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仙台の豚足一本焼き

2019-08-28 14:02:56 | 日記
昔はとんちゃん焼き、今は牛タン焼き
 

50年近く前仙台に赴任した、会社で用意してくれた社宅は、仙台市の東外れ、市電(今は廃線になった)の終点 陸前原ノ町苦竹(にがたけ)だった、その町から200m歩けば田んぼと畑ばかり、仙台市の東外れ、警察署 東郵便局 造幣局 宮城野球場 陸上自衛隊苦竹駐屯地 なども近くにあった。

仙台市東端の場末の街だが、「とんちゃん屋」(もつ焼きの店をとんちゃん屋と言う)が何軒もあった、豚モツを醤油味か味噌味に付け込み、網かジンギスカン鍋で焼いて食べる、店によっては味をつけず、醤油だれ 味噌だれ両方を出してくれる、癖がなく美味い 酒は自販機にお金を入れれば、冷でもお燗でもコップ一杯出てくる、とんちゃん一人前と酒2~3杯飲んで500円くらいだったろうか。

退社時間になると飲み友達が「とんちゃん屋へあばい(行こうという意味)と誘ってくる」会社貸与の車で通勤していたが、当時飲酒運転の規制はなかった、店も社宅から僅か200~300mの近さ。

原ノ町交差点の南東角から、未開発の広い野原が広がっていた、その広場の一角にポツンとあばら家が1軒あり、夜 真っ暗闇の中に明かりがポツンと灯る、友にその店の「とん足」を食べに行こうと誘われた、友が「アブジ(朝鮮語で親父の意味らしい)に豚足と注文した、出て来たのは七輪に炭火と新聞紙そして塩、出て来た豚足を見てびっくり、豚足丸ごと一本、皮は剥いてあるが蹄はそのまま、蹄の上方には毛も残っている、なんとも野性的というか、原始的と云うか初めての経験。

太ももには肉が一杯 7輪の火にかざせば、脂身 コラーゲンが滴り落ち火がついて煙もうもう、焼き加減を見て塩を振り、50センチ以上の豚足一本を持って肉片にかぶりつく、何の味付けも加工もされてなく、単純に塩味だけこれが「絶品」原始人に戻ったような野性味だ、膝から下は肉は少なくコラーゲンたっぷり、油だらけの手を出された新聞紙で拭く、一見不衛生の様だが、この店から伝染病など出たことがない、翌朝起きると顔が脂ぎってギタギタ、コラーゲンが効いたのかその日の元気が出る。

社宅から近さもあり、結構病みつきになり、この店へ随分通った。

適当に日本酒 朝鮮の焼酎等飲むが、この脂っこさから朝鮮の焼酎が合う、他に煮込みや串焼きなどもあるが、殆どが豚足一本を注文する。
今仙台と云うと「牛タン屋」が有名だが、40~50年前は牛タン屋はあまりなく、とんちゃん屋が席巻していた。

 仙台でも豚足一本を丸ごと出す店は、この「アブジ」の店だけだったと思う。

 
白もつとんちゃん、味噌味 醤油味がある
 
網焼きかジンギスカン鍋で焼く
 
今店で出す豚足は食べ易い様に5~6センチに切ってあり味付けもしてある、一本丸ごとの豚足を食べたら、これを食べる気はしない
 
豚足の蹄部分、味付けして焼いてある、少量の肉とコラーゲンたっぷり、残念ながらトン足一本の当時の写真を持ち合わせない
 

亘理のはらこ飯

2019-08-18 09:16:43 | 日記
食品も進化して変わってしまう
 
仙台市から国道6号線を南へ下ると、名取市 岩沼市を経て、亘理町に入る、この亘理町は花や苺の栽培が盛んで、花や苺は段ボールに詰め出荷するが、出荷のための包装機材を、花業者が我が社から購入してくれて、お得意さんも多かった。

花栽培の大手の社長さんと、商売を通して懇意になり、社長宅を訪れ雑談もした。

亘理町は太平洋に面し、土地は平坦 東北だが気候温暖、阿武隈川に囲まれ、のびのびとした土地柄、人情温厚、お人好しとてもいい土地柄だ、そんな事が花 苺栽培に適しているのかもしれない。

秋から冬にかけ卵を抱き脂の乗った鮭が、産卵のため故郷の川を遡上する、住民はこの鮭を釣り上げて、独特の郷土料理を楽しんでいる。
花栽培業者の社長と会談中、「本社の社長も仙台へ来るのか」と質問、年に何回か来ると答える、「11月半ばから12月半ばに本社社長を招待したい、都合を調整してくれ」と言われた、特定業者の招待に社長を巻き込むのもどうかと、思案したが、社長に1泊2日の予定で来仙を要請した。

社長と得意先へ向かうが、招待されては酒はつきもの、社員に運転を任せた、一匹の鮭でこんなにも料理のレパートリーがあるのかと驚き、最後に出たご飯がこれがイッピン「はらこ飯」だった、鮭の旨味を凝縮した今迄味わった事がないご飯。  

鮭の切り身を甘辛醤油で煮込み、煮込んだ鮭をほぐし、煮汁は炊き込みご飯の味付けにする、キノコを少量炊き込む家もある、炊き上がったご飯を桶に移し、イクラが煮えない程の温度になった時に、素早く鮭とイクラを混ぜ合わせて、はらこ飯の完成、素晴らしい伝統の家庭料理だ。

40年以上も前の話、当時は家庭料理だったが、最近は亘理町 仙台市に「はらこ飯」店ができた様だ、お客に提供するため体裁よく形を変えたのか、味付けご飯に、鮭とイクラを載せた物、偽物とは言わぬが、家庭料理とは体裁が違ってきている
 
亘理町は阿武隈川の河口に面し、鳥の海には温泉もあり、平坦地で花やイチゴ栽培が盛んな土地柄
 
苺ハウスも各所に広がる
 
鮭の煮汁をご飯に炊き込み、イクラが煮えない程度にご飯が冷えたら、鮭いくらを混ぜ合わせる、上に炒り胡麻か刻み海苔を少々振りかけ、亘理の伝統的な「はらこ飯」が完成
 

郷土料理も近年、仙台あたりで「はらこ飯」店が増えたようだ、客に出す為体裁を考えたのか、素朴な郷土料理とは違った形態になってきたようだ、40数年も経てば時代の流れで仕方ないか、盛り付けたご飯の上に鮭とイクラを体裁よく載せてある、偽物と言わぬが郷土料理とは違う、これを混ぜたらイクラが潰れ、ぐじゃぐじゃ飯になってしまう、其の儘食べたら郷土料理と味が違うんだなー

 
椎茸にスパゲッテイだか麺を乗せたはらこ飯、偽物以外何物でもない
 
白いご飯に鮭とイクラを載せた偽物、これを鮭イクラご飯と言う
 
本物はらこ飯に添えるお吸い物、新鮮な真鱈の白子、好みによって2杯酢でも3杯酢でも良い、もみじ卸を添えた刺身はイッピン、白子の天婦羅も美味い、我が家の近くで新鮮なのを買えるのは、角上魚類しかない
 
白子汁、白子から良い出汁が出るので、出汁はいらない、単純に葱を添えれば素晴らしいお吸い物ができる、邪魔にならない豆腐なども添えていいかもしれないが、白子と葱のシンプルが一番いい
 

三陸沿岸の珍味 海鞘(ほや)

2019-08-11 10:12:27 | 日記
三陸沿岸の人以外は馴染みが少ない海産物と思う
 

 昭和43年に事業拡張のため、仙台へ転勤した。
気候 風土 習慣 人情の違う土地だが、暫くして近所にも友達ができた、仙台湾で鱧釣りをしたり、仙台一番の繁華街で宴会をしたり交友を重ねた。

 その宴会の料理の中に、小鉢に盛られた、幅1cm長さ5cmくらいの切り身が10片程、胡瓜の細切りと紅葉おろしが添えられている、今まで見たこともない料理、地元の人に聞くと「海鞘(ほや)」だという、「なんだそのほやというのは」と聞き返す、東京の私鉄に「保谷(ほうや)」という駅があるが、ほやなんて知らねー、云ってやる、海鞘を知らないのかという顔をされた、関東以西の人はあまりしらないですよねー。

 この海鞘は宮城県を中心に三陸海岸で収穫できる、関東の人には貝なのか、魚なのか海鼠(ナマコ)のようなものなのか、さっぱり見当がつかない。
 地元の人が「マア食ってみろ」とい云う、二杯酢に浸かった肉片を恐る恐る食べる、烏賊とは違う歯触りと弾力が有り、海の香りと少し甘みを感じるが、なんとも言い難い癖が有る味、初めてだし2切れほどで止めた。

こんなグロテスクな、海鞘だの海鼠を最初に食った原子人は相当勇気があったと思う。

 
 茶褐色の比較的かたい殻に覆わ れ、いぼいぼが有り、頭の部分には2つの突起がある、下の方には髭だか根だか分からぬ足がある、これが岩に取り付き群れを成して生息しているようだ、自分では実際の生態を見ていないので確たることは言えぬ。
形容、味をもって地元の人は、「海のパイナップル」と言っている、パイナップルには似つかわしくない、グロテスクな生物だ。
 
違う角度から見ると上に突起が2つある、明らかに+模様を描いている、これが給水口で反対側に有るのが  マイナス(-)を描いているこの突起が排水口だ
通人はこの排水口の切り口から、体液を生で飲む、これがイッピンと言うが、小生海鞘が好きでもそれはできない。
 
かたい殻を二つ割にしてもいいし、半分切って中身を出すもいい、綺麗なピンク色した肉に包まれ内臓がある、この内臓をきれいに洗い流し、適宜な幅に切ったものが海鞘の刺身だ。
 
きれいなピンク色の切り身を二杯酢に浸し、どうゆう理由か知らぬが、海鞘料理には必ず胡瓜が付く、その理由小生知らず。
 
同じように胡瓜が付く、三陸若芽が付いたり、紅葉おろしがあしらわれたり、店によって添え物も違ってくる
 
海鞘も炒めてスパゲッテイの具になったり
 
 
炊き込みご飯になったり、用途も広がってきたようだが、海鞘は刺身が一番
 

仙台湾で鱧(はも)釣り

2019-08-02 13:50:27 | 日記
鰻 穴子 鱧 八目鰻 みんな鰻の仲間?
 

以前自分では、穴子と鱧(はも)は同じ魚で、地方によって呼び名が違うのかと思っていた、だが同じ鰻目だが違う魚だった、鰻 穴子 八ツ目鰻 と同族がいるが一番獰猛か、大きな口に鋭い歯が内向きに生え、一度噛みつくと中々離さない。

昭和40年代から50年代仙台に赴任していた、近所にも友達が出来、「今度仙台湾へ鱧釣りに行かないか」と誘われた、初めての事だし二つ返事で連れて行って貰った。

鱧は日中岩陰や草場に身を潜め、夜 餌を求めて動く夜行性、仙台湾は直ぐ近く、日が暮れて明かりを灯し湾内へ漕ぎ出す、鱧を釣る時は明かりは絶対禁物、明かりがあると鱧は寄ってこない、星明かりの中で鱧釣りが始まる。

1m程の竿にタコ糸を結び、釣り針は付けず、先端に烏賊の切り身を結びつけて釣る、糸の長さは8~10mくらいだったろうか、海底につくと糸が弛むので底に付いたのが分かるが、何せ真っ暗闇、真っ暗闇でも目は慣れてくるものだ。

糸を垂らして暫くすると、竿を持って行かれるほどの強烈な引き、竿を離して糸を必死に手繰り寄せ、鱧が見えたら船底へ上げる、釣り針がないから上げれば鱧が餌を離し釣り上げ完了。

鱧釣りに行く前に友から注意を受けていた、サンダル 裸足は危険長靴を履いて来いと、納得できた、大きな口鋭い内向きな歯、噛まれたら大きな怪我をする。

餌に噛みついた鱧は、内向きの歯で引っ張れば引っ張るほど深く噛みついてくる、手繰る糸を一瞬でも緩めたら、鱧は食いついた餌を離してしまう、初めは逃げられる事が多かったが、慣れて来たら面白いように釣れた、港で船底の鱧を数えたら120匹を越していた。

4人で行って等分に分けようと言うが、捌き方も食べ方もわからず、15匹貰い、近所の魚屋へ裁きを依頼したら、家では鱧を扱った事がないと断られ、丁度その時仙台の北 泉市に家を新築し植木を植えたので肥料に埋めた、なんとも勿体ない話。

 
 
鱧の鋭い内向きの歯、小骨が多く骨切りして湯引きした鱧に梅の叩いたのか 酢味噌で食べたら堪らない、酒がすすむ
上のグロテスクな頭からは想像できない珍味、骨切りし、湯引きした鱧
 
鰻はご存知の通り、鋭い歯もなく、蒲焼にしたら最高、鰻の血には毒があり、調理中誤って血が目に入ると、半日くらい視力減退と痛みを感じる、あとは平常に戻る、ふぐ毒ほど強烈ではないが、60度で5分も熱すれば毒気は消える。
ある文書で、毒のある鰻の刺身は何処にもないと書いていた、少し勉強不足ではないか、浜名湖周辺は鰻屋が多い、「鰻の刺身あります」の看板が目に付く、自分でも食べたが、脂がのって、肉は歯ごたえがあり、静岡産 わさびが添えられていた気がする、蒲焼と違ったうまみがある、随分昔の話
鰻重もこうなるとちょっと寂しい
 
穴子 癖がなく煮穴子か天ぷらがうまい
 
八ッ目鰻、他の鰻科と違って口は吸盤状、目の下に7つの斑点があり、目と斑点7つで八ッ目と言うのか、食べると目に効果があると聞いていた、蒲焼で食べさせてくれるが、鰻より皮が厚めで、肉は弾力があり歯ごたえがある。
八ッ目鰻の老舗が巣鴨地蔵通りに在る、戦前小生子供の頃友達と巣鴨地蔵通りによく遊びに行った、その頃から八ッ目鰻の「にしむら」が有った、100年以上の老舗だ、都内には八ッ目鰻専門店はあまりないと聞く。
店の前にガラスの水槽に八ッ目鰻を飼っていた、ガラスに八ッ目鰻の吸盤がたくさん吸い付いているのは、子供心にちょっと不気味だった