亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

信託の税務(2)

2012-02-08 16:47:16 | 司法書士の日記

前回掲示した信託は,土地信託等開発行為を伴うものでもない限り,スキームの需要がないかもしれません。信託税務の学習用に例示したものでしょう。今回は,受益者連続型信託についてです。受益者連続ですから,受益者が代わることが連続する信託という事になります。以前にも紹介しましたが,多いと思われるものが,夫が再婚している事例で後妻に自宅を使用収益させるが,後妻が亡くなったら自宅は子に取得させたいというケースです。事例 最初の収益受益者を後妻,後妻死亡後は長男,長男死亡後は信託が終了し,孫が元本受益権を取得するとします。
受益権は,後妻~長男~孫と連続します。この場合,受益権を前受益者から相続したものとして相続税が課税されます。その際の収益受益権の評価額は,自宅の相続税評価額です。つまり,収益受益権・元本受益権にかかわらず,評価は物件の相続税評価額です。これは,委託者である夫から資産が転々として,結果的に孫のものになるという事実から,このような税制を採用しないと,通常の相続の場合より税の課税の機会を失うことがあると考えたわけです。通常の相続の場合,相続が発生した時点で,相続税の課税機会があるのですから。ただし,通常の相続では,元本すなわち自宅の所有権自体が相続人に移転するのに比べて,信託では,後妻及び長男には自宅の所有権は移転せず使用収益権のみが移転します。ですから,後妻及び長男は自宅を売却したりして換金することはできません。そのような制約の中で,所有権の完全な移転と同じ税金を納めなければならないというのは,少し納得がいかないものではないでしょうか。この場合にもし,相続税の非課税限度を超え相続税の納税が必要になる場合,最悪の場合に,自宅を処分して納税資金に充てることができないことになります。信託が,税務の制約を受けスムースに運ばない一例で有ると思います。さらに,不動産の場合,信託の登記をする必要が有ります。登記のための登録免許税は,現時点での措置法により,通常の相続の登記の登録免許税(固定資産評価額の0.4%)を超えることはないのですが,問題は信託の終了時にあります。この時に,受託者から元本受益者への「信託財産引継」を原因とする所有権移転登記を行います。ところが,この原因による所有権移転に対しては,不動産取得税の課税対象とするというのです。不動産取得税とは,不動産の取得者に対し賦課される都道府県税ですが,相続を原因とする取得には課さないことになっています。この信託の受益権は,全て相続による移転のはずです。ところが,登記の際,「相続」を原因としていないため非課税要件に該当せず,取得税を賦課するとのことなのです。取得税において自宅の場合は,一定の減税措置があるため,余程広い土地に建っていない限り非課税になると思われますが,事業用の不動産の場合には課税される事は明らかです。本来,支払う必要のない相続による取得にまで課税される場合があるとは・・・。「信託の税制」を,一般的なものより不利益になることを除く税制に,改正する必要があります。