140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

ダンテ神曲[永井豪]

2014-06-28 00:05:39 | 神曲
「ダンテよ!?
おまえがこの地獄で見たものを人の世に伝える意味もそこにある!!
人は死後の世界があることを知らねばならない!
現世だけうまく生きぬこうとする者は地獄で永劫の苦しみを味わうことを
知らねばならぬ!
人が死後の世界のあることを知れば現世での生き方も変わるだろう・・・・・・
現世が神によって人間性を試される場とわかれば人の生きざまも変わるやもしれぬ
ダンテよ
だからこそ地獄をしっかりと見て行くことだ!
そして人々に伝えるのだ!?
ダンテ
おまえのたぐいまれな詩の力で!!
言葉の力で伝えるのだ!!」

そんなセリフが書かれていたが
人々の生き方を変えるためにダンテが神曲を書いたとは私には思えない。
地獄に落とされるのが嫌だとか天国に行きたいとか思わない。
煉獄で浄罪に励んだ方が良いとは考えたが・・・
たいていの良い本がそうであるように神曲も鏡のようなものだと思う。
正しいとか間違っているということではなく
自分が見落としているものについて
考える機会を与えてくれる。

著者は「ようやく字が読めるようになった頃」に神曲に出会ったのだという。
その本にあったドレの挿絵に魅了されたのだという。
実はデビルマンの冒頭に神曲について触れている場面がある。
著者はバイオレンスとセックスの漫画家というイメージがあり
青少年の教育上好ましくない描写を数えればきりがないが
圧倒的な暴力を描きながら別に暴力を肯定しているわけでもない。
積極的に否定しているわけでもない不思議な人だ。
テレビ放映されたデビルマンは「悪魔の力を身に付けた正義のヒーロー」だったが
マンガでは「悪魔の能力と人間の精神を併せ持つ」のがデビルマン(悪魔人間)である。
そして「人のやさしさに目覚めて悪魔を裏切った」のではなく
飛鳥了に導かれた不動明がデーモンの勇者アモンの身体を乗っ取ったのだ。
だからデーモンにしてみれば不動明は許しがたい存在である。
特にアモンを慕っていたシレーヌにとっては・・・

そんなわけで著者の原点には「ドレの神曲」があったらしい。特に地獄篇の・・・
ダンテの神曲は地獄篇・煉獄篇・天国篇がほぼ同じ行数になっているが
永井豪の神曲は地獄篇が半分以上を占めている。
現世は地獄にいちばん良く似ているのだろう。
そしてデビルマンが涙を流したシーンを思い出すが
人間こそが悪魔になり得る。

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