中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,231話 言動の責任は自ら負わなければならない

2024年09月11日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「口や手を出して何の責任も負わないような人には、どうかならないでほしい」

これはNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」の先日(9月5日)の放送の中で、主人公(虎子)の娘(優未)が義理の姉(のどか)を蹴り飛ばした後に、家を飛び出し駆け込んだ先の法律事務所で虎子の仕事仲間らに不満(蹴り飛ばした理由)を打ち明けた際に、諭された言葉です。

蹴り飛ばしたことを謝りたくないという優未に対して、虎子の仕事仲間らは「口や手を出したりするということは、変わってしまうってことだけは覚えておいて欲しい。その人との関係や状況や自分自身も・・・その変わったことの責任は自分が背負わなければければいけない」とも伝えたのです。

さて、このところ連日兵庫県知事のパワーハラスメントの疑いにかかる告発文書が出された問題が報道されています。知事は「重く受け止め、反省すべきところは反省する」と述べる一方、辞職の要求には応じない考えを示していることも報道されています。知事が辞職しない理由には様々あるようですが、これまでの流れを見ている中で最も私が気になっているのは、ここまで大きく信頼を失ってしまった組織のトップが、今後リーダーシップを発揮できるのかということです。

リーダーシップを発揮するためには人心の和が不可欠ですが、そもそも人心をつかむためには信頼される必要があります。この信頼とは、人の「言葉、行動、姿勢」を他者が見た結果、人間性や習慣といった目に見えないものに対して期待したり、その期待に応えてくれるだろうと当てにしたりする気持ちのあらわれではないかと私は考えています。そして、信頼は日常的な振る舞いを周囲がプラス評価をすることで、徐々に積み上がっていくものだとも思います。

しかし、こうして時間をかけて積み上げた信頼も、ちょっとしたことで簡単に崩れてしまうものであるということも、また確かだと思います。信頼を築くのには時間がかかりますが、崩れるのはあっという間だということです。

これに関連して、新入社員、若手社員を育てていく中で「上司が後姿を見せても、なかなか部下は育たない」というように感じている上司もいるかと思います。私が若手社員の研修などを担当させていただく中で感じるのは、上司としてお手本としてほしいと思うところはなかなか伝わらなくても、逆にあまり手本にしてほしくないようなところについても、案外しっかりと観察しているように感じます。

このように考えると、信頼を失った(手本にしてほしくない行為などをした)人が周囲にプラスの影響を与えるということは簡単にはできないということになります。

今回の兵庫県知事の例を見るまでもなく、法的に問題がある行為はもちろんのこと、余りに一般とかけ離れたような言動や行為というものは、周囲との関係を(大抵の場合は悪い方へ)変えてしまうということです。そして同時に様々な事柄も停滞させてしまうこと、そしてその責任は自ら負わなければならないということを、自戒の念を込めて認識を深めなければいけないと考えています。

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第1,230話 最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打つ

2024年09月04日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

先週から長時間にわたり各地に大きな被害をもたらした台風10号の到来を踏まえ、JR東海は新幹線の3日間の計画運休をしました。

JR東海によると、計画運休は台風などの影響で雨や風が広範囲で長時間にわたって規制値を超えることが予想される場合に安全のため実施するとのことで、2018年9月に初めて行われて以降、度々実施されてきています。今回は9回目であり、3日間連続での実施は初めてということですが、一方で多くの利用者に大きな影響を与えたことも、連日報道されていました。

さて、その台風のさなかの8月29日と30日に、私はある企業の研修を担当させていただいていましたが、その受講者は全国各地から集まるものでした。台風の接近が予想されていた研修1週間前位の時点では飛行機での移動ができない受講者が出ることも想定されたため、オンラインで実施することも検討されました。しかし、台風の進路が予想よりも西へ変わり、また接近も遅くなったことなどにより、無事に当初の計画通りに対面での研修実施が叶ったのです。

対面での研修が実施できたことで、参加した受講者の間では懇親会も含めて活発なコミュニケーションがとられ、受講者同士の結束が高まるなど対面の研修ならではの効果がたくさん得られたのではないかと感じています。一方で、東海地区から参加した受講者は新幹線の計画運休により帰途は足止めとなってしまい、帰宅が3日間遅れるなど前述のように大きな影響を受けてしまったのです。

日ごろ、私は突発的な事柄には先手を打つことが重要だと考えていますので、自身でも出来得る限り先手を打って行動するようにしてきました。先手を打つことで、突発的な事柄もある程度回避ができると考えているためですが、今回のような台風や先日の南海トラフ想定震源域で発生した地震などの自然災害に対しては、先手を打っていたとしても自ずと限界があるのも確かです。

今回のJR東海の計画運休は、運航を続けることで大きな被害が発生することなどが予想されたからこその先手策であり、安全を第一に考えなければならない鉄道会社としてはやむを得ない判断だったと言えるのではないかと思います。しかし同時に、そのことによる様々な影響が大きなものとなったこともまた事実であり、今後も同様な事態の発生が予想される中では、とても難しい問題です。

今夏の平均気温は昨年と同様に、平年と比べ1.8度も高くなっているとのことです。今回の台風にも地球温暖化(気候変動)の影響があるという報道も目にしましたが、温暖化をなかなか止められない状況の中では残念ながらこれまでにはなかった、予測がつかないことが起こることを想定して備えをしておかなければならないわけです。

今後も突発的な事柄が頻繁に起こりうることを覚悟し、仕事でもプライベートでも最小限のリスクで乗り越えられるように先手を打って行動することを改めて肝に銘じました。

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第1,229話 営業成績を上げられる普遍的な方法とは

2024年08月28日 | コンサルティング

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「たこ焼き屋さんを始めませんか?」、「ゴルフ事業を始めませんか?」

これは、弊社のホームページの問い合わせフォームに届いた売り込みメールの内容です。

人材育成を生業としている弊社がたこ焼き屋やゴルフ事業を始める可能性は0(ゼロ)と言っていいほど低いですので、売り込みとしては極めて成功率が低い営業行為であると感じています。

さて、昨年私は「ザ・ミュージック・マン」というミュージカルを観劇したのですが、そこでは20世紀のセールスの厳しさが歌われていました。内容は、1912年頃にデパートやチェーン等の大型日用品雑貨店の登場や自家用車による生活の変化により、汽車で土地から土地へ移動し商品を売るセールスマンは時代遅れなものになり、セールスが厳しくなったというものです。

営業パーソンがセールスをするということは、古今東西このように簡単なものではないということを、このところ改めて感じています。

今から20年ほど前でも、現在のようにホームページのお問い合わせフォームを使用して営業活動をしたりSNSを駆使したりする営業活動は主流ではなく、電話や郵送やFAX、飛び込みなどが主な営業方法だったわけですから、現在とは隔世の感があります。

しかしどのような手法を使用するにしても、「モノを売る」ということは昔も今も簡単なことではありません。ましてや、現在のように商品やサービスの内容、価格に歴然とした差がない場合には、他への優位性をつけるためにも営業パーソンの技術を磨くということが大切なのではないかと考えています。

弊社では、定期的に営業研修を担当させていただいたり営業パーソンに同行したりするなどして、コンサルティングを担当させていただくことがあります。それらの経験を通して改めて思うのは、「営業パーソンが一律に良い営業成績を上げられるような、簡単かつ普遍的な方法はない」ということです。

営業は実に奥が深く、様々な知識や技術が必要となる仕事です。具体的にはアプローチ方法、実際のアプローチ、顧客との信頼構築、プレゼンテーション(実際の提案)、顧客の拒否反応への対応、クロージングという一連の流れが必要であり、それらを顧客との関係性を維持しながら効果的に行う必要があるのです。

それでは、営業パーソンの技術を上げるためには、どうすればよいのでしょうか。

具体的には、まずは営業に対する動機づけ、タイムマネジメントの訓練、営業パーソンの製品知識訓練、コミュニケーション力等の訓練が必要となります。さらに、個々の顧客の業種や置かれた状況に応じたきめ細かな対応も必要となってきますので、これらを職場でのOJT や研修などで身に付けて行くことが求められます。このように、営業には知識や経験、コニュニケーション力をはじめ、様々な力が求められるものであり、冒頭の例のように人材育成を目的に研修やアセスメントを主たる業務としている弊社へ「たこ焼き屋さん」 を始めませんか?といったような画一的なメールを送り付けてくるなどということは、本来はあり得ないことなのだと考えています。

営業活動はかように難しいものではありますが、同時にその分やりがいがあるものでもあります。営業パーソンの皆さんにはぜひ、頑張っていただきたいと思います。

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第1,228話 部下に自分の言葉で話してもらうことから始める

2024年08月21日 | コミュニケーション

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「部下に何度言っても、言ったとおりにやらないんです」

「部下に伝わらないので、つい『だから・・・!』と感情的に言ってしまうのです」

これらの言葉は、弊社が管理職研修や部下育成研修を担当させていただいた際に、必ずと言ってよいくらいに受講者から相談される内容です。

部下の育成に関する悩みは、古今つきないものだと思います。毎年厚労省が行っている「能力開発基本調査」の最新の令和5年の調査においても、人材育成に問題があるとしている会社は約8割になっています。この数値からも、現場での部下育成が思うように進んでいないことが伺えます。

さて、先日パリオリンピックが終了したところですが、日本選手団の活躍は国外開催の夏季五輪で史上最多となる20個の金メダルを獲得しました。それだけの活躍ができた背景には様々な理由があるのだと思いますが、その一つには外国から招いたコーチの指導があると言われています。

報道された中で私が最も印象に残っているのは、男子バレーボールチームを指導したフランス人のフィリップ・ブラン氏です。各国での指導経験を持つブラン氏は2017年から日本チームでの指導を始め、強豪国とも対等に渡り合えるようになったものの、就任当初は日本人選手との接し方に戸惑いを覚えたといいます。

それについてブラン氏は、「選手それぞれと面談をして、『私は君にこういうプレーを求めている』とリクエストを出したんです。選手たちはみんな『ハイ』と答えていたんですが、まったくプレーが変わらない。最初は通訳が正しくないのかと思いました。私もあきれて、3度目の面談の時には『私の方から説明はたっぷりしたから、今度は私がいったい何を求めているのか、あなたの言葉で説明してください』と言ったら、みんなびっくりしていました。日本の選手たちは心の中では『ノー』と思っていても、指導者の前では『ハイ』と言える。そうした社会になっています。これは私にとって大きな学びでした」といった話をしています。こうした中で、指導してもそれがなかなか生かされず、チームの成績にも結び付かないということが続いたのではないかと思います。

これは、指導が一方的な情報の伝達になってしまっていて双方向のやり取りになっていない状況であり、「はい」と返事はするものの実際は内容がきちんと伝わっておらず理解されていない状況であり、結果として指導にはなっていないということです。

同じように、部下がなかなか育たないと悩んでいる管理職の皆さんは、部下に指示をしたり指導したりする際に、一方的に伝えるだけで終わってしまっているのかもしれません。そして、伝えたことが部下にきちんと伝わったか確かめることをしないままで、部下を指導したつもりになってしまっているように思えます。

自分が伝えたことが相手に理解をされているのかどうかは、まさにブラン氏が行っているように、部下の言葉で語ってもらうことによって、どれくらい伝わったか、理解されたのかを確認できます。ブラン氏は先述のようなコミュニケーションを選手と行うことによって少しずつ信頼関係を築いていき、チームの成績もそれに伴って上がっていったとのことです。

部下が育たない、部下に伝えたはずのことが伝わらないと悩んでいる管理職の方は、この例のように部下に自分の言葉で話してもらうということから始めてみてはいかがでしょうか。

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第1,227話 予定人数を採用することはゴールではなくスタートである

2024年08月07日 | 研修

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「41.5%」

これは、2024年新卒者の採用計画人数に対する実際の充足率です。(2023年「新卒者の採用・選考活動に関する調査」東京商工会議所)

近年、労働人口の減少に伴って採用活動の厳しさが増していることを、報道や企業の採用の担当者から耳にすることが増えてきています。実際に2025年4月入社の大卒求人倍率は1.75倍で、2024年卒の1.71倍から0.04ポイント上昇しているとのことです。小さな数字のようにも思えますが、この数値からは多くの企業において採用意欲が旺盛になっている結果若手の奪い合いとなり、予定通りの人数を採用できている企業がある一方で、中小を中心に希望人数を採用できていない企業があることがうかがえます。その結果、冒頭のように採用充足率が50%を切る結果になっているのだと思います。

こうした状況を受けて、それぞれの企業では採用に繋げるために初任給を引き上げたり、福利厚生制度を充実させたりするなど、様々な取り組みを行っているようです。

実際に、今春ある企業の新入社員研修を担当させていただいた際にも、受講者から「数社から内定を得たけれど、給与の高さでここに入社することに決めた」と話す人が複数いました。また、同様に中堅社員研修を担当させていただいた際にも、「こんなにもらってよいのか」と昇給額に驚いている声を聞いたこともあります。

給与を受け取る側の社員のからすれば、もちろん高い方が良いでしょうから嬉しい限りだと思います。しかし企業側の視点で考えると人材を採用するということはゴールではなく、人材を育成するスタートになるということですから、採用して諸制度を充実してそれで終わりということでないことは言うまでもありません。

では、採用した人をどのように育てていけばよいのか。せっかく予定数の人材を採用することができたとしても、その後にきちんと計画的に育成していかなければ、あっという間に当人のモチベーションが下がってしまい、退職してしまうということにもなりかねないのです。実際、厚労省の調査(令和5年10月20日)によると、新規就職者のうちの2020年3月卒業者の3年以内の離職率は新規高卒就職者37%、新規大卒就職者32.3%と、3年以内に3割強の人が退職しています。

退職理由を調べた調査は複数ありますが、近年注目されている理由の一つに、新人が「自己実現」を強く目指し、自らの成長にスピード感を求めたり、そのためのスキルの習得を急いだりするということがあります。そして、それが短期間で叶わないと他での実現を求めて退職につながってしまうのです。 

実際、私の知人の職場でも入社しても数年以内に退職して他へ移ってしまう例が珍しくなくなってきているそうです。そんなことになってしまっては採用の際やその後のせっかくの取組みも意味がないということにとどまらず、組織の将来にも少なからず影響を与えることになってしまいます。

私はこうした事態を防ぐためにも、組織として採用後の人材育成の充実を今まで以上にしっかり考えて進めていくことが重要になっていくと考えています。本人の希望を踏まえながら短期~長期など期間ごとの目標を定めるとともに、それに向けて具体的にどのように育成していくのか、その過程をはっきり示し本人と共有する。同時に育成の過程で本人が成長しているという実感を味わえるようにしていくことも大切なのではないでしょうか。

労働力が不足していることで事業が拡大できない、回らないという企業の話も最近は少なくなです。そのような事態を招かないために、せっかく採用した人を丁寧に育てていくことが大切だと改めて考えています。

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第1,226話 自身の得意分野ではなく、全体最適で考えるとは

2024年07月31日 | 仕事

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「メゾソプラノやアルトの人が少ないのなら、私はソプラノではなくどちらかのパートを担当するね」

これは、合唱の練習の前に私の同級生が語った言葉です。

以前にこのブログでも紹介したことがありますが、私は毎年「青春かながわ校歌祭」に参加しています。「青春かながわ校歌祭」とは、神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露することを通じて親睦を深めることを目的に行われているものです。

校歌祭は毎年秋に行われるため、各同窓会では初夏頃から練習を開始するのですが、私の母校でも同様に今年もすでに練習を始めています。その際に、今年からこの練習に参加することになった2人の同級生が、自身が歌うパートを決める際に言ったのが冒頭の言葉です。

彼女たちは高校の頃から抜群の歌唱力があり、現在でも地元の合唱団に参加するなど日々活躍しているのですが、そこで担当しているパートはソプラノなのです。

因みに、私の母校は当時神奈川県に7校存在していた県立の女子高の一つで、同窓生は圧倒的に女性が多いので、パートはソプラノ、メゾソプラノ、アルトに分けられています。

それでは、彼女たちが自身の得意パートのソプラノではなく、メゾかアルトで歌うことを希望したのはなぜなのでしょうか。その理由は、すでに参加しているメンバーが歌っているパートが主旋律であるソプラノが圧倒的に多いからです。メゾやアルトはこれまで少数のメンバーが頑張って歌ってくれていたのですが、全体のハーモニーとしては今ひとつバランスを欠いていたわけです。

そこで、歌唱力がある彼女たちは日頃自分が歌っているパートではなく、全体のハーモニーを考えて敢えてメゾやアルトを選んでくれたというわけです。その結果、今年からハーモニー全体の完成度が飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

これは、彼女たちが自身の専門分野に固執する「部分最適」ではなく、全体のバランスを考えてくれた「全体最適」の結果だと思います。

全体最適とは、組織やチームなどが全体として最適化されている状態を言います。組織全体が最適化されると、業務のムダが排除されることにより組織間の連携が強まり、生産性の向上につなげることができるのです。一方、部分最適とは全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方で、組織においては自身や所属部署のことだけを考えて行動すると、部門間で衝突したり壁ができたりしてうまく回らなくなる原因になってしまいます。

そして、このことは会社や企業などに限らず、全ての組織のメンバーの構成においても言えることなのではないでしょうか。組織やチームを全体として最適化するためには、それぞれメンバーがどういう役割を担うのか明確にしておく必要があります。そして異動や退職などでメンバーが入れ替わった場合には、メンバーが担う役割も状況に応じて替えた方が良いケースが出てくるわけです。

先述の合唱のパートの例と同様に、「現在のメンバー構成において、自身はどういう役割を担うと組織全体が最適化されるのか」を考える必要があるのだと思います。自身の得意分野だけを追求するのではなく、全体のバランスとして何が必要なのかを考える視点をそれぞれのメンバーが持つと、その組織は自ずと最適化されていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が母校の合唱のレベルがどのくらい上がるのか、今からとても楽しみにしています。

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第1,225話 何にでも「さん」を付ける人の意識

2024年07月24日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「受講者さんの・・・・」

これは、先日ある研修会社の担当者と打ち合わせをした際に、担当者から何度も発せられた言葉です。私が研修の進め方について説明をした後に、担当者から質問を受けたのですが、その際に「受講者さんが演習を行う時間はどれくらいあるのですか?」と受講者に「さん」をつけて表現されていたのです。それまで受講者に「さん」を付けて表現したことがなかった私としては、その表現に少々驚いたのですが、同時に新鮮に感じたことも確かです。

近年、これまでは「さん」を付けることがあまりなかった言葉に「さん」を付けた表現を聞くことが多々あります。たとえば、派遣社員やアルバイトのことを「派遣さん」や「アルバイトさん」と表現したり、農家のことを「農家さん」と表現したりするのもよく聞きます。また、若い人達の会話の中では彼氏や彼女のことを「彼氏さん」・「彼女さん」と表現するのはもはや普通のことのようです。

この「さん」について、私は本来は人の呼称に付けるものだと思っていたのですが、最近では前述のように会社名や大学名、店舗名に至るまで、何にでも「さん」を付ける人が増えてきたように感じています。このような、いろいろな場面で「さん」付けをする最近の言葉遣いを、皆さんはどのように感じていますか。

そもそも「さん」にはどのような意味があるのでしょうか。改めて広辞苑で調べてみると、「人名などの下に添える呼称。「さま」よりもくだけた言い方。また、丁寧にいうときにつける語」とあり、例として「ご苦労さん」「お早うさん」とありました。

このように「さん」は人名などに添える呼称ですから、先述の「受講者さん」や「派遣さん」などの表現は、本来の意味とは異なる使い方であると考えられます。

それにもかかわらず、「さん」を付けることがこれほど多いのはなぜでしょうか。

これにはいろいろな理由があると思いますが、一つには「丁寧にいうとき」という意味合いからの、相手に対する配慮の現れなのだと考えられます。相手に対する尊敬や丁寧さ、または親しさを表現するために「さん」を付けているということもあり、今の若い人たちがさん付けを多用するのも分かるような感じがします。

また同様の意味で、ビジネスパーソンが会社名などに「さん」を付けるのも、取引関係や競合関係など仕事上で関係がある会社であることを踏まえ、会社を人物のように捉えて敬意を示して丁寧に表現しているということです。

このように、「さん」は相手に敬意を表す言葉としてとても大切な表現ではありますが、とは言え何にでも付けるというのも、またちょっと違うような気がします。こちらは丁寧に言ったつもりでも、相手に違和感を持たせてしまうような言葉遣いをすることは、少なくとも交渉事などをはじめとするビジネスシーンなどでは、できるだけ避けるほうがいいと考えています。

最近では、ちょっとした言葉遣いが大きくニュースで報道されるなどの例もあり、言葉を適切に使うことは簡単なようで実は結構難しいものだなと思います。また、言葉そのものもその時々の社会情勢などを反映しつつ、時代時代で意味合いや使い方などが移り変わっていくものだと思います。だからこそ「今ここでこの言葉を使うのはおかしくないかな」という視点もあわせて持ち続けていきたいと考えています。

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第1,224話 役職定年廃止による影響は如何に

2024年07月17日 | キャリア

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「上司の役職定年が延長されなければ、退職しようとは考えなかったです」

これは、ある企業に20年以上勤務し、監督職として働いていたAさんが自らの退職を決断した際に、その理由として私に語ってくれた言葉です。私はAさんが勤める企業の研修を以前から担当させていただいていたため、Aさんとは何度かお会いしたことがありました。Aさんの研修中の発言や研修に取り組む姿勢を見ていて、前向きに仕事に取り組む人であると同時にリーダーシップもある人ではないかと考えていましたので、将来が楽しみな逸材だと感じていました。

そのAさんが冒頭のように今回、退職を決断したということなのです。話によると、Aさんは自分たちの世代が管理職になったら「今よりも、もっとよい会社にしたい」と考えていたとのことで、彼なりの夢があったとのことです。そしてそれを実現するためには、監督職よりさらに大きな権限が必要となることから、早く管理職になってプラスの影響力を発揮したいと考えていたそうです。しかし、この度会社が役職定年の廃止を決めたため、上の世代が会社に残っている以上、会社を変えていくのは簡単なことではないと判断して、退職の決断に至ったとのことでした。

近年、役職定年制を廃止する企業が増えています。パーソル総合研究所の役職定年制導入の有無などについてのヒアリング調査によると、役職定年制の制度があるとした企業は31%、新設した企業は13%、反対に制度廃止が16%、廃止予定が13%、制度なしが28%とのことです。(2024年7月15日 朝日新聞 朝刊)

調査から見えてきたのは、今後も役職定年を廃止する企業は増える傾向にあり、その割合は約6割になるとのことです。役職定年を廃止する理由には、給与が下がることによる役職者の仕事に対するモチベーションの低下、管理職の不足、また労働人口の減少により若手を採用することが難しくなっていることから、労働力の補足などがあると言われています。こうした状況の中では、役職者のこれまでの経験により培われた様々なノウハウを維持できることは、組織とって魅力があることは確かだと思います。

しかし同時に、組織には定期的に人が入れ替わることで次の世代が育つという面や、それによる活性化が期待できるという面があります。先述のAさんの例ように、役職定年の廃止によって組織の新陳代謝が阻まれることになり、人事が硬直化してしまう結果になってしまうことや、次世代を担う人材のモチベーションが低下してしまうなどの弊害が生じる可能性があることも、また事実です。

人件費の抑制や組織の活性化などを目的に始まった役職定年制度ですが、人手不足やモチベーションの低下をはじめとする現在の状況は、制度の導入当初の想定を超えるものになり、企業などでは様々な試行錯誤をしながら、そのバランスを探っている状況だと思います。

今後、役職定年制度がどのように推移していくのかは今の時点では定かではありません。仮になくしていくような流れであるにしても、単純に以前と同じ形に戻すのではなく、どのような形が一番合っているのか、それぞれの企業にはさらなる工夫が求められるのではないかと考えています。

前述の新聞記事でも、各社様々な取組みを既に行っているとのことであり、今後どのような形にまとまっていくのか、引き続き注視していきたいと考えています。

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第1,223話 研修中の休憩は何回、そして何分あるとよいのか

2024年07月10日 | 研修

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「休憩時間の回数を増やしてほしい」、「休憩は10分では短い。電話対応したいので30分にして欲しい」

研修が終わりアンケートを撮った際に、このように書かれることが時々あります。

研修の際の休憩は何回程度が、また1回あたりどれくらいの時間が適切なのか。これは私が研修業界に身を置くようになった30数年前から定期的に話題になってきていることの一つです。

これについては、研修のテーマや時間、研修の進め方は講義中心なのかディスカッションやロールプレイングなどを採り入れるのかなどによって変わってくることから、唯一絶対の正解というものはないと私は考えています。

勤務時間中の昼休みは、労働基準法の定めもあって通常は1時間とることが大多数でしょうが、研修での休憩については、どのように考えればよいのでしょうか。

これにはいろいろな考え方があり、前述のように一概には言えないとは思います。まず休憩を入れる目的を考えてみると、お手洗いなどの用足しのためや、集中力を維持するためなどと言われています。

それでは、人間の集中力が続くのはどれくらいの時間なのでしょうか。集中力が高い人とそうでない人とでは違いがあるかとは思いますが、これを考える際の参考になるのが、ボブ・パイク氏が提唱する「90/20/8の法則」です。

ボブ・パイク氏は、ボブ・パイクグループ創設者・元会長で「参加者主体」の研修手法についての著作があります。(中村文子、ボブ・パイク著「2021年」『オンライン研修ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)。この書籍によると、人が集中をキープして話を聞ける時間は90分、記憶をしながら話を聞ける時間は20分、さらに人が受け身の状態で興味を持って話を聞ける時間は8分とのことです。これに基づけば、研修では長くても90分以内に1回は休憩を入れた方が良いということになります。

振り返れば、私が小学生の時の授業時間は1科目40分でした。中学・高校は50分、大学では90分でした。さらに、社会人大学院に至っては、一コマの授業は180分でした。今にしてみれば随分と長時間でしたから、どれくらい集中できていたのかと考えると自信はありません。

また、同時通訳などは15分程度が限界だそうですし、自治体での研修で手話通訳者がつく時にも、3人位の方が約15分ごとに交替されています。このあたりの時間も、ボブ・パイク氏の説にかなっているように思えます。

以上のことから考えると、研修の途中で入れる休憩は60分から90分に1回くらいの頻度が適切だと考えます。次に1回あたりの休憩時間は、全体のプログラムとのバランスなどによって決めるのが良いと思いますが、通常は10分もあれば用足しやリフレッシュするには十分なはずです。そもそも研修の休憩時間には、営業職の人などが顧客への連絡をするというようなことは想定されていないのです。

そうは言っても、では営業職の人などの研修中の顧客への連絡はどうすればよいのか。その対応についての考え方もいろいろあるかと思います。しかし研修中に顧客へ急いで連絡をしなければならないような状況ができるだけ起こらないように、事前に顧客と段取りしておく、また職場の人にフォローを依頼していく等の対応をしておくことに尽きるのではないでしょうか。

年に何日もないせっかくの研修です。事前準備を十分にして、集中して研修に臨んでいただきたいと考えています。

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第1,222話 ライバルの存在は必要か否か

2024年07月03日 | キャリア

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「AにとってBはライバルなんですよ。たぶん双方が意識していると思います」

これは、先日弊社がある企業の中堅社員研修を担当させていただいた際に、研修終了後にご担当者から聞いた言葉です。

私は以前にもAさんとBさんにお会いしたことがあるのですが、今回研修で再会したところお二人とも実に溌溂とした表情で研修に参加し、演習にも終始前向きな姿勢で取り組んでいらっしゃいましたので、頼もしさを感じると同時に着実に成長されているように感じました。そのことをご担当者にお伝えした際にお聞きしたのが、冒頭の言葉です。

ご担当者のおっしゃるように、AさんとBさんは互いにライバルとして、日々切磋琢磨しているのかもしれません。ライバルとは言うまでもありませんが、競争相手、対抗者、好敵手という意味です。AさんとBさんが普段からお互いに相手をどのように思って仕事をしているのか、直接聞いたことはないので実際のところは定かではありません。しかし共に生き生きとした表情でリーダーシップを発揮しながらグループ演習に参加していましたので、お互いの存在が良い意味での刺激になっているのではないかと想像しています。

私は、様々な企業などの昇格や採用試験の面接官、また研修を担当させていただく中で、Z世代と言われる近年の若手社員の特徴の一つに、「競争心の低下」があるのではないかと感じていました。それは、採用試験の集団討議や研修中のディスカッションの中で、相手を気遣いすぎるあまり自身の発言を控えたり、しっかり話し合わずにジャンケンで結論を出したりするような場面を見ることがしばしばあるからなのです。

しかし、AさんやBさんのような前向きに研修に取組む中堅社員に出会い、その理由の一つにライバルの存在があるとしたら、それはライバルが身近にいることによるプラスの刺激によるものであり、とても素敵なことだと感じました。

あらためてライバルの存在について考えてみると、メリットとしては何と言っても競争心が刺激されるということがあると思います。「負けたくない」という思いが、自身が積極的に努力をする動機づけになるのであり、それによって自身の目標が明確になります。そしてそれが具体的な行動につながり、その結果としてパフォーマンスの向上に結び付いていくように考えています。

しかし一方では、ライバルのことを過度に意識しすぎてしまうと、自身との相対的な比較に囚われてしまい、相手が新たな役割を得たり活躍しているようなことを見聞きすると、嫉妬心を燃やすようなことになってしまいます。それは本末転倒な状態であり、自身のモチベーションやパフォーマンスの低下にもつながりかねないものだと思います。

ライバルの存在にはこのように多くのメリットがある一方、デメリットもあるわけです。ネガティブな感情に陥らないように意識し、ポジティブでバランスの取れた競争心を保ちながらライバルとの健全な競争関係を築き、それを自己の成長や目標達成に向けたモチベーションとしていくことが大切だと考えています。

ライバルとの良き出会いを!

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