中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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経済成長のカギは人材育成

2016年01月06日 | コンサルティング

昨日のテレビのニュース番組の中で、新年恒例の経済3団体のパーティーが開催されたことが放送されていました。

毎年この報道に接すると、いよいよ本格的に新年が始働したのだなと実感します。今年のパーティーでは大手企業のトップ1800人が集まったそうですが、あるニュース番組の「今年の経済成長のカギは?」という質問に対して、いくつかの大手企業のトップがそれぞれキーワードをあげていました。あげられたキーワードはそれぞれ実に興味深いと感じましたが、その中でも私が特に興味を持ったのは、トヨタ自動車の豊田章男社長のキーワードです。豊田社長があげられたのは「人材育成」で、「現場に近い多くのリーダーが即断即決し、先を向いた判断をしていくことが大切」とおっしゃっていました。

番組を見ながら、思わず「リーダーが即断即決していくためにはどういう人材育成が必要なのか、手段はどうするのか」など詳しくお話を伺いたいと思ってしまったのですが、もちろんそれが叶うわけではありません。

さて、厚労省が毎年実施している能力開発基本調査の平成26年の結果によると、正社員に対する「OFF-JT」 に支出した費用の実績が、過去3 年間で「増加傾向」とした企業の割合は24.4%で、これは「変わらない」とした企業よりも少ないとのことです。

もちろん、調査対象の企業とトヨタ自動車では、規模をはじめ様々な状況が異なるのだとは思いますが、上記の結果と豊田社長が「人材育成が企業の成長のカギだ」とおっしゃっているのとでは、随分状況が異なっているように感じます。

また、同じ調査で正社員に対する教育訓練において「OJT」を重視する(又はそれに近い)とする企業割合は73.4%で、「OFF-JT」を重視する(又はそれに近い)とする企業の24.9%に比べ圧倒的に多く、企業の人材育成手法がOJT重視であることがわかります。

言うまでもなく、OJTとは「on the job training」のことですが、例えば管理者研修でOJTが具体的に意味するところを質問しても、きちんと理解していない管理者が少なくありません。

先月、弊社が担当したある大手製造業の管理者研修の中でも、OJTの定義について、グループで話し合っていただきましたが、OJTとは「職場の中の実務と人間関係による育成方法」や「先輩などが担う新人指導法」、また「職場内研修会」などの回答が多く出されていました。

いずれの答えも決して間違っているわけではありません。しかし、これだけでは少々説明が足りないように感じましたので、その回答に至った理由を尋ねてみたところ、「OJTという言葉は日常的に使ってはいるものの正確に習ったことがないし、自ら調べるきっかけがないままに管理者になってしまった。また、OJTは新入社員に対して、2~3年上の先輩社員が行うものだと思っていたので、自分が管理者となった今ではOJTを身近なものとして感じていなかった」とのことでした。

これらのことから、OJTを重要視している企業がとても多いにもかかわらず、実態としてはOJTの意味あいが正確に理解されていないことが問題だと感じています。

豊田社長の言葉のように、今後も企業にとっては「人材」が最大の資源であることは間違いありませんし、同時に人材育成の中心的な手段として引き続きOJTが必要とされると思います。

したがって、「OJTとは何か、具体的にどのように進めていけばいいのか」を個々の社員任せにするのではなく、企業全体で継続的に考え、「共通言語」としていくことが必要だと考えています。

さて、「人材育成」を社名とする弊社では、コンサルティングや研修の際には、必ずOJTの定義をきちんとお伝えしているのですが、私どもでは、法政大学にいらした桐村先生の「人材育成の進め方」から一部言葉を拝借して、「OJTとは、管理・監督者(先輩含む)が部下(後輩)の職務に必要な能力(知識・技能および態度)の向上・改善を目的として、仕事を通じて行う、計画的・合目的・継続的かつ組織的な教育活動」としています。

トヨタ自動車の豊田社長の言葉から、企業にとって人材を育成することは費用ではなく将来への投資であることを今一度考えた年始でした。

(人材育成社)