鴨着く島

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大阪の窮状と聖火リレー

2021-04-14 10:02:34 | 日本の時事風景
昨日の大阪の感染者数がついに1000人を超えた。有り得ない数である。

1月の10日前後だったか、大阪では一年を通じての最高600人越えを連発し、その後一週間くらいから2月一杯まで緊急事態に入った。

2月の後半は確かに「つるべ落とし」的な減り方であったから、緊急事態を早めに月末で切り上げたのだが、それが全くの裏目に出てしまった。

それはそうだろう、3月早々に解除となれば職場の送別会などが目白押しになっただろうし、春休みに入れば学校や部活動などの送別会が開かれる。その上、かなり早い桜の開花は人々の気を緩めさせるに十分だったのだ。

大阪の「第4波」の感染者数の棒グラフを見ていると、去年の緊急事態宣言期間の感染者数はまるで幻に感じるくらい少ない。あの頃は大袈裟なくらい感染に対する恐怖感というものがあった。志村けんと岡江久美子という二人の大物芸能人の相次ぐ死がそれを増幅したのだろうと思う。

それまで学校関係が(高校野球選抜大会の中止を含めて)厳しい自粛を蒙っていたのに加えて、4月7日には「緊急事態宣言が発出」され、「自粛警察」なる者まで現れて全国は森閑となった。

その効果もあって日本は欧米の大規模感染拡大とは完全に一線を画し、安倍元首相をして「日本型の感染抑止モデルが成功した」と言わしめた。(※ある意味で中国の対コロナ禍勝利宣言に匹敵した。中国の勝利宣言は人道に反するが。)

ところがこれが大きな油断だったのだ。と言うのは、3月末の時点でオリンピックの延期は決まっていたので、「オリンピックはあと1年以上先じゃないか、我が国のとっている徹底した三密対策を続ければ、一年後には十分下火になっているだろう」くらいな軽い認識に陥ってしまったのである。

当然その認識の流れでワクチンの自国開発は「早くても1年、通常は2年以上かかる」というような専門家の意見を鵜呑みにして「不要だ」と言うことになり、今頃になって自国民へのワクチン不足に右往左往している。他国頼みの哀れさよ!!

いやしくもオリンピックを開催するホスト国であるならば、ワクチン開発を急ぎ、各国に提供して世界からアスリートと多くの観光客を呼び込もう、おもてなしをしようという気概があってしかるべきだった。今からではもう完璧に間に合わない。

この夏のオリンピックはまず開催不可能だろう。折しもアメリカのニューヨークタイムズ紙が、「この感染状況でオリンピックを開くのはかえって感染拡大に繋がるから中止すべきだ」と書いているそうだ。その通りだろう。同紙はオリンピックの放映権とは無縁だからズバリ言ってきた。CBCなどテレビ系のメディアは当然開かせたいのだろうが、どうなるか。

大坂の窮状を伝える新聞の同じ紙面には、昨日(13日)から始まった大阪の聖火リレーの模様を報じていた。

吉村大阪府知事が公道での聖火リレーを中止したので、その代わりに、観客のいない状態にするためにあの万博記念公園を締め切って著名人を走らせていた。元競泳選手の寺川綾とかフェンシングの太田選手、そしておなじみの桂三枝などが、太陽の塔の周辺をゆっくりと走ったようだ。

大阪は今週の感染状況を見極めたうえで、来週早々の「緊急事態宣言発出」を政府に働きかけているが、これまでと同じ程度の「三密対策」「時間短縮」では、同じことの繰り返しではないか。

「午後8時以降の外出禁止」「個人宅でも宴会・集会は禁止」というような強力な対策に出ないと効果は無いだろう。

どの道、ワクチンが国民に回らなければこれでも一時しのぎだが、政府がどうしても今夏のオリンピックを開催したいのであれば、最低でもそのような対策が必要だろう。

日本産のワクチン開発と実用化を前提に考えるならば、自分としてはもう一年延期が順当だと思う。それができないのであれば潔く中止すべきだ。