「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

ハリル監督年頭インタビューを見たあとに「やべっち」を見るギャップ

2017年01月02日 18時39分30秒 | サッカー選手応援
毎年元旦の夜は、NHK-BS1で日本代表監督へのロングインタビュー番組が放送されます。今回の放送は、じっくりと見させていただきました。(夜11時からの放送ですので、もちろん録画しておいたものを、さきほど見たのですが)

昨年9月からの最終予選5試合をなぞる形で振り返った内容ですが、いろいろと濃密な話でした。

5試合のいろいろな局面で監督が打った手が紹介されました。ちなみに今回のインタビュアーはサッカージャーナリストの田村修一さん。

サッカージャーナリズムに詳しい方はよくご存じだと思いますが、私は、田村さんが日本人で唯一「バロンドール」の投票権を持つ方だということを初めて知りました。

スゴイですよね。彼を一躍有名にしたのが「オシム語録」という著書だと思います。番組でも「オシム元監督との親交が深い方」と紹介されました。

彼がフランス語でインタビューできたことで、通訳というフィルターがなくなり、ずいぶんハリル監督の話を引き出せたのかも知れません。

ここまで書きましたが、なにぶんお正月、ままならない事情で中断と相成りまして、続きは明日、3日に引き継ぎます。よろしくお願いします。


ただいま3日午前11時、ふたたび書きます。

さて、ハリル監督がいろいろと打った手、要約するとこんな内容だったと思います。
①ピッチ上で皆んなで声を出し合い、自分たちで話し合ってどうするか決めなさい、と指示した。
②GKの川島永嗣選手を招集した。彼は、声を出してチームを鼓舞してくれる人であり監督とフランス語でしゃべれるためチームメイトとのパイプ役になってもらうこともできるため。
③アウェーのオーストラリア戦での戦術、自陣ペナルティエリアあたりでの空中戦やファウルによるセットプレーの機会を極力避ける手を打った。
④原口選手の成長と能力に着目、監督自身がFWとして身に着けたスキルを原口選手に伝授した。

それぞれに説明が必要です。
①ピッチ上で皆んなで声を出し合い、自分たちで話し合ってどうするか決めなさい、と指示した。
ハリル監督は、合宿での練習時に、声をかける、話しかける、指示の声をだす、といった声出しの、あまりの少なさに困り果てたといいます。

意外でした。チームで声を出す必要性を百も承知の選手たちの集まりで、こんなことあり得ないと思っていたことが現実だったとは・・・・。

これは、ある意味日本人の特性かも知れません。

海外チームなどに加入した日本人選手は、ふだん物静かなタイプだったとしても自ら積極的に声を出しチームメイトに溶け込む努力をしなければ、チームの一員になれないことを知っているので、所属チームでは意識して声を出していると思います。

でも、そういう必要のない代表チームでは、むしろ自然に声が出ないでしまう。そこが日本人らしいところだと思うのです。

一方、国内組、所属チームではトップクラスなわけで、自分が年長者であれば若い選手たちをいじるように軽口も叩けますし、なんといっても一緒にいる時間が長いという気やすさがあります。

でも代表に呼ばれれば、やはり海外組に一目置くスタンスになり、また一緒にいる時間がそう長いわけではないので、それほど気やすくはなれないものです。

若い国内組の選手は、年上でもありリスペクトの対象でもある海外組の人たちに、それほど気やすく声をかけられるものではありません。

ハリル監督は、もっと年長者が若い選手たちに声をかけ励まし、気持ちをほぐしてあげなければならないと言っていました。

そういうことを積み重ねていかないと、ピッチの上で自分たちの考えを伝えあい意思を統一して試合に臨み、時と場合に応じて判断と決断で試合を制することができないというわけです。

ハリル監督が、その特効薬にしようとしたのが「ピッチ上で皆んなで声を出し合い、自分たちで話し合ってどうするか決めなさい」という指示でした。

放送では、その効果があらわれた一例として、第3戦のイラク戦、同点のまま後半終了近くになってDFの吉田麻也選手が前線にあがったままプレーした場面をあげていました。

これは監督からの指示ではなく、選手同士で決めた策だそうです。アディショナルタイムに入り吉田麻也選手はボールをキープしてCKを得ました。最後のワンプレーと思われたCKのこぼれ球を、山口蛍選手が糸をひくようなボレーシュートを放ち、ものの見事にゴールに突き刺しました。

劇的な勝利でした。選手たちが自分で考え決めて行動する、それが見事に結実した場面であり、選手たちが再び自信を取り戻した瞬間でもあったようです。

②声を出してチームを鼓舞してくれる人であり監督とフランス語でしゃべれるためチームメイトとのパイプ役になってもらうためGKの川島永嗣選手を呼んだ。

これも①と似た問題意識から出ている対策だと思います。川島永嗣選手の語学力は抜きん出ているとの評価がもっぱらです。おそらくハリル監督も彼の語学力には舌を巻いているのでしょう。

川島永嗣選手の素晴らしいところは、チームを鼓舞できるその声出しにもあります。最近は代表での出場機会が減っていることもあり「川島のドヤ顔」がアップになることも少なくなりましたが、その声と表情がどれほどチームに安心感を与えてきたか。

通訳以外に監督の考えをチームメイトに咀嚼して伝えてくれる選手の存在があるのは、監督にとっても選手たちにとっても貴重なことです。

③アウェーのオーストラリア戦での戦術、自陣ペナルティエリアあたりでの空中戦やファウルによるセットプレーの機会を極力避ける手を打った。

これがハリル監督の監督たる所以(ゆえん)と言えるでしょう。アウェーのオーストラリア戦、4戦目にして迎えた難しい試合です。

日本代表より平均身長で5センチ上回る高さ、屈強なフィジカル。自陣近くでファウルを犯してセットプレーを相手に与えては失点のリスクが格段に高まります。そういうリスクを避けるにはどうすべきか、日本代表はそのお手本のような守り方で、オーストラリアの高さをほぼ完ぺきに封じ込めました。

基本的には後ろに2ラインを作り、そのラインを常に高く保つ。しかしラインの裏をつくパス出しの出どころもキチンと抑え、GKとDFの間にボールを落とさせない。ここで監督が常々口にしている「デュエルで勝つ」が必要となります。

攻めの人数が少ないので、中盤でボールを奪った時は、あまり手数をかけず、すばやくカウンターに移る。ここでは監督が常々口にしている「縦に速く」と「切り替えて全力疾走」が必要となります。

原口選手のゴールは、そういう意思統一のもとに生まれたゴールであり、日本はアウェーで限りなく勝利に近い戦いをしたわけです。

選手同士の密接なコミュニケーションがとれていないと、高いラインはほころびを見せかねません。ここでも選手たちは監督への信頼と自分たちへの自信を深めていったといいます。

④原口選手の成長と能力に着目、監督自身がFWとして身に着けたスキルを原口選手に伝授した。
ハリル監督の胸には常に「絶対的なストライカーが欲しい」という思いがあるようです。そしてないものねだりをするのではなく、現時点でもっとも可能性の高い選手を見出し少しでも確率を高める。そこで原口元気選手に白羽の矢を立てたわけです。

もともと小学生からプロ契約するまで、絶対的なストライカーだった原口選手のこと、ハリル監督からより高いスキルを伝授されて、その能力が再び花開きつつあります。

スタメン出場を果たした第2戦以降、4試合連続ゴールを継続中です。彼は単にゴールをあげ続けているだけでなく、チームで最も多くの全力疾走をしている選手としてハリル監督も高く評価しています。

ハリル監督へのインタビューの最後は、日本サッカーがめざすべきスタイルについてでした。パスをつなぐバルセロナ型がここしばらく日本サッカーのモデルとされてきましたが、ハリル監督は明確に否定しました。

そうではなく、守から攻へのすばやい切り替え、それはターンの鋭さとか、守りの全力疾走を一瞬のうちに逆方向への全力疾走に切り替えるスプリント力に磨きをかけ、ワンタッチプレーで連携するという日本チームの得意な形で、すばやく攻め切るスタイルにこそ日本サッカーのアイデンティティがあるといいます。

ただ単に走行距離数をあげるのではなく、走りの質、ここぞという時に守から攻に切り替え、攻から守に切り替えるという質を高めていく、そのためにスプリント回数はいまより2割アップさせたいといいます。

私は、このハリル監督の目指すサッカーを実現させるためにも世代交代が必要だと思います。今回のインタビューでは、特に世代交代については話題になりませんでした。けれども、スプリント回数を2割あげていくためには、原口選手より下の世代がスタメンに多く名前を連ねなければ難しいと思います。

11月の最終予選第5戦サウジアラビア戦は、それを証明した試合です。これからは、ことさら世代交代、世代交代と叫ばなくても、自然の流れでそうなっていくだろうと思います。

インタビューの締めの話しとして「ハリル監督の夢」という話題になりました。ハリル監督はとてもわかりやすい言い方で「夢」を語りました。

昨年のリオデジャネイロ五輪で多くのメダリストが誕生したことで、銀座でのパレードが実現しました。ハリル監督は「我々もロシアW杯で、これまでの成績を超える良い成績をあげることができれば銀座でのパレードができるかも知れません。それを夢見てやっていきたいと思います」と。

夢を託せる監督の話でした。ハリル監督とともに銀座のパレードを夢みたいと思います。

思い起こせば3ケ月前の10月、私の書き込みは「ハリル監督の後任監督」の話題でした。第3戦のイラク戦、後半アディショナルタイム、山口蛍選手の劇的ゴールで辛くも命脈を保った日本代表を、これからも託したいという気持にはなれませんでした。

このイラク戦で、選手たちが自信を取り戻しつつつあり、監督もチームの一体感に少しづつ手ごたえを感じ始めた時期にあたります。

チームの内側の変化をなかなか読み取れない外野席とのギャップが漂っていた1ケ月といえるでしょう。監督更迭問題で世間が騒々しくなる時というのは、多くの場合、チーム内部の状況変化が外側から見てわからない時です。

チームに生じていた問題が処理されたり課題が解決されたのに、外側からはそれがわからないで騒いでしまう。メディアを通じてしか情報を持たない私たちまでが、それに踊らされて的外れな論陣を張ってしまうのです。

気をつけなければいけないことですが、監督更迭問題といった話になると、一億総ヒステリー気味に感情的になってしまいます。

ですから、こういった番組で実情を知って、キチンと私自身の言動も軌道修正していく必要があります。あらためて、その思いを強くした次第です。


この「新春ハリル監督インタビュー」のあと、録画しておいた「やべっちFC新春スペシャル版」を見ました。

ゲストに清武弘嗣選手、原口元気選手、槙野智章選手、太田宏介選手、豪華メンバーといえるでしょう。そしてラブラブ中の長友佑都選手を「おかっち」が訪ねる企画もありました。

ただ、ハリル監督インタビューを見た直後に「やべっち」を見るのはお勧めできません。ギャップあり過ぎです。

ですから最後まで見ていません。やはり「スパサカ」とかとセットで見るほうがいいようです。
「やべっち」の内容を楽しみにしておられた方、申しわけありません。そのうち書くかどうかもお約束できません。(が、なるべく書くように努力します) 13時57分完了

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