「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

なでしこジャパン佐々木監督、勝負の世界に生きる難しさ

2016年03月05日 13時37分44秒 | サッカー・ユース年代、女子
なでしこジャパンのリオ五輪出場が絶望的になった。NHKさんは地上波ゴールデンタイムに放送するという気合の入れようだったが、完全に裏切られた気分だろう。

これから佐々木監督に対する風当たりが強くなるだろうが、監督自身は淡々と身を引くに違いない。勝てば官軍、負ければ賊軍。

今回のアジア予選敗退、それは直前に絞り込んだ20名の登録メンバー選考の段階で、針が敗退に振れたといえる。

出場権獲得が絶望的になった今書くのは後付けのそしりを免れないが、正直、私は20名の選考結果を見て「こりゃダメだ」と思った。

つくづく思うのは「過去の成功体験を否定する難しさ」と「引き際の難しさ」だ。

佐々木監督の目から見れば、ふるい落とした選手たちは、まだまだ厳しい試合経験が足りないと映ったのだろう。しかし、若手は伸びていく一方、ベテランの力は落ちていく。

昨年のW杯も決勝まで駒を進めた経験値の高い選手たちに対する信頼は絶大なものだろう。けれどもライバル国の選手たちとの相対比較で言えば、ライバル国の選手たちは世代交代などで伸びていて、我がなでしこたちは同じメンバーであっても力は衰えている。その力の差は、どこかで交差する可能性が必ずある。

力の差を交差させないようにするには、こちらも若手への世代交代を図り、いわゆる底上げしなければならない。それをしなかった今回、ものの見事に力の交差が起こった。勝負というのは相手のあることで、その力関係は相対的なものだ。相手も力が上がったり落ちたりする。こちらもそれは同じだ。

チーム作りというのは、経験豊富な選手の力も必要だが、大舞台を経験する毎に伸びていくような勢いのある選手も必要なのだ。

経験値、経験値といって、いつまでも世代交代しなければ、育つものも育たなくなるばかりか、次の数年間は、なでしこ全体の力がガクンと落ちる時期を作ることになる。

育てながら勝つ難しさがあるのは確かだが、監督自身が世代交代を図れない場合、通常は監督交代によって図られる。

日本協会は、多少の世代交代は図ってくれると思って続投させたと思う。まさか、これほど世代交代をせず、過去の成功体験にしがみつくとは思わなかっただろう。それもまた協会の見通しの甘さと言われてしまう。

佐々木監督の引き際という意味では、晩節を多少汚して引くことになる。五輪本大会で十分な結果が残せない可能性ぐらいは想定していただろうが、まさか本大会出場権を失ってしまうとは思わなかったのではないか。

誰しも、そんな可能性を感じて監督続投を引き受けたりはしないだろう。それが引き際の難しさというものだ。

引き際という点では、同じなでしこジャパンの澤穂希選手の引き際の鮮やかさと好対照をなすことになった。

もはや、なでしこジャパンの絶対的レギュラーとは言えなくなった澤選手だが、今回、敗退が決定的となって「やはり澤選手がいなかったからではないか」という声が相当あがることだろう。

今回、五輪出場権を逃したからといって、佐々木監督が日本サッカー史に刻んだ燦然と輝く業績は少しも価値が下がるものではない。どのチームにも浮沈はつきものなのだ。

むしろ、日本協会としては、さきほど述べたように、このあと数年間落ち込むことが必至のレベルをどの程度の落ち込みで済ませられるか、そのリカバーに全力をあげなければならない。

幸いリトルなでしこには、2014年U-17世界選手権に優勝した世代がいる。常識的に考えれば次の監督の仕事は、この世代をどうフル代表に引き上げ育てるかであろう。

1999年、ワールドユース決勝まで進んだゴールデンエイジ、小野伸二、稲本潤一、高原直泰らの世代を当時のトルシエ監督は大胆に引き上げ2002年W杯の主力にした。すでに日本サッカーにも手本にできる歴史がある。

なでしこジャパンを取り巻くアジアのレベルの高さ、今回、あらためて思い知った。豪州も中国も前回オリンピックには出場できなかったチームだ。明日は我が身ということだったのだ。

あと2試合の戦い方が非常に難しいとは思いますが、出場権うんぬんを抜きにして悔いのないように戦っていただければと思います。

宮間キャプテンはじめ選手の皆さん、私たちは最後まで応援します。

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