中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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ビジネス書は不滅です

2016年01月20日 | コンサルティング

本が売れなくなったという声を聞くようになって、もうずいぶんと経ちます。2014年の出版物の推計販売額は1兆6,065億円で、ピークだった1996年の2兆6564億円から約4割減となっています(出版科学研究所の調べによる)。

10年ほど前までは、通勤電車の中で雑誌や文庫本を読む人が多くいました。しかし、今や性別年齢を問わずほぼ全員がスマホの画面に見入っています。また、公共図書館が新刊を何冊も無料で貸し出すから本が売れなくなったという人もいます。

年々売れ行きが低下している書籍の中で、比較的健闘しているジャンルがあります。それは、ビジネス書です。書店のビジネス書のコーナーには、経営戦略やマネジメントといった高級品(?)から、自己啓発やノウハウ本などの実用品(?)まで幅広く並んでいます。新宿や浜松町などのターミナル駅に隣接する大型書店に行くと、ビジネスパーソンらしき人(大抵は中年の男性)が何人か新刊書を手に取っています。

さらに、確かめたわけではありませんが、ビジネス書は電子書籍ではなく「紙の本」の方がはるかに売れているように思います。

本を手に取った時の重さ、目に映るカバーの色やデザイン、印刷された活字、ページをめくるときの紙の手ざわり。そうした様々な「実体」が、パソコンやスマホの画面の上に現れては消える「信号」とは違って、直接体に伝わってきます。本の中に書き込まれた「知識の重さ」を実感できるような気がします。ビジネス書は「本」に限る!と言いたくなります。

さて、小説家の浅田次郎氏のエッセイ「君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい(文春文庫)」を読んでいたら次のような一文がありました。

「思うに、あらゆる書物中の役立たずの最たるものは、いわゆるノウハウ本であろう。自己啓発法だの成功術だの生活の知恵だの、つまり目先の悩みを解決しようとする類の書物ほど無益なものはない。」

そうかもしれません。

しかし、自己啓発法や成功術であってもそのノウハウを活字から得ようとする人たちがいる限り、紙の上に記(しる)された知識は本という形となって残ります。もしかすると、ビジネス書は書籍文化を守る兵卒、将棋の「歩」のようなものかもしれません。

「歩のない将棋は負け将棋」と言います。ノウハウ本も大いに結構!と、ビジネス書のコーナーに積まれた本の山を見て思いました。

(人材育成社)