおきな コエ が、 わっ と でそう に なった。 ちぇっ、 そんな サケビゴエ あげた くらい で、 ジブン の ヨワムシ を、 ごまかそう たって、 ダメ だぞ。 もっと どうにか なれ。 ワタシ は、 コイ を して いる の かも しれない。 アオクサハラ に アオムケ に ねころがった。
「オトウサン」 と よんで みる。 オトウサン、 オトウサン。 ユウヤケ の ソラ は きれい です。 そうして、 ユウモヤ は、 ピンク イロ。 ユウヒ の ヒカリ が モヤ の ナカ に とけて、 にじんで、 その ため に モヤ が こんな に、 やわらかい ピンク イロ に なった の でしょう。 その ピンク の モヤ が ゆらゆら ながれて、 コダチ の アイダ に もぐって いったり、 ミチ の ウエ を あるいたり、 クサハラ を なでたり、 そうして、 ワタシ の カラダ を、 ふんわり つつんで しまいます。 ワタシ の カミノケ 1 ポン 1 ポン まで、 ピンク の ヒカリ は、 そっと かすか に てらして、 そうして やわらかく なでて くれます。 それ より も、 この ソラ は、 うつくしい。 この オソラ には、 ワタシ うまれて はじめて アタマ を さげたい の です。 ワタシ は、 イマ カミサマ を しんじます。 これ は、 この ソラ の イロ は、 なんと いう イロ なの かしら。 バラ。 カジ。 ニジ。 テンシ の ツバサ。 ダイガラン。 いいえ、 そんな ん じゃ ない。 もっと、 もっと こうごうしい。
「ミンナ を あいしたい」 と ナミダ が でそう な くらい おもいました。 じっと ソラ を みて いる と、 だんだん ソラ が かわって ゆく の です。 だんだん あおみがかって ゆく の です。 ただ、 タメイキ ばかり で、 ハダカ に なって しまいたく なりました。 それから、 イマ ほど キ の ハ や クサ が トウメイ に、 うつくしく みえた こと も ありません。 そっと クサ に、 さわって みました。
うつくしく いきたい と おもいます。
ダザイ オサム
アサ、 メ を さます とき の キモチ は、 おもしろい。 カクレンボ の とき、 オシイレ の まっくらい ナカ に、 じっと、 しゃがんで かくれて いて、 とつぜん、 デコ ちゃん に、 がらっと フスマ を あけられ、 ヒ の ヒカリ が どっと きて、 デコ ちゃん に、 「みつけた!」 と オオゴエ で いわれて、 マブシサ、 それから、 ヘン な マ の ワルサ、 それから、 ムネ が どきどき して、 キモノ の マエ を あわせたり して、 ちょっと、 てれくさく、 オシイレ から でて きて、 キュウ に むかむか はらだたしく、 あの カンジ、 いや、 ちがう、 あの カンジ でも ない、 なんだか、 もっと やりきれない。 ハコ を あける と、 その ナカ に、 また ちいさい ハコ が あって、 その ちいさい ハコ を あける と、 また その ナカ に、 もっと ちいさい ハコ が あって、 そいつ を あける と、 また、 また、 ちいさい ハコ が あって、 その ちいさい ハコ を あける と、 また ハコ が あって、 そうして、 ナナツ も、 ヤッツ も、 あけて いって、 とうとう オシマイ に、 サイコロ くらい の ちいさい ハコ が でて きて、 そいつ を そっと あけて みて、 なにも ない、 カラッポ、 あの カンジ、 すこし ちかい。 ぱちっと メ が さめる なんて、 あれ は ウソ だ。 にごって にごって、 その うち に、 だんだん デンプン が シタ に しずみ、 すこし ずつ ウワズミ が できて、 やっと つかれて メ が さめる。 アサ は、 なんだか、 しらじらしい。 かなしい こと が、 たくさん たくさん ムネ に うかんで、 やりきれない。 いや だ、 いや だ。 アサ の ワタシ は いちばん みにくい。 リョウホウ の アシ が、 くたくた に つかれて、 そうして、 もう、 なにも したく ない。 ジュクスイ して いない せい かしら。 アサ は ケンコウ だ なんて、 あれ は ウソ。 アサ は ハイイロ。 いつも いつも おなじ。 いちばん キョム だ。 アサ の ネドコ の ナカ で、 ワタシ は いつも エンセイテキ だ。 いや に なる。 いろいろ みにくい コウカイ ばっかり、 イチド に、 どっと かたまって ムネ を ふさぎ、 ミモダエ しちゃう。
アサ は、 イジワル。
「オトウサン」 と ちいさい コエ で よんで みる。 へんに きはずかしく、 うれしく、 おきて、 さっさと フトン を たたむ。 フトン を もちあげる とき、 よいしょ、 と カケゴエ して、 はっと おもった。 ワタシ は、 イマ まで、 ジブン が、 よいしょ なんて、 げびた コトバ を いいだす オンナ だ とは、 おもって なかった。 よいしょ、 なんて、 オバアサン の カケゴエ みたい で、 いやらしい。 どうして、 こんな カケゴエ を はっした の だろう。 ワタシ の カラダ の ナカ に、 どこ か に、 バアサン が ヒトツ いる よう で、 キモチ が わるい。 これから は、 キ を つけよう。 ヒト の ゲヒン な アルキ カッコウ を ヒンシュク して いながら、 ふと、 ジブン も、 そんな アルキカタ して いる の に キ が ついた とき みたい に、 すごく、 しょげちゃった。
アサ は、 いつでも ジシン が ない。 ネマキ の まま で キョウダイ の マエ に すわる。 メガネ を かけない で、 カガミ を のぞく と、 カオ が、 すこし ぼやけて、 しっとり みえる。 ジブン の カオ の ナカ で いちばん メガネ が いや なの だ けれど、 ホカ の ヒト には、 わからない メガネ の ヨサ も、 ある。 メガネ を とって、 トオク を みる の が すき だ。 ゼンタイ が かすんで、 ユメ の よう に、 ノゾキエ みたい に、 すばらしい。 きたない もの なんて、 なにも みえない。 おおきい もの だけ、 センメイ な、 つよい イロ、 ヒカリ だけ が メ に はいって くる。 メガネ を とって ヒト を みる の も すき。 アイテ の カオ が、 ミナ、 やさしく、 きれい に、 わらって みえる。 それに、 メガネ を はずして いる とき は、 けっして ヒト と ケンカ を しよう なんて おもわない し、 ワルクチ も いいたく ない。 ただ、 だまって、 ぽかん と して いる だけ。 そうして、 そんな とき の ワタシ は、 ヒト にも オヒトヨシ に みえる だろう と おもえば、 なお の こと、 ワタシ は、 ぽかん と アンシン して、 あまえたく なって、 ココロ も、 たいへん やさしく なる の だ。
だけど、 やっぱり メガネ は、 いや。 メガネ を かけたら カオ と いう カンジ が なくなって しまう。 カオ から うまれる、 イロイロ の ジョウチョ、 ロマンチック、 ウツクシサ、 ハゲシサ、 ヨワサ、 アドケナサ、 アイシュウ、 そんな もの、 メガネ が みんな さえぎって しまう。 それに、 メ で オハナシ を する と いう こと も、 おかしな くらい できない。
メガネ は、 オバケ。
ジブン で、 いつも ジブン の メガネ が いや だ と おもって いる ゆえ か、 メ の うつくしい こと が、 いちばん いい と おもわれる。 ハナ が なくて も、 クチ が かくされて いて も、 メ が、 その メ を みて いる と、 もっと ジブン が うつくしく いきなければ と おもわせる よう な メ で あれば、 いい と おもって いる。 ワタシ の メ は、 ただ おおきい だけ で、 なんにも ならない。 じっと ジブン の メ を みて いる と、 がっかり する。 オカアサン で さえ、 つまらない メ だ と いって いる。 こんな メ を ヒカリ の ない メ と いう の で あろう。 タドン、 と おもう と、 がっかり する。 これ です から ね。 ひどい です よ。 カガミ に むかう と、 その たんび に、 ウルオイ の ある いい メ に なりたい と、 つくづく おもう。 あおい ミズウミ の よう な メ、 あおい ソウゲン に ねて オオゾラ を みて いる よう な メ、 ときどき クモ が ながれて うつる。 トリ の カゲ まで、 はっきり うつる。 うつくしい メ の ヒト と たくさん あって みたい。
ケサ から 5 ガツ、 そう おもう と、 なんだか すこし うきうき して きた。 やっぱり うれしい。 もう ナツ も ちかい と おもう。 ニワ に でる と イチゴ の ハナ が メ に とまる。 オトウサン の しんだ と いう ジジツ が、 フシギ に なる。 しんで、 いなく なる、 と いう こと は、 リカイ できにくい こと だ。 フ に おちない。 オネエサン や、 わかれた ヒト や、 ながい アイダ あわず に いる ヒトタチ が なつかしい。 どうも アサ は、 すぎさった こと、 モウセン の ヒトタチ の こと が、 いやに ミヂカ に、 オタクワン の ニオイ の よう に あじけなく おもいだされて、 かなわない。
ジャピー と、 カア (かわいそう な イヌ だ から、 カア と よぶ ん だ) と、 2 ヒキ もつれあいながら、 はしって きた。 2 ヒキ を マエ に ならべて おいて、 ジャピー だけ を、 うんと かわいがって やった。 ジャピー の まっしろい ケ は ひかって うつくしい。 カア は、 きたない。 ジャピー を かわいがって いる と、 カア は、 ソバ で なきそう な カオ を して いる の を ちゃんと しって いる。 カア が カタワ だ と いう こと も しって いる。 カア は、 かなしくて、 いや だ。 かわいそう で かわいそう で たまらない から、 わざと いじわるく して やる の だ。 カア は、 ノライヌ みたい に みえる から、 いつ イヌコロシ に やられる か、 わからない。 カア は、 アシ が、 こんな だ から、 にげる の に、 おそい こと だろう。 カア、 はやく、 ヤマ の ナカ に でも ゆきなさい。 オマエ は ダレ にも かわいがられない の だ から、 はやく しねば いい。 ワタシ は、 カア だけ で なく、 ヒト にも いけない こと を する コ なん だ。 ヒト を こまらせて、 シゲキ する。 ホントウ に いや な コ なん だ。 エンガワ に こしかけて、 ジャピー の アタマ を なでて やりながら、 メ に しみる アオバ を みて いる と、 なさけなく なって、 ツチ の ウエ に すわりたい よう な キモチ に なった。
ないて みたく なった。 うんと イキ を つめて、 メ を ジュウケツ させる と、 すこし ナミダ が でる かも しれない と おもって、 やって みた が、 ダメ だった。 もう、 ナミダ の ない オンナ に なった の かも しれない。
あきらめて、 オヘヤ の ソウジ を はじめる。 オソウジ しながら、 ふと 「トウジン オキチ」 を うたう。 ちょっと アタリ を みまわした よう な カンジ。 ふだん、 モーツァルト だの、 バッハ だの に ネッチュウ して いる はず の ジブン が、 ムイシキ に、 「トウジン オキチ」 を うたった の が、 おもしろい。 フトン を もちあげる とき、 よいしょ、 と いったり、 オソウジ しながら、 トウジン オキチ を うたう よう では、 ジブン も、 もう、 ダメ か と おもう。 こんな こと では、 ネゴト など で、 どんな に ゲヒン な こと いいだす か、 フアン で ならない。 でも、 なんだか おかしく なって、 ホウキ の テ を やすめて、 ヒトリ で わらう。
キノウ ぬいあげた あたらしい シタギ を きる。 ムネ の ところ に、 ちいさい しろい バラ の ハナ を シシュウ して おいた。 ウワギ を きちゃう と、 この シシュウ みえなく なる。 ダレ にも わからない。 トクイ で ある。
オカアサン、 ダレ か の エンダン の ため に オオワラワ、 アサ はやく から オデカケ。 ワタシ の ちいさい とき から オカアサン は、 ヒト の ため に つくす ので、 ナレッコ だ けれど、 ホントウ に おどろく ほど、 しじゅう うごいて いる オカアサン だ。 カンシン する。 オトウサン が、 あまり にも ベンキョウ ばかり して いた から、 オカアサン は、 オトウサン の ブン も する の で ある。 オトウサン は、 シャコウ とか から は、 およそ エン が とおい けれど、 オカアサン は、 ホントウ に キモチ の よい ヒトタチ の アツマリ を つくる。 フタリ とも ちがった ところ を もって いる けれど、 おたがいに、 ソンケイ しあって いた らしい。 みにくい ところ の ない、 うつくしい やすらか な フウフ、 と でも いう の で あろう か。 ああ、 ナマイキ、 ナマイキ。
オミオツケ の あたたまる まで、 ダイドコログチ に こしかけて、 マエ の ゾウキバヤシ を、 ぼんやり みて いた。 そしたら、 ムカシ にも、 これから サキ にも、 こう やって、 ダイドコロ の クチ に こしかけて、 この とおり の シセイ で もって、 しかも そっくり おなじ こと を かんがえながら マエ の ゾウキバヤシ を みて いた、 みて いる、 よう な キ が して、 カコ、 ゲンザイ、 ミライ、 それ が イッシュンカン の うち に かんじられる よう な、 ヘン な キモチ が した。 こんな こと は、 ときどき ある。 ダレ か と ヘヤ に すわって ハナシ を して いる。 メ が、 テーブル の スミ に いって ことん と とまって うごかない。 クチ だけ が うごいて いる。 こんな とき に、 ヘン な サッカク を おこす の だ。 いつ だった か、 こんな おなじ ジョウタイ で、 おなじ こと を はなしながら、 やはり、 テーブル の スミ を みて いた、 また、 これから サキ も、 イマ の こと が、 そっくり ソノママ に ジブン に やって くる の だ、 と しんじちゃう キモチ に なる の だ。 どんな トオク の イナカ の ノミチ を あるいて いて も、 きっと、 この ミチ は、 いつか きた ミチ、 と おもう。 あるきながら ミチバタ の マメ の ハ を、 さっと むしりとって も、 やはり、 この ミチ の ここ の ところ で、 この ハ を むしりとった こと が ある、 と おもう。 そうして、 また、 これから も、 ナンド も ナンド も、 この ミチ を あるいて、 ここ の ところ で マメ の ハ を むしる の だ、 と しんじる の で ある。 また、 こんな こと も ある。 ある とき オユ に つかって いて、 ふと テ を みた。 そしたら、 これから サキ、 ナンネン か たって、 オユ に はいった とき、 この、 イマ の なにげなく、 テ を みた こと を、 そして みながら、 ことん と かんじた こと を きっと おもいだす に ちがいない、 と おもって しまった。 そう おもったら、 なんだか、 くらい キ が した。 また、 ある ユウガタ、 ゴハン を オヒツ に うつして いる とき、 インスピレーション、 と いって は おおげさ だ けれど、 ナニ か ミウチ に ぴゅうっと はしりさって ゆく もの を かんじて、 なんと いおう か、 テツガク の シッポ と いいたい の だ けれど、 そいつ に やられて、 アタマ も ムネ も、 スミズミ まで トウメイ に なって、 ナニ か、 いきて ゆく こと に ふわっと おちついた よう な、 だまって、 オト も たてず に、 トコロテン が そろっと おしだされる とき の よう な ジュウナンセイ で もって、 このまま ナミ の まにまに、 うつくしく かるく いきとおせる よう な カンジ が した の だ。 この とき は、 テツガク どころ の サワギ では ない。 ヌスミネコ の よう に、 オト も たてず に いきて ゆく ヨカン なんて、 ろく な こと は ない と、 むしろ、 おそろしかった。 あんな キモチ の ジョウタイ が、 ながく つづく と、 ヒト は、 カミガカリ みたい に なっちゃう の では ない かしら。 キリスト。 でも、 オンナ の キリスト なんて の は、 いやらしい。
けっきょく は、 ワタシ ヒマ な もん だ から、 セイカツ の クロウ が ない もん だ から、 マイニチ、 イクヒャク、 イクセン の みたり きいたり の カンジュセイ の ショリ が できなく なって、 ぽかん と して いる うち に、 そいつら が、 オバケ みたい な カオ に なって ぽかぽか ういて くる の では ない の かしら。
ショクドウ で、 ゴハン を、 ヒトリ で たべる。 コトシ、 はじめて、 キュウリ を たべる。 キュウリ の アオサ から、 ナツ が くる。 5 ガツ の キュウリ の アオミ には、 ムネ が カラッポ に なる よう な、 うずく よう な、 くすぐったい よう な カナシサ が ある。 ヒトリ で ショクドウ で ゴハン を たべて いる と、 やたらむしょう に リョコウ に でたい。 キシャ に のりたい。 シンブン を よむ。 コノエ さん の シャシン が でて いる。 コノエ さん て、 いい オトコ なの かしら。 ワタシ は、 こんな カオ を すかない。 ヒタイ が いけない。 シンブン では、 ホン の コウコクブン が いちばん たのしい。 1 ジ 1 ギョウ で、 100 エン、 200 エン と コウコクリョウ とられる の だろう から、 みな、 イッショウ ケンメイ だ。 イチジ イック、 サイダイ の コウカ を おさめよう と、 うんうん うなって、 しぼりだした よう な メイブン だ。 こんな に オカネ の かかる ブンショウ は、 ヨノナカ に、 すくない で あろう。 なんだか、 キミ が よい。 ツウカイ だ。
ゴハン を すまして、 トジマリ して、 トウコウ。 だいじょうぶ、 アメ が ふらない とは おもう けれど、 それでも、 キノウ オカアサン から、 もらった よき アマガサ どうしても もって あるきたくて、 そいつ を ケイタイ。 この アンブレラ は、 オカアサン が、 ムカシ、 ムスメ さん ジダイ に つかった もの。 おもしろい カサ を みつけて、 ワタシ は、 すこし トクイ。 こんな カサ を もって、 パリー の シタマチ を あるきたい。 きっと、 イマ の センソウ が おわった コロ、 こんな、 ユメ を もった よう な コフウ の アンブレラ が リュウコウ する だろう。 この カサ には、 ボンネット-フウ の ボウシ が、 きっと にあう。 ピンク の スソ の ながい、 エリ の おおきく ひらいた キモノ に、 くろい キヌ レース で あんだ ながい テブクロ を して、 おおきな ツバ の ひろい ボウシ には、 うつくしい ムラサキ の スミレ を つける。 そうして シンリョク の コロ に パリー の レストラン に チュウショク を し に ゆく。 ものうそう に かるく ホオヅエ して、 ソト を とおる ヒト の ナガレ を みて いる と、 ダレ か が、 そっと ワタシ の カタ を たたく。 キュウ に オンガク、 バラ の ワルツ。 ああ、 おかしい、 おかしい。 ゲンジツ は、 この ふるぼけた キタイ な、 エ の ひょろながい アマガサ 1 ポン。 ジブン が、 みじめ で かわいそう。 マッチ-ウリ の ムスメ さん。 どれ、 クサ でも、 むしって ゆきましょう。
デガケ に、 ウチ の モン の マエ の クサ を、 すこし むしって、 オカアサン への キンロウ ホウシ。 キョウ は ナニ か いい こと が ある かも しれない。 おなじ クサ でも、 どうして こんな、 むしりとりたい クサ と、 そっと のこして おきたい クサ と、 いろいろ ある の だろう。 かわいい クサ と、 そう で ない クサ と、 カタチ は、 ちっとも ちがって いない のに、 それでも、 いじらしい クサ と、 にくにくしい クサ と、 どうして こう、 ちゃんと わかれて いる の だろう。 リクツ は ない ん だ。 オンナ の スキキライ なんて、 ずいぶん イイカゲン な もの だ と おもう。 10 プン-カン の キンロウ ホウシ を すまして、 テイシャバ へ いそぐ。 ハタケミチ を とおりながら、 しきり と エ が かきたく なる。 トチュウ、 ジンジャ の モリ の コミチ を とおる。 これ は、 ワタシ ヒトリ で みつけて おいた チカミチ で ある。 モリ の コミチ を あるきながら、 ふと シタ を みる と、 ムギ が 2 スン ばかり あちこち に、 かたまって そだって いる。 その あおあお した ムギ を みて いる と、 ああ、 コトシ も ヘイタイ さん が きた の だ と、 わかる。 キョネン も、 タクサン の ヘイタイ さん と ウマ が やって きて、 この ジンジャ の モリ の ナカ に やすんで いった。 しばらく たって そこ を とおって みる と、 ムギ が、 キョウ の よう に、 すくすく して いた。 けれども、 その ムギ は、 それ イジョウ そだたなかった。 コトシ も、 ヘイタイ さん の ウマ の オケ から こぼれて はえて、 ひょろひょろ そだった この ムギ は、 この モリ は こんな に くらく、 まったく ヒ が あたらない もの だ から、 かわいそう に、 これだけ そだって しんで しまう の だろう。
ジンジャ の モリ の コミチ を ぬけて、 エキ ちかく、 ロウドウシャ 4~5 ニン と イッショ に なる。 その ロウドウシャ たち は、 イツモ の レイ で、 いえない よう な いや な コトバ を ワタシ に むかって はきかける。 ワタシ は、 どう したら よい か と まよって しまった。 その ロウドウシャ たち を おいぬいて、 どんどん サキ に いって しまいたい の だ が、 そう する には、 ロウドウシャ たち の アイダ を ぬって くぐりぬけ、 すりぬけ しなければ ならない。 おっかない。 それ と いって、 だまって タチンボ して、 ロウドウシャ たち を サキ に ゆかせて、 うんと キョリ の できる まで まって いる の は、 もっと もっと タンリョク の いる こと だ。 それ は シツレイ な こと なの だ から、 ロウドウシャ たち は おこる かも しれない。 カラダ は、 かっか して くる し、 なきそう に なって しまった。 ワタシ は、 その なきそう に なる の が はずかしくて、 その モノタチ に むかって わらって やった。 そして、 ゆっくり と、 その モノタチ の アト に ついて あるいて いった。 その とき は、 それぎり に なって しまった けれど、 その クヤシサ は、 デンシャ に のって から も きえなかった。 こんな くだらない こと に へいぜん と なれる よう に、 はやく つよく、 きよく、 なりたかった。
デンシャ の イリグチ の すぐ チカク に あいて いる セキ が あった から、 ワタシ は そこ へ そっと ワタシ の オドウグ を おいて、 スカート の ヒダ を ちょっと なおして、 そうして すわろう と したら、 メガネ の オトコ の ヒト が、 ちゃんと ワタシ の オドウグ を どけて セキ に こしかけて しまった。
「あの、 そこ は ワタシ、 みつけた セキ です の」 と いったら、 オトコ は クショウ して ヘイキ で シンブン を よみだした。 よく かんがえて みる と、 どっち が ずうずうしい の か わからない。 こっち の ほう が ずうずうしい の かも しれない。
しかたなく、 アンブレラ と オドウグ を、 アミダナ に のせ、 ワタシ は ツリカワ に ぶらさがって、 イツモ の とおり、 ザッシ を よもう と、 ぱらぱら カタテ で ページ を くって いる うち に、 ひょんな こと を おもった。
ジブン から、 ホン を よむ と いう こと を とって しまったら、 この ケイケン の ない ワタシ は、 ナキベソ を かく こと だろう。 それほど ワタシ は、 ホン に かかれて ある こと に たよって いる。 ヒトツ の ホン を よんで は、 ぱっと その ホン に ムチュウ に なり、 シンライ し、 ドウカ し、 キョウメイ し、 それ に セイカツ を くっつけて みる の だ。 また、 ホカ の ホン を よむ と、 たちまち、 くるっと かわって、 すまして いる。 ヒト の もの を ぬすんで きて ジブン の もの に ちゃんと つくりなおす サイノウ は、 その ズルサ は、 これ は ワタシ の ユイイツ の トクギ だ。 ホントウ に、 この ズルサ、 インチキ には いや に なる。 マイニチ マイニチ、 シッパイ に シッパイ を かさねて、 アカハジ ばかり かいて いたら、 すこし は ジュウコウ に なる かも しれない。 けれども、 そのよう な シッパイ に さえ、 なんとか リクツ を こじつけて、 ジョウズ に つくろい、 ちゃんと した よう な リロン を あみだし、 クニク の シバイ なんか とくとく と やりそう だ。 (こんな コトバ も どこ か の ホン で よんだ こと が ある)
ホントウ に ワタシ は、 どれ が ホントウ の ジブン だ か わからない。 よむ ホン が なくなって、 マネ する オテホン が なんにも みつからなく なった とき には、 ワタシ は、 いったい どう する だろう。 テ も アシ も でない、 イシュク の テイ で、 むやみ に ハナ を かんで ばかり いる かも しれない。 なにしろ デンシャ の ナカ で、 マイニチ こんな に ふらふら かんがえて いる ばかり では、 ダメ だ。 カラダ に、 いや な アタタカサ が のこって、 やりきれない。 ナニ か しなければ、 どうにか しなければ と おもう の だ が、 どう したら、 ジブン を はっきり つかめる の か。 これまで の ワタシ の ジコ ヒハン なんて、 まるで イミ ない もの だった と おもう。 ヒハン を して みて、 いや な、 よわい ところ に きづく と、 すぐ それ に あまく おぼれて、 いたわって、 ツノ を ためて ウシ を ころす の は よく ない、 など と ケツロン する の だ から、 ヒハン も なにも あった もの で ない。 なにも かんがえない ほう が、 むしろ リョウシンテキ だ。
この ザッシ にも、 「わかい オンナ の ケッテン」 と いう ミダシ で、 いろんな ヒト が かいて ある。 よんで いる うち に、 ジブン の こと を いわれた よう な キ が して はずかしい キ にも なる。 それに かく ヒト、 ヒト に よって、 ふだん バカ だ と おもって いる ヒト は、 その とおり に、 バカ の カンジ が する よう な こと を いって いる し、 シャシン で みて、 オシャレ の カンジ の する ヒト は、 オシャレ の コトバヅカイ を して いる ので、 おかしくて、 ときどき くすくす わらいながら よんで ゆく。 シュウキョウカ は、 すぐに シンコウ を もちだす し、 キョウイクカ は、 ハジメ から オワリ まで オン、 オン、 と かいて ある。 セイジカ は、 カンシ を もちだす。 サッカ は、 きどって、 オシャレ な コトバ を つかって いる。 しょって いる。
でも、 みんな、 なかなか カクジツ な こと ばかり かいて ある。 コセイ の ない こと。 フカミ の ない こと。 ただしい キボウ、 ただしい ヤシン、 そんな もの から とおく はなれて いる こと。 つまり、 リソウ の ない こと。 ヒハン は あって も、 ジブン の セイカツ に ちょくせつ むすびつける セッキョクセイ の ない こと。 ムハンセイ。 ホントウ の ジカク、 ジアイ、 ジチョウ が ない。 ユウキ の ある コウドウ を して も、 その あらゆる ケッカ に ついて、 セキニン が もてる か どう か。 ジブン の シュウイ の セイカツ ヨウシキ には ジュンノウ し、 これ を ショリ する こと に たくみ で ある が、 ジブン、 ならびに ジブン の シュウイ の セイカツ に、 ただしい つよい アイジョウ を もって いない。 ホントウ の イミ の ケンソン が ない。 ドクソウセイ に とぼしい。 モホウ だけ だ。 ニンゲン ホンライ の 「アイ」 の カンカク が ケツジョ して しまって いる。 オジョウヒン-ぶって いながら、 キヒン が ない。 その ホカ、 タクサン の こと が かかれて いる。 ホントウ に、 よんで いて、 はっと する こと が おおい。 けっして ヒテイ できない。
けれども ここ に かかれて ある コトバ ゼンブ が、 なんだか、 ラッカンテキ な、 この ヒトタチ の フダン の キモチ とは はなれて、 ただ かいて みた と いう よう な カンジ が する。 「ホントウ の イミ の」 とか、 「ホンライ の」 とか いう ケイヨウシ が たくさん ある けれど、 「ホントウ の」 アイ、 「ホントウ の」 ジカク、 とは、 どんな もの か、 はっきり テ に とる よう には かかれて いない。 この ヒトタチ には、 わかって いる の かも しれない。 それならば、 もっと グタイテキ に、 ただ ヒトコト、 ミギ へ ゆけ、 ヒダリ へ ゆけ、 と、 ただ ヒトコト、 ケンイ を もって ユビ で しめして くれた ほう が、 どんな に ありがたい か わからない。 ワタシタチ、 アイ の ヒョウゲン の ホウシン を みうしなって いる の だ から、 あれ も いけない、 これ も いけない、 と いわず に、 こう しろ、 ああ しろ、 と つよい チカラ で いいつけて くれたら、 ワタシタチ、 みんな、 その とおり に する。 ダレ も ジシン が ない の かしら。 ここ に イケン を ハッピョウ して いる ヒトタチ も、 いつでも、 どんな バアイ に でも、 こんな イケン を もって いる、 と いう わけ では ない の かも しれない。 ただしい キボウ、 ただしい ヤシン を もって いない、 と しかって おられる けれども、 そんなら ワタシタチ、 ただしい リソウ を おって コウドウ した バアイ、 この ヒトタチ は どこまでも ワタシタチ を みまもり、 みちびいて いって くれる だろう か。
ワタシタチ には、 ジシン の ゆく べき サイゼン の バショ、 ゆきたく おもう うつくしい バショ、 ジシン を のばして ゆく べき バショ、 おぼろげ ながら わかって いる。 よい セイカツ を もちたい と おもって いる。 それこそ ただしい キボウ、 ヤシン を もって いる。 たよれる だけ の うごかない シンネン をも もちたい と、 あせって いる。 しかし、 これら ゼンブ、 ムスメ なら ムスメ と して の セイカツ の ウエ に グゲン しよう と かかったら、 どんな に ドリョク が ヒツヨウ な こと だろう。 オカアサン、 オトウサン、 アネ、 アニ たち の カンガエカタ も ある。 (クチ だけ では、 やれ ふるい の なんの って いう けれども、 けっして ジンセイ の センパイ、 ロウジン、 キコン の ヒトタチ を ケイベツ なんか して いない。 それ どころ か、 いつでも ニモク も サンモク も おいて いる はず だ) しじゅう セイカツ と カンケイ の ある シンルイ と いう もの も、 ある。 チジン も ある。 トモダチ も ある。 それから、 いつも おおきな チカラ で ワタシタチ を おしながす 「ヨノナカ」 と いう もの も ある の だ。 これら スベテ の こと を おもったり みたり かんがえたり する と、 ジブン の コセイ を のばす どころ の サワギ では ない。 まあ、 まあ めだたず に、 フツウ の オオク の ヒトタチ の とおる ミチ を だまって すすんで ゆく の が、 いちばん リコウ なの でしょう くらい に おもわず には いられない。 ショウスウシャ への キョウイク を、 ゼンパン へ ほどこす なんて、 ずいぶん むごい こと だ とも おもわれる。 ガッコウ の シュウシン と、 ヨノナカ の オキテ と、 すごく ちがって いる の が、 だんだん おおきく なる に つれて わかって きた。 ガッコウ の シュウシン を ゼッタイ に まもって いる と、 その ヒト は バカ を みる。 ヘンジン と いわれる。 シュッセ しない で、 いつも ビンボウ だ。 ウソ を つかない ヒト なんて、 ある かしら。 あったら、 その ヒト は、 エイエン に ハイボクシャ だ。 ワタシ の ニクシン カンケイ の ウチ にも、 ヒトリ、 オコナイ ただしく、 かたい シンネン を もって、 リソウ を ツイキュウ して、 それこそ ホントウ の イミ で いきて いる ヒト が ある の だ けれど、 シンルイ の ヒト ミンナ、 その ヒト を わるく いって いる。 バカ アツカイ して いる。 ワタシ なんか、 そんな バカ アツカイ されて ハイボク する の が わかって いながら、 オカアサン や ミナ に ハンタイ して まで ジブン の カンガエカタ を のばす こと は、 できない。 おっかない の だ。 ちいさい ジブン には、 ワタシ も、 ジブン の キモチ と ヒト の キモチ と まったく ちがって しまった とき には、 オカアサン に、
「なぜ?」 と きいた もの だ。 その とき には、 オカアサン は、 ナニ か ヒトコト で かたづけて、 そうして おこった もの だ。 わるい、 フリョウ みたい だ、 と いって、 オカアサン は かなしがって いた よう だった。 オトウサン に いった こと も ある。 オトウサン は、 その とき ただ だまって わらって いた。 そして アト で オカアサン に 「チュウシン ハズレ の コ だ」 と おっしゃって いた そう だ。 だんだん おおきく なる に つれて、 ワタシ は、 おっかなびっくり に なって しまった。 ヨウフク 1 マイ つくる の にも、 ヒトビト の オモワク を かんがえる よう に なって しまった。 ジブン の コセイ みたい な もの を、 ホントウ は、 こっそり あいして いる の だ けれども、 あいして ゆきたい とは おもう の だ けど、 それ を はっきり ジブン の もの と して タイゲン する の は、 おっかない の だ。 ヒトビト が、 よい と おもう ムスメ に なろう と いつも おもう。 タクサン の ヒトタチ が あつまった とき、 どんな に ジブン は ヒクツ に なる こと だろう。 クチ に だしたく も ない こと を、 キモチ と ぜんぜん はなれた こと を、 ウソ ついて ぺちゃぺちゃ やって いる。 その ほう が トク だ、 トク だ と おもう から なの だ。 いや な こと だ と おもう。 はやく ドウトク が イッペン する とき が くれば よい と おもう。 そう する と。 こんな ヒクツサ も、 また ジブン の ため で なく、 ヒト の オモワク の ため に マイニチ を ぽたぽた セイカツ する こと も なくなる だろう。
おや、 あそこ、 セキ が あいた。 いそいで アミダナ から、 オドウグ と カサ を おろし、 すばやく わりこむ。 ミギドナリ は チュウガクセイ、 ヒダリドナリ は、 コドモ せおって ネンネコ きて いる オバサン。 オバサン は、 トシヨリ の くせ に アツゲショウ を して、 カミ を リュウコウマキ に して いる。 カオ は きれい なの だ けれど、 ノド の ところ に シワ が くろく よって いて、 あさましく、 ぶって やりたい ほど いや だった。 ニンゲン は、 たって いる とき と、 すわって いる とき と、 まるっきり かんがえる こと が ちがって くる。 すわって いる と、 なんだか たよりない、 ムキリョク な こと ばかり かんがえる。 ワタシ と むかいあって いる セキ には、 4~5 ニン、 おなじ トシカッコウ の サラリーマン が、 ぼんやり すわって いる。 30 ぐらい で あろう か。 ミンナ、 いや だ。 メ が、 どろん と にごって いる。 ハキ が ない。 けれども、 ワタシ が イマ、 この ウチ の ダレ か ヒトリ に、 にっこり わらって みせる と、 たった それ だけ で ワタシ は、 ずるずる ひきずられて、 その ヒト と ケッコン しなければ ならぬ ハメ に おちる かも しれない の だ。 オンナ は、 ジブン の ウンメイ を けっする の に、 ビショウ ヒトツ で タクサン なの だ。 おそろしい。 フシギ な くらい だ。 キ を つけよう。 ケサ は、 ホント に ミョウ な こと ばかり かんがえる。 2~3 ニチ マエ から、 ウチ の オニワ を テイレ し に きて いる ウエキヤ さん の カオ が メ に ちらついて、 シカタ が ない。 どこ から どこ まで ウエキヤ さん なの だ けれど、 カオ の カンジ が、 どうしても ちがう。 おおげさ に いえば、 シサクカ みたい な カオ を して いる。 イロ は くろい だけ に しまって みえる。 メ が よい の だ。 マユ も せまって いる。 ハナ は、 すごく シシッパナ だ けれど、 それ が また、 イロ の くろい の に マッチ して、 イシ が つよそう に みえる。 クチビル の カタチ も、 なかなか よい。 ミミ は すこし きたない。 テ と いったら、 それこそ ウエキヤ さん に ギャクモドリ だ けれど、 くろい ソフト を ふかく かぶった ヒカゲ の カオ は、 ウエキヤ さん に して おく の は おしい キ が する。 オカアサン に、 3 ド も 4 ド も、 あの ウエキヤ さん、 ハジメ から ウエキヤ さん だった の かしら、 と たずねて、 シマイ に しかられて しまった。 キョウ、 オドウグ を つつんで きた この フロシキ は、 ちょうど、 あの ウエキヤ さん が はじめて きた ヒ に、 オカアサン から もらった の だ。 あの ヒ は、 ウチ の ほう の オオソウジ だった ので、 ダイドコロ ナオシ さん や、 タタミヤ さん も はいって いて、 オカアサン も タンス の もの を セイリ して、 その とき に、 この フロシキ が でて きて、 ワタシ が もらった。 きれい な おんならしい フロシキ。 きれい だ から、 むすぶ の が おしい。 こうして すわって、 ヒザ の ウエ に のせて、 ナンド も そっと みて みる。 なでる。 デンシャ の ナカ の ミナ の ヒト にも みて もらいたい けれど、 ダレ も みない。 この かわいい フロシキ を、 ただ、 ちょっと みつめて さえ くださったら、 ワタシ は、 その ヒト の ところ へ オヨメ に ゆく こと に きめて も いい。 ホンノウ、 と いう コトバ に つきあたる と、 ないて みたく なる。 ホンノウ の オオキサ、 ワタシタチ の イシ では うごかせない チカラ、 そんな こと が、 ジブン の トキドキ の いろんな こと から わかって くる と、 キ が くるいそう な キモチ に なる。 どう したら よい の だろう か、 と ぼんやり なって しまう。 ヒテイ も コウテイ も ない、 ただ、 おおきな おおきな もの が、 がばと アタマ から かぶさって きた よう な もの だ。 そして ワタシ を ジユウ に ひきずりまわして いる の だ。 ひきずられながら マンゾク して いる キモチ と、 それ を かなしい キモチ で ながめて いる ベツ の カンジョウ と。 なぜ ワタシタチ は、 ジブン だけ で マンゾク し、 ジブン だけ を イッショウ あいして ゆけない の だろう。 ホンノウ が、 ワタシ の イマ まで の カンジョウ、 リセイ を くって ゆく の を みる の は、 なさけない。 ちょっと でも ジブン を わすれる こと が あった アト は、 ただ、 がっかり して しまう。 あの ジブン、 この ジブン にも ホンノウ が、 はっきり ある こと を しって くる の は、 なけそう だ。 オカアサン、 オトウサン と よびたく なる。 けれども、 また、 シンジツ と いう もの は、 あんがい、 ジブン が いや だ と おもって いる ところ に ある の かも しれない の だ から、 いよいよ なさけない。
もう、 オチャノミズ。 プラットフォム に おりたったら、 なんだか すべて、 けろり と して いた。 イマ すぎた こと を、 いそいで おもいかえしたく つとめた けれど、 いっこう に おもいうかばない。 あの、 ツヅキ を かんがえよう と、 あせった けれど、 なにも おもう こと が ない。 カラッポ だ。 その とき、 ときには、 ずいぶん と ジブン の キモチ を うった もの も あった よう だし、 くるしい はずかしい こと も あった はず なのに、 すぎて しまえば、 なにも なかった の と まったく おなじ だ。 イマ、 と いう シュンカン は、 おもしろい。 イマ、 イマ、 イマ、 と ユビ で おさえて いる うち にも、 イマ、 は トオク へ とびさって、 あたらしい 「イマ」 が きて いる。 ブリッジ の カイダン を ことこと のぼりながら、 なんじゃら ほい と おもった。 ばかばかしい。 ワタシ は、 すこし コウフク-すぎる の かも しれない。
ケサ の コスギ センセイ は きれい。 ワタシ の フロシキ みたい に きれい。 うつくしい アオイロ の にあう センセイ。 ムネ の シンク の カーネーション も めだつ。 「つくる」 と いう こと が なかったら、 もっと もっと この センセイ すき なの だ けれど。 あまり に ポーズ を つけすぎる。 どこ か、 ムリ が ある。 あれ じゃあ つかれる こと だろう。 セイカク も、 どこ か ナンカイ な ところ が ある。 わからない ところ を たくさん もって いる。 くらい セイシツ なのに、 ムリ に あかるく みせよう と して いる ところ も みえる。 しかし、 なんと いって も ひかれる オンナ の ヒト だ。 ガッコウ の センセイ なんて させて おく の おしい キ が する。 オキョウシツ では、 マエ ほど ニンキ が なくなった けれど、 ワタシ は、 ワタシ ヒトリ は、 マエ と ドウヨウ に ひかれて いる。 サンチュウ、 コハン の コジョウ に すんで いる レイジョウ、 そんな カンジ が ある。 いやに、 ほめて しまった もの だ。 コスギ センセイ の オハナシ は、 どうして、 いつも こんな に かたい の だろう。 アタマ が わるい の じゃ ない かしら。 かなしく なっちゃう。 サッキ から、 アイコクシン に ついて ながなが と といて きかせて いる の だ けれど、 そんな こと、 わかりきって いる じゃ ない か。 どんな ヒト に だって、 ジブン の うまれた ところ を あいす キモチ は ある のに。 つまらない。 ツクエ に ホオヅエ ついて、 ぼんやり マド の ソト を ながめる。 カゼ の つよい ゆえ か、 クモ が きれい だ。 オニワ の スミ に、 バラ の ハナ が ヨッツ さいて いる。 キイロ が ヒトツ、 シロ が フタツ、 ピンク が ヒトツ。 ぽかん と ハナ を ながめながら、 ニンゲン も、 ホントウ に よい ところ が ある、 と おもった。 ハナ の ウツクシサ を みつけた の は、 ニンゲン だし、 ハナ を あいする の も ニンゲン だ もの。
オヒルゴハン の とき は、 オバケバナシ が でる。 ヤスベエ ネエチャン の、 イチコウ ナナフシギ の ヒトツ、 「あかず の トビラ」 には、 もう、 ミンナ、 きゃあ、 きゃあ。 ドロンドロン-シキ で なく、 シンリテキ なので、 おもしろい。 あんまり さわいだ ので、 イマ たべた ばかり なのに、 もう ぺこ に なって しまった。 さっそく アンパン フジン から、 キャラメル ゴチソウ に なる。 それから また、 ひとしきり キョウフ モノガタリ に ミナサン ムチュウ。 ダレ でも カレ でも、 この オバケバナシ と やら には、 キョウミ が わく らしい。 ヒトツ の シゲキ でしょう かな。 それから、 これ は カイダン では ない けれど、 「クハラ フサノスケ」 の ハナシ、 おかしい、 おかしい。
ゴゴ の ズガ の ジカン には、 ミナ、 コウテイ に でて、 シャセイ の オケイコ。 イトウ センセイ は、 どうして ワタシ を、 いつも ムイミ に こまらせる の だろう。 キョウ も ワタシ に、 センセイ ゴジシン の エ の モデル に なる よう いいつけた。 ワタシ の ケサ ジサン した ふるい アマガサ が、 クラス の ダイカンゲイ を うけて、 ミナサン さわぎたてる もの だ から、 とうとう イトウ センセイ にも わかって しまって、 その アマガサ もって、 コウテイ の スミ の バラ の ソバ に たって いる よう、 いいつけられた。 センセイ は、 ワタシ の こんな スガタ を かいて、 コンド テンランカイ に だす の だ そう だ。 30 プン-カン だけ、 モデル に なって あげる こと を ショウダク する。 すこし でも、 ヒト の オヤク に たつ こと は、 うれしい もの だ。 けれども、 イトウ センセイ と フタリ で むかいあって いる と、 とても つかれる。 ハナシ が ねちねち して リクツ が おおすぎる し、 あまり にも ワタシ を イシキ して いる ゆえ か、 スケッチ しながら でも はなす こと が、 みんな ワタシ の こと ばかり。 ヘンジ する の も めんどうくさく、 わずらわしい。 はっきり しない ヒト で ある。 へんに わらったり、 センセイ の くせ に はずかしがったり、 なにしろ さっぱり しない の には、 げっと なりそう だ。
「しんだ イモウト を、 おもいだします」 なんて、 やりきれない。 ヒト は、 いい ヒト なん だろう けれど、 ゼスチュア が おおすぎる。
ゼスチュア と いえば、 ワタシ だって、 まけない で たくさん もって いる。 ワタシ の は、 そのうえ、 ずるくて リコウ に たちまわる。 ホントウ に キザ なの だ から シマツ に こまる。 「ジブン は、 ポーズ を つくりすぎて、 ポーズ に ひきずられて いる ウソツキ の バケモノ だ」 なんて いって、 これ が また、 ヒトツ の ポーズ なの だ から、 ウゴキ が とれない。 こうして、 おとなしく センセイ の モデル に なって あげて いながら も、 つくづく、 「シゼン に なりたい、 すなお に なりたい」 と いのって いる の だ。 ホン なんか よむ の やめて しまえ。 カンネン だけ の セイカツ で、 ムイミ な、 コウマンチキ の シッタカブリ なんて、 ケイベツ、 ケイベツ。 やれ セイカツ の モクヒョウ が ない の、 もっと セイカツ に、 ジンセイ に、 セッキョクテキ に なれば いい の、 ジブン には ムジュン が ある の どう の って、 しきり に かんがえたり なやんだり して いる よう だ が、 オマエ の は、 カンショウ だけ さ。 ジブン を かわいがって、 なぐさめて いる だけ なの さ。 それから ずいぶん ジブン を かいかぶって いる の です よ。 ああ、 こんな ココロ の きたない ワタシ を モデル に したり なんか して、 センセイ の エ は、 きっと ラクセン だ。 うつくしい はず が ない もの。 いけない こと だ けれど、 イトウ センセイ が バカ に みえて シヨウ が ない。 センセイ は、 ワタシ の シタギ に、 バラ の ハナ の シシュウ が ある こと さえ、 しらない。
だまって おなじ シセイ で たって いる と、 やたらむしょう に、 オカネ が ほしく なって くる。 10 エン あれば、 よい の だ けれど。 「マダム キュリー」 が いちばん よみたい。 それから、 ふっと、 オカアサン ナガイキ する よう に、 と おもう。 センセイ の モデル に なって いる と、 へんに、 つらい。 くたくた に つかれた。
ホウカゴ は、 オテラ の ムスメ さん の キンコ さん と、 こっそり、 ハリウッド へ いって、 カミ を やって もらう。 できあがった の を みる と、 たのんだ よう に できて いない ので、 がっかり だ。 どう みたって、 ワタシ は、 ちっとも かわいく ない。 あさましい キ が した。 したたか に、 しょげちゃった。 こんな ところ へ きて、 こっそり カミ を つくって もらう なんて、 すごく きたならしい 1 ワ の メンドリ みたい な キ さえ して きて、 つくづく イマ は コウカイ した。 ワタシタチ、 こんな ところ へ くる なんて、 ジブン ジシン を ケイベツ して いる こと だ と おもった。 オテラサン は、 オオハシャギ。
「このまま、 ミアイ に いこう かしら」 なぞ と ランボウ な こと いいだして、 その うち に、 なんだか オテラサン ゴジシン、 ミアイ に、 ホントウ に ゆく こと に きまって しまった よう な サッカク を おこした らしく、
「こんな カミ には、 どんな イロ の ハナ を さしたら いい の?」 とか、 「ワフク の とき には、 オビ は、 どんな の が いい の?」 なんて、 ホンキ に やりだす。
ホント に、 なにも かんがえない かわいらしい ヒト。
「ドナタ と ミアイ なさる の?」 と ワタシ も、 わらいながら たずねる と、
「モチヤ は、 モチヤ と いいます から ね」 と、 すまして こたえた。 それ どういう イミ なの、 と ワタシ も すこし おどろいて きいて みたら、 オテラ の ムスメ は オテラ へ オヨメイリ する の が いちばん いい のよ、 イッショウ たべる の に こまらない し、 と こたえて、 また ワタシ を おどろかせた。 キンコ さん は、 まったく ムセイカク みたい で、 それゆえ、 オンナラシサ で いっぱい だ。 ガッコウ で ワタシ と セキ が オトナリドウシ だ と いう だけ で、 そんな に ワタシ は したしく して あげて いる わけ でも ない のに、 オテラサン の ほう では、 ワタシ の こと を、 アタシ の イチバン の シンユウ です、 なんて ミナ に いって いる。 かわいい ムスメ さん だ。 1 ニチ-オキ に テガミ を よこしたり、 なんとなく よく セワ を して くれて、 ありがたい の だ けれど、 キョウ は、 あんまり おおげさ に はしゃいで いる ので、 ワタシ も、 さすが に いや に なった。 オテラサン と わかれて、 バス に のって しまった。 なんだか、 なんだか ユウウツ だ。 バス の ナカ で、 いや な オンナ の ヒト を みた。 エリ の よごれた キモノ を きて、 もじゃもじゃ の あかい カミ を クシ 1 ポン に まきつけて いる。 テ も アシ も きたない。 それに オトコ か オンナ か、 わからない よう な、 むっと した あかぐろい カオ を して いる。 それに、 ああ、 ムネ が むかむか する。 その オンナ は、 おおきい オナカ を して いる の だ。 ときどき、 ヒトリ で、 にやにや わらって いる。 メンドリ。 こっそり、 カミ を つくり に、 ハリウッド なんか へ ゆく ワタシ だって、 ちっとも、 この オンナ の ヒト と かわらない の だ。
ケサ、 デンシャ で となりあわせた アツゲショウ の オバサン をも おもいだす。 ああ、 きたない、 きたない。 オンナ は、 いや だ。 ジブン が オンナ だけ に、 オンナ の ナカ に ある フケツサ が、 よく わかって、 ハギシリ する ほど、 いや だ。 キンギョ を いじった アト の、 あの たまらない ナマグササ が、 ジブン の カラダ いっぱい に しみついて いる よう で、 あらって も、 あらって も、 おちない よう で、 こうして イチニチ イチニチ、 ジブン も メス の タイシュウ を ハッサン させる よう に なって ゆく の か と おもえば、 また、 おもいあたる こと も ある ので、 いっそ このまま、 ショウジョ の まま で しにたく なる。 ふと、 ビョウキ に なりたく おもう。 うんと おもい ビョウキ に なって、 アセ を タキ の よう に ながして ほそく やせたら、 ワタシ も、 すっきり セイジョウ に なれる かも しれない。 いきて いる カギリ は、 とても のがれられない こと なの だろう か。 しっかり した シュウキョウ の イミ も わかりかけて きた よう な キ が する。
バス から おりる と、 すこし ほっと した。 どうも ノリモノ は、 いけない。 クウキ が、 なまぬるくて、 やりきれない。 ダイチ は、 いい。 ツチ を ふんで あるいて いる と、 ジブン を すき に なる。 どうも ワタシ は、 すこし オッチョコチョイ だ。 ゴクラク トンボ だ。 かえろ かえろ と ナニ みて かえる、 ハタケ の タマネギ みいみい かえろ、 カエロ が なく から かえろ。 と ちいさい コエ で うたって みて、 この コ は、 なんて ノンキ な コ だろう、 と ジブン ながら はがゆく なって、 セ ばかり のびる この ボーボー が にくらしく なる。 いい ムスメ さん に なろう と おもった。
この オウチ に かえる イナカミチ は、 マイニチ マイニチ、 あんまり みなれて いる ので、 どんな しずか な イナカ だ か、 わからなく なって しまった。 ただ、 キ、 ミチ、 ハタケ、 それ だけ なの だ から。 キョウ は、 ひとつ、 ヨソ から はじめて この イナカ に やって きた ヒト の マネ を して みよう。 ワタシ は、 ま、 カンダ アタリ の ゲタヤ さん の オジョウサン で、 うまれて はじめて コウガイ の ツチ を ふむ の だ。 すると、 この イナカ は、 いったい どんな に みえる だろう。 すばらしい オモイツキ。 かわいそう な オモイツキ。 ワタシ は、 あらたまった カオツキ に なって、 わざと、 おおげさ に きょろきょろ して みる。 ちいさい ナミキミチ を くだる とき には、 ふりあおいで シンリョク の エダエダ を ながめ、 まあ、 と ちいさい サケビ を あげて みて、 ドバシ を わたる とき には、 しばらく オガワ を のぞいて、 ミズカガミ に カオ を うつして、 わんわん と、 イヌ の マネ して ほえて みたり、 トオク の ハタケ を みる とき は、 メ を ちいさく して、 うっとり した フウ を して、 いい わねえ、 と つぶやいて タメイキ。 ジンジャ では、 また ヒトヤスミ。 ジンジャ の モリ の ナカ は、 くらい ので、 あわてて たちあがって、 おお、 こわ こわ、 と いい カタ を ちいさく すぼめて、 そそくさ モリ を とおりぬけ、 モリ の ソト の アカルサ に、 わざと おどろいた よう な フウ を して、 いろいろ あたらしく あたらしく、 と こころがけて イナカ の ミチ を、 こって あるいて いる うち に、 なんだか、 たまらなく さびしく なって きた。 とうとう ミチバタ の クサハラ に、 ぺたり と すわって しまった。 クサ の ウエ に すわったら、 つい イマシガタ まで の うきうき した キモチ が、 ことん と オト たてて きえて、 ぎゅっと マジメ に なって しまった。 そうして、 コノゴロ の ジブン を、 しずか に、 ゆっくり おもって みた。 なぜ、 コノゴロ の ジブン が、 いけない の か。 どうして、 こんな に フアン なの だろう。 いつでも、 ナニ か に おびえて いる。 コノアイダ も、 ダレ か に いわれた。 「アナタ は、 だんだん ぞくっぽく なる のね」
そう かも しれない。 ワタシ は、 たしか に、 いけなく なった。 くだらなく なった。 いけない、 いけない。 よわい、 よわい。 だしぬけ に、 おおきな コエ が、 わっ と でそう に なった。 ちぇっ、 そんな サケビゴエ あげた くらい で、 ジブン の ヨワムシ を、 ごまかそう たって、 ダメ だぞ。 もっと どうにか なれ。 ワタシ は、 コイ を して いる の かも しれない。 アオクサハラ に アオムケ に ねころがった。
「オトウサン」 と よんで みる。 オトウサン、 オトウサン。 ユウヤケ の ソラ は きれい です。 そうして、 ユウモヤ は、 ピンク イロ。 ユウヒ の ヒカリ が モヤ の ナカ に とけて、 にじんで、 その ため に モヤ が こんな に、 やわらかい ピンク イロ に なった の でしょう。 その ピンク の モヤ が ゆらゆら ながれて、 コダチ の アイダ に もぐって いったり、 ミチ の ウエ を あるいたり、 クサハラ を なでたり、 そうして、 ワタシ の カラダ を、 ふんわり つつんで しまいます。 ワタシ の カミノケ 1 ポン 1 ポン まで、 ピンク の ヒカリ は、 そっと かすか に てらして、 そうして やわらかく なでて くれます。 それ より も、 この ソラ は、 うつくしい。 この オソラ には、 ワタシ うまれて はじめて アタマ を さげたい の です。 ワタシ は、 イマ カミサマ を しんじます。 これ は、 この ソラ の イロ は、 なんと いう イロ なの かしら。 バラ。 カジ。 ニジ。 テンシ の ツバサ。 ダイガラン。 いいえ、 そんな ん じゃ ない。 もっと、 もっと こうごうしい。
「ミンナ を あいしたい」 と ナミダ が でそう な くらい おもいました。 じっと ソラ を みて いる と、 だんだん ソラ が かわって ゆく の です。 だんだん あおみがかって ゆく の です。 ただ、 タメイキ ばかり で、 ハダカ に なって しまいたく なりました。 それから、 イマ ほど キ の ハ や クサ が トウメイ に、 うつくしく みえた こと も ありません。 そっと クサ に、 さわって みました。
うつくしく いきたい と おもいます。