140億年の孤独

日々感じたこと、考えたことを記録したものです。

脳研究の最前線(1)

2009-10-03 08:40:07 | 
脳研究の最前線という本を読んだ。ちょっと長いので数回に分けて紹介します。
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第1章 脳のシステム[伊藤正男氏]より
われわれは、食物をとることで、脳の細胞の一つ一つにエネルギーを供給しています。
そいう細胞が自発的に活動すると、気体分子一つ一つの運動が全体として上昇気流をもたらすように、
神経ネットワークにも方向性のある活動のパターンが生じる。
そのパターンが、風がゆらぐように、変化することで、意識や能動的注意の切り替わりが
生じるかもしれません。
「意識」の神経メカニズムは人間を理解する上で本質的なテーマですが、まだほとんどわかっていません。
神経科学のみならず、さまざまな学問分野からのアプローチを結集することがその解明には必要です。
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脳のはたらきを以下の役割に分けて説明している。
[運動実行部隊]
役者0:脳幹・脊髄
役者4:大脳皮質の運動野
役者5:大脳皮質の補足運動野
役者6:大脳皮質の運動前野
[運動調整班]
役者7:小脳
役者8:大脳基底核
[感覚情報処理班]
役者1:大脳皮質の初期視覚野
役者2:目に映る物体が何であるかの処理(「何?」経路)
役者3:目に映る物体がどこにあって、どういう動きをしているかの処理(「どこ?」経路)
[取締役]
役者9:大脳皮質の前頭前野
脳の説明というよりは制御システムの説明だ。(PID制御と同じような図が出てくる)
ただ「注意」とか「意識」といった途端に何も説明できなくなってしまう。
そこで引用した文章に記載してあるように「食物をとること」や何か他のことをすること
あるいは何もしないこと(お腹が空く)によって身体や脳の状態が変化し
何かをしようという意識や注意が発生するかも知れないという気がした。

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第2章 脳の進化と心の誕生[岡本仁氏]より
いったい心とは何でしょう。「心」は「情」と「知」から成り立っています。
ここでいう「知」とは、周囲の状況に対する認知をさします。
また「情」は、周囲の状況に対する価値判断をさします。
これらの心の二つの要素は、私たちがおかれた状況ごとに影響を及ぼしあって、その結果、
私たちは"こういう体験をして大変楽しかった"とか、"ああいう体験をして苦しい目にあった"と
いうふうに、経験した出来事に対し、自分にとっての情動的価値判断を付加した情報を、
脳の中に、記憶として蓄えていきます。
これらの情報は、海馬と扁桃体を介して脳に入力されます。
このような"情動的価値判断を伴った記憶の集合体"は、人それぞれに特有なもので、
"自伝的自我"とよばれる人格の基礎を形作ります。
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脳の進化で脳の初期神経回路網は種を超えて保存されていることが説明されている。
つまり私たちの脳は新しい部分が付け加わったのではなくて
どの脊椎動物にも共通の脳の各部位の大きさや形が変わっただけらしい。
そういうことが遺伝子の研究によって明らかにされたそうだ。
「心」のことについては引用文にあるように「情」と「知」から成り立っていて
「情」と「知」はそれぞれどういうものかを定義しているだけに終わっている。
そして行動プログラムの選択や書き換えと情動的価値判断の情報との関係を説明しているが
「なぜ行動制御のプログラムとして働けるかという根本的な問題を
説明するには理論科学者の力が要ります。」と書いて締めくくっている。
それはちょっと無責任じゃないのと思った。
しかし難問であることは確かだ。
私たちは自分の「心」が誕生した時のこともよく覚えていないのだ。
そのあたりに解決の糸口があるかも知れない。

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