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第1,196話 パワハラが横行する組織になってしまったのはなぜなのか

2023年12月20日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

パワーハラスメント(以下パワハラ)に関しては、2022年4月に防止措置への対応が大企業のみならず中小企業へも義務づけられていますが、では実際にパワハラ防止は進んでいるのでしょうか。

パワハラはという言葉を聞くようになったのは、今から20年以上も前です。それまで職場での威圧的な態度などをはじめ様々な嫌がらせ等に悩んでいた人々は、パワハラという言葉が生まれたことをきっかけに声をあげるようになり、この言葉は一気に社会に浸透していったと言われています。

そうした流れの中、厚労省が2011年に「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」を発足させ、パワハラの現状把握や予防・解決に向け具体的な取り組みを開始し、様々な議論等を経てようやく2019年にパワハラ防止法が成立した経緯があります。

こうしてパワハラが広く認知されるようになり、パワハラをしてはいけないという機運が高まりましたが、その一方で最近ではパワハラを恐れるあまり、部下に必要な注意をしたり育成のために叱ることにも慎重になりすぎてしまっている管理職が少なくありません。弊社でも、この10年ほどはパワハラ防止や部下育成をテーマとした研修を継続的に担当させていただく機会が増えてきているのですが、研修の中で強く感じるのは、管理職が部下に対して必要以上に「遠慮」しすぎてしまっていたり、部下育成に対しても必要以上に「謙虚な姿勢」で臨んでいるということです。

これに関しては、これまで本ブログでも何度も触れてきていますが、職場をとりまとめるために、あるいは部下の育成のためには必要な注意や指導、時には叱ることは管理職として当然に行うべきものであり、それはパワハラとは別のものなのです。パワハラと捉えられてしまうことを恐れるあまり、管理職として必要な指導等までを控えてしまうのは本末転倒と言えます。

そういう中、先日一部の新聞で報道された神奈川県内のある市役所の職場におけるハラスメント行為の報道には、正直驚きを隠せませんでした。この報道をご存じの方も多いかと思いますが、昨年市が職員を対象に実施したハラスメントについてのアンケートでは、「ハラスメントを受けたり、見聞きしたりしたか」と尋ねたところ、複数回答でパワハラが690件、セクハラが229件あったとし、上司や同僚、さらに相談窓口にも相談したが解決していないという回答が149件あったそうです。 

具体的な行為としては、「馬乗りになって殴打する」「5時間叱責する」「男性職員が約30分、女性職員に罵声を浴びせた」「不在になった職員の悪口を大声で話す」「育児のための時短勤務について上司から嫌みを言われる」「廊下ですれ違うたびに舌打ちをし、にらみつける」等とのことです。パワハラ防止が広く認知されているはずの今でも、これだけあからさまにパワハラ行為が行われているというのは、一体どういうことなのでしょうか。

あくまで推測ですが、パワハラ行為をしている人は自身もかつてパワハラをされた経験があるなどにより、上記の行為がパワハラにあたると理解していない、あるいはこの程度はいけないことではないと思っているのかもしれません。そして結果として、組織の中でパワハラを許してしまう風土がはびこってしまっているのではないでしょうか。しかし、この状況はそもそも法律上も問題であるだけでなく、このような組織は人の流失が続いて、いずれ組織として成り立たなくなってしまっていくのではないでしょうか。

このような風土を改善するのはなかなかに前途多難だと思いますが、「ハラスメントは絶対に許さない」という思いを全職員が共有し、それを確実に実行していく。時間は長くかかるかもしれませんが、取組みが進んでこうした風土が一掃されることを願ってやみません。

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