日本庭園こぼれ話

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夏の庭・吉田家住宅(無名舎)・・・京都市(改編)

2022-09-20 | 日本庭園

今年は、全国的に猛暑が続いた夏でしたが、周囲を山々で囲まれた京都の夏の暑さは、昔から有名です。それ故に、そこには猛暑をしのぐ様々な創意工夫が見られます。例えば、町家ではは・・・。

代表的な町家の一つ、吉田家は、明治42年の建築。昭和24年まで、白生地、染呉服を扱う商家として栄えた典型的な表屋造りの京町家ということ。

中に入ると、店舗棟、玄関棟、住居棟が一列に縦に並び、その間に「坪庭」と「座敷庭」。左脇の細長い空間には、表戸口から裏口まで抜ける石畳の「通り庭」があり、そこに台所があります。

(上: 「通り庭」。通行の用を満たし、風も通り抜ける)

その台所もまた、端から井戸、炊事場、竈(かまど)、戸棚が並ぶ、徹底した縦列構造で、まさしく「うなぎの寝床」。このように間口が狭い理由は、町内から出す祇園祭りの割当金額が、昔は間口の幅によって決められていたからとも言われています。

夏の装いの部屋は、障子の代わりに簾戸がはめられ、畳の上には、パナマ材で編んだ「網代(あじろ)」が敷かれて、足触りがヒンヤリ。

 

(上: 奥行きのある京町家の薄暗い室内に、光と風を誘い込む坪庭)

「坪庭」は、周知のように、奥行きのある住居に採光と風通しをもたらすための庭。従って、樹木は少なく、この家の坪庭の植栽は、シュロの株立ちとわずかな下草のみ。他には石燈籠と、商売繁盛の願いをこめて?小判型の手水鉢が、シュロの足元に据えられています。(下の写真)

 

奥の「座敷庭」もまた、建物に囲まれたわずかな空間ですが、モッコク、ツバキ、マキなどの常緑樹と、鶴と亀に見立てた石で構成されています。面積の割に要素が詰まっているにもかかわらず、すっきり感が印象的。

 

(上: 狭い空間に庭園の構成要素が詰まっているが、すっきりまとまっている座敷庭)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(上: 座敷庭の足元の構成。左手前が鶴石)

 

それにしても、表通りはジリジリと暑かったのに、内部の涼しいこと。昔から育まれてきた、京都の暑い夏を過ごすための工夫。温暖化が懸念される現在にあって、移りゆく季節とともにある住まい方は、私たちに一つの方向を提示しているように思われました。

 

※吉田家住宅(無名舎)の見学は、要予約です。
問合せ: ☎075-221-1317

また、京都市観光協会の主催で、夏の特別公開として、期間限定で公開されることもあります。

 


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