遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『Curious George The Perfect Carrot LEVEL 1』 Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company

2022-12-20 15:33:57 | レビュー
 Curious George ・新冒険シーズの1冊を英語絵本電子書籍版で読んだ。こちらは2009年のコピーライトと表記されている。前回ご紹介した『Curious George Cleans Up LEVEL 1』は2007年のコピーライトで、Universal Studios の所有権となっていた。所有権者は変化していないが、商標登録をしている会社は、 Houghton Mifflin Company から Houghton Mifflin Harcourt Publishing Company に変化している。2007年から2009年の間に、出版社が合併したのだろうと推測する。英語絵本を時系列で読んでいるわけではないので曖昧さがあるが、この辺りの経緯は舞台裏事情として追跡すれば、おもしろいのかもしれない。
 このシリーズは、Joe Fallon の脚本によるテレビドラマが元になっている。今回は、Marcy Goldberg Sacks が絵本化したと明記されている。

 さて今回は、ジョージが「ちゃんとした立派なニンジン」(The Perfect Caarrot)を育てるというお話。なぜ、ニンジンを育てる? それは、ビルがウサギに餌を与えるのをジョージが手伝ったことに由来する。ウサギはニンジンが大好きと記されている。
 The bunnies loved carrots. ウサギを rabit ではなく、bunny と表記している。どうちがうの? 辞書を引くと、bunny は小児語で「ウサ(ギ)ちゃん」というニュアンスのようだ。
 
 複数の辞書を引くとおもしろい。ちょっと脇道に。
 今まで意識も注意もしてこなかったことだが、rabbit はウサギでも、家[飼い]ウサギを意味し、hare は野ウサギをさすと言う。rabbit は hare より小型で穴居性があるそうな。アメリカでは、飼いウサギ、野ウサギの区別なく rabbit と呼ぶのがふつうだとか。
 2023年の干支はウサギ。rabbit は臆病さを連想させる一方で、多産の象徴でもある。
(as) timid as a rabbit というフレーズが載っている。timid は「臆病な」を意味する。
 rabbit's foot、それもウサギの左後ろ足は幸運のまじない、魔除けのお守りだとか。j辞書にはこんなことも説明されている。
 pull a rabbit out of a hat というフレーズが載っている。「(帽子からウサギを取り出すように)思いがけない解決策を生み出す、奇策を編み出す」と説明がある。(『ジーニアス英和辞典 5版』大修館書店)
 bunny という言葉から、大人は bunny girl の方を想起するかも・・・・。手許の複数の辞書に第二義としてこの意味が掲載されている。
 rabbit on と動詞で使うと、「[・・・について]長々とむだ話をする」(同上)という意味だという。
 この辺りで、本筋に戻ろう。

 手伝うジョージの手許のニンジンが無くなってしまう。George run out of carrots. と記されている。run out of というイデオムを子供たちは早くも知るのだ・・・・。
 ジョージは、餌のニンジンが無くなってどうしょうかと思う。ビルは畑からニンジンを引き抜いた。ジョージはニンジンの種があれば育てられるとビルから教えられる。

 黄色帽子の男がジョージに種の袋(a packet of seeds) を与える。袋には育て方が記されているので、彼等はまず説明書を読むことから始める、They read the directions. とある。direction はまず方位、方向という意味だけれど、指図、命令の意味がある、その次に指図書、説明書、使用法の意味としての語義が続く。再認識することに・・・・。

 Then he(=George) dropped the seeds in one by one.
 The man helped George cover the seeds with dirt.
地面に長く堀った溝に、ジョージが種を一つずつ蒔いていく。one by one が出てくる。また、以前に英語絵本で知った dirt がここでも使われていることに気づいた。

 ジョージは、種を蒔き、水をやれば、翌日にはニンジンができると思っていた。黄色帽子の男は、ジョージに説明する。
 Take good care of them every day. They will grow in time.
ここでは、 take care of や in time がふつうに使われている。この絵本では、イディオム表現がけっこう出てくるなと思った。子供たちは絵本を通じて身近に表現方法を増やしていくのだろう。いやそれよりも、今では Curious George のテレビドラマが先行しているようだ。その後、絵本でそれを手軽にリピートするということか。

 毎日ニンジンを育てる世話をしたジョージは遂にその成果物を収穫する、出来たニンジンの中には形のおかしいものもあれば、ちゃんとした立派なニンジンもできている。
 ジョージは立派な良品ニンジンをケースに入れて、ビルに見せに行く。ビルは不在で、ウサちゃんたちが行方不明の貼り紙がドアに貼ってあった。
 ジョージは、ウサちゃんたちの足跡を辿って行く。足跡はジョージを洞穴に連れて行った。ジョージは洞穴の中に居る放心状態でお腹を空かせたウサちゃんたちを見つけ出す。勿論、ジョージはケースに入れて持っていたニンジンをウサちゃんたちに与え、自分はビルを捜しに戻り、洞穴まで連れてくる。ジョージの与えたニンジンは殆ど食べ尽くされていたけれど、ウサちゃんたちはそこにとどまっていた。
 When they got back to the cave, the bunnies were still there.
But George's carrot was almost gone!
was almost gone と、go という日常語で簡単に表現されているところになるほど・・・・。

 このお話の最後の文は:
His carrot was a hero --it had saved the bunnies and the day! である。
なぜ、末尾に the day が・・・ save the day ってどういう意味? 
手許の英和辞典の1つは不記。あとの2冊には載っていた。これもイディオム表現だ!
 save the day で、「(間一髪のところで)危機を救う、勝利[成功]をもたらす」(同上)、「どたん場で勝利[成功、解決]をもたらす、急場を救う」(『リーダーズ英和辞典』研究社)という意味だった! 最後にまたナルホド・・・・・。

 この英語絵本、最後に「食物はどこからくるのか」という標題での説明と、「ニンジンの料理」と題し、キャロット・マフィンの料理法の説明が附録として載っている。大人が子供たちに絵本に続く応用場面への発展をちゃんと提供している。
 ニンジンを例にしたお話から、食物がどこからもたらされるかに目を向けさせ、また、ニンジンのマフィンを作って、絵本の先の楽しみを倍加させようというところか。

 英語絵本から学べることがやはり多い。おもしろい。

 ご一読ありがとうございます。

 こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『Curious George Cleans Up LEVEL 1』 Houghton Mifflin Company
『MARGRET & H.A.REY'S Curious George and the Dump Truck』
Houghton Mifflin Company
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