日本庭園こぼれ話

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Random Talks about Japanese Gardens

京都・紅葉の中の名園(1)=無鄰菴庭園(改編)  

2021-10-20 | 日本庭園

明治以降の庭を語るのに欠かせない造園家が、近代造園の先覚者と呼ばれる小川治兵衛・通称「植治」です。そして小川治兵衛を語るのに欠かせないのが、その作風を方向づけた「無鄰菴庭園」です。

「無鄰菴」は、明治27~29年(1894~96)に、時の元老・山縣有朋が、造営した別荘で、南禅寺の近くにあります。その名の由来は、有朋が出身地の長州(現・山口県)に建てた草庵が、「隣家のない」閑静な場所であったことに因んでいるということ。

敷地の大半を占める庭園(約3000平方メートル)は、有朋自らの設計・監督により、小川治兵衛が作庭し、彼の造園家としての地位を確立した代表作といわれるものです。

(上:歴史の新しい息吹が作庭にも反映されたかのような無鄰菴庭園)

私が愛読していた岡崎文彬編著『造園事典』には、この庭園が、次のように解説されています。「(琵琶湖)疏水に隣接した三角形の敷地を巧みに生かし、東山を背景とし、水の取水口には三段の滝を落とし、建物前面に開けた広い芝生地に、幅広くあるいは狭く、幾条にも流れを走らせて、明朗な景観にまとめている」。

写真では、よく見えませんが、上の写真のV字形の空のところに東山が借景として取り込まれています。

庭園に足を踏み入れると、緩やかな起伏のある芝生の庭に、さらさらと耳に心地よい小川の囁き。前方を見れば、木立の向こうに連なる東山連峰。

そこから、順路に従って、庭の奥に進めば、苔の緑が美しい雑木林の小径から、池のほとりに出ます。

入口付近からの眺めが、開放的な洋の風景だとすれば、そこは、樹木に囲まれた和の風景。澄んだ水面に映る木々の葉の美しさが印象的でした。

 

 

 

 

 

 

 

(上: 自然樹形の雑木が多く、紅葉が美しい)

小川治兵衛、37歳の作品です。


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